カラヤン帝国興亡史 史上最高の指揮者の栄光と挫折
中川右介(著)
/幻冬舎新書
作品情報
巨匠フルトヴェングラー亡き後、音楽界の頂点、ベルリン・フィル首席指揮者の四代目の座を?んだ男、ヘルベルト・フォン・カラヤン。彼は類い稀なる才能と権謀術数を駆使し、ザルツブルク音楽祭、ウィーン国立歌劇場他、名オーケストラの実権を次々掌握、前代未聞の世界制覇を成し遂げる。何が彼をかくも壮大な争覇の駆け引きに向かわせたのか? 盤石だったはずの帝国に迫る脅威とは? 二十世紀音楽界ですべてを手にした最高権力者の栄華と喪失の物語。
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この作品のレビュー
平均 3.5 (6件のレビュー)
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前作「カラヤンとフルトヴェングラー」ではフルトヴェングラーに嫉妬されながらも成長していくカラヤンを描く。
そして、カラヤンがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者になったところで前作は終わった…。
本著はその後のヘルベルト・フォン・カラヤンがクラシックの帝国を築き、死の直前に凋落していく様子を描く。
自分で楽器を演奏できない指揮者は、最高の楽器を求める。
その楽器こそがオーケストラ・管弦楽団であり、最高のオケを求めることは権力を求めることと重なった。
「帝国」と表現するといかにも独裁者然とした人格を思い描くが、実際は後進の指導も行う善人格だったように思う。
膨大な音源を残したカラヤン。
録音とコンサートについて裏側がよく分かった。
管弦楽団はリハーサルをすることを嫌うとのこと。
だがリハーサル無くして良いコンサートはあり得ない。
そこでカラヤンはリハーサルの代わりにレコード録音を行った。
録音なので楽団員は本気の演奏をせざるを得ない。
カラヤンは録音で80%までもっていき、本番のコンサートでは100%の結果を残したとのこと。
今残されているカラヤンの音源は80%ということになるが、あれで力をセーブしているのであればコンサートの音は一体どのくらい素晴らしかったのであろう。
今は亡きカラヤンのコンサート音源をこれから探してみようと思う。続きを読む投稿日:2014.01.09
「カラヤンとフルトヴェングラー」の続編にあたる時代を扱っています。フルトヴェングラー亡きあと、ベルリン・フィルを手中に収めたカラヤンは、ウィーン国立歌劇場、ザルツブルク音楽祭をもその手に握ることに成功…。更にいくつもの歌劇場やオーケストラを掌握し、ヨーロッパ音楽会に「帝国」を作り上げました。
自らの処理能力を超える数の歌劇場やオーケストラを、支配下に置こうとしたのはなぜか。 録音という新しい技術を最大限利用し、クラシック音楽を大衆化したこと。音楽祭を創始してまでも、最高のオペラを上演することを求めたこと。「全て」を初めから手に入れ、その権力を維持してゆくテクニック。クラシックを民主化した、といいながら、ヨーロッパ音楽会に帝国を築いたという逆説。一体何が、カラヤンを突き動かしていたのでしょうか。
やがて帝国の歯車も、少しづつきしみ始めます。アメリカからやってきた、まったくタイプの違うライバル、バーンスタイン。 企画した指揮者コンクールも成功とは言えず、人事問題を起点として、ベルリンフィルとの間にも隙間風が吹き始めます。 発展し続ける音楽との間に少しづつ拡がっていく隙間と、渇れてゆく創作意欲。 ベルリンの壁が崩れる4ヶ月前、ソニーの大賀社長らとの商談中に苦しみ出したカラヤンは、最後はフリーの指揮者として、81歳の生涯を閉じました。
好むと好まざるとを限らず、20世紀の音楽界に最も影響を与えたカラヤンという音楽家は、どういう存在であったのか。その足取りを追い、彼が成したこと、成したかったことを考え直してみることが必要な時期なのかも知れません。 クラシック音楽の危機が囁かれ、また情報の伝わり方が大きく変わりつつある、今の時代だからこそ。続きを読む投稿日:2012.05.26
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