南の島の魔法の話
安房直子(著)
/講談社文庫
作品情報
電灯が消えてまっくら闇の中におかれた青年が、ろうそくの妖精の声にさそわれて、翻訳中のふしぎな物語の世界に入っていく「南の島の魔法の話」。愛の悲哀を抒情的に展開した、日本児童文学者協会新人賞受賞作「さんしょっ子」。また「鳥」「きつねの窓」など、鋭い洞察力と鮮やかなイメージで人生の真実をえがいた、ファンタジー童話12編を収録。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 南の島の魔法の話
- 著者
- 安房直子
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 1980.06.11
- Reader Store発売日
- 2020.05.29
- ファイルサイズ
- 0.2MB
- ページ数
- 240ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.7 (7件のレビュー)
-
童話は子供達だけのものではないよ、ね。
児童文学というものは、当然のことながら大人が子供達のために書いたモノです。でも、そこには凝ったテクニックや表現というモノを排した、純粋な物語が描かれているような気が私にはします。だから、好きなんです…。ま、時折ひらがなばかりで、少々読みにくいことはありますけどね。
安房直子さんの書いたモノは初めて読みましたが、文字でしか表せない不思議な世界を構築される方ですね。私は、「さんしょっ子」が好きかな。「きつねの夕食会」なんて、「日本昔話」に出てきそうな感じでした。
短篇集ですから、時間があるときに一つずつ読んでみるのも良いでしょう。きっと心が洗われると思いますよ。続きを読む投稿日:2022.09.07
-
本を選んでいるとたまに勘が働く時があります。作者の名前も作品の評価も知らないのに、タイトルの雰囲気だけで、買ってみた本がめちゃくちゃハマるとき。そして読み終えた後「勝ったな」とほくそ笑むとき。
ki…ndleのセール中に見つけた「南の島の魔法の話」の本もその一冊。児童文学には明るくないので、作品名はもちろんのこと安房直子さんの名前すら初見だったのですが、タイトルの雰囲気と、値段の安さにつられて購入しました。
ある日耳のお医者さんの元にやって来た小さな女の子。女の子は耳の中に大変なものが入ってしまったので取ってほしいという。お医者さんが何がはいったのか尋ねると、女の子は「ひみつなの」と答える。
お医者さんが事情を聞くと女の子は「けっしてきいてはいけないひみつを、たったいまきいてしまったんです。だからそれを、大いそぎでとりだしてほしいんです」と話し……
冒頭に収録されている「鳥」の書き出し部分ですが、ひみつが耳の中に入ってしまった、という箇所を読んだ段階で、胸を打ち抜かれたというべきか、傑作の予感を感じたのを覚えています。
女の子が語る不思議な少年とのふれあいと、恐ろしい海女の企み。お医者さんが女の子の耳の中をのぞき込んだときに広がる光景。明らかになるある真実と、伏線の回収。
この年で児童文学の短編に対し、こんな気持ちになるなんて思ってもみませんでした。感動とか泣けるとか、そういうことではなく、こういうイマジネーションと「ひみつが耳のなかに入ってしまった」というメルヘンな表現があったことの衝撃と書くべきか……
この冒頭の短編だけで「勝ったな」だったので、あとの短編は連勝街道ひた走るのみ、だった気がします。
メルヘン的な想像力の広がりと幻想の美しさを特に楽しめたのは、表題作の「南の島と魔法の話」と「夕日の国」の二編。
「南の島と魔法の話」は翻訳家が主人公。『南の島と魔法の話』という物語の翻訳に四苦八苦する小沢さん。締め切りがとっくにすぎてしまった難解な翻訳に挑む小沢さんに聞こえてきたのは、物語のなかに登場するピアリピアリという妖精の声で……
夢の中にいるような楽しくも、慌ただしく過ぎ去っていく物語。結末も理由にあると思うのですが、読み終えてみると、自分も妖精の楽しい悪戯に付き合わされ、気がつけば現実世界に戻ってきたような。そんな楽しく少しだけ寂しくもある、不思議な読後感に満たされます。
「夕日の国」は縄跳びを跳んでいる間だけ、夕日の国にいける子供達の話。
突然に広がるさばくと夕日の光景。寂しげに歩くラクダと、そのラクダがつけている鈴の音。そうしたものが見えてくるような、聞こえてくるような。そして別の世界にいつの間にか吸い込まれていくような、そんな感覚を覚えます。
夕日の光景と物語の展開がおりなすノスタルジックさや、切なさはもちろん、解釈が色々とありそうな結末も、また印象的な短編です。
「さんしょっ子」の切なさも忘れがたい。
さんしょうの木に住む女の子の妖精と、村の子供達の交流。村の子供達が成長していっても、さんしょっ子はある男の子のことに想いを抱いたままで……
流れていく子どもだった時間と、伝えられなかった思い。そして伝わらなかったほのかな恋心を、短いストーリーの中に織り交ぜられていて、胸がキュンとなるような切なさがあります。だからこそ最後のわらべうたの文章が、遠いさんしょっ子の姿を浮かび上がらせて、より心に迫りました。
欲であったり、時間であったり、大人になった自分が読むと、教訓的に読める話もちらほらあるのですが、それを嫌みであったり、あるいは偉そうに感じさせない文章や、ストーリー展開、そして何より想像力がとにかく素敵でした。
そしてその想像力も、分かりやすい異世界への想像力ではなく、現実とどこか地続きに感じられる幻想・想像の世界を目指しているように思いました。そこに何か、想像力が豊かで、しょっちゅう空想の世界に入り浸っていた子供時代を呼び起こすものがあったような気がします。だからこそ、作品全体の空気感が心地よく感じたのかもしれません。
作品のトーンは切なさや怖さのあるものも多いのですが、一方で作品全体に通じる透明感や空気感、イマジネーションが素晴らしい短編集でした。続きを読む投稿日:2020.09.05
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。