庭仕事の真髄
スー・スチュアート・スミス(著)
,和田佐規子(訳)
/築地書館
作品情報
「サンデータイムズ」ベストセラー。タイムズ紙、オブザーバー紙「今年読むべき1冊2020年」に選出。人はなぜ土に触れると癒されるのか。庭仕事は人の心にどのような働きかけをするのか。世界的ガーデンデザイナーを夫にもつ精神科医が、夫とともに庭づくりを始めてガーデニングにめざめ、自然と庭と人間の精神のつながりに気づく。さまざまな研究や実例をもとに、庭仕事で自分を取り戻した人びとの物語を描いた全英ベストセラー。
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商品情報
- シリーズ
- 庭仕事の真髄
- 著者
- スー・スチュアート・スミス, 和田佐規子
- 出版社
- 築地書館
- 書籍発売日
- 2021.10.29
- Reader Store発売日
- 2021.12.03
- ファイルサイズ
- 16.5MB
- ページ数
- 420ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (6件のレビュー)
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庭に咲く花の一生は、人間の経験を圧縮している
「自分の手で土に触れてみて、なんとホッとしたことか。掘り上げた土の匂いを嗅ぐと、じきに私はリズムを見つけて、作業に没頭した」
自然は人間の感情によってかき乱されることがないし、感情が伝染するとい…うこともない。
感情も受けつけなければ、拒絶もしない。
そう、「花は絶対に人間を拒絶しないのだ」。
人間は抑うつ状態になると、周りの世界や自分自身をいっそうネガティブに捉え、解釈するようになるため、物事を意味があるようにつなぐ心の動きが溝にはまって、先に進めず、おかしなことに上ではなく下に向かって成長を続けてしまう。
孤立し、時間の波に乗れず、目の前の波が過ぎていくのをただ眺めているような不運なサーファーのような状態であっても、庭に出れば、季節の牽引力と植物の成長エネルギーが一緒になって、基本的な生物学上の生活リズムへと引き戻してくれる。
そこにあるのは庭の時間であり、休息と回復の循環の時間でもある。
命の速度は植物の成長サイクルで、我々はただ黙ってそのリズムに従えばよい。
ゆったりと流れる時間は貴重だし、庭仕事はとにかく繰り返しが多い。
思いの外に重労働だし、気づくと没頭して作業を続けていたことを知る。
自然が要請する時間には必ず、ここという決まった時期があり、植え時や手をかける時期など、先延ばしにできない。
そういう意味では、庭の方が目的とスケジュールを与え、人間はそれに従って動かされているのだといえる。
「球根を植えるのは希望という時限爆弾を仕掛けているようだ。冬の間中、暗い土の中に横たわり、春になると静かに爆発する。地面は輝くような青の破片で埋めつくされるのだ」
第一次世界大戦においても、敵味方問わず、塹壕ガーデンづくりに余念がなかった。
食糧確保のためではあったが、癒やしや、人間であることを感じるためでもあった。
「種には明日が積みこれている。計画を立てる喜びと新しい可能性を始動させる。未来への足がかりをくれる」
老いによって、人生というキャンパスはどんどん縮んでいくが、 ガーデニングは私たちに大切なものを与えてくれる。
それは、この世界での居場所を摑まえる手がかりであり、目的意識を保つキッカケである。
「爪の下に泥が入り込む、自分自身を土の中に植え込むような感じ、そしてその過程で、命へとつながっているという感覚を再構築する」
死を自分の庭で迎えたいと考える人は多い。
モンテーニュもそうだった。
「キャベツを植えているところで、死が自分を見つけてくれるといい。死には無頓着で、まだ終わっていない畑仕事のことを考えているところを」
しかし、自分の死に様を計画建てることなど不可能だ。
死は突然やってきて、時間の連続を断ち切り、愛するすべてのものから我々を引き離す。
ゆえに人間は死を恐れるのだが、植物の一生はこれとは違う。
なぜなら植物は復活の名人だし、死が自然であることは自明であるからだ。
一方で我々は、死をできるだけ遠ざけ、距離を取ろうと懸命になっている。
死は他人に起きるもので、自分に直接が関係あるという考えに抗い続けることで、強烈な不安から守られるかもしれないが、死を否定し生命を機械のように扱って生きてもいけまい。
最終的に人間が帰っていく場所も土なら、どこまでいっても我々は、自然の一部として広大な生命の連続体の一部なのだ。
死から異常さを取り除き、もっと普通のものとしていけば、死ぬとはどういうものか見通しも立ち、恐怖心も少しは減るのかもしれない。
「フロイトはかつて死とは一つの完成なのだと書いた。誰かの死の知らせを聞くと、やり遂げた仕事に対する称賛のように感じると。結局、死とは自身を愛するものから切り離し、命を手放すという存在の完成なのだ」
そのフロイトは花を愛し、庭で死ぬことを願い、その思いは叶えられた。
「庭が見せてくれるのは、世界には動きがあり、変化しているということ。そして見る者を引き込む魅力の源泉がそこにあるのだ。足が動かなくても、目はまださまよい歩くことができる。鳥がさえずっている時、心は時に中空に舞い上がり、鳥たちのいる木に並んでとまることができる」続きを読む投稿日:2022.02.27
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人と庭がどのように相互作用し、影響していくか、様々な事象やエビデンスを元に、この本は綴られる。個人的な体験が、一気に俯瞰へと変わり分析し、そしてまたクローズアップされる。終始、この本はそれを繰り返す…。
そして、庭というものはなくてはならない存在であることを、遺伝子レベルで伝えようとする。庭作りに全く興味のなかった私が、会社の昼休みに、ふと野に咲く花に意識を持つようになった。人間は、肉体と精神だけでなく、おそらく、自然もその、自分を形成するテリトリー内なのであろう。続きを読む投稿日:2024.03.16
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