東京水路をゆく―艪付きボートから見上げるTOKYO風景
石坂善久(著)
/東洋経済新報社
作品情報
東京の街は、湾奥に何本もの大河が注ぎ、その川たちが運んできた土が積もってできた平野の上に生まれ、また遠浅の沖合を埋め立てて発展してきたことから、水運の便を得やすい土地柄にありました。
かつては、水運が唯一の大量輸送手段であったことから、下町のある低地には、江戸時代より道路と同等かそれ以上に人工の水路が縦横に開かれ、全国的に見ても最大級ともいえる「水路の街」となりました。
江戸・東京の発展に貢献してきた水路たちも、戦後その多くが埋め立てられたり、道路に転用されたりしてその数を減らし、また水運もすっかり廃れてしまいましたが、それでもまだ都内には、結構な数の船が走れる水路(可航水路)が息づいています。
東京は依然として「水路の街」なのです。水路をボートでめぐる街歩き"には、普通の街歩きに当然あって然るべき、地場の名物を売る店に立ち寄って食べ歩いてみたり、出会った古老の昔話を拝聴したりといったお楽しみは一切ありません。そのかわり、見事な造形を見せてくれる橋や頼もしくそそり立つ水門、行きかうフネブネといった魅力あふれる住人たちが迎えてくれます。何より、陸上から見る川や運河とは、180度違った視点から眺める水路風景こそ、最大の魅力であり、愉しみでもあるといえるでしょう。オアシス? 秘境? えっ、ここが東京?? と思えるような、大都会の真ん中で味わう、ちょいディープな世界をご紹介します。東京にはまだまだ"大人の楽しみ"があります!"
【主な内容】
第1章 水路をめぐる愉しみ、あれやこれや
第2章 心が躍る水上散歩! 地区別水路のご案内I
第3章 心が躍る水上散歩! 地区別水路のご案内II
もっとみる
商品情報
※この商品はタブレットなど大きなディスプレイを備えた機器で読むことに適しています。
文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
この作品のレビュー
平均 3.5 (4件のレビュー)
-
1966年神田生まれの著者による『東京水路をゆく』(東洋経済新報社 刊)は、この大東京を「街歩き」や「クルマ」といったありきたりな手段によってではなく、モーターボートを操縦しつつ探索し続けた、まさに…入魂の記録である。著者・石坂善久は、自分が出不精で、もしもモーターボートでの水路探検という外出方法との出会いなかりせば、間違いなく「ひきこもりになっていただろう」と白状している。
船舶の操縦と聞くと、私などはつい不当にも、加山雄三的な金満御曹司の脳天気ぶりを想起してしまい、ほとんどどうでもいい世界だと早合点してしまいそうになる。しかしながら本書は、著者のこの「ひきこもり」体質がいい方向に出ている。あくまで水路の好きな人士が、日々心を込めて書きつけた文章が連なっているのである。隅田川、荒川、中川、江戸川といったおなじみの大河にとどまらず、神田川、日本橋川といった東京人にとってまさに愛玩の対象となってきた都心河川、そしてもちろん都内の江東地区、あるいは芝地区、品川・大井地区を縦横に流れる大小の運河、堀割、果ては外堀の側部地下を流れるダークな暗渠河川に至るまで、くまなくその性質、鑑賞ポイント、水質、橋桁の高さ、潮の満ち引き、名称の推移などについて、愛に満ちた記述で網羅されている。これが貴重な読書体験でなくて、何がそうだというのだろう。私は日常的に中央区や江東区の水路を眺めて暮らしている者だが、普段なにげなく通り過ぎていたちっぽけな運河にも、ちゃんと由緒正しい名称があることなど、蒙を啓かれた思いだ。
そして、本書のページをめくりながら、私は不意に、幼少期、亡き父に晴海のモーターショーへ渡し船で連れて行かれたこと、まだ本所両国に再建される以前に蔵前にあった国技館に、水上バスで連れて行かれたことなどを思い出してしまった。亡き父は、貧しい財布と相談しながら、幼い私にすこしでも冒険心を抱いてもらおうと必死で、地下鉄や都営バスではなく、あえて東京から消えゆく水路という交通手段を選んだに違いない。これは、今だからこそ理解できる事柄だ。
撮影用語でいうところの「ローアングル」。本書はいわば、ローアングルのみによる東京博物誌である。加藤泰の遺作『ざ・鬼太鼓座』(1981)には、波を被るほど水面ギリギリのローアングルから撮影された和太鼓奏者の勇姿が、きわめて鮮烈なフォルムに収まっていた。そして、本書はその記憶を幽かに呼び覚ましながら、ゆるりとした水面からの前進移動ショットの記述に貫かれている。
ただし、このアングルの貫徹は、やもすれば単調を生む。一読者としての私は、本書後半でその記述の単指向性にいささか飽きてしまったことも認めなければならない。だが、この単調さは元来、本書にとって最大の特長であり、このことこそ、本書の存在理由なのである。続きを読む投稿日:2010.12.11
<目次>
第1章 水路をめぐる愉しみ、あれやこれや
第2章 心が躍る水上散歩、地区別水路のご案内Ⅰ
第3章 心が躍る水上散歩、地区別水路のご案内Ⅱ
<内容>
東京臨海部(河川部)の水上散歩の本…。これは特別な趣味で、船を持っていないとできない。そういう意味で、本から楽しむことができない内容。専門用語も頻発し、地図を見返すことも多かったが、大筋で楽しむことができた。何よりも著者がこの趣味をとても楽しんでいて、文面にもその様子がうかがえるのがよかった。
考えてみれば、東京はもともと水の都だった。1964年の東京オリンピックあたりから、陸上交通にシフトし、あっという間に暗渠になったり、高速道路が頭上を塞いだりした(日本橋のように高速の地下化も提唱されてきたが)。人を運んだり、物資を運んだり(例えば宅急便など)するのに、道路は渋滞の可能性も高いし、事故の可能性をあるが、水上はまだまだそうした可能性の低い場所だと思うので、もう一度水上交通を見直す必要があるのではないか?と読後に感じた。
逗子市立図書館続きを読む投稿日:2016.06.05
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。