ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる
東浩紀(著)
/中公新書ラクレ
作品情報
「数」の論理と資本主義が支配するこの残酷な世界で、人間が自由であることは可能なのか? 「観光」「誤配」という言葉で武装し、大資本の罠、ネット万能主義、敵/味方の分断にあらがう、東浩紀の渾身の思想。難解な哲学を明快に論じ、ネット社会の未来を夢見た時代の寵児は、2010年、新たな知的空間の構築を目指して「ゲンロン」を立ち上げ、戦端を開く。ゲンロンカフェ開業、思想誌『ゲンロン』刊行、動画配信プラットフォーム開設……いっけん華々しい戦績の裏にあったのは、仲間の離反、資金のショート、組織の腐敗、計画の頓挫など、予期せぬ失敗の連続だった。悪戦苦闘をへて紡がれる哲学とは? ゲンロン10年をつづるスリル満点の物語。
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商品情報
- シリーズ
- ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる
- 著者
- 東浩紀
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書ラクレ
- 書籍発売日
- 2020.12.10
- Reader Store発売日
- 2020.12.11
- ファイルサイズ
- 12.4MB
- ページ数
- 280ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (62件のレビュー)
-
【感想】
本書『ゲンロン戦記』は、批評家の東浩紀氏が自身の会社「ゲンロン」を運営するうえでの紆余曲折を綴った一冊となっている。東氏は哲学者として数々の著作やイベントを手掛けてきたが、本書で語られるのは…そうした創作者としての一面ではない。むしろ「中小企業経営者」としてのドタバタであり、資金が尽きたとか社員が逃げたとかいった、とても世俗的な失敗談が語られていく。
東氏は2010年にゲンロンを創業したのだが、そこで学んだのは「事務や経理の大切さ」だったという。初期のゲンロンは、研究員は非正規雇用、事務職員は正社員という形態で運営していた。東氏は「思想誌を販売している会社として、研究員こそが主体でないとおかしいのでは?」という思いから、契約形態を逆にしようと考えていた。しかし、その後運営を振り返ってみると「やはり会社の本質は経理と事務」という考えに行きついたそうだ。
本書では、そうした東氏の「事務を蔑ろにする」失敗談が多く描かれている。例えば、元社員のX氏に経理を丸投げした結果、会社の運転資金数百万円を私用に使いこまれていることが発覚し、『思想地図β』の利益が吹っ飛んだこと。『思想地図β』の当たりからコスト感覚がおかしくなってしまっており、『日本2.0』の作成にあたって表紙の写真やデザインを豪華にしまくった結果、印刷費だけで1000万円を超えてしまったこと。『福島第一原発観光地化計画』が大失敗し、3000万円ほど採算が合わなくなってしまったことなど、中小企業ならではの「コスト感覚の無さ」が象徴されるエピソードが数々語られていた。
東氏は会社の経営に乗り出す際、「新しいことを次々とやりたい」「財務や人事など、面倒なことは全て他人に任せて自分は本を作りたい」という感覚だった。だが当然、社長が会社の財務状況に無頓着であるわけにはいかない。数々の失敗を重ね、「会社経営は結局地道にやらなければならない」という気づきに結びついたとのことだ。
この本を読んでいると「東氏ぐらい頭のいい人でも経営は失敗続きなんだなぁ」という親近感を抱いてしまう。面白く派手なアイデアを持った人間よりも、地味な事務をコツコツやれる人間によって会社は動いていく。そうした当たり前のことを再確認できる一冊だった。
――会社の本体はむしろ事務にあります。研究成果でも作品でもなんでもいいですが、「商品」は事務がしっかりしないと生み出せません。研究者やクリエイターだけが重要で事務はしょせん補助だというような発想は、結果的に手痛いしっぺ返しを食らうことになります。
「なにか新しいことを実現するためには、いっけん本質的でないことこそ本質的で、本質的なことばかりを追求するとむしろ新しいことは実現できなくなる」というこの逆説的なメッセージかもしれません。
――Xさん、Aさん、Bさんと続いたトラブルの原因は、結局のところ、ほくが「仕事をひとに任せる」ということの意味がわかっていなかったことにある。仕事をひとに任せるためには、現場でいちどそれを経験しておかないといけない。そうでないと、なにを任せているのかもよくわからないまま、ただ任せるだけになってしまうからです。それはほんとうは任せているんじゃない。単純に見たくないものを見ないようにしているだけであり、面倒なことから目を逸らしているだけなんです。「任せる」ことと「目を逸らす」ことは根本的にちがう。こんな話は実務経験があるひとにとってはあたりまえだと思いますが、それまで大学や出版という特殊な空間にいたぼくには大きな発見だったわけです。続きを読む投稿日:2023.11.22
これほどに自分の失敗に向き合い、その中から学ぶべき点を抽出する姿勢に感銘を受けた。
ビジネスという形態を取ることの優位性を見誤っていた。単にお金を儲けるということだけではなかったのだなと。
言葉…の力を信じ、言葉の力を疑うその両義性とそれによる「観光」の意義。
「危険」なコミュニケーションすなわち誤配こそ、啓蒙であり、今求められるもの。
ホモソーシャルな人間関係の問題性。
続きを読む投稿日:2024.04.02
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