人生の役に立つ聖書の名言
佐藤優(著)
/講談社文庫
作品情報
誰もが避けられない挫折や逆境、仕事や人間関係の悩み、人生の岐路――
そんな時は、聖書の言葉にふれてみよう。
そこに救済のための真実が語られている。
聖書の言葉によって、目には見えないが、確実に存在する、
たいせつなものを捉えることができるようになる。
碩学・佐藤優が、100の名言を厳選して案内する。
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商品情報
- シリーズ
- 人生の役に立つ聖書の名言
- 著者
- 佐藤優
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2020.01.15
- Reader Store発売日
- 2020.01.15
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (4件のレビュー)
-
パウロが偉大だったことがよくわかる。
「人間は原罪を持っている。罪から悪が生まれるので、この世界には深い闇が存在している。
それに対し、言葉には光の機能があるので、正しい言葉の使い方を身につけることに…よって、人間は闇から抜け出すことができるようになる。」続きを読む投稿日:2020.03.01
このレビューはネタバレを含みます
2021年7月25日記述
レビューの続きを読む
人生の役に立つ聖書の名言
佐藤優氏による著作。
2020年2月1日発行。
本作品は2017年9月単行本として刊行。
2020年1月講談社文庫として刊行されたものを電子書籍…化したものです。
聖書は最古の古典であるとしてビジネスでも応用できると野口悠紀雄氏は説いていた。
(だから古典はおもしろい、2020)
しかし多くの古典は一般人がいきなり読んでも分かりにくい。
(文化や背景が大きく異なるため)
その中で佐藤優氏の解説によりそれぞれの聖書の格言、名言をどのように捉え、どのように生活に活かしていくべきかが本書を読むことで見えてくる。
闇雲に聖書を開いた所で寝てしまうのがオチだ。
印象に残った所
パウロが理解するキリスト教信仰において、人間に完成は無く、到達することの出来ない目標に向かい、最後まで努力しなければならないのである。
パウロがいなかったならば、イエスの教えは、ユダヤ教の一分派にとどまり、世界的な広がりを持つキリスト教に発展することはなかったであろう。
高校入試や大学入試で「キリスト教の創設者は誰か」という設問がなされた場合
「イエス・キリスト」と解答すれば正解だ。
しかし、神学部の期末試験では、不正解になる。
イエスはあくまでも自分をユダヤ教徒と考えていたからだ。
イエス・キリストを救世主と考える教えをユダヤ教とは別のキリスト教という宗教にしたのは、生前のイエスと会ったことがないパウロだ。
人間は罪から免れない。罪がある場所では必ず悪が生まれる。
従って、人間が自分の力だけで地上に楽園を作り出そうとしても、それはグロテスクなディストピアになってしまう。
過激派組織「イスラム国」も地上に楽園を建設しようとしている。
北朝鮮にしても「イスラム国」にしても、指導部の人達には、原罪の自覚が無い。
そういう人々が独善的に理想的社会を建設しようとすると地上の地獄が生まれるのだ。
目に見えないが、確実に存在する事柄がある。
信仰、希望、愛がその例だ。このような目に見えない事柄を信仰の対象とする所にキリスト教の特徴がある。
我々の人生でも、小さな努力に過ぎないと思っていても、それを続けている内に大きな成果を生み出すことがある。どのような事柄でも変化する。
そのことを忘れてはいけないと、イエスはこのたとえを用いて強調しているのだ。
人間関係でも、弱い立場にいた者が、ある機会に突然、強大な力を身につける事がある。
どんな事柄でも変化するということを忘れてはならない。
人間は原罪を持っている。罪から悪が生まれるので、この世界には深い闇が存在している。それに対し、言葉には光の機能があるので、正しい言葉の使い方を
身につけることによって、人間は闇から抜け出すことができるようになる。
キリスト教は愛の宗教だ。自分自身を愛するのと同じように他人を愛することが基本にあって、初めて行為は意味を持つ。
愛は行動によって示される。頭や心の中で、どれだけ愛について考えていても、それが行動に結びつかないならば、何の意味も持たない。
信仰即行為なのである。
「自分を愛するようにあなたの隣人を愛せよ」
マタイによる福音書22章39節
ここで重要なのは、イエスが「無条件で隣人を愛せ」という類の博愛を説いてはいないことだ。イエスが具体的に「自分を愛するように」と説いている事がポイントだ。キリスト教は自己愛を重視するのである。
裏返して言うならば、自分を愛することができない人は、隣人を愛することもできないのである。
このような自己愛が崩壊している事例の一つにストーカーがある。
ストーカーは、相手を過剰に愛しているように見えるが、実際は相手を自分の思い通りに操縦することが出来ないと、自分が崩壊してしまうと焦っているのだ。
自分のために相手を徹底的に搾取、収奪することしか考えていない。
