なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?
フィリップ・デルヴス・ブロートン(著)
,関美和(訳)
,岩瀬大輔(解説)
/プレジデント社
作品情報
営業とは、拒絶から始まる世界一やりがいのある仕事。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』ベストセラー、異色の営業読本。
ハーバード・ビジネス・スクール出身のジャーナリストが、
世界中を飛び回ってつかんだ“営業”の真実。
モロッコの土産物屋、日本のセイホのおばちゃん、
ニューヨークの現代美術商、テレビ通販のカリスマ 、
MIT出身の航空機セールスマン、富裕層御用達の不動産営業、
シリコンバレーのベンチャーCEO・・・・・・。
頂点をきわめた営業のエキスパートたちの言葉と生き様に学ぶ「売る」苦悩と喜び。
営業とは「人生の縮図」、そして世界を動かしているのはセールスである。
「業という仕事は本来、優れた人がいちばん稼ぐことができる職業だ。
頭でっかちのエリートは、そういう世界を本能的に恐れている。」
著者のハーバードでの同級生でもあるライフネット生命社長、岩瀬大輔氏の解説も必読。
【目次より】
■序 章:世界を動かしているのはセールスだ!
■第1章:拒絶と失敗を受け入れる
■第2章:ストーリーと共感力で売り込む
■第3章:生まれつきか、経験か
■第4章:教祖と信者
■第5章:誰にでもチャンスはある
■第6章:芸術作品を売るということ
■第7章:仕事と自我を切り離す
■第8章:複合的な才能
■終 章:ものを売る力と生きる力
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商品情報
- 著者
- フィリップ・デルヴス・ブロートン, 関美和, 岩瀬大輔
- 出版社
- プレジデント社
- 書籍発売日
- 2013.08.31
- Reader Store発売日
- 2013.09.27
- ファイルサイズ
- 0.8MB
- ページ数
- 381ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (38件のレビュー)
-
営業という仕事は生きていれば必ず避けられ避けられない。
ビジネスで売り込むことに限らず、生きていれば何かしらのアピールは必要になってくる。
営業が上手い人とそうでない人の分析が幾つも載っているが、こ…の本で大きく納得できたことが一つある。営業という行為への苦手意識や躊躇いについてだ。食べる為には収入を得なければならず、その過程には営業が欠かせない。にもかかわらず、躊躇いがある。本書はそれを理論的には解決してくれたと思う。今後は、これまで生きてきた中で偏ってしまった考え方をほぐしていかなければと思う。
僕が大いに納得できたのは、営業が比較的得意な人とそうでない人がいるのはなぜかということ。僕は後者だが、なんでそうなってしまったのかという疑問の答えがあったのだ。
生きてきた環境の影響が大きい、そういってしまうと単なる逃げの口実になってしまうのだが、僕が納得できたのはそこではない。
営業が得意な人は、親が商売を営んでいたりして、生活の中で身近に営業が存在していることが多い。親が会社を経営していたり、自営をしていると売り買いによって自分の生活が賄われていることが実感しやすい。努力や苦労しながら売ることで利益を得て、それによって日々の食料や学費が払えるという実感がある。
一方、僕の父親は雇われサラリーマン技術者で母は専業主婦だった。父親は、同僚に営業職の人がいて、その人が会社にもたらした利益から給料を得て、僕はそのおかげで生活できた。会社の中での分業として父は技術者をしながら、父の分の営業は誰かがやっていてくれたわけだ。
そんな環境の僕にとって営業に触れるのは、客として売られる場合が多い。買い物やら勧誘やらで買いたくないものを勧められたりするようなイメージが多い。また日本には儲けることはよくないだとか、お金についての道徳や忌み嫌う空気が漂っている。父のように間接部門の仕事で、その家庭で生活していると、こういった営業ということの負の部分ばかりの意識ばかりが育ってしまって、生きていく上で必ず必要な売るという行為に偏見を持ってしまうのだ。
この本を読んだ後、自営をしている過程で育った人と話した。自営や経営者の家庭だと、営業して売ることのポジティブな面をよく理解していた、というかそれが染み込んでいた。
このことを実感し、僕の中の偏りを無くさねばと思った。続きを読む投稿日:2014.04.18
このレビューはネタバレを含みます
営業の名著。
レビューの続きを読む
新卒社員や営業のメンバークラスの人は読むと良いと思う。
