常識的文学論
大岡昇平(著)
/講談社文芸文庫
作品情報
歴史小説、推理小説は「文学」に値するのか? ――大衆文化の隆盛とともに、文学の世界においても、大衆小説や中間小説が文壇の主流へと登場しつつあった1960年代初頭。こうした流れを、純文学にとってかわるものとして擁護する批評家の言も含め、歴史小説や推理小説の実体を根底的に批判した、ポレミックな文学論。<『蒼き狼』論争>となった井上靖への批判、深沢七郎の『風流夢譚』批判、松本清張批判など、スリリングな文芸時評16篇。
「昨年中から大衆文学、中間小説の文壇主流進出を認容する論調があった。現象自体は現代の大衆文化進展の一環であり、別に不思議もないが、われわれの伝統や世界文学史に基いた文学の理念をこわしてまでこれを擁護しようとする批評家が一部にあった。(略)私はそれらに対して、文学の原理を争うのではなく、諸君の礼拝している淫祠邪教の実体はこれなのだ、と摘発する方法によった。」(「序」より)
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商品情報
- シリーズ
- 常識的文学論
- 著者
- 大岡昇平
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文芸文庫
- 書籍発売日
- 2010.06.12
- Reader Store発売日
- 2020.09.04
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 320ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (1件のレビュー)
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130526 中央図書館
スタンダールに傾倒していた仏文系知性派の作家・評論家、大岡による連載文芸評論が書籍化されたもの。50年前、日米安保改定の頃だ。1909年生まれの大岡も知命を越えた頃の年齢で…あり、自信が漲った筆である。
当時は、このような純文学方面の権威が、大衆小説や推理小説を「批判」する文芸評論があったということが、21世紀の今日からみると「ずいぶん昔のことだな」と感じさせる。純文学という言葉が既に死語であろうし。
井上靖の『蒼き狼』を、歴史的表現の見てくれの下に、作者のご都合モチーフで史実を改竄する通俗小説であると痛烈に批判し、深沢七郎の『風流夢譚』、松本清張の一連の作品を、大岡自身は楽しく読んでいたのかもしれないが、少なくとも文学とは認めない。しかし、今やこういう文芸評論自体が出版社の商品として成立することは無いだろう。続きを読む投稿日:2013.05.26
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