代表的日本人 徳のある生きかた
内村鑑三(著)
,道添進(編集)
/日本能率協会マネジメントセンター
作品情報
古典の名著を現代語訳し、ハウツー本では解けない課題を自ら解く力を身につける「Contemporary Classics 今こそ名著」シリーズの1冊。「武士道」「茶の本」と並んで3大日本人論の1冊に数えられる内村鑑三の『代表的日本人』をとりあげ、日本および日本人の精神性や座標軸を「徳のある生きかた」「使命と行動」としていまに伝えます。「代表的日本人」が最初に出版されたのは、1908年。鎖国を解いてから半世紀も経たないうちに、日本は日清戦争と日露戦争に勝利しました。日本とはいったいどういう国かという欧米の関心に答えようと本書は英語で書かれた日本人論のさきがけです。欧米の人々にもわかりやすいように、聖書や西洋の歴史上の人物を引用し、5人の代表的日本人(西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮)の生き方に、キリスト教文明に勝るとも劣らない深い精神性が存在することを伝えています。近代の名著として読み継がれてきた本書は教養を高めるたけでなく、そこに生きる上での気遣いもちりばめられており、とりわけビジネスパーソンに愛読されています。
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商品情報
- シリーズ
- 代表的日本人 徳のある生きかた
- 出版社
- 日本能率協会マネジメントセンター
- 書籍発売日
- 2017.12.30
- Reader Store発売日
- 2017.12.29
- ファイルサイズ
- 1.3MB
- ページ数
- 268ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (4件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
内村鑑三による英語の著作。西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の生涯が紹介されている。この5人に共通するのは「徳を大切にし、思いやりに満ちていた」こと「人づくりをしたこと」。「生涯を掛けてやってきたことを、次の世代が何かの役に立ててくれればいい」とそんな声が聞こえてきそうだ。
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●西郷隆盛
西郷を語る上で欠かせないのが「陽明学」。「陽明学」はがキリスト教と似ている点が多く、崇高な良心、厳しくも慈悲深い天の教えを説く。革新的で可能性に富んだ教えだ。一方江戸時代の正学「朱子学」は保守的であり、支配層は陽明学がキリスト教に近かったために弾圧したとする。
西郷よりも優れた人物はいた。木戸孝允や大久保利通、三条実美や岩倉具視である。しかし、西郷なしには維新革命は起こらなかった。西郷こそが革命運動を始動させた人物だからだ。
東アジアの統合は、列強国に並ぶために必要な道であったと肯定しつつ、征韓論に関しても、朝鮮側が無礼を重ねたためであったとした上で、西郷の言動は天の法に則った行動であると記す。
西郷は勝海舟に向かって「もし戦火を交えたら、我々のせいで罪もない民が苦しむ羽目になるだろう」と。結局江戸の町は救われ、和平がもたらされた。西郷の強さの奥には、女性的な優しさが多く潜んでいた。
西南戦争で西郷は自害。最後の侍もいなくなってしまった。
「正義がきちんと行われていること」。西郷による文明化の定義だった。「どんな形であれ、一国の名誉が傷つけられた場合、政府が行うべきことははっきりしている。(略)正義と大義の道に従うのだ。戦いと聞いただけでびくびくし、安易に平和を金で買う者は商法管理機関とも呼ぶべきもので、断じて政府のやるべきことではない。
・「正しくあれ、恐れるな」(Be Just and Fear Not.)(シェイクスピア「ヘンリー八世」)。自分の心に恥じるところが
ないならば、どんな批判を浴びようとも恐
れずに前へ進もう。
・「敬天愛人」(天を敬い人を愛する)が西郷の生涯の徳目だった。
・「好機(機会)には2種類ある。思いがけずやってくるものと、自ら働きかけた結果やってくるものだ。世の中で好機と呼ばれているものは、おもに予期せずにやってくる者ものを指す。しかし本当の好機とは、時代の求めに応じ、しかるべき理由を見いだし、それを実現しようと行動を起こした結果なのだ。危機に直面した際は、好機を自ら引き起こさなければならない(61)
●上杉鷹山(米沢藩主)
上杉家は120万石の越後国を支配した謙信を家祖とする大大名。関ヶ原の戦いで西軍(反徳川)に付くなどして、15万石に削られる。家臣の数はそのままで、固定費がかかり、しきたりも長年変えることができず、財政破綻状態。
この中で、藩主・家臣・領国民の「心(道徳)の改革」「社会(財政)の改革」に成功した。心の改革については、藩主の地位について2年後、初めて米沢の地に向かう際のエピソードが紹介される。
