この作品のレビュー
平均 4.1 (9件のレビュー)
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「戦後」という歴史的時間が終わることが、たとえば柄谷行人や加藤典洋によって語られていたのは1990年代の終わりだったでしょうか。
戦後が終わった後に来るのは、どうも「戦前」ではないかという嫌な予感…がありましたが、今や文字通り戦前的な社会が現前しつつある空気感ですが、おそらく、そんな空気にを膨張させる「ことば」による全体主義化に警鐘を鳴らしているところが高橋源一郎の真骨頂というべきでしょうか。
いつものことともいえるのですが、最先端の『ことば』世界を指し示す高橋の手つきがぼくは好きです。
ブログにも書きました。覗いていただければ嬉しいです。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202108310000/続きを読む投稿日:2021.12.03
高橋源一郎先生の本は、いつも知性と節度で満ちている。
一人称代名詞を、「ぼく」から「おれ」に替えて書かれたものも、一見荒々しく想いをぶつけているように見せているけれど、それでも、そこには節度がある。そ…の節度に、僕は大人の知性を、僕よりも長く生き長く考えてきた人の信頼を見る。
最もグッときたのは【メメント・モリ】。
幼い子供たちの、「ままのおなかにもどりたいな」「しにたくないから?」という衝撃的な会話から始まり、『生きている者には死にゆく者にかけることばなどなくていいのだ』、『ひとりで「死」に向かう者を、癒してくれるのは、彼の懐かしい「死者」たちなのだ』に至る、深い深い話。
身近な人を亡くしたことがあるとか、亡くそうとしている人には、必ず感じるものがあると思う。
【メイキングオブ『「悪」と戦う』第8夜】
・私たちは、自分のことしか知らない。
・なのに、小説は、作者自身ではない他の「ぼく」について書こうとする。
・それは、小説が、正しくあることよりも、他の「ぼく」と繋がることを最大の使命としているからだ。
【帯に記載のあった本文抜粋】
「かつて、ツイッターは、中世のアジール(聖域)のように、特別な場所、自由な雰囲気が感じられる場所であるように思えた。共同体の規則から離れて、人びとが自由に呼吸できる空間だと思えた。だが、いつの間にか、そこには、現実の社会がそのまま持ちこまれて、とりわけ、現実の社会が抱えている否定的な成分がたっぷりと注ぎこまれるような場所になっていた。(中略)「ことば」は人を殺すことができる。だが、そんな「ことば」と戦うことができるのは、やはり「ことば」だけなのだ。」(本文より抜粋)続きを読む投稿日:2024.04.10
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