安心したがる人々
曽野綾子(著)
/シティブックス
作品情報
「安心してはいけない」「世の中はもっと不安になる」「安心に暮らせる生活などない」。不安や悲惨さの中にこそ、希望や安心が残されている。学生時代からキリスト教者として生きてきた著者は、作家として社会を見つめる多くの問題作を生み出している。また社会的責任や発言力の大きい団体の代表などの役職も務めた。様々な立場から、欧米はいうに及ばず東南アジア、東、アフリカ、中南米など多くの問題を抱える数多く国々を訪問をしてきたなかで、否応なく「日本とは? 日本人とは?」という問題に直面する。このエッセイには私たちが見過ごし避けてきたものの本質が見えてくる。昭和ひとケタ女性の行動力と発言力が、次の時代を担う若者たちを刺激する!
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この作品のレビュー
平均 3.7 (7件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
曽野綾子さん、辛口のエッセイです。「安心したがる人々」、2010.9発行。印象に残ったのは:①今の日本人は恐ろしく幼児化している。与えることは一切考えず「弱者にやさしい世界」を要求する。携帯・TV・パソコンなど一切なしの汗を流す共同生活を1年送らせればいい ②田母神空幕長事案は、内容はともあれ、時期が悪い。辞めて言うか、辞めるまで待てばよかった。退職金を投げうってでも言ったなら拍手がおこったろうに ③航空業界、儲けのためには東大法学部を一掃。彼らは儲かることは考えないし、法律は学んでも人間を見ない ④老年でも人間を保つ基本は、立ち上がり歩くこと。熱があろうが、体が痛かろうが、毎日立って歩くこと。
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曽野綾子「安心したがる人々」、2010.9発行、再読。①プロのスポーツは、決して健康にいいとは言えないほど体を酷使する ②ニート、フリーター、引きこもりなどと言われる人たちは、「お坊ちゃま」「お嬢ちゃま」の境遇にいる人たちだ ③今、日本の町角には乞食一人いない。道路には穴もなく、故障者もない。電気と水道は常時ある。貧しい国の人たちから見たら、ずっとこの世の天国の生活。投稿日:2020.11.21
曽野綾子氏による、雑誌に連載されたエッセイ集。いつも著者の視点と、皮肉が込められた絶妙な文章に感銘を受けるが、今回は今まで以上に印象深い作品が多かった。表現が絶妙であり、社会への批判、提言は鋭い。印象…的な表現を記す。
「誰もが苦しみに耐えて、希望に到達する。努力に耐え、失敗に耐え、屈辱に耐えてこそ、目標に到達できるのだ、と教えられた。誰も苦しみになど耐えたくない。順調に日々を送りたい。しかし人生というものは、決してそうはいかないものなのだ」
「年老いてぼけた自分の父母を、何十年も介護し続け、ほとんど自分の人生を犠牲にしながら、誰からも注目されず、もちろんメダルももらわなかった人の方が、私はずっと偉人だと思うのである」
「霞ヶ関のエリートたちには、大きな特徴がある。それは禁止と拒否の上手なことだ。しかし国際的に航空産業の接客の部分では、「できることは何でも致します」という態度が必要だ。危険を伴わない規則なら破れる才能が要るのである。一つの方法は、航空業界から、東大法学部卒を一掃することである。これは意外に効くだろう。彼らはどうしたら儲かるかということは決して考えない。法律は学んでも人間を見ることはしないからだ。その姿勢を、今変える時にきている」
「私は何年も若い人と一緒に、アフリカなどの厳しい土地に旅行したが、昼間バスの中にいる間中眠っていることは許さなかった。職場は彼らに出張を許し、その旅費は私が勤めていた財団が出している。その犠牲に対しても、彼らは目覚めていて、常に知識を吸収する態勢にいなければならないのだ。それをしないなら、彼らは時間と金のドロボーである。昼間目覚めて学べる状況を作るためには、遊びの夜更かしも深酒もいけない。夜は一定の時になったら必ず休んで、昼に備える義務があるのである」
「料理学校など行かなくても「おいしいですねえ」と褒めれば、たいていの人がすぐに秘伝を教えてくれるのが我が日本人の美点である」続きを読む投稿日:2018.11.14
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