ただ、自分で言うのもなんだけど、そこそこ営業経験や、営業実績出せてる人からすると真新しさはあまりないとは思う。
日常的なシーンを…題材に、あるある〜という営業の重要なことについて書かれているので、営業に携わる人であれば一度読んでおくべきだろう。
面白かった部分についていくつか以下で記載。
振る舞いの悪い顧客に対してのアプローチ
→好きの反対は無関心というように、悪態をついてくる人は全然顧客になりようがある例。
何より重要なのは信頼の貯蓄。この人はすごいな、この人の言うことは聞いておいて損ないな、と思わせたら勝ち。
> 以前、うちの店に入ってきていろいろと物色し始めたアメリカ人の男がいてね。銀食器を見てこれは銀かと聞いた。そうですと答えると、『モロッコの銀か』ってさらに聞いてくるんだよ。要するに混ぜ物が入ってるんじゃないかって意味さ。今度は別のものを見て、アンティークかと聞いてきた。そうだと答えると『お前が裏庭でつくったんだろう』なんて言う。妻は、キレそうになってたよ。でもこれは魚釣りみたいなもんなんだ。食いついた魚を無理に引っ張ると糸が切れるだろう。だから放したり、引っ張ったり、また放したり引っ張ったりして、疲れさせる。そこで糸を巻き上げればいい。その男は琥珀を見て、プラスチックかと聞いてきた。俺は違うと答えた。『琥珀です』。『香港製か?』。男はずっと俺をやり込めようとしてたんで、好きにさせておいた。反撃できるタイミングを待ったんだ。最後に男は美しい象牙のおわんを手にとった。職人が何世代もかけて彫り上げた作品を、男が振り回し始めたんだ。だから、俺はヤツの手首を摑んでおわんを取り上げ、光にかざした。『お客さん、大切に扱ってくれませんかね』。それから、そのおわんの歴史を説明すると、男は自分がバカだったと気付いたらしい。すみませんと謝まったから、構わないと答えた。何も知らなかったんだな。恥ずかしそうにしていたよ。その晩、そいつはいっしょに食事をしたタンジールの誰かから、俺の評判を聞いたらしい。翌日またやってきた。前の日はあばれ馬みたいだったが、この日は乗ってほしそうだったから乗っかった。もう俺の言うことならなんでも聞いたね。男は見事な銀のブレスレットを何本か買っていった。もし俺が我慢していなかったら、おいしい魚を逃していただろう。力ずくじゃなくて頭を使ったんだよ」。
結婚式の前の買い物での事例。
→予算の合わない顧客に対して蔑ろにする店員が描かれている。
これはむしろ逆とも言うべきで、予算が潤沢な人は他社(他のお店)でも同じようなアプローチを受けているはずで、こういう難しいお題、予算的に厳しい顧客に対して、何を得たいか、優先したいかを確認し、それに対して適切なアプローチ(他の店を紹介する、分割払いを提案する、1番安い指輪になるけど提案してみるなど)をすることで、他との差になり顧客からの信頼を得られる。
> 最初に訪れたのは、五番街の超高級デパート、バーグドーフ・グッドマンの一階にある宝石店のヴァン クリーフ&アーペルだ。入った瞬間に後悔した。ガラスの陳列ケースに入った輝く宝石に値札はなく、店の人たちは、いまにも僕を取って食いそうな目つきをしていた
> 予算を口にすると、女性が引くのがわかった。それは僕がこの日のために貯めてきたお金で、僕にとっては大金だった。だが、そのセールスの女性は、いかにもがっかりした様子を見せた
> それでおしまい。僕の財力は、彼女の世界ではこれくらいの価値しかなかった。おもちゃの指輪程度というわけだ。別の指輪を見せてくれるわけでもなく、分割払いの提案もない。ほかの店を教えてくれるわけでもない。僕は自分の経済的価値を自覚した。それは彼女が鼻にもかけないほど低かった。
オークションで指輪を買い、プレゼント用の箱を探している時の話。
→これも先ほどの例と同様で、顧客に伴走する姿勢が弱すぎる。
結果的に箱を提供出来なくても、上司に掛け合ってみる、箱だけ無料で渡すのは難しいのでこの商品を買ってくれたら渡せる、みたいな“努力”を見せることが重要。
この差は本当に大きい。
> アンティーク宝石店のフレッド・レイトンにたどり着いた。
> 「何かご用でしょうか」とその女性が訊ねた。僕はビニール袋に入った指輪を掲げてみせた。 「さっきオークションでこの指輪を買ったんですが、箱がいるんです」。すると、「ありません」と、バッサリ。店のなかは箱だらけだったのに。一つくらい売ってくれてもよさそうなものだ。そこで僕はこう言った。「もちろん、お支払いします」。無料の箱はない、という意味かと思ったのだ。すると「うちでは、そういうことはいたしませんので」と彼女は言い、ほかの客のほうに向き直った。結構じゃないか。通りに出て歩きながらそう思った。クソくらえ。
次いで、スーツを買う時の話。
→この場合は、「ぶっちゃけそこまでこだわりないから場違いじゃなければok」という顧客ニーズを理解して、適切にアプローチして結果信頼を得られた好例。
