新装完全版 大国政治の悲劇
ジョン・J・ミアシャイマー(著)
,奥山真司(訳者)
/五月書房新社
作品情報
今、最も注目すべき国際政治学者ミアシャイマーの主著。
原著オリジナル版に書き下ろし「日本語版に寄せて」を加え、
2014年改訂版ヴァージョンの最終章「中国は平和的に台頭できるか?」も収載。
訳者奥山真司による解説も充実。
米中の衝突を確実視し、世界各国の外交戦略を揺るがす、“攻撃的現実主義(オフェンシヴ・リアリズム)”とは!?
過去200年間の世界史的事実の検証から、きわめて明晰、冷徹、論理的に国際システムの構造を分析、北東アジアの危機と日本の運命も的確に予測する。
ミアシャイマーによる北東アジアの将来の見通しはあまり華やかなものではなく、むしろ彼自身が認めているように「悲劇的」なのだ。そしてこの「悲劇」は、モーゲンソーの言うような「人間の愚かさ」にあるのではなく、国際社会(国際システム)の構造による、人間の意志ではコントロールできないところで引き起こされるものだ。......本書のタイトルが『大国政治の“悲劇”』である理由は、まさにここにある。(「訳者解説」より)
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商品情報
- シリーズ
- 新装完全版 大国政治の悲劇
- 著者
- ジョン・J・ミアシャイマー, 奥山真司
- 出版社
- 五月書房新社
- 書籍発売日
- 2019.04.08
- Reader Store発売日
- 2019.03.23
- ファイルサイズ
- 8.2MB
- ページ数
- 672ページ
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この作品のレビュー
平均 4.5 (4件のレビュー)
-
3
執筆にとりかかったのは1991年末
ソ連が崩壊した直後
終えたのは、ほぼ10年後だった
冷戦の終わりは、大国間戦争が存在せず、バランス・オブ・パワーのような概念が意味を失う新しい時代の始まりだと…広く信じられていたから
リアリズムは世界の動きについて、今後も重要な示唆を与え続けるものであることを論じた。
ただし私は、本書の大部分を、ハンス・モーゲンソーやケネス・ウォルツのような著名なリアリストたちの議論とは大きく異る、独自の国際政治の理論を提唱することに費やした。
4
アメリカがアフガニスタンだけでなく、イラクにおいて負け戦にはまってしまったことが明らかになって
アメリカの「テロとの戦争」に終わりが見えないことが段々と明らかになってきた。
アメリカが
25年前の冷戦終了から、6つの
戦争を戦っている
1 イラク 1991年
2 ボスニアをめぐるセルビアとの戦い 1995年
3 コソボをめぐるセルビアとの戦い 1999年
4 アフガニスタン 2001年~現在
5 イラク 2003年~
6 リビア 2011年
米軍は1989年から、3分の2の期間は戦争をしている。
これらの戦争はすべて小国に対して行われたものであった。
ビュー研究所の意識調査によれば
39カ国中の23カ国の過半数や多数派の人々が、中国は超大国として、すでにアメリカを追い抜いた、もしくは最終的に追い抜くだろうと答えている
アメリカでも 47%の人々が
中国がナンバーワンになりつつある、と答えており
同じく、47%がその反対の回答をしている。
5
中国が台頭を続ければ、アメリカが西半球で行ったように、アジアを支配しようとするだろう。
地域覇権国家になることが生き残りの確立を最大化するうえで最適な方法だからだ
6
本書は、初版からほとんど何も書き換えていない
自分の理論であるオフェンシヴ・リアリズムについての考えを変えていない
中国の台頭は平和的なものだろうか?
