人生を整える 距離感の作法(マガジンハウス新書)
曽野綾子(著)
/マガジンハウス
作品情報
<マガジンハウス新書創刊第3弾>
「付かず離れずが心地いい」―
親子、夫婦、友人知人、死、運命……
ほどよいつき合い方50の知恵!
今回のコロナ禍では「三密を避けろ」と言われたが、コロナがあろうとなかろうと私はもともと密になるようなところへは行かないたちである。
先日、「最近、外出する際に着ていく服がないな」とふと思ったら、私はここ五年ほどデパートにも出かけていないことに気づいた。
コロナに関して言えば、友人や知人、またその家族にコロナにかかった人がいるという話は聞かないし、自宅に通ってきてくれている秘書たちとのあいだでもコロナは話題にもならない。
ところがテレビのニュースでは「ソーシャル・ディスタンス」という言莱が使われ続けている。
コロナの蔓延によって自宅にいる時間が増え、そのおかげで家族との関係が深まったり、逆にぎくしゃくしたり、離婚が増えたりといった話も聞く。
この災難を経験して、誰もがこれまでに感じたことのない「人との距離感」について考えはじめた。穏やかな日常より、どうにもならない運命の荒波の中に置かれたほうが、より明晰な人間らしさが見えてくるものなのだ。
ただ私は、子供のころから人との距離感について折に触れ考えてきた。それは両親が不仲であったことや、自分自身が近視で人の顔が識別しづらかったことなどに起因していると思う。
また、私はクリスチャンということもあり、人間同士のいざこざも「人間の分際で」と俯廠して見てきたところもある。……(「まえがき」より)
親子や夫婦、友人知人との付き合い方から、死や運命との向き合い方まで―、ベストセラー作家が教える、人生を豊かにする極意!
●「敬称」はあったほうが便利である
● 多くの場合、「差別」ではなく「区別」
● 「親のために」と心をこめては駄目
● 子供は、親の思い通りには育たない
● 夫婦喧嘩でも、言ってはいけないこと
● 相手の「聖域」には踏み込まない
● 死との距離感が巧みだった、かつての日本人
● どんなに努力をしても、運命には逆らえない etc.
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この作品のレビュー
平均 5.0 (1件のレビュー)
-
大好きな作家、曽野綾子氏が、昨今のコロナ禍でのソーシャル・デスタンスから、距離感を扱ったエッセイです。
さっぱりしていて、感じたことを、感じたままで表現する。そんな小気味よさを持った書でした。
160…頁あまりの分量で、読みやすく、分かりやすい。
気になったことは以下です。
・私は、世の中はすべて仮の姿だと信じている。だから、不平等さや区別というものは気にしない。
・何事も「いい加減」でいい。「いい加減」を英語に訳すと、ほどよく適切なという proper と おざなりな という rough といった言葉に分かれる。
・「親のために」と心を込めてはだめ、心をこめずにやるから、長く続くのだ。
・子供への接し方は、「人格を認める」言葉は好きになれない。「存在そのものを許す」ほうがしっくりする。
・私は、「自分は正しい」と思っている人は嫌いである。
・日本の子供たちに決定的に足りないのは、「人を見抜く力」だろう。はじめから人を信じてはいけない。疑ったあとに信じる。それが正しい順番だ。
・小さい嘘はいいが、大きな嘘はだめだ。大きい嘘は、「裏切りの嘘」のことである。
・「世の中は思いどおりにならないもの」というのがわからない人が一番困る。
・本当に譲れないものは何かを考えて、そこから優先順位をつけていくようにしていた。本当に譲れないもの以外は適当に流したほうがいい。
・約束した仕事は、家の都合より優先する。と考える人のことを「プロ」という
・相手の「聖域」には踏み込まない。「秘密の部分を持たせたままでいてあげられる間柄」が本当の親友だ。
・自分が直接聞いた話でも間違いはある。他人か聞いた話ではなおさらである。だから、噂話はしないほうがいい。
・「私のことなんか知りたがる人なんていないのだから、いい気になるな」
・あらゆる人とのつき合いは、それがうまくいかなかったときはには諦めるほうがいい。それがいちばん有効な、人間関係の極意である。
・物事に、善悪の両面があると知ることで、初めて人生には厚みが出る。
・死を意識すると、生涯は限りあるものだとわかってくる。そうすると、人生の一瞬一瞬を大切にしていこうと思えるのである。
・遺品というモノではなく、その人と出会い、その人を知っていたということの感動が真の資産であって、それは心の中にのみある。
・努力さえすればなんとかなるという考えは大間違いだ。努力しなければいけないことは確かだが、どんなに努力をしても、駄目な時もある。
・いざとなったら「盗む」という覚悟
・アフリカでは「死ぬのは他人にまかせて、自分は生きろ」ということから教える。
結論となるのか、終章をかざるのは、次の言葉です。
「人と同じことを求めていては自分の道は見つからない」、人生を左右するものは運命だとますます思うようになった。
世の中には、自分の死に方をあれこれ考えている人がいるが、これほど意味のないことはない。死ぬ前に家をかたづけることはできるかも
しれないが、どんな経緯をたどって死ぬかなど、当人には何ひとつきめることができないからだ。
目次は以下です。
まえがき
第1章 人生百年時代のソーシャル・ディスタンス~距離感の大切さ
第2章 家族はいちばん身近な他人である~家族との距離感
第3章 幸せな結婚生活は奇跡に近い~夫婦の距離
第4章 人づき合いは、「手広く」よりも「手狭に」~友人、知人との距離感
第5章 死は恐れるものではなく学ぶもの~「死」との距離感
第6章 人生は思いどおりにいかないから面白い~「運命」との距離感続きを読む投稿日:2022.07.09
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