低山手帖
大内征(著)
/日東書院本社
作品情報
山は、人の生活にも密接なつながりがあるもの。 たくさんのことを教えてくれる。 時には厳しく、時には優しく。山を歩き、自然と触れ合うことは人生を豊かにしてくれる。そんな気持ちを忘れないように書き留めた1冊です。
「ここがあの歴史小説に出てきた山か! 」そうつぶやいてから、超個人的な知的好奇心を満たす山旅を始めて早10年が過ぎました。 以来、「低山トラベラー」と名乗り、歴史や文化を辿る山歩きの面白さを分かち合いたくて、メディア発信などを生なり業わいにしています。
そんなわけで、いつしか高峰の尾根から眺めた姿の良い低山や営みの濃い里山の方に心を奪われ、そっちに足を運ぶ機会が増えました。そんな低山里山で発見したのが、歴史小説や神話・民話の舞台となった山や、絵画のモデル地に映画の撮影地など。
日常生活の中で触れた文化的な情報を、非日常の山の中で発見する意外性たるや。いわば知識の“点”が、山に行くほど“線”になっていく喜びが、そこにはあると思うのです。そうしてあちこちの低山里山を訪ねながら書き留めたメモが、こうして『低山手帖』になりました。
ぼくの個人的な旅の手記のようなものですが、この中に高山のピークを目指すだけでは味わえない、低山歩きを楽しむヒントを感じてもらえたら嬉しいです。
低山トラベラー 大内 征~はじめにより抜粋~
【CONTENS】
序章 ウォーミングアップ
第1章 大地の息吹に触れる春の山
第2章 新緑と夏山の稜線で
第3章 自然と人の営みに触れる秋の道
第4章 陽だまりの冬トレイル
◆本書で紹介した山
01 宮城県 北山羽黒神社
02 山形県 宝珠山立石寺
03 山形県 月山
04 宮城県 金華山・黄金山神社
05 福島県 信夫山
06 福島県 安達太良山
07 群馬県 戸神山
08 東京都 御岳山(月の御嶽)
09 東京都 奥の院(男具那社)
10 東京都 日の出山
11 東京都 大岳山
12 東京都 神戸岩(檜原村)
13 東京都 金毘羅山
14 東京都 高尾山
15 神奈川県 大山
16 埼玉県 雲取山
17 山梨県 金峰山(花の御嶽)
18 山梨県 弥三郎岳
19 山梨県 大菩薩嶺
20 山梨県 栖雲寺
21 山梨県 岩殿山
22 山梨県 石割山
23 山梨県 四尾連湖
24 山梨県 蛾ヶ岳
25 千葉県 鹿野山
26 静岡県 金冠山
27 静岡県 達磨山
28 静岡県 下田富士
28 静岡県 大室山
30 静岡県 烏帽子山
31 静岡県 城山
32 長野県 鷲ヶ峰
33 長野県 霧ヶ峰
34 長野県 戸隠山
35 長野県 尼巌山
36 長野県 御嶽山(雪の御嶽)
37 長野県 信濃比叡 廣拯院
38 愛知県 天下峯
39 岐阜県 金糞岳
40 滋賀県 伊吹山
41 滋賀県 竹生島
42 京都府 比叡山
43 奈良県 室生寺
44 奈良県 鎧岳
45 奈良県 屏風岩
46 奈良県 高見山
47 奈良県/三重県 大台ヶ原 (日出ヶ岳)
48 福岡県 求菩提山
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商品情報
- シリーズ
- 低山手帖
- 著者
- 大内征
- ジャンル
- スポーツ・アウトドア - 登山
- 出版社
- 日東書院本社
- 書籍発売日
- 2019.04.23
- Reader Store発売日
- 2019.08.23
- ファイルサイズ
- 6.4MB
- ページ数
- 192ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (3件のレビュー)
-
1485
日本文化を学びたくて華道やってて、池坊の教授陣の趣味がほぼ全員山歩きなんだけど、山には日本文化の真髄があるのではないかと思った。神道は自然崇拝だし。だから山系の本を読みまくりたい。
大内…征
低山トラベラー/山旅文筆家。大人の学び場・自由大学では「東京・日帰り登山ライフ」を主宰し、東京ローカルの面白さを低山歩きを通して伝えている。手書き地図推進委員会では自治体や企業とタッグを組み、目に見えない地元のウワサやエピソード、そこの暮らす個人の思い出を可視化する手書き地図の魅力を講演やワークショップで伝道するなど、トークイベント登壇や教養講座の講師、地域活性の領域で幅広く活動中
国土の7割が山地だというこの国に暮らすぼくらハイカーにとって、低山は日本を楽しむ最高のフィールドだと思うのだ。特に、世界有数の大都会・東京は、その西側の3分の2が丘陵と山地になっている。発達した公共交通網のおかげもあって、日本屈指の登山フィールドだとさえ思っている。
