GE 巨人の復活 シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦
中田敦(著)
/日経BP
作品情報
脱・ウェルチの経営改革を徹底取材!
世界最大の重電メーカー、ゼネラル・エレクトリック(GE)は金融事業の撤退に伴い、1兆9000億円にも上る特別損失を計上した。
これは、「20世紀最高のCEO」とまで呼ばれたジャック・ウェルチが作り上げたコングロマリットとしてのGE、株式時価総額で常に世界1位を争ってきたGEの挫折の象徴だ。
現CEOのジェフ・イメルトは、ウェルチ経営から大きく戦略を転換する。
社員30万人の巨大企業でありながら、グーグルなどシリコンバレーのスタートアップを徹底的にまね、 「デジタル製造業」に姿を変えようとしている。
<事業>
金融中心から、「デジタル製造業」へ
<製品>
産業機器の販売中心から、産業機器の生産性を上げるサービスに拡大
<開発>
縦割りの開発体制から、ソフトウエアはデジタル部門でまとめる体制へ
失敗を許さない文化から、リーンスタートアップ方式で素早く失敗する文化へ
製造現場にセンサーを張り巡らせたブリリアントファクトリーへ
<人事制度>
「ナインブロック」で社員を評価する方式から、能力開発の「パフォーマンスデベロップメント」へ
<成長戦略>
M&Aとリストラによる成長から、自社開発サービスでの成長へ
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- GE 巨人の復活
- 著者
- 中田敦
- ジャンル
- コンピュータ・情報 - IT・Eビジネス・資格・読み物
- 出版社
- 日経BP
- 書籍発売日
- 2017.06.13
- Reader Store発売日
- 2017.06.16
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 232ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.3 (13件のレビュー)
-
エジソンの時代からの老舗の電機メーカーGEは、ジャック・ウェルチの時代に一時はNBCや金融事業に業態転換をして高収益企業として生まれ変わったと言われていた。CEOのジェフ・イメルトはGEを時代に合わせ…て「デジタル製造業」へ生まれ変わらせると決断し、シリコンバレーのやり方を徹底的にまねて、実際に30万人の大企業のポートフォリオや人事施策を転換させた。本書が描くのはGEの「トランスフォーメーション」の実像となる。著者は日経BP社シリコンバレー支局勤務の記者。日本人が海外企業を取材をして一冊のしっかりとした本にまで仕上げるのは珍しいが、もっと多くの本が日本人の手により、日本人の視点も含めて書かれてほしい。
GEは、2017年2月の株主への手紙でこう宣言した(※)。
「産業界の多くの企業が20年前に進めた『デジタル筋肉』のアウトソーシングが、今日には敗者であると我々は学んだ。今後、GEのすべての新規採用者はコード(プログラミング)を学ぶことになる。彼ら全員がソフトウェアを書けるようになるとは期待していないが、デジタルの未来における『可能性の芸術(アート)』は、必ず理解しなければならない。
We have learned that outsourcing digital muscle – a move industrial companies made 20 years ago – is a loser today. Every new GE recruit will learn to code. We don’t expect them all to write software, but they must understand the “art of the possible” in a digital future.
GEはハードウェア企業からソフトウェア企業へと舵を切った。それが必要であると学んだからである。そのためにシリコンバレーのコンセプトである「リーンスタートアップ」や「デザイン思考」「アジャイル開発」などその方法論を全社員に学ばせたという。そして「FastWorks」というGE版のリーンスタートアップを作り上げた。問題発見-仮説特定-MVP開発-顧客によるテスト-結果反映、といったサイクルをぐるぐる回すということである。顧客自身もデジタル変革のために何が必要かわかっていないから、顧客に「要件定義」を求めないという。その代わりにGEが必要なアプリとサービスを提供するというのだ。
また、その方法論を徹底するためにそれまでの厳しい人事評価から、失敗に対して寛容な文化を作るための人事制度を大きく変更した。失敗を許容できるようになるには、素早くリカバリーできるスピードも必要となるため、組織のフラット化も同様に進められた。失敗を心地よく感じるようになる文化を作ることが目標でもあるという。コードを内製化できるようにすることも、この方法論を実践するために必要な結論でもあった。
10年前のGEは、金融や放送などの非製造部門の売上高が全体の4割を占めるコングロマリッド企業だった。2016年12月気には売上の91%がB2B向けの産業機器が占めるまでにそのポートフォリオを展開させたのである。そして、GEはこの世界においてプラットフォーマ―としてのポジションを戦略的に確立しようとしている(そのプラットフォームはPredixと呼ばれている)。
トップダウンのよいところはこうやって徹底させることができることだろう。徹底の中には、その結果として捨てるべきことを捨てるということも含まれている。
