ITと熟練農家の技で稼ぐ AI農業
神成淳司(著)
/日経BP
作品情報
IT×農業で有力な輸出産業に
第一人者が戦略の全貌を語る
農業を「質」で見ると、これほど有望な産業はありません。日本の農作物は世界中で高い評価を受けており、日本の熟練農家の技は“世界一”と言っても過言ではないでしょう。ただ、その多くは本人ですら言葉にできない「暗黙知」であり、スケールさせることが難しく、そこに課題がありました。
しかしここに来て、状況が変わりつつあります。IT技術の進歩により熟練農家の技を「形式知」にできるようになったのです。国内農家の底上げができるだけでなく、熟練農家の技を「知財」として安全に輸出することも視野に入りました。そうした取り組みを「AI農業」と呼びます。
「AI農業」の「AI」とは、人工知能(Artificial Intelligence)の研究をも包含する、農業情報科学(Agri-InfoScience)を指しています。すなわちAI農業とは、人工知能を含めた情報科学の知見を農業分野に適用することで、社会システムの変革を促す一連の取り組みなのです。
最新ITが「農業」を変革する――。その戦略の全貌が本書に書かれています。
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商品情報
- シリーズ
- ITと熟練農家の技で稼ぐ AI農業
- 著者
- 神成淳司
- 出版社
- 日経BP
- 書籍発売日
- 2017.02.09
- Reader Store発売日
- 2017.02.13
- ファイルサイズ
- 6.2MB
- ページ数
- 184ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (7件のレビュー)
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60過ぎたら農業なのか?
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では2065年に総人口は8200〜9500万人になる。直近の出生率からすると中位推計を達成するかどうかも疑問だがこの場合で8800万人と現在の約7割になる、14歳…未満が10%、生産年齢人口が4529万人と現在の6割で52%、65歳以上は現在とほぼ変わらず3381万人で38%を占める。出生率が一定の場合はこの後は年齢別の構成比はほぼ変わらない。思い切った少子化対策をするか外国人を受け入れるのか、あるいは人口減を受け入れて社会の構造を全て変えるか、いずれにせよ20年後には大きく変わっているはずで、そうすると経過措置も含めた準備期間は10年〜15年ほどだろう。
会社で言えば今の新入社員が現役のうちに働き手が6割になり、国内需要も同じように減りかねないという話。目先の問題は色々山積みだとしても日本全体で言えばこれがあらゆることに影響する最大の問題のはずなのだ。
本書のテーマの農業に限れば、農業従事者人口と平均年齢は2005年/335万人/63歳、2010年/260万人/66歳、2015年/209万人/66歳だ。2015年65歳以上が133万人、50歳未満は25万人となる。実はこれは将来真っ暗ということではない。現状でも65歳以上が農業をやってるのだ。40年後も65歳以上の人口は変わらないので単純な働き手であればなんとかなる。ただし今の農業だと水やり10年と言われるほど技能の習得に時間がかかる。
問題は熟練者の技術の伝承で、そこでAIの話になるのだが人工知能ではなく、人工知能を含む農業情報科学=AIだった。書名は意図的なひっかけだろう。人工知能=AIについては適用範囲が限定されると考えているようで中心的な話題にはなっていない。ついでに植物工場はコストが高く生産性は高くないと否定的な評価だ。
本書で紹介している事例は簡単に言うと、熟練者の本人も気づいていない暗黙知をモデル化しITを初心者〜中級者の教育に生かすことで、一人前になる期間を10年から3年程度に短縮することを目指している。アイカメラを使い何をどう見ているかを見える化し、外部環境変化はセンサーで測定する。加えて主観的な気づきデータを入力するのが熟練者の暗黙知を見える化するためのポイントだろう。同じような取り組みは工場でもできるし、一部ははじまっている。色や形や匂いに音、そして触覚や味、人工知能でもなかなか勝てない熟練者の技術は確かにあるが、センサーに置き換えやすいものも多い。
それで日本の農業が何を目指すかというと、比較されるのがイスラエルとオランダでいずれも農業の先進国だ。イスラエルは食料自給率が高い農産物の輸出国であり、水不足は点滴栽培で補う。熟練農家は富裕層に属し、キブツの伝統で指導者となる熟練農家を育てる仕組みが特徴だという。広大なビニールハウス、毎日指示をする熟練者と海外からの労働者二人という組み合わせが儲かる仕組みのようだ。
オランダは少人数で、大規模な農場にITを取り入れていることで知られている。施設面積は日本の1/5、生産者数は1/60、単位面積あたりの平均収量は4〜5倍、平均単価は1/3ながら総生産額は日本とほぼ同じ低コスト大量生産が特徴だ。ただし筆者の意見ではオランダは目指すべきではない。規模では周辺国とのコスト勝負になるので熟練者の知恵を生かし、他社には真似できない高付加価値品をめざすべきだという。
ここは新たな就農者をどう設定するかにもよるのではないか。60過ぎて就農する人を考えればコストは勝負できるだろう、2ー3年でものになる作物の栽培が入り口にあっていいはずで、上級者になれば違う農場に移ればいいのだ。いずれにせよ本書のような取り組みは農業以外にも広まっていくはずだ。そうしないと回らなくなるのだから。続きを読む投稿日:2019.08.27
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ー 我が国が持つ可能性は決して小さくありません。ただし、残された時間は少ないのです。そのことを胸に、我々は次の社会システムを模索し、早期に歩み出していかなければなりません。 ー
食料自給率の低下、農…業人口の減少、少子超高齢社会化、こういったことは国防の観点からも最重要課題にも関わらず、抜本的な対策が行われているようには思えない。
本作はこうした状況を解決に導くヒントをくれる作品。続きを読む投稿日:2019.01.19
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