「優駿」観戦記で甦る 菊花賞十番勝負(小学館文庫)
寺山修司(著)
,志摩直人(著)
/小学館文庫
作品情報
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競走馬にとって実力ナンバーワン決定戦ともいえる菊花賞。3000メートル、2度の坂越えと厳しい戦いが続く。三冠馬シンザンからライスシャワーまで今も語られる十番の名レースを再現。「ダービー十番勝負」に続く第2弾。
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この本もまた昔に読んだものを、今一度、小説を読む合間に読み進む。
菊花賞、一度、目の前を通ってもう一度最後の直線となる淀の長距離。春の天皇賞と並んで私の好きなレースだけれど、最近のスピード志向の中でレ…ースの存在意義が段々薄れてきたのが淋しい。
今だったら、多分、アローエクスプレスもキタノカチドキもトウショウボーイも菊花賞には出ず秋の天皇賞に出るんだろうな。それはそれで正しいのだろうけれど、距離の壁に挑んだり、春に鎬を削ったライバルが秋に再度まみえるドラマはなくなるわけで…。
シンザン シンザンは乗っていた栗田の息子の名前を取って“伸山”ということのようだけど、私には志摩さんが言っていた“深山”のほうがあの馬の奥深さを表しているようでしっくりくるな。京都競馬場の像にある“神賛”はいかにも後付けで恥ずかしい気がする。
ダイコーター この馬の走りは見たことがないが、してみると、ダービーの直前に本命馬の持ち主が変わった訳ね。黄・黒元禄・黄袖の勝負服は好きだったな。ホウシュウエイトのメンコなんて、もう最高。
アカネテンリュウ 菊花賞が10月になった今では流石に秋の昇り馬を“アカネテンリュウ型”とは言わないようになったけど、それでも秋の昇り馬の代名詞ではあるな。私の中では、いつも天皇賞で人気になって勝てなかった馬だが、スピードシンボリの後ろでダテテンリュウと叩き合いハナ差に抑えた有馬記念は覚えている。
ダテテンリュウ Tがノド鳴りに、Aが距離の壁に敗れた菊花賞。遠い記憶にダービー2着のこの馬が勝ったことが救いだったような。
ニホンピロムーテー この本のP.173上段の写真を大きくしたカラー写真のパネルが、ずっと長いこと私の実家の部屋に飾られてあった。中学生の頃、関西テレビの競馬中継のプレゼントで当たったもの。だからこのレースで走った馬の名前は写っている限り全馬覚えている。
イシノヒカル この年のダービーは見事な3強の叩き合いが演じられ、私の中では数あるダービーの中でもベストレースのひとつ。であるから菊花賞で3強で分け合うべき最後の一冠をタイテエムから掻っ攫ったイシノヒカルは敵役な訳だが、いやしかし敵ながらあっぱれな走りであった。
グリーングラス 菊の頃は全くのダークホースだったけれど、TTがターフを去った後も走り続け、天皇賞と最後の有馬記念で勝利してGも十分強かったことを示した。私の中では最強の3強。
ミスターシービー この馬の馬券を買っていた人も持っていなかった人も、最後の直線では皆、この馬のことを応援していた(と思う)。この頃はターフビジョンもなく、人の隙間から馬がドドドッと駈けていくのが見えただけなのだけど、19年振りの三冠の場面に確かに私はいたのだ。
メジロマックイーン 勝たねばならぬ前哨戦を取りこぼし、菊への出走が危ぶまれたのが印象に残っていたが、そうか、あのレースは不利があったのだったか。
ライスシャワー マチカネタンホイザを振り切り、ミホノブルボンを差し切る、見事なレース。その頃はまだ小さかった長男を抱っこしながらレースを見ていたよ。最後のレースとなった淀で行われた宝塚記念も、そうやって家族みんなで見届けた。
多くの馬の戦績を見ながら、それにしても昔の馬は沢山のレースを使っているものだと感心する。勿論、今とは調教技術も違いレースを使いながら仕上げていっているんだろうけど、みんながみんなこうも使っていればトライアルの頃から盛り上がって物凄く楽しい感じはする。本番を迎えた時には殆ど勝負付けが済んでるようにも思うけど。続きを読む投稿日:2015.05.15
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