貿易国家のジレンマ 日本・アメリカとアジア太平洋秩序の構築
ミレヤ・ソリース(著)
,浦田秀次郎(監訳)
,岡本次郎(訳)
/日本経済新聞出版
作品情報
○安倍政権のもとで国内の反発を抑え、TPP締結に動いた日本、トランプ政権のもとで国内企業・産業保護を掲げ、自由貿易の旗を降ろした米国。通商戦略は、21世紀の国家の命運を左右する最も重要なイシューとなっています。
○通商政策には、一国の経済の繁栄と、国民すべてに便益をもたらすこととの矛盾、協定締結に向けて踏み出す決断と、競争力のない産業の救済・補助、秘密交渉は民主主義に反しないのかという反発など、厳しい国内の葛藤、政策目標の矛盾を克服しなければ成り立たない。他方で、日本が通商交渉でリーダーシップを発揮できるかどうかが、21世紀の世界秩序の行方を左右します。
○日本は、これらの厳しいジレンマをどう乗り越えようとしてきたのか、また、米国はTPP交渉にどう臨み、トランプ政権はどう路線を変えようとしているのか。中国が台頭するなかで、東アジアの行方を大きく左右する日米の通商政策に必要な要素は何か。日本は経済取引のルールや、アジア太平洋諸国の発展のための枠組みづくりをリードできるのか。
○本書はこのような関心から、21世紀の国の姿、東アジアの姿を決める政策の最前線に躍り出た通商戦略を考察するための新たな概念的な枠組みを提示します。貿易国家としての日米両国が直面するジレンマの構図を解き明かし、それらを乗り越える政治的リーダーシップの重要性を浮き彫りにする意欲作です。
○原著は2018年大平正芳記念賞を受賞。学術的にも優れた作品であることが裏づけられています。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (1件のレビュー)
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メキシコ人でハーバードに学び、ブルッキングスに勤める経済研究者が、貿易について述べた本。主にTPPなど貿易協定について述べているが、日本の政治・経済の情勢に詳しく、その貿易協定についても詳細な調査研究…が行われており、説得力がある。日本の政治経済について海外の目から見た貴重な文献だと思う。勉強になった。
「(TPP交渉が円滑に進んだ理由)日本の農業ロビーが持つ影響力の緩やかな、しかし現実的な弱体化」p24
「(オバマ政権)アメリカは、TPP交渉のパートナーとして日本を迎えることにより、国際貿易ルールを改善し、世界で最もダイナミックな経済地域において、熱心な太平洋パワーという立場を固めるキャンペーンに弾みをつけた」p26
「貿易は、最も基本的には、生産特化、効率性・生産性向上、イノベーションの力を生かして経済競争力を強化するものといえる」p29
「貿易政策形成という仕事は臆病者には向かない。困難な選択が求められるからである。望ましい目標の達成は、その他の大切な目標をある程度犠牲にすることを意味する。貿易政策は競合する利益を調整するための多種多様な均衡策から成っている」p33
「先進経済諸国にとって国際ガバナンスの提供は国家の指導力の証である。最新の、あるいはかつてなかった貿易・投資規律を含む「構造設計的」な貿易協定の交渉は、世界政治に大規模なパワーシフトが生じ、多国間貿易レジームが停滞している現在、自由な経済秩序を回復させるのに役立つだろう」p38
「国際貿易は、各国が比較優位を持つ分野の生産に集中し、一つの市場の限界を超えてグローバルな需要に対応することで、資源を最も効果的に利用することを可能にする。国際貿易により企業は規模の経済利益を得るために生産を増加でき、原材料や設備を安く輸入できる一方で、消費者は廉価かつ多様な製品へのアクセスから利益を得ることができる」p39
「保護主義への転換は、消費者、特に所得階層の一番下の消費者に多大な犠牲を強いることになる。貿易はどの国においても貧困層にやさしい傾向がある」p42
「貿易協定は失業率を上昇させていないし、産業を空洞化させてもいないし、所得格差の顕著な拡大や中間層縮小の主要な要因でもない。貿易自由化は、雇用を創出する一方で破壊する」p69
「戦争による破壊効果がなければ、資本主義社会は時間とともにより不平等になる」p81
「貿易はゼロサムゲームではないこと、経済的利益の総計は貿易競争の影響を受ける分野の調整コストを上回ること、貿易は所得格差の主要因ではないこと、貿易協定の有無にかかわらず、かつてない速さで進む技術変化は高度なスキルの重要性を高め続けること、である」p89
「ほとんどの国が資本取引を開放し、対内直接投資に対する防御態勢を放棄した現在、資本は自由に流れている。また、途上国のグローバル経済への統合は実質的に規制の最低水準を低めるため、先進国の政府はますます攻勢を受けることになる」p93
「議員は狭い範囲の支持基盤からの圧力の影響を受けやすいため分散政策を支持する傾向があるが、行政府の支持基盤(官僚も)全国に広がっているため、経済パフォーマンス全体に、より強い関心を持つ」p138
「文化戦争はポピュリズムの強力な推進力になり得る。かつて社会で優勢だった階層は従来の生活様式の喪失に反応し、急速な文化的変化に反対する」p188
「戦後の日本農業の構造的衰退は著しい。GDPに占める農業の割合は1960年から2012年の間に9%から1%に減少し、雇用に占める割合も28%から3%に縮小した」p281
「忍び寄る保護主義と自由化イニシアティブの欠如が貿易量減少の一因となっている。世界経済が低成長の慣性に呑み込まれている現在、経済発展の重要な推進力と国家間のつながりが失われようとしている」p300
「(Dトランプ)多国間主義をはねつける意志、貿易を常に誰かが負けるゼロサムゲームと理解すること、保護主義は繁栄への道筋を提供するとの信念(すべて誤り)」p306続きを読む投稿日:2020.02.18
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