なぜ大国は衰退するのか ―古代ローマから現代まで
グレン・ハバード(著)
,ティム・ケイン(著)
,久保恵美子(訳)
/日本経済新聞出版
作品情報
日本は没落の危機を克服できるか? 古代ローマ、明朝中国、スペイン、オスマン帝国、大英帝国、ユーロ圏、そして日本、米国まで。最新の経済学をもとに、経済的不均衡が文明を崩壊させることを解き明かす。ポール・ケネディ『大国の興亡』を超える「大国の経済学」。
明朝中国からオスマン帝国やスペイン帝国にいたるまで、世界の大国はその時代で最大の経済力、政治力、軍事力をもつ国として登場したが、最終的には崩壊してしまった。こうした大国の消滅の根本的な原因は何なのか?
ふたりの経済学者が、歴史上および現代の大国の興亡を、行動経済学、制度経済学、政治学をベースに読み解き、経済的不均衡が文明を崩壊させ、経済的な衰退は制度の停滞によって生み出されることを明らかにする。そして、米国が次に同じ運命をたどる可能性があり、現代日本も、明治維新以来の衰亡か再起かの分岐に直面していると、警告を発する。
本書は、大国の経済力を測るこれまでにない斬新な方法を提示、ローマ帝国、明朝中国、スペイン帝国、オスマントルコ帝国、日本、大英帝国、ユーロ圏、現代カリフォルニア州、米国それぞれの成功と失敗、発展の限界をつぶさに分析。ポール・ケネディ『大国の興亡』を議論の出発点としつつ、その主張である「帝国が拡大しすぎが衰退の原因」との結論を退け、経済の不均衡を解決できない国家の政治的停滞こそが衰退の原因となることを明らかにする。
歴史上の大国はなぜ没落したのか? 現代の大国が生き延びる道はどこにあるのか? 歴史に経済理論の光をあてて大胆、かつ包括的に解明する。
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この作品のレビュー
平均 3.8 (4件のレビュー)
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最近の企業、団体の不祥事を経て日本もそろそろ一度制度疲労か?と感じているから、何か示唆が得られるかと思い読んだ。
ジャレドダイアモンドの地理説を否定したり、国の比較にGDP*GDP成長率*GDP生産…性という独自の定義をしたりスタンスをはっきりとってる感じが面白い。
日本がボロクソに書かれているのが否定できなかったこと、規模が拡大していくことは実は縮小していくこと(利権の一極集中による保護主義)であるって考えが確かにと印象に残った。
地理説だと、国ごとの違いが説明できない
技術は発明そのものよりも革新的な普及に差が出る
技術自体も制度からきているっていうのは、んー。まあでも技術的な発展がない動物の間でも組織だつ制度はあるから確かにそうなのかも?
中国やインドの成長は後追いだからそこを参考にするよりも、過去の大国を参考にすべきってのは違うのでは
豊かさを見るときにGDPやGDP成長率だけではなく一人当たりGDPを見ないといけない
日本は自己革新というより、大国に追いつくためのモデルだから一旦それが構築された後刷新できないんだと囲碁盤に石を埋めてしまっている状態で、盤を広げたり石を壊したりするのができないんだと
“大企業、大銀行、巨大な完了組織の三者のレントシーキングによって、政治制度の構造的改革が妨げられている。〜日本は21世紀版の明治維新を必要としているのだ”
衰退は内部から始める・知らないことが意思決定を限定している・機会損失が大きくなる・拡大することは限定されていくこと続きを読む投稿日:2018.09.14
歴史を知ることはその対象がなんであれ、私の好奇心を満たすもので、この本のテーマは、なぜ大国は衰退したのか、というものです。
ローマ帝国の衰退については、数年前に、塩野七海女史の「ローマ人の物語」を読…んで自分なりに考え方を持ちましたが、この本では、ローマ帝国だけではなく、中国・スペイン・オスマン帝国・大英帝国・日本・欧州・米国について取り上げられています。
序章に書かれている、「偉大な文明の存続を脅かす要因としては、国境に押し寄せる異邦人よりも、その文明がみずから生み出した内部の経済的不均衡のほうが重大であることで、これは古代ローマ帝国から現代ヨーロッパにいたるまでの歴史に当てはまる」(p6)の部分は、最も印象的でした。
英国は衰退したと思っていましたが、衰退ではなく、今では世界一となった米国と比較して、成長速度が遅かっただけ、という実際のデータを使った説明は納得できました。大部な本でしたが、楽しく読ませてもらいました。
