絡まり合う生命――人間を超えた人類学
奥野克巳(著)
/亜紀書房
作品情報
もうすぐ絶滅する人類のために
狩猟に疲れ、ボルネオの闇夜の森で微睡(まどろ)む人類学者は、寝袋を這うアリたちの足音を確かに聴き、自分がアリの世界の一員となったと感じる……。
「この世界は人間だけのものではない」という深い実感から出発し、動物、死者、そして生命そのものへと向かう全く新しい人類学の探求が幕を開ける。
ボルネオの森から、多種的世界とアニミズムを経て、「生命とは何か」という根源的な問いへ。
インゴルド、コーン『森は考える』、ウィラースレフ『ソウル・ハンターズ』、アナ・チン『マツタケ』ら最新の人類学の議論を積極的に吸収しつつ、人類学の新たな可能性が展開される。
――世界の覇者を自認してあらゆるものを食い尽くし、絶滅の淵に立つ人類に、世界観の更新を迫る、壮大な「来たるべき人類学」の構想。
【目次】
序論 平地における完全なる敗者
第1部 アニマルズ
■第1章 鳥たち
■第2章 リーフモンキーの救命鳥
■第3章 2でなく3、 そして4
■第4章 ネコと踊るワルツ
第2部 スピーシーズ
■第5章 多種で考える――マルチスピーシーズ民族誌の野望
■第6章 明るい人新世、暗い人新世
■第7章 人間以上の世界の病原体
■第8章 菌から地球外生命体まで
第3部 アニミズム
■第9章 人間だけが地球の主人ではない
■第10章 科学を凌ぐ生の詩学
■第11章 ぬいぐるみとの対話
第4部 ライフ
■第12章 考える森
■第12章補論 考える、生きる
■第13章 記号生命
■第14章 バイオソーシャル・ビカミングス――ティム・インゴルドは進化をどう捉え、どう超えたか
■終章 人類の残された耐用年数――厚い記述と薄い記述をめぐって
■あとがき
■参考文献
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商品情報
- シリーズ
- 絡まり合う生命――人間を超えた人類学
- 著者
- 奥野克巳
- 出版社
- 亜紀書房
- 書籍発売日
- 2021.12.23
- Reader Store発売日
- 2022.01.14
- ファイルサイズ
- 12.4MB
- ページ数
- 376ページ
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この作品のレビュー
平均 3.4 (5件のレビュー)
-
「マルチスピーシーズ民族誌」の考え方について、小説やコミックス、岩合光昭さんの猫あるきなどといった日常親しんでいる文学・芸術作品を入り口に解説。内容は難しいのだがある程度すんなりと読み進むことができる…。
印象深かったのは「ぬいぐるみとの対話」を扱った項。
ヒトと人ではないものとの交流や交感のような感覚がなぜ起きるのか、あまり深く考えたことは無かった。
また、写真を撮ることと、狩りで動物をしとめることを同様の行動として見つめたことも無かった。
私にとって新しい視点が数多くあり、とても魅力的な本だと思った。
オーケストラを構成するそれぞれの楽器、各パートについて詳しく解説してもらいながら曲を聴くような、面白い感覚というか独特の波を感じるような文章も面白い。続きを読む投稿日:2023.07.30
著者の奥野さんは伊藤さんとの共著「人類学者と言語学者が森に入って考えたこと」を読んで知ったので、別の著作も読んでみようと思い呼んだ。
この本はあとがきにあるようにいろんなところで発表した文章をひとま…とめにした本のようで、いろいろと重複が多い。また誰がどういっているというような記述が頻出してきて著者も十分消化しきれていないようで、あるいは探求の過程がそのまま書かれているようで、面白くもあったが、よみにくくもあった。
マルチスピーシズ人類学やアニミズムなどがとりあげられ、人類学が人間中心では到達できない地平に人類から離れた俯瞰する視座を設定する。そうすると人そのものも決して確固たる基盤があるわけではなく、ほかの生物や物質とのやり取りの中でのダイナミズムの中でとらえようとしてる。
私は海洋生態学に長年かかわってきたので、生命や地球の活動が決して人間中心でないことは自明であるのだが、人類学はあくまで人類を中心に据えて発展してきたのだから、ようやく脱人間化できてきたのかというところである。
レヴィストロースが野生の思考で脱西洋に到達したことと比べようやく脱人間まできたという感じだ。
この本は人類は今後どのように世界とかかわっていくべきかについて深い問いを投げかけてくれる。続きを読む投稿日:2023.12.02
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