私の答えは「ノー」である。
19
20世紀は、国際的に、暴力の時代であった。
第1次世界対戦1914-1918 約900万人がヨーロッパの洗浄で死んだ
第2次世界対戦1939-1945 約5000万人が死んだ
その半分以上は、一般市民であった。
第2次世界対戦が終わったとたん、全世界が冷戦に飲み込まれた。
21
私が「攻撃的現実主義 Offensive Realism」と名付けた理論は
本質的には
現実主義 Realism と呼ばれるものである。
E・H・カー
ハンス・モーゲンソー
ケネス・ウォルツ
などのリアリストの思想家たちの伝統に沿ったものだ。
大国は、セカイ権力の分け前を常に最大化しようと行動する
中でも特に強力な大国を含む多極システムでは、戦争の起こる傾向が強まる
31
フランシス・フクヤマの言葉を借りれば
冷戦の集結は「歴史の終わり」をもたらした、ということになる。
アメリカは
ソ連の驚異が消滅した後でも、ヨーロッパに10万人、北東アジアにもほぼ同じくらいの規模の軍隊を引き続き維持している。
もし米軍が撤退すれば、大国の間で危険な高層が起こるだろうと見越しているからだ。
32
台湾をめぐるアメリカと中国の衝突の可能性もなくなったとは言い切れない。
35
多極システム multipolar systems の場合には
二極システム bipolar systems の場合よりも戦争が起こりやすい
覇権国となる可能性を持つ強力な国家、潜在覇権国家 potential hegemons を一つだけ含む「多極システム」こそが、実は一番危険な国際システムである
38
社会科学の理論は「現実の世界」で怒っていることとは関係がなく
ボケた学者たちの暇な推測だ、と思われることが多い
45
リベラリズム 対 リアリズム
20世紀に書かれた最も影響力の大きいリアリストの3つの代表作
1 E・h・カー 『危機の20年 1919-1939』1939
2 ハンス・モーゲンソー 『国際政治』1948
3 ケネス・ウォルツ 『国際政治の理論』1979
46
カーとウォルツは、経済による相互依存関係が平和実現の可能性を高めるというリベラリズムの主張を批判している。
カーとモーゲンソーは、リベラリズムが国際政治に関して大災害を引き起こす可能性のあるユートピア的な視点を持っていることをくり返し批判している
ウォルツは
多極システムが、二極システムよりも安定しているというモーゲンソーの意見に対して意義を唱え
モーゲンソーが
「国家がパワーを求めるのは、国家にはそもそもパワーを求める欲望が本質的に備わっているからだ」と論じているのに対し
ウォルツは
『国家は国際システムの構造による働きのために、自国の存在の確立を上げていこうとしてパワーを求める」と論じている。
リベラリズムと、リアリストの違い続きを読む投稿日:2022.09.11
国際関係のアナーキー性に着目し国家間の競争に焦点を当てて分析する「リアリズム」の立場に立つ本書。著者は、自説を「オフェンシヴ・リアリズム」と称し、大国がパワーを求めることを前提にその理論を展開する。そ…の理論では国家がパワーを求めるのは生来備わった性質ではなく、アナーキーな国際システムによる構造的なものだとする。そのシステムの下で大国の目標は自国の生存を脅かす脅威を取り除いた地域覇権国になることであり、近代以降にこの目標を唯一達成した国はアメリカ合衆国だけであるとする。
本書の一番の読みどころは、最終章の中国の台頭に関する分析だろう。それまでに近代以降の欧州、米国、日本に対して用いてきた分析枠組みを中国に対して適用し、米中間の対立を鮮やかに分析している。ただ、その結果、「オフェンシヴ・リアリズム」の理論に従えば、米中の競争・衝突は避けなれないという身も蓋もない結論が導かれてしまう。
最終章手前までの著者の議論は、歴史の事実に強引に自説を当てはめているような印象もあったが、中国の台頭に対する米国や周辺国の反応が著者の理論に沿った動きを示していたことから、一気に説明力が高いもののように感じた。私自身は米中対立はそうは言ってどこかでエスカレーションが止まり手打ちになる、あるいは世界のために手を取り合うことができるという考えだったが、本書を読むことで悲観的な見方に傾きつつある。もう少し別の視点の著作を読むなどして自身の考えを整理していきたい。続きを読む投稿日:2023.12.11
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