以下は気になったポイントです。
・偉大な文明の存続を脅かす要因としては、国境に押し寄せる異邦人よりも、その文明がみずから生み出した内部の経済的不均衡のほうが重大であることで、これは古代ローマ帝国から現代ヨーロッパにいたるまでの歴史に当てはまる。(p6)
・米国のGDPに対する国家債務が増えたのは今までは戦争のときのみ、独立戦争・南北戦争・第一次世界大戦・大恐慌・第二次世界大戦、それに対して現在は、それ以外のエンタイトルメント(公的医療保険・扶助制度・社会保障費)支出が多くなっている(p14、353)
・大国が衰退するどの事例でも、その支配者のとった行動は短期的には合理的に思えても、長期的には国の成長を阻害するものだったことが多い(p18)
・他国より強い国とは、他国より多くの武器や兵士を生み出せる国であって、傭兵を雇う金(gold)を持っている国ではない、金の蓄えは最終的にはなくなるので(p33)
・GNPとは、ある国の国民によって生産された最終財とサービスの市場価値である。価値とは、実際には取引価格を意味している。つまり、部品や中古車は含まれない(p35)
・1991年、米国は勘定上の主要指標を、GNPからGDPに切り替えた。GDPは国内の経済活動を測定するもので、外国主体が所有する国内工場で生産された製品価値は含まれるが、外国での生産された価値は含まれない。(p36)
・一部の国は米国の水準に近づいたものの、結局は75-80%の範囲(一人当たりGDP)にとどまっている。この傾向は注目すべきもの(p41)
・1990年の国際ドルベースで見た場合、インドのGDPは、1857年までは英国よりも大きい(118040 vs 76584 M$)(p43)
・ソ連の成長は、物理的資源を使いつくすことで実現していたので、1950-73の後は、すぐに急落した。公害、労働者の権利、技術・技能への投資はほとんど関心を持たなかった(p45)
・経済成長の種類は3つある、1)新たな貿易ルートの開発を始めとする商業活動の拡大、結果として「労働の専門化」・「スミス型」、2)投資の拡大で、結果として「耐久設備への投資」・「ソロー型」、3)革新による経済成長、「シュムペーター型」(p53)
・生産性の上昇は、人口の増大に吸収されてしまい、何世紀にもわたって平均所得は一定のままであった(p53)
・車輪や風車は何度も発明されては忘れられてきた、ある社会がこれらを広く導入し、恒久的に後世に伝えていく制度的な枠組みを作り出して初めて、ようやく定着したものである。革新は制度によって生まれる(p54)
・ローマ帝国の経済が成長した最大の要因は、必要なものが豊かに供給されていた帝国の各都市、交易ネットワークのなかで成立していた規模の経済のメリットであったが、それは、国境の安全確保・法の尊重・公共事業といった制度が存在して初めて実現した(p55)
・経済力=GDPx生産性xGDP成長率^(1/2)(p68)
・産業革命という経済的な大改革が1750年頃に英国でついに実現したのは、制度のおかげ。1688年の名誉革命の結果、英国政府は私有財産権や資産の保護、恣意的な増税の廃止を公約できるようになった。それにより、必要な投資のインセンティブが企業家にもたららされた(p105)
・5世紀のローマ帝国の軍事的弱点や、4世紀の同国の文化的弱点を理解するには、それよりも何百年前にまかれた、経済的な種、に注目しなければならない(p115)
・アウグストゥスの行った二つの賢明な改革、1)徴兵ではなく自発的な15年間の従軍を募ってプロの軍隊を編成した、2)ローマに近衛隊を新たに置いて、反乱を企てる軍人から都を守れるようにした(p122)
・ローマ帝国衰退の原因は、食料補助・増税・インフレ、そして究極的には、国家社会主義である(p131)
・経済的退行期が千年も続いたのは3つの誤りがあったから、1)ハドリアヌスの長城の建設(122年開始)=領土拡大から手を引いて内向きになった、2)銀貨の改悪(2世紀末)、3)経済を支配統制(3世紀末)しようとした(p132、148)
・英国ではなく、中国こそが産業革命を主導できたと考える人は多い。西暦400-1000年における中国の一人当たりGDPは450ドルで、欧州より30%高かった(p161)
・中国の経済力は、1700年の英国を100%とすると、1600年には375%、1700年には218%である(p165)