これは本当にコスパが良い。その場で仮にもっと高い商品を提案して売れたとしても、感動にはならないから次が無い。
この人の言うことは信頼出来る、と言う状態を築ければ、ここでも描かれているように次にも同じケースが出てきたらすぐに思い出してくれる。
> それにくらべて、マンハッタンのミッドタウンにあるポール・スチュアートでの体験は対照的だった。
> ほんの一瞬で、彼は僕を正確に見抜いていた。僕はほとんどスーツを着ない。洋服にもあまり興味がない。ただ、場にふさわしくて仕立てのよいスーツならそれでよかった。この日のために一応の努力をしたことを見せたかっただけだ。上着が二つボタンだろうが三つボタンだろうが、切り込みがシングルだろうがダブルだろうが、袖口のボタンが三つでも四つでも、まったくどうでもよかった。場違いじゃなければ、それでよかったのだ。彼はそれを察して、手を貸してくれた。それまで結婚式の準備中に出会った人たちは、みんな例外なく一生に一度のことだから出し惜しみする場合じゃないと、もっと高いものを買わせようとしたが、彼は違っていた。結婚式を利用して僕から金をむしり取ろうとしなかったのは彼だけだった。
> スーツを選ぶと、その男性は僕を試着室に連れて行き、イタリア人の仕立て職人がズボンの長さを測って折り返しをつけたほうがいいと言ってくれた。僕はまたその言葉に従った。彼を信用していた。それ以来、洗礼式のワイシャツや、結婚式のネクタイ、何かきちんとした場に着ていく洋服が必要になると、僕はいつもポール・スチュアートに行くことにしている。
これも非常に重要。
顧客が金になる人だと分かってから良いように立ち振る舞うのは誰でも出来るわけで、先ほども書いたように差にならない。
重要なのは、最初からまずこちらから尽くすこと。
返報性の法則だ。
> 本当に優秀なセールスマンは、どんな顧客をも愛するところから始めます。お客様をいつも正しく判断するのは不可能です。きれいに着飾って買い物をする人がいちばんの上客とは限りません。とくに、昨今のお金持ちは目立つことを好みませんから
>ブロードウェイの名女優、メアリー・マーティンは、舞台が始まる前に毎回舞台袖から観客席をのぞき見し、目に入る観客全員に「愛してる、愛してる」と呟いていた。幕が上がるころには、彼女は本当に観客を好きになり、最高の演技を見せたいと心から思うようになっていたという。
ウェットスーツの事例も重要。
相手が何を(モノ)ではなくて“どんな状態”を求めているか、を推察して適切に提案する必要性を説いている。
ここで言えば顧客が欲しいのはウェットスーツというモノではなく、熱心なダイバーからこの店はイケてる最先端の商品が常に置いてあると思われる状態、そのためのウェットスーツ。ここが理解できてるかどうかの差は大きい。
> ウェットスーツの事例とは、次のようなものだ。あなたはダイバーズ・デライトというウェットスーツの製造会社の社員で、ダイビング用品のチェーン小売店に製品を売り込む仕事をしている。
そのウェットスーツは宇宙飛行に使われる素材でできていて、競合製品よりも体温を五度高く保つことができる。だが、値段も高く、通常製品が二五〇ドルのところ、あなたの製品は四〇〇ドルもする。あなたはこれから売り込みに行くところだ。相手のダイビング用品店には数々のベンチャー企業がやってきて、約束を交わしては、守れずに去っていく。だが、その店は、つねに先端を走ることを使命としている。大手量販店もウェットスーツを販売しているため、その店が生き残るためには差別化が必要なのだ。
あなたの仕事は、その店に合計一二着のウェットスーツを買ってもらうことだ。しかも、男性用と女性用にそれぞれ三サイズを二着ずつ買ってもらわなければならない。
ウェットスーツを売るためには、顧客がほんとうに恐れているのは何か、ほんとうに必要なものは何かを発見しなければならないことが、二時間の授業のなかで次第に明らかになっていく。顧客が恐れているのは、安売り量販店との価格戦争に巻き込まれることで、それを避けるには、熱心なダイバーを対象にした商売を安定的に維持することが必要になる。ウェットスーツの機能的な優位性については、買い手が評価してくれる。あなたの仕事は、安定的に商品が供給できること、店に十分な利益をもたらすこと、ダイバーたちが競ってこの商品をこの店で買うと相手に信じさせるこ
とだ。あなたの商品は、ダイバーの体温を暖かく保ってくれる高価なウェットスーツではない。そのダイビング用品店が業界の先端に立ち続けて利益を増やし、それを維持するための手段が、あなたの商品なのである。続きを読む投稿日:2023.01.09
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