希望論 2010年代の文化と社会
宇野常寛(著)
,濱野智史(著)
/NHK出版
作品情報
日本の現在に切り込む、若き俊英の徹底討論!
震災が露呈させたものとは何か?
情報社会とサブカルチャーの戦後から最先端までをふまえ、日常と非日常が交差する日本社会の現在を徹底分析する。戦後からポスト戦後への変化を理解するヒントは、「仮想現実から拡張現実へ」というトレンドのなかにあった。震災からの復興が叫ばれる今日、ありうべき日本の未来を探るため、この時代の「希望」と「絶望」を問い直す。今もっとも注目される新世代の論客二人による迫真の対話!
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商品情報
- シリーズ
- 希望論 2010年代の文化と社会
- 出版社
- NHK出版
- 書籍発売日
- 2012.01.31
- Reader Store発売日
- 2014.04.18
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (22件のレビュー)
-
宇野さん・濱野さんがこれまで主張してきたことの再録+α版。1章は原発の議論+『リトルピープルの時代』を基にした宇野さんパート。2章は濱野さんによる情報社会論の捉え直し。個人的にはここが胸熱。濱野さんが…なんで『アーキテクチャの生態系』で日本社会論にこだわったのか。それは日本的な(ひろゆき的な)ネット空間を分析しなければ、日本独自の「フロンティア」が見えないから。このパート、普通に情報社会論の基礎的な流れの確認としても読めるし、そこに+αで濱野流の情報社会論の日本的な捉え直しもあって熱い。「梅田望夫的(アメリカ的)」と「ひろゆき的(日本的)」という括りは実感としてはすごく納得で、日本の土壌を受け入れた上で外発的にではなく、内発的に(宇野の言葉だとハッキングで)変えていくしかない。
ただ疑問もある。日本的、ガラパゴス的、匿名的ネット空間に可能性がある―というのはどうしてなのか。確かに、日本のネット文化・土壌を受け入れた上で希望を語る、議論を展開していくしかない―というのはわかる。でも、日本的な環境「だからこそ」希望がある、というのはどうしてなのか。もう少し言及がほしい。
そして、この本にある最大の問題。果たして、この本に収められている言葉は、どこに届いているのだろうか。ハイコンテクストで、これまでに思想の言葉に触れていなければ、いやむしろ具体的に『リトルピープルの時代』『アーキテクチャの生態系』を読んでいなければ、はっきり言ってわからない議論だったのは間違いないと思う。この本を市場に放り投げた時、購入者は思想地図界隈を好む読者に限られるだろうし、例え「誤配」が起こって他の読者に読まれたとしても、おそらく宇野さん・濱野さんの言葉はその読者には届かない。排除されてしまうはず。
思想地図界隈のマーケットなんて(東さんが前にLife現代思想の回で言っていたけど)せいぜい3万人くらい。多く見積もっても数万人程度。そこへ向けたところで、規模は果てしなく小さい。
宇野さん・濱野さんの議論が悪いというわけじゃない。むしろ、抜群に本質的でクリティカル。だからこそ、その議論は多くの人に届けるべきだし、その届ける努力がみられなかったのはもったいない。徹底的につけられた注釈そのものがハイコンテクストで、思想地図界隈の「外側」にいる読者には絶対にわからない。そのあたりの「議論」ではなく「姿勢」(思想系の言葉でいうならば、コンスタンティブではなくパフォーマティブな側面)について2人はどう考えているのだろうか。
また、議論が極めてレトリカルだったのも気になる。いや別にレトリックを用いることは悪い事じゃない。問題は議論が具体例に落とし込まれたとき、途端に弱くなることだ。おわりに濱野さんが「その具体的な提言となると、稚拙さも目につくものだろう」と告白しているように、抽象的なレベルにとどまっているという指摘は回避できないはず。その意味において宇野さんがいう「文芸評論家だから」というロジックは言い訳にしかならない。だからこそ、具体的な構想をレトリックで片づけるのではなく、現実の実務的な、届く言葉で方てほしかったし、語るべきだと思う。そのあたり、多分宇野さんも濱野さんも自覚していると思うし、今後のポイントなんじゃないかなと思う。続きを読む投稿日:2018.08.29