・フビライハーンが宋を打倒するにあたり、海戦が可能になったのは、宋の商人や海軍司令官がモンゴル側に寝返ったから(p167)
・1433年に鄭和は死去した後、宣徳帝もその3年後に去った後、次の皇帝は官吏寄りの立場を取った。探検と冒険の時代に終止符が打たれたのは、皇帝の所業でもなく、財政上の必要でなく、過度に中央集権化した政府の内部における権力闘争の結果であった(p171)
・欧州では、長年の騎士の戦い方が廃れ、大規模な歩兵を編成する民衆中心の戦闘形式が優位になった、よりお金がかかるようになった(p181)
・1492年にはスペイン国王によって同国内のユダヤ人の国外追放が決定された、10年以上続いた異端審問の一環。国内に残ったユダヤ人はキリスト教への改宗を強制された(p187)
・スペイン人は、馬・牛・羊・豚・サトウキビ、小麦、コーヒーといった欧州の植物や動物を米大陸に持ち込み、社会を変えた(p188)
・1585年に銀貨一枚で買える食料や衣服の数量は、1500年当時に比べて大幅に少なくなった。このインフレは生活水準を低下させ、とくに貧民層にとって大きな打撃となった(p190)
・1977年、オランダでの大規模な天然ガス田の発見は、製造部門の衰退が隠ぺいされた、国内労働力に対する競争力や輸出品の競争力が低下した(p193)
・異端審問によって、事業活動、科学、軍事・航海技術革新を目指した人々は、ハプスブルク帝国を立ち去り、プロテスタントのオランダや英国でその開発を活性化させた(p198)
・オスマン帝国では、イスラム教への改宗者も生来のイスラム教徒を同等に扱われた、欧州各地でキリスト教への改宗者が不平等な扱いを受けたこととは対照的(p208)
・徳川家が安定と平和を確立したのは、各地域の大名に自治を認め、国土の4分の1を直接支配した。各大名と領国のあいだには競争と協力の関係が成立した(p225)
・日本の国家管理型経済の特徴は、シンガポール、香港、マレーシア、タイ、台湾、中国において模倣された(p231)
・ホンダは、1962年に行政指導を無視して、自動車生産を始めた。優遇されていた、トヨタ、日産、スバル等との自動車ブランド競争に飛び込んだ(p235)
・日本の失われた20年は、経済成長そのものではなく、本来存在していなかった架空のスーパーモデルによる異例の経済成長のこと(p237)
・キャッチアップ型のモデルは、強制的で中央集権化された監督体制、輸出操作、インフラへの多大な投資に依存していて、フロンティアに近づいた経済にとっては、どれもが効果的でなくなる。韓国や中国も同様だろう(p238)
・日本がさらに発展するには(技術的フロンティアとの20%の差を埋める)、起業家精神や革新を重視し、個人の失敗に極めて寛容で、資本市場が小規模はベンチャー企業にも開かれている制度を、まったく新しい形で創造しなければならない(p242)
・1890年には、ロシアの人口が1.16億人だったのに対して、米国は6200万人、英国は3740万人であった(p246)
・英国政府は、米大陸やインドなど世界中の植民地の住民を市民ではなく、被支配者として扱い、帝国崩壊の種をまいた。ローマ帝国やオスマン帝国とは正反対の人的資本政策を遂行した(p249、261)
・1900年に英国が圧倒的な経済大国だったことだけではなく、英国の経済力がたった80年で20倍になったことが凄い(p252)
・議員の質や潜在的能力は任期制限によって低下する、アイダホ州やユタ州はこうした理由で任期制限を撤廃した。カリフォルニア州は最短である(p323、330)
・州が禁じられているのは、各州間の取引に関税をかけること、州政府が共和制の形態を放棄すること(p337)
・ジョージワシントンは、政党に属さない最初で最後の大統領であった(p339)
・帝国が衰退した事例の大半では、政府をコントロールし、現状維持を強く要求する何等かの派閥が存在していた(p381)
・経済成長には、革新によるもの、投資によるもの、経済規模によるもの、という3つの異なるタイプがある(p389)
・米国での憲法修正で承認された27の修正は、すべて第一の方法(連邦議員の両院で3分の2の賛成を得て、その後、4分の3の州の立法部で可決)によるもの(p404)
2016年7月24日作成続きを読む投稿日:2016.07.24
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