星の王子さま
サン=テグジュペリ(著)
,河野万里子(訳)
/新潮文庫
作品情報
砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは、小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった……。一度読んだら必ず宝物にしたくなる、この宝石のような物語は、刊行後七十年以上たった今も、世界中でみんなの心をつかんで離さない。最も愛らしく毅然とした王子さまを、優しい日本語でよみがえらせた、新訳。
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この作品のレビュー
平均 4.3 (1137件のレビュー)
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訳者により心に沁み込む度合いが違うと思います。河野さんの訳が最高と思います。
神奈川県民なので、子供のリクエストで箱根の星の王子さまミュージアムで感銘を受け、「星の王子さま」は何冊か購入したり、見かけたら読んだりしています。本は訳者により心に沁み込む度合いが違うと思います。河野…万里子さんの訳は言葉を非常に繊細に 大事にしているのが伝わってきて、自分が本の中に入ってしまった様な感覚を覚えます。また、あとがきで心を打たれるのも稀な経験でした。(このサイトから購入した書籍データはWindows環境では読めないので少しだけ注意が必要です。スマホなどはOK。)続きを読む
投稿日:2017.04.27
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大人になって心で感じた宝物
「星の王子さま」を初めて読んだのは、小学生のとき、岩波少年文庫(改版後)でした。
「ゾウをこなしているウワバミ」(ボア)の絵は、今でもお気に入りです。バオバブの木も、妙に気合いの入った色刷りの挿し絵…で覚えましたし、愉快な絵本という印象でした。
しかし今回、新しい訳文で読み返したところ、本書は、胸を締め付けられる、苦しい愛の物語ではありませんか。作者も、「軽々しく読まれたくはない」としています。
子どもが、「生きるというのがどういうことかわかっている」なんて、とんでもない!
本書は、ユーモラスな絵本の姿をした、しかし、その奥深くに真実を隠して輝く、砂漠の底の井戸なのです。
(1)王子さまは小さな領主
そもそも、なぜ「子ども」(アンファン)ではなく、「王子」(プリンス)なのでしょうか。
それは、彼が、小さな星の持ち主、つまり領主様だからです。
作者はアントワーヌ・「ド・」サン=テグジュペリですから、彼自身も「サン=テグジュペリの」プリンスであったわけです。
それが人生いろいろあって飛行士になり、なんとか作家として認められた後に書いた作品です。
ですから、本作は、決して「童心に返る」ことを推奨するものではありません。
バラとの関係について、王子は自分たちが幼すぎたため、うまくいかなかったことを語っています(訳文は「あまりに子どもで」)。
仕事を通じて誰かの役に立つことは、価値のあることです。これは、王子も自力で気がつきました。
しかし、キツネからは、さらに高い価値があることを教わります。それは、絆を結んだ者に対する責任があるということです。
「役に立つ」は、労働者の実利的な価値観ですね。その上に「責任」を感ずるのは、選ばれた者、貴族の規範です。
王子は、実利に換算できない真実を大切に扱うためにプリンスなのです。
(2)旅立ちと別れに涙
現在の私が胸を打たれるのは、王子の旅立ち、バラと別れのあいさつを交わすシーンです。
ああ、わがままで見栄張りのバラの告白が、なんと悲しく、可愛らしく、精一杯の思いやりに溢れていることか。
こんな形で女性の「かわいげ」を描いた作品には、他に出会ったことがありません。
小学生の私には、このシーンは印象に残りませんでした。
見送る人の嘆きの深さと誇りの高さが、感じとれなかったのだと思います。
当時の私(国語のテストには、いささか自信がありました)に尋ねたら、「ちゃんと読み取れるよ」と笑うかもしれません。
目で見て知るのと、心が動くのとでは、全く違うのですが。その区別を知らないくらい、幼かったということでしょう。
(3)星に帰った王子は?
体を捨てて星に帰った王子は、その後どうしているのでしょうか。
飛行士は、出会ったときの姿で、また地上に現れることを願っているようです。
しかし、王子はもう、小さな子どもの姿ではないのかもしれません。
愛するバラに寄り添う、もう一輪の花になり、仲良く夜風に吹かれているような気もします。
でもそれだと、夕日を見るのに不便かしら。もしかしたら、飛行士の描いた小さな羊の姿をして、周りの草をモシャモシャ食べているのかも。
いずれにせよ、バラは「はかない」だけでなく、端正込めたお世話が必要な花なのです。
王子はそれを一年も一人きりにしたわけですから、こっぴどく絞られるに違いありません。
でも、面倒な小言を受けながら、王子はとびきりの笑顔を浮かべることでしょう。王子は、ムダに放浪していたわけではなく、深い知恵を蓄えて戻って来たからです。その笑い声を聞いたバラはとても安心して、幸せな香りを漂わせるに違いありません。
大切な人と離ればなれになったとき、元気づけてくれる一冊です。続きを読む投稿日:2018.03.22
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