自然で遊ぶ〝楽しさ〟と知的なことを追い求める〝面白さ〟とが一対となって味わえる登山は、たとえば地理や歴史が好きな人にとってワクワクしない理由はない。このことに気づいたとき、とてつもなく大きな雷が脳天に落ちてきたような衝撃が走った。
そんなわけで、ぼくは「低山歩き×歴史探訪」といったテーマで日本各地の低山を歩くようになり、もう10年以上も経つ。低い山にはズバリ〝営みの濃さ〟がある。高い山にだってもちろん歴史はあるけれど、低い山には暮らしの形跡だったり、合戦や信仰の余韻のようなものが高山よりも色濃く残っていて、その点で断然面白いのだ。
伊豆を愛してやまなかった川端康成がこんな表現をしている。 伊豆は詩の国であると、世の人はいう。 伊豆は日本歴史の縮図であると、或る歴史家はいう。 伊豆は南国の模型であると、そこで私はつけ加えていう。 たしかに伊豆は風光明媚で、どこか異国のような雰囲気が漂う。 もともと伊豆は南の国からやってきた異国情緒溢れる〝島〟だった。ざっと1000万年前~60万年前のこと、本州から遠く離れた海の底で噴火を繰り返す火山で、自ら吐き出した溶岩で陸地をつくり続けては、少しずつすこしずつ北上してきた。やがてその火山島は本州に衝突して日本の一部になる……これが伊豆半島誕生のいきさつである。
自然の中を歩くという行為、絶えず変化する風景の中に身を置くという行為には、もしかしたら思考の垢を洗い落としてくれる効果もあるのかと期待する。風の力や水の流れで穢れを祓ってくれる神さまを祓戸大神と言うけれど、まさにそういうことなのだろう。
歴史や文化を辿る山歩きをすることによって、故郷のことを学ぶ機会になる──登山が、地域を学ぶうえで最良の手段になるということを、ぼくはいまあらためて感じている。それにしても天下は広い。世の中まだまだ知らないことだらけだ。だから登山を通して、もっともっと知りたいと思う。
御岳山の隣に聳える日の出山は「夜明けのトレイル」を楽しみたい。宿坊を起点にするとかなり楽にチャレンジすることができる。まだ未明の中で宿坊を発ち、日の出山までヘッデンの明かりを頼りに小1時間、真っ暗闇の山道を歩くのだ。世界有数の大都会・東京でこんな探検時間を過ごせるなんてワクワクする。山頂に到着したら防寒具にくるまって、のんびりそのときを待つ。こういうとき、魔法瓶に入れてきた白湯があれば身体が温まり最高だ。
ぼくが思い描く誕生日登山の恩恵は、まさにこういうイメージ。特になんの信仰があるわけではないけれど、思いを持って山に入り、自然の中でなにかを感じとって町に戻って来ると、新しい自分に生まれ変わっているような気分になれる。身も心も軽やかになるのだ。だから山には、いつも受け止めてくれてありがとうと、感謝の気持ちを持っている。
人を見た目で判断することが失礼なように、山だって見た目で判断すると痛い目にあうと思うのだ。 低山の活動をしていると、高い山は危険だけど低い山なら気軽で安全ですもんねーとよく言われる。登山をする人かそうでないかによっても違うけれど、実際はそんなことはない。標高が低ければ初心者でも楽に登れて危険が少ない、という先入観は、意外と根強くあるようだ。
雪月花とは、日本の美の極みや景物などを、自然の美しさに準えて愛でるときに用いる言葉で、たとえば「雪の天橋立」、「月の松島」、「花の宮島」といったように表現する。それが「御嶽」と呼ばれる神坐す山嶽にもあると知って、ぼくは俄然興味がわいた。
ぼくも登山にのめり込む前は、旅先でそういうことをたくさんやっていました。個人的に最も思い出深い旅先トレッキングは、世界史を勉強していたときに知ったスペインはバルセロナ郊外のモンセラートを訪ねたこと。山梨の瑞牆山に似た無数の奇岩群が特徴の岩山で、その中につくられた大聖堂と強運の黒いマリア像「ラ・モレネータ」に会いに行ったのです。FCバルセロナのユニフォームを着て登ったのも、今となってはよい思い出。 健康・景観・見聞という3つのKを追い求めて、山に遊ぶ楽しさと旅に学ぶ面白さたるや。登山をしながら教養も身につくという健康的で知的な「3Kトレッキング」は、今後の登山の在り方のヒントになっていく気がしています(もちろん、基本装備や安全対策は前提ですが)。続きを読む投稿日:2024.02.27
個々の山の情報を載せたガイドブックではありません。低山登山にフォーカスしたエッセイという印象。山の奥深さを感じられる素晴らしい一冊。
投稿日:2023.02.01
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