竜のグリオールに絵を描いた男
ルーシャス・シェパード(著)
,内田昌之(訳)
/竹書房文庫
作品情報
あまりにも巨大な竜グリオール
彼の上には川が流れ村があり、その体内では四季が巡る
“舞台”は動かぬ巨竜
唯一無二のシリーズ短篇集が遂に日本初刊行
初邦訳1篇、初収録2篇を含む全4篇を収録
全長1マイルにもおよぶ、巨大な竜グリオール。
数千年前に魔法使いとの戦いに敗れた彼はもはや動けず、
体は草木と土におおわれ川が流れ、その上には村ができている。
しかし、周囲に住むひとびとは彼の強大な思念に操られ、
決して逃れることはできない――。
奇想天外な方法で竜を殺そうとする男の生涯を描いた表題作、
グリオールの体内に囚われた女が見る異形の世界「鱗狩人の美しき娘」、
巨竜が産み落とした宝石を巡る法廷ミステリ「始祖の石」、
初邦訳の竜の女と粗野な男の異類婚姻譚「嘘つきの館」。
ローカス賞を受賞したほか、数々の賞にノミネートされた、異なる魅力を持つ4篇を収録。
動かぬ巨竜を“舞台"にした傑作ファンタジーシリーズ、日本初の短篇集。
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商品情報
- シリーズ
- 竜のグリオールに絵を描いた男
- 著者
- ルーシャス・シェパード, 内田昌之
- 出版社
- 竹書房
- 掲載誌・レーベル
- 竹書房文庫
- 書籍発売日
- 2018.08.30
- Reader Store発売日
- 2018.08.30
- ファイルサイズ
- 2.5MB
- ページ数
- 400ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (15件のレビュー)
-
【感想】
竜という生物は多くの物語において、強大な力を持つ「魔物」として君臨し、人間と対峙してきた。しかし、本書に出てくる竜の「グリオール」はもはや生き物のレベルではない。「神」だ。
グリオールは魔術…による一騎打ちで何千年も前に身動きを止められた竜である。高さは750フィート(230メートル)、全長は6000フィート(1.8キロメートル)もあり、彼の体の上には森林といくつもの村ができている。グリオールの身体が作る生態系は複雑怪奇であり、都市をまるごと破壊できるほどたくさんの寄生生物が生息している。グリオールは封印されたものの実際には死んでおらず、心臓はまだ脈を打ち、絶え間なく霊気を出し続けている。その霊気は人間の精神を感応させ、周辺の住民を洗脳・支配し、きわめて微妙で目立たない影響をおよぼすことも、きわめて入り組んだ出来事をあやつることもできる。まさに「神」に近い不滅の存在、それがグリオールという竜なのだ。
グリオールはもはや自然そのものであるため、魔法や武器で倒すことは不可能である。そこで、グリオールの身体に絵を描きながら、絵の具に含まれている毒で4,50年ほどかけてジワジワと殺していく、という壮大なプロジェクトが動き出した。これが本書の第一篇「竜のグリオールに絵を描いた男」のあらすじだ。
ただ、本書の読みどころはそうした「人間vsグリオール」の戦いにあるのではなく、むしろ、人間自身の営みにある。全長2キロにおよぶ竜は、その身に複雑な生態系が出来上がるほど自然と一体化してしまっている。そのため、竜の鱗や体表をはぎ取って暮らす人々や、グリオール周辺の自然に根差した集落、絵描きプロジェクトのために作られた村など、全てがグリオールを中心に息づいている。そうした「竜と暮らす人々の日常」の細かい描写には目を見張るものがあり、竜というフィクションの上に人間達のリアルな生活が巧みに投影されている。
そしてもう一つの読みどころは、グリオールに精神感応された人間達の描写である。本書において、グリオールの支配から逃れられる者などおらず、誰もが彼の作る幻影を見る。グリオールの絶対的な存在の前では、人間の意志、倫理、道徳といったものは簡単に消え去るため、人々は怯え、無力感を覚える。逆に、その強大な力を利用したカルト宗教や原始共同体が出来る。
本書の核となるのはグリオールだが、根底に通ずるのは「人間の矮小さ」だ。それは現代小説であれば太陽や自然、神などの巨大な存在に対して抱く感情であり、フィクションでありながらどこか近しさを覚える部分もある。だが、本作品はそのモチーフを「竜」に求めることで、より神秘的で幻想的な世界を描き出すことに成功しているといえるだろう。
壮大でありどこか儚げな世界観。それがグリオールの存在する物語だ。
――グリオールの意味やシリーズ全体、個々の物語の内容について議論するのは別の場に譲ろう。ただ、自由と支配、意志と強制、環境と人間、社会と個人、行為と責任という、我々の存在の根源に関わる問題を、生々しいイマージュとして提示し、ここまで切実に身近に感じさせる小説は滅多にあるものではない。グリオールという存在を設定することでそれが可能になっていることは言うまでもない。ファンタジィとは本来このように作用する。そしてシェパードの作品のどれにも通底する性格でもある。どの小説にあっても、超自然的存在やシチュエーションは、あまりに大きすぎるので直視するのを普段は避けている問題を、あらがいようもなく、突き付けてくる。無理強いするのではない。夢中になって読んでいると、ふとあるとき、目の前に置かれていて、「嘘つきの館」のホタのごとく、そこから眼を離すことができなくなっている。問題から眼を逸らすことをできないようにしてしまうのが、シェパード作品の魔法なのだ。続きを読む投稿日:2024.01.10
ファンタジー。中・短編集。
『ジャガー・ハンター』を読んだ時の印象と同じく、文学的。
文学的な内面描写とファンタジーとの相性が良いかは疑問だが、特徴的な作風であることは確か。
冒険小説的な要素の多い「…鱗狩人の美しき娘」と、サスペンス調の「始祖の石」が好き。他2作も十分満足の出来。
この作品に限らず、竹書房文庫の本は装丁がとても良い。
美しいイラスト。肌触りも好み。続きを読む投稿日:2023.01.05
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