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「一億三千万人のための『論語』教室」高橋源一郎著 2500年前の講義、現代風に再現
2020/3/7付
日本経済新聞 朝刊
中国の思想家、孔子の教えをまとめた「論語」は学校の授業で習うこともあり、日…本人にもなじみ深い。40歳を不惑、50歳を知命と呼ぶのも「論語」に基づくものだ。もっとも、作家の高橋源一郎氏によれば「一筋縄ではいかない本」という。様々な解釈があるし、そもそも孔子が全部を語っていないからだ。
そんな「タカハシさん」が現代語訳に取り組んだ『一億三千万人のための『論語』教室』が売れている。2019年10月末の刊行以来、発行部数は7刷6万部に達している。
13年ごろ、高橋氏がほぼ20年「論語」の翻訳に取り組んできたことを知った担当編集者の尾形龍太郎氏は、まず季刊文芸誌「文芸」での連載を依頼。「『光文社古典新訳文庫』が話題になるなど、古典への関心が高まっていると感じていた」と尾形氏は振り返る。
本にするに当たっては、18年に約60年ぶりに復活した「河出新書」という形を選んだ。「(古典を解説するという)内容が新書に合っている上に(四六判に比べれば)価格も抑えられる」と考えた。500ページ超とかなり大部になったのは「『この一冊で論語が分かる』ということを売りにしたかった」ためだ。
孔子を「センセイ」と呼ぶなど、大胆な翻訳も人気の理由という。孔子が政治家の子産を「君子の道、四あり」などと評した一節。「政治家が持つべき四つのモラルをちゃんと持っています」と評価し、それを「威張らない」「気をゆるめない」「人びとにとってなにが一番大切かを第一に考えた」「人びとを使うにあたって、決して無理はさせなかった」と訳す。さらに「(さすが、センセイ! いいこというじゃん)」と感想を加える。
2500年前の講義風景を現代社会に合わせてよみがえらせた点が、読み手の心をつかんでいるようだ。
(編集委員 中野稔)
(河出新書・1200円)
▼訓読部分は著者が最も参考にしたという宮崎市定『現代語訳 論語』(岩波現代文庫)が底本。続きを読む投稿日:2020.05.28
このレビューはネタバレを含みます
今まで中途半端にしか読んだことなかった論語。かなりフランクな現代語訳がついたバージョン。原文というか、和訳?分に関しては相変わらずぱっと読んで中身がすっと入ってこないが、現代語訳はかなりわかりやすくな…っている一方、文章量がだいぶ増えているので、実際にどうかかれていたのか果たしてその現代語訳がまっとうなのか判断ができない。あと所々論語の言葉を借りて現代政治を批判しているのが気になる。。。
レビューの続きを読む
中国哲学に関し全体的に言えるかもしれないが、なんとなく抽象的に書き、読み手がそれっぽく何かに当てはめて勝手に感じ入ってしまっているような傾向を感じる。当たり前のことを当たり前に言っているだけのようなところもあり、現代に通じるということは、人間は進化していないのか・・・とも思ってしまう。
P.35(19)
・権力は怖いもの
・法律で罰すると、人は抜け道を探し、抜け道が見つかるとまた法律をつくる
・まずは誰でも納得できる理想を置け
・強制や法律でしばるのではなく、各々が持つ美や正義を大切に思う心「徳」に訴えれば、民衆は狡賢くやろうとしない
P.58(44)
・礼とは、社会生活を送っていく場合、それを円滑にする儀式
P.69(56)
・狩猟に行く時、獣の皮をとることを目的とするが、それにこだわってはいけない
・なにかをするとは、その中心になっているなにか、だけではない「全体」が大切
・結果ではなく、なにかをすることそのものに私たちを成長させてくれるものがある
・これが「古の道」が私たちに教えてくれること
P.102(88)
・言葉でいくらいっても、実際に何もやらないと恥ずかしい
・学問は現実を変えてゆくためのもの
・この世に役立つことをしないのであれば、万巻の書を読んでも虚しい
P.156(146)
・中庸であることはむずかしい
・極端にはしるのは、深く考えずにできるので簡単
・中庸であることは、歴史の真ん中、時代が移り変わっても、変わることのない本質的な正義を中庸と呼ぶ
P.184(180)
・人間を超えた存在を思える聖人、人間として最高の徳を備えた仁者にはとてもたどりつけない
・究極の理想、目指すべき灯台があってこそ、学ぼうと思う気持ちも湧き、教えがいがある
・大切なのは、聖人や仁者「であること」「になること」ではなく、「にひたむきに向かうこと」ではないか
P.198(193)
・政治は、民衆を熱狂させ、支持させることはできる
・できるのはそれだけ
・民衆にほんとうはどのようなものなのか、なにが起こっているのか、本質はなにかを理解させることはできない
P.251(戦史/トゥキュディデス:ペロポネソス戦争最初の戦いで亡くなったアテナイ人のためのペリクレスという人の葬送演説抜粋)