「目の前の小さな炭火が今にも消えようとしているのに気づいた。大事にしてそれを取り上げ、そっと辛抱強く息を吹きかけると、実に嬉しいことには、よみがえらすことに成功した。”同じ方法で、わが治める土地と民とをよみがえらせるのは不可能だろうか”そう思うと希望が湧きあがってきたのである」(81-82)
・「徳によってきちんと社会が治まれば、統治の仕組みは却って邪魔になる。封建制度の優れた点は、この支配する者と支える者との個人的な人間関係にある」(75)
・どんな社会の仕組みも徳(精神の修養によってその身に得たすぐれた品性)に代わるものはない。徳によって社会が治まれば統治の仕組みは却って邪魔になる(74)。
・本当の忠義(主君や国家に対し真心を尽くして仕えること)とは、主君と家臣とが、直接向き合って初めて成り立つもの(74)。
・賢い者は樹をまず気遣うから果実が得られる。ここに鷹山が一連の産業革命を成し遂げられた理由がある。人々に「徳」を身につけさせることを目指していた(92)。
・全ての学問が目指すものは、徳を修めることに他ならない(103)
・汝の夫は父として領民を導き、汝は母として民を慈しみなさい。その時民は汝らを親として敬うであろう。これに勝る喜びがあるだろうか(104)。
●二宮金次郎(農村改革の指導者)
16歳のころに父親を亡くし、叔父の世話を受けます。叔父に世話にならないよう働き、夜に油を使って本を読むことを叔父に咎められたため、山に行く往復の道で本を読んでいた。休みの日には、菜種を育てるという試みを通じて、真面目に働くことは価値があるのだと学んだ。
それから叔父の家を離れ、荒れ地を整え資産を得、超貧乏だったところから勤勉と倹約で公の仕事に抜擢された。
「仁術(道徳)さえ施せば、この貧しい村の人々に平和で豊かな暮らしを取り戻させることができるはずです。補助金を与えたり、年貢を免除したりしても、苦しんでいる人々を救うのに何の役にも立ちません。それどころか、金銭援助を一切しないことこそ、救済の手立ての一つとなります。(略)荒れ地は、荒れ地そのものが本来もっている力で切り開くものです。貧困も自力で立ち直らせなくてはなりません」。優しくも、厳しいリーダーの弁だ。
●中江藤樹(儒学者)
中江藤樹(1608-48)は、日本における「陽明学」の開祖。
米子藩、大洲藩に赴いた後、郷里である近江国高島郡小川村(現在の滋賀県高島郡安曇川町上小川)近江に戻り、私塾を開く。これが、藤樹書院である。
1642年のある日、不思議な縁で遠方の侍が弟子になる。これが熊沢蕃山(1619-91)で、藤田東湖(1806-55)がその思想に傾倒したのだとか。その藤田東湖の影響を受けたのが西郷隆盛(1818-77)。岡山藩主池田光政も門人として名を連ねる。
王陽明は、孔子の先取りに富む気性を丹念にすくい上げたその上で、自己流の後ろ向きな解釈をしがちな人々に、希望を抱かせた。(略)こうして近江聖人は実践の人となった(p.177)。
「道(心理)は法とは別物(略)「法」は時とともに変わる。これに対して「道」は永遠から生まれ出るものだ。徳と呼ばれるものに先だって、広く行き渡っていたのが「道」である」(pp.177-178)。
教えで重視したのは、一人一人の徳と人格。それは人間一人一人が独立した個性であって、比較できるものではない。生活を正し、日々小さな善行を積むことで人格が形成され、真に人を感化させる影響力を持つようになる。
●日蓮
仏の教えは一つしかないにも関わらず、なぜ複数の宗派が乱立するのか。ただ仏の言葉のみ耳を傾けるべきだという並々ならぬ意志が芽生える。しかしこの動機は既存の仏教を批判するということに他ならない。日蓮は故郷で自分の考えを述べると村を追い出される。さらに辻説法が評判を呼ぶと高僧たちからは睨まれる始末。
さらにまったく後ろ盾がないまま時の権力者・北条時頼に既存仏教に批判的な『立正安国論』を第5代将軍・時頼に提出(1260)。その結果伊豆流罪(1261-63)、佐渡流罪(1271-74年3月)に。
元寇の危機が迫り鎌倉に戻る。鎌倉に戻ってまもなく、日蓮は教義を国中に広げることを許される。篤い信仰心がついに勝利を収めた。
しかし、まもなく文永の役(1274年10月)、弘安の役(1281)、鎌倉大地震(1293)がおきるなど、『立正安国論』に記された不安は続く。この不安は、日連宗信者を増やしたのでしょう。
本質はたった一つでしかない。仏陀が残した最後の経文『法華経』しか信じないという排他性が、本願寺焼討ち(1532)や天文法華の乱(1536)に繋がったことも否めない。「排他的」は「ほどほど」に。多様性を受けいれるというのが、今のご時勢・世情には適っているように思うのだが。投稿日:2021.08.10
内村鑑三によって、日本人を代表する5人(西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮)を紹介している。
時代背景として、西洋人に向けて「聖書の教えに通ずる日本人がいたこと」を広めることを目的として…いるため、偉業を成し遂げた人というよりも、徳や正義に基づいて生涯行動し続けた人にスポットライトを当てている。だからこそ、現代人もその生き方に見習うべきポイントがあるように感じた。続きを読む投稿日:2022.11.11
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