金色の死
谷崎潤一郎(著)
,清水良典(解説)
/講談社文芸文庫
作品情報
潜在的な<妻殺し>を断罪
江戸川乱歩の「パノラマ島綺譚」に影響を与えたとされる怪奇的幻想小説「金色の死」、私立探偵を名乗る見知らぬ男に突然呼びとめられ、妻の死の顛末を問われ、たたみ掛ける様にその死を糾弾する探偵と、追い込まれる主人公の恐怖の心理を絶妙に描いて、日本の探偵小説の濫觴といわれた「途上」、ほかに「人面疽」「小さな王国」「母を恋ふる記」「青い花」など谷崎の多彩な個性が発揮される大正期の作品群7篇。
清水良典
『小さな王国』のような政治小説も、探偵小説も、怪奇幻想小説も、足フェチ小説も、母恋い小説も、みんな谷崎文学という偉大な大樹の、大正期の枝に生った果実である。昭和に入って谷崎文学は急速に日本の伝統に近づき、大家として飛躍的な成長を遂げた。(中略)谷崎の大正期は、決して失われた時代ではない。むしろ作家谷崎が、全力を傾けて拡大と成長に努めた時代だったのであり、その土台が彼を「大谷崎」へと押し上げたのである。――<「解説」より>
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商品情報
- シリーズ
- 金色の死
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文芸文庫
- 書籍発売日
- 2005.03.11
- Reader Store発売日
- 2020.09.11
- ファイルサイズ
- 2.2MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (10件のレビュー)
-
谷崎潤一郎が、こんな幻想的怪奇的な趣の作品を書いてたということが、この短編集を読んだ最大の発見だ。
人格が抹消された非人称的・匿名的な"何か"、或いはそれに触媒されて自我が溶解・侵犯されてしまうこ…とへの憧憬と恐怖が、様々な意匠を通して繰り返し語られているように感じた。
「青い花」
男が抱く女体・女性装への物神崇拝の心理をみごとに表現した傑作。十年前に以下の文章に出会っていたら、狂喜乱舞して谷崎信奉者になっていただろう。
"………じっと見ていると、岡田にはそれが手だとは思えなくなって来る。………白昼――銀座の往来で、この十八の少女の裸体の一部、――手だけが此処にむき出されているのだが、………肩のところもああなって居る、胴のところも………腹のところもああなって居る、………臀、………足、………それらが一つ一つ恐ろしくハッキリ浮かんできて奇妙な這うような形をする。"
"今日はその彫像をいろいろの宝石や鎖や絹で飾ってやるのだ。彼女の肌からあの不似合な、不格好な和服を剥ぎ取って、一旦ムキ出しの「女」にして、それのあらゆる部分々々の屈曲に、輝きを与え、厚みを加え、生き生きとした波を打たせ、むっくりとした凹凸を作らせ、手頸、足頸、襟頸、――頸という頸をしなやかに際立たせるべく、洋服を着せてやるのだ。"
"靴屋の店、帽子屋の店、宝石商、雑貨商、毛皮屋、織物屋、………金さえ出せばそれらの店の品物がどれでも彼女の白い肌にぴったり纏わる、しなやかな四肢に絡まり、彼女の肉体の一部となる。――西洋の女の衣装は「着る物」ではない。皮膚の上層へもう一と重被さる第二の皮膚だ。外から体を包むのではなく、直接皮膚へべったりと滲み込む文身の一種だ。――そう思って眺める時、到る処の飾り窓にあるものがみなあぐりの皮膚の一と片、肌の斑点、血のしたたりであるとも見える。彼女は其れらの品物の中から自分の好きな皮膚を買って、それを彼女の皮膚に貼り付ければよい。若しもお前が翡翠の耳環を買うとすれば、お前はお前の耳朶に美しい緑の吹き出物が出来たと思え。あの毛皮屋の店頭にある、栗鼠の外套を着るとすれば、お前は毛なみがびろうどのようにつやつやし一匹の獣になったと思え。あの雑貨店に吊るしてある靴下を求めるなら、お前がそれを穿いた時からお前の足には絹の切れ地の皮が出来て、それへお前の暖かい血が通う。エナメルの沓を穿くとすればお前の踵の軟かい肉は漆になってピカピカ光る。可愛いあぐりよ! あそこにあるものはみんなお前という「女」の彫像へ当て嵌めて作られたお前自身の抜け殻だ、お前の原型の部分々々だ。青い抜け殻でも、紫のでも、紅いのでも、あれはお前の体から剥がした皮だ、「お前」を彼処で売って居るのだ、彼処でお前の抜け殻がお前の魂を待って居るのだ、・・・・・・。"続きを読む投稿日:2011.03.27
•金色の死
•母を恋ふる記
は、⭐️⭐️⭐️
その他は、作品としては面白いけど、好みという観点からはちょっと外れる感じ
残念投稿日:2023.05.21
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