「われらの政体は他国の制度を追従するものではない。ひとの理想を追うのではなく、ひとをしてわが範にならわしめるものである。その名は、少数者の独占を排し多数者の公平を守ることを旨とし、民主政治と呼ばれる。わが国においては、個人間に紛争が生ずれば、法律の定めによってすべての人に平等な発言がみとめられる。だが一個人が才能の秀でていることが世にわかれば、輪番制に立つ平等を排し世人のみとめるその人の能力に応じて、公の高い地位を授けられる。またたとえ貧窮に身を起こそうとも、国に益をなす力をもつならば、貧しさゆえに道を閉ざされることはない。われらはあくまでも自由に公につくす道をもち、また日々にたがいに猜疑の目を恐れることなく自由な生活を享受している。よし隣人がおのれの楽しみを求めても、これを起こったり、あるいは実害なしとはいえ不快を催すような冷視を浴びせることはない。私の生活においてわれらは互いに掣肘を加えることはしない。だがこと公に関するときは、法を犯す振る舞いを深く恥じ恐る。時の政治をあずかるものに従い、法を敬い、とくに、侵されたものを救う掟と、万人に廉恥の心を呼び覚ます不文の掟とは、厚く尊ぶことを忘れない。
また、戦いの訓練に目を移せば、われらは次の点において敵側よりもすぐれている。まず、われらはなんびとにたいしても都を開放し、けっして異国の人々を追い払ったことはなく、学問であれ見物であれ、知識を人に拒んだためしはない。敵に見られては損をする、という考えをわれわれはもっていないのだ。なぜかと言えば、われらが力と頼むのは、戦いの仕掛けや虚構ではなく、事を成さんとするわれら自身の敢然たる意欲をおいてほかにはないからである。
子弟のky高行くにおいても、彼我のへだたりは大きい。かれらは幼くして厳格な君r年をはじめて、勇気の涵養につとめるが、われらは自由の気風に育ちながら、彼我対等の陣をかまえて危険にたじろぐことはない。
ともあれ、過酷な訓練ではなく自由の気風により、規律の強要によらず勇武の気質によって、われらは生命を賭する危険をも肯んずるとすれば、はやここにわれらの利点がある。なぜなら、最後の苦悶に耐えるために幼少より苦悶に慣れ親しむ必要がない。また死地に陥るとも、つねに克己の苦悩を負うてきた敵勢にたいしていささかのひるみも見せぬ。これに思いをいたすとき、人はわが国に驚嘆の念を禁じえないだろう。だがわれらの誇りはこれにとどまるものではない。
われらは質朴のうちに美を愛し、柔弱に堕することなく知を愛する。われらは富を行動の礎とするが、いたずらに富を誇らない。また身の貧しさをみとめることを恥とはしないが、貧困を克服する努力を怠るのを深く恥じる。そしておのれの家計同様に国の計にいもよく心をもちい、おのれの生業に熟達をはげむかたわら、国政のすすむべき道に充分な判断をもつように心得る。ただわれらのみは、公私両城の活動に関与せぬものを閑を楽しむ人とは言わず、ただ無益な人間と見なす。そしてわれら市民自身、決議を求められれば判断を下しうることはもちろん、提議された問題を正しく理解することができる。理をわけた議論を行動の妨げとは考えず、行動に移るまえにことをわけて理解していないときこそかえって失敗を招く、と考えているからだ。
この点についてもわれらの態度は他者の慣習から隔絶している。われらは打たんとする手を理詰めに考え抜いて行動に移るとき、もっとも果敢に行動できる。しかるにわれら以外の人間は無知なるときに勇を鼓するが、理詰めにあうと勇気を失う。だが一名を賭した真の勇者とはほかならず、真の恐れを知り真の喜びを知るゆえに、その理を立てていかなる危険をもかえりみないものの称とすべきではないだろうか。
まとめて言えば、われらの国全体はギリシアが追うべき理想の顕現でありわれら一人一人の市民は、人生の広い諸活動に通暁し、自由人の品位を持し、おのれの知性の円熟を期することができると思う。そしてこれがたんなるこの場の高言ではなく、事実をふまえた真実である証拠は、かくのごとき人間の力によってわれらが築いた国の力が遺憾なく示している。なぜならば、列強の中でただわれらの国のみが試練に直面して名声を凌ぐ成果をかちえ、ただわれらの国にたいしてのみは敗退した敵すらも畏怖をつよくして恨みを残さず、従う属国も盟主の徳をみとめて非をならさない。かくも偉大な証拠をもってわが国力を衆目に明らかにしたわれらは、今日の世界のみならず、遠き後の世にいたるまで人々の賞嘆のまととなるだろう。
P.437(429)
・生まれつき「道」、人間としての道理、正しい人間のあり方を知っているものがおり、それは最良の人物である
・深く学ぶことによって「道」を理解する者もおり、なかなか善き人と言える
・現実の中で生きることを通じて「道」を学ぶ者もおり、これもまた善き人といえる
・どんなに追い詰められても学ぼうとする意思が皆無の者は、人間としてはたして資格があるかどうか。
P.486(467)
・世間や社会は、罪や欲望がうごめく場所
・そこから離れていれば、汚染されずにすむ
・だがただ隠者となることは浅はかな考えととらえる
・人として生きる者の義務は、遠くの誰かを無視できないところが生まれたものではないかと思う
・実現しないかもしれないが、誰かが理想を追求しなくてはならない続きを読む投稿日:2023.11.23
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