そもそもGEが脱・製造業への道を選んだきっかけは日本メーカーの存在であったという。インテルのメモリからCPU集中への戦略転換も日本電機メーカーの影響があったという。日本は韓国勢や中国勢の攻勢から何かを学び変化することがあったのだろうか。確かにSONYは金融分野にも進出し、メディアやネットにシフトしようとしたが、期待通りにはならなかったようではあるが。
デジタル変革に必要なものは、トップの決意、デジタル変革の方法論への理解、そしてデジタル変革に必要な人材を集めると同時に元からの従業員にデジタル変革の方法論を学ばせることだという。GEは、そのためにシリコンバレーにオフィスを構えたという。
GEという大企業がここまで大胆に動いているのは知らなかった。広く知られてほしい。
(※) LETTER TO SHAREHOLDERS
A Resilient Culture
https://www.ge.com/ar2016/ceo-letter/culture/続きを読む投稿日:2017.12.30
このレビューはネタバレを含みます
正直、本書のタイトルは、中身の価値を全くと言っていいほど表していない。ここで書かれている事は、いわゆるデジタルトランスフォーメーションの具体例であり、どちらかというとITやデジタルからは縁遠いと思われ…がちがGEという巨大企業が、いかにしてデジタル化をすすめ、どのような価値を生み出しているかという事が書かれている。
レビューの続きを読む
著者は日経BPの編集者で、シリコンバレー在住だというが、その取材力と洞察の鋭さは素晴らしいものがある。ちまたに溢れる、DXの解説本をいくら読んでも抽象論ばかりで、では具体的に何をすればいいのか、という問いに答えるものではなく、アマゾンのレビューなどでもその点に関する不満や批判は多い。DXの具体例と本質を知りたいのであれば本書に勝るものはないであろう。
さて、GEであるが、DXを協力に推進したのは、ジェフイメルトである。20世紀最高の経営者の一人でるジャックウェルチから後継者に指名されCEOの座を継ぐが、すぐにリーマンショックに見舞われ、ウェルチ時代に稼ぎ頭だった金融事業が足かせとなり、サブタイトルにあるように1兆9千億円もの損失を計上することとなる。
一方で、それを尻目にGoogleやMicrosoftなどの巨大IT企業は、金融危機をものともせずに右肩上がりで業績をあげ、それに伴い時価総額もうなぎのぼりで上昇し続けていた。イメルトは、Why not us? と幹部に問い、柱であった金融事業を売却し、デジタル化に舵を切り始める。
イメルトのリーダーシップの下、GEはデジタル化を推進し、事業の収益構造やビジネスモデルまでも大胆に大きく変換させる、正にトランスフォーメションを断行する。GEデジタルという新会社をつくり、オフィスはシリコンバレー郊外におくことで、デジタル人材を積極的に採用し4000人気ぼの組織になっている。
本書が秀逸なのは、DXの導入および成功の背景にある、思考法についての洞察である。シリコンバレーに拠点を置くのは多くの日本企業が行なっている事であり特段目新しい話でもないし、置けば何かが変わるという訳でもない。GEが先例が無いDXの分野で先進的でいられるのは、シリコンバレーのカルチャーを貪欲に学び、自らのものにしていった事である。たとえば、シリコンバレーでは、リーンスタートアップという概念がある。小さく初めて失敗を許容しながら、素早く修正、改善を行い、製品やサービスの質を高めていくという手法、考え方である。GEを始めとする旧来型の企業は、事前に綿密な計画を立てて、それを踏襲していくのがおおよそのやり方に対して、リーンスタートアップはいわば走りながら考える、スタイルである。そうした仕事の仕方は、日本企業でもやっているという声もあがろうが、多くの場合は現場や担当者レベルでの局地的なもので会社としての取り組みではないはずだ。大切なのはそれを企業のカルチャーとして落とし込む事である。GEは自社独自に、それをFastworksと呼ぶ事にし、全社員30万人に実践させている。
本書では、GEによる多くの造語やプロジェクト名が登場し、それを全て咀嚼するのは難しいが、それらは単なるネーミングには止まらない。何らかの名前を与える事によって、象徴的に取り組みをコミュニケーションする事ができる。欧米企業は伝統的にこうしたスタイルを好み、日本企業はそうした取り組みを何か中身の無い胡散臭いものとして見てバカにする傾向にあるが、結果を出しているのはどちらかという事である。
著者は、あとがきで総括する。シリコンバレーの強さは、以下の3つに代表される仕事の進め方の方法論であると。
1. Agile Development
2. Design Thinking
3. Lean Startup
すなわち、GEが復活しDXを成し遂げられたのは、この方法論を自社の文化に植え付ける事に成功したからであり、またイメルトがリーダーシップを発揮した事によるものである。途中引き合いにだされている、GEの製造現場でポカヨーキーという言葉が実はトヨタのポカよけから来ているエピソードはGEの他車から学ぶ貪欲さと謙虚さの表れである。
日本企業のDXについては、コマツの自社製品の稼働状況をモニターし、サービスを向上させているなどの例があるが、GEと比較するとやや小粒であり、会社のビジネスモデルそのものを変換させるのどのダイナミクスはない。いわんや、他の伝統的な日本企業がDXを実現するにはアイディア以上に、企業文化の変革が大切であろう。続きを読む投稿日:2020.01.25
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。