人間は愚かな存在だ。自分が行っていることがどういう意味を持っているかを理解できないことが頻繁にある。ただし、その後、どこかの時点で「しまった」と気づくことがある。そういうときは、妙なプライドにとらわれずに軌道修正することが重要だ。
私を含め、人間には自分を取り繕おうとする所がある。そうやって外面だけきれいに見せても、心の闇を克服することはできない。
そして、きれいな白く塗った墓のような外面を維持しながら、心の中では闇が広がり、腐敗していく。
イエスは、社会的評価の高い人々に自分の内面を見つめよと繰り返し説いている。
ちなみにヨーロッパでは世俗化が進む過程で、復讐する主体が神から成分法(刑法)に転換した。欧米や、それを範にとった日本の近代法が復讐を禁止している背後には「復讐はわたしのすることである。わたし自身が報復する」というイエスの言葉がある。
聖書の言葉はこのような形で現代文明に埋め込まれているのである。
現在、普遍的な価値観とみなされている国家主権、人権、法の支配などの発想の背後にはキリスト教があるのだ。
キリスト教的には、自分が罪人であるという現実を自覚せずに、他者を裁くような姿勢は悪行である。自分を棚に上げて他者を裁くような人は、主観的に正義の告発者であっても、神の視座からすれば、罪に深くとらわれた人なのである。
(中略)キリスト教徒は何でも食べる。イエス・キリストが、罪は食べ物によって生じるのではなく、「人の中から出てくるもの」すなわち、人が発する言葉によって
生じるという認識を示しているからだ。
自分の言葉を反省することによって、自分に内在する罪を自覚することがとても重要だ。罪の自覚なくして、悔い改めはないからだ。
人間には喜怒哀楽の感情がある。絶対に怒るなというような無理な要請をパウロはしていない。夜まで怒りを持ち越してはいけないと言っているのだ。
夜は悪魔が支配する時間だ。
感情的なメールは、大抵、夜中に書かれたものだ。
夜中に書いたメールは、そのまま送信せずに、朝になってから読み返してみることを勧める。おかしな内容があれば書き改める。
そうするだけで、対人トラブルをかなり避けることができる。
キリスト教から離れて、私達の生活を見ても、欲望にとらわれている人は決して満足することはない。なぜなら、人間の欲望は無限であり、その追及を価値として生きている人は、一生、欲望に振り回されるからだ。
欲望を越えた価値を持つことが、安定した人生を送る秘訣である。
打たれても屈せずに、復讐の権利を自発的に放棄することによって我々は悪を克服することができるのである。
人間は、言説によってではなく、体験によって感化されるのだ。
人の行為によって、神からの報酬が増幅するという発想が根本的に間違っている。
神は正しい者にも正しくない者にも等しく雨を降らせるのである。
誰かが救われるということは、人間の限られた能力では理解不能だ。
それだから、神からの恩恵で救われることを無条件に信じることが求められる。
人間は誰一人例外なく罪を負っているので、正しい人間は一人もいない。
この現実を見つめた上で、神の恩恵によってのみ人間が救われることをイエスは説いている。
信仰によってのみ、人間は救われるのである。
善行を含むあらゆる人間の行為は救済に関係しないのである。
右肩下がりの時代、サラリーパーソンは、いくら一生懸命に働いても昇給や昇進につながらない場合が多い。それであって勤勉さを失わなければ、いつか必ず報われるというのがキリスト教の教えである。
会社や役所や学校でも、自己愛が過剰で「自分は能力がある」と増長している人はちょっとしたきっかけで躓いてしまう。厳しい状況の中でも、きちんと仕事や勉強をこなしていくことができる人は増長しない。
自ら行うべき使命(それは、仕事で自己実現するというようなことだけでなく、家族の生活を保障するという身近な課題でもいい)をしっかりと持っている人は「倒れることがない」のである。
信頼関係が構築されている人との間では「ハトのように素直」という原理に基づいて行動する。これに対して、敵対的な人、こちらを騙そうとするような人に対しては「ヘビのように賢く」という原理で対応する。
そうすることによって人間関係のメリハリがつく。「ハトのように素直」に付き合えるような人間関係を拡大していくことが、ビジネスにおける成功の秘訣だ。
キリスト教の特徴は、聖書を読むことを通じて他者の気持ちになって考えることができる人間になることである。人間は一人で生きていくことはできない。
ある時は他者を助け、別の時には他者に助けられる。
あわれみ深い人はこのような相互扶助の関係を構築することができる。
人間の限界を知り、神を恐れる者が政治に従事すべきである。
人生において、私達も選択を余儀なくされることが何度もある。
その時の選択基準として、客観的に考えて、より難しいと思う選択をすることをイエスは勧めている。「広い門」よりも「狭い門」を選ぶ。
すなわち主体的に苦難を選んだ方が、人間は幸せになれるという逆説を説くのである。
私も特捜検察に逮捕された時に「狭い門」を選んだ。そうしなければ、私が職業作家になる選択肢は消えていたと思う。続きを読む投稿日:2022.09.04
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