対談は良い。その人がいま考えていることの「原石」が直接提示される。本書のそれは、非常に目映い。本書が語るのはお定まりの「希望」そのものではなく、個々人が自分の間尺にあった「希望」を探すための基本戦略で…あり、そのために「現代という時代をどのように位置づけるか」という問いが、くり返し問い直されている。
見田宗介による戦後史の区分(「理想の時代」「夢の時代」「虚構の時代」)を受けて、大澤真幸は現代(1995年以降)を「不可能性の時代」と呼び、東浩紀は「動物化するポストモダン」と呼んだ。宇野氏は両者を止揚するかたちで「拡張現実の時代」と言う。このアイデアには正直痺れた。
《ここで言う拡張現実的なものとは現実と虚構の混在、現実の一部が虚構化することで拡張〔多重化〕することです。それは言い換えれば日常と非日常の混在でもある。〔…〕インターネットは現実のコミュニケーションを「拡張」 する方向にしか作用していない。〔…〕…〈ここではない、どこか〉を仮構するのではなく〈いま、ここ〉を多重化する方向へと虚構に求める欲望が変化している。〔…〕…虚構(ゲー ム)と現実(社会関係)がここでは入れ子状に絡まり合って現実を拡張していると言える》[宇野、p40-41]。
現代が「拡張現実の時代」と位置づけられるならば、もはや、大きな「父」の代弁者として「ここにない希望(理想)」を語る言葉には意味がない。あるいは、「父」への抵抗として「ここにない希望(虚構)」を弄んでみても欺瞞的なだけだ。《グローバル資本主義下、ネットワーク社会下においては誰もがただ存在するだけで〔否応なく〕貨幣と情報を通じて小さな決定者であり発信者、つまり小さな「父」として機能してしまう》[宇野、p206]。《もはや僕ら一人一人が経済主体であり、メディアであるこの時代に、〔エルサレム賞受賞スピーチでの村上春樹のように〕「自分は卵の側である」と断言することは非常に危険だと思う。誰もが「壁でもあり卵でもある」世界をとらえ、変えていく言葉が僕は必要だと思うんです》[宇野、p31]。
そうした《誰もが「壁でもあり卵でもある」世界をとらえ、変えていく言葉》として両氏がキーワードとして挙げるのが「ゲーミフィケーション」であり、これは「希望」を創るための基本戦略として非常に説得力がある。
《要するに現実は「クソゲー」すぎるんだ、ということなんですね。〔…〕それなら現実のほうをゲーム化し、ハマりやすいかたちに〔ボトムアップ的に〕かえればいいんじゃないか、と。もはや政治的なイデオロギーや美しい理念だけで人は動かないのだとすれば、ゲームこそが社会運動の原動力となる》[宇野、p194]。
以上が本書の骨格であり、これらアイデアが「原石」状態で提示された本書は、最近の両氏の著作の中で群をぬいて刺激的だ。逆にいえば、本書のアイデアの展開版であるはずの両氏のAKB48論や『リトルピープルの時代』がなぜ面白くないのか、考えこんでしまう(端的に言って、貴重な「原石」を磨くための材料を間違えてしまっているのでは?と思う)。
とにかく、本書が「2010年代(と言うより、1990年代以降)の文化と社会」を読み解く際に(その賛否は別として)無視することのできない一冊であるのは間違いない。
読んで本当に良かったと思えた本の一つ。
(追記)
…と、偉そうに書いてみたものの、この本で個人的に一番印象に残ったのは、じつは宇野氏の「まえがき」での言葉でした。《京都は、いい街だった。いまでも三日に一度くらい「帰りたい」と思う。〔…〕僕はこの好きな街から離れたくなくて、ここでのんびり暮らすつもりだった》[p8]。自分も数年前までまったく同じことを書いていて、今もそう思っています。この一言でこの人に問答無用の親近感を感じました。いつまでも、三日に一度くらい「帰りたい」と思う場所を抱えながら、自分も此処で生きていきたい。そう思いました。続きを読む投稿日:2015.07.05
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