寄港地のない船
ブライアン・オールディス(著)
/竹書房文庫
作品情報
その船はどこから来て、どこへ向かうのか。もはや知る者は誰もいない。巨大な宇宙船の内部で、いまや人間たちは原始的な生活を営んでいた。かつて船を支配していたという巨人族、猛烈な勢いで繁茂する植物、奇怪な生物たち、そして〈前部人〉と呼ばれる未知の部族を恐れながら……。世界が宇宙船であることも、わずかに伝承に残っているのみだった。 ある時、狩人のロイは司祭マラッパーから、この船を支配するために世界の〈前部〉へ向かおうと誘われる。だが、仲間たちと〈死道〉へ旅立ったロイを待っていたのは思いもよらない出来事の連続だった。そして、彼が旅路の果てに見たものは――。 幻の傑作SF、待望の邦訳。
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商品情報
- シリーズ
- 寄港地のない船
- 著者
- ブライアン・オールディス
- 出版社
- 竹書房
- 掲載誌・レーベル
- 竹書房文庫
- 書籍発売日
- 2015.07.02
- Reader Store発売日
- 2015.08.21
- ファイルサイズ
- 0.4MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (6件のレビュー)
-
光速は越えられない。
その厳然たる物理学的事実に従うか従わないかでストーリーは大きく変わる。ワープのような超光速航法を導入すると、宇宙は地球上と大差なく移動可能な場所となる。ところが光速が越えられ…ないならば、亜光速で飛んで目的地に到達するものの、戻ってきたときにはウラシマ効果で数世紀がたっているといった話になるか、そこまで加速できない宇宙船ならば船内で幾世代を経ながら子孫が目的地に到達するという話になる。後者が世代宇宙船である。
ブライアン・W・オールディス。イギリスSF界のビッグ・ネームだ。『地球の長い午後』『グレイベアド』、そしてSF評論というかSF史の『十億年の宴』。現在、齢90で二、三年前にも小説を出版、来年には旅行記が刊行予定という作家にもかかわらず、翻訳紹介はかつてのサンリオSF文庫に少し、21世紀に入って、この竹書房に少しという体たらくだ。
本書はオールディスの処女長編『ノンストップ』の初訳である。60年もまえの本であるが、世代宇宙船ものの代表作である。「ノンストップ」は本文内では「無寄港」と訳されているが、日本語にしようとすると、まあそうなるしかないか。それで訳題は『寄港地のない船』。「ノンストップ」の簡潔さから比べると、何ともまどろっこしい。当然、この船は宇宙船なので、大西洋を彷徨っている豪華客船ではありません。
ロイ・コンプレインはグリーン一族の狩人であるが、狩りの最中に同道した妻を別の部族にさらわれてしまう。罰を受けるコンプレイン、すっかり生活に嫌気がさしていると、牧師のマラッパーに部族の住む〈居住区〉を出て〈前部〉に行こうと誘われる。〈前部〉に行けばこの船を支配できるというのだ。
コンプレインはこの世界が船であるという言い伝えをいまだ信じられない。かつて巨人族がこの地に高い文明を築いていたといわれ、その遺物が残っている。また〈前部〉人は文明が進んでいるという。他方、〈よそ者〉やミュータントもあたりにはいるらしい。マラッパーの選んだ3人とともに〈居住区〉を抜け出したコンプレインは次第に世界のありさまを目の当たりにしていく。
つまり世代を重ねるうちに宇宙船内の文明が崩壊し、船内に生い茂る植物を苅り、小動物を狩る前近代的な生活に退行していたのだ。船の秩序がなぜ失われたのか、船がどこに向かっており、現在はどこにいるのかは物語の大きな謎として解明を待つ。
『スターウォーズ』冒頭の帝国の軍艦の巨大さを見せつける映像をすでに知っているわれわれにはちょっと想像できなくなっているが。本書が書かれた1958年、巨大な宇宙船なんて映画にも出てこなかったんじゃないだろうか。そういえば藤子不二雄(Fのほう)が『スターウォーズ』の軍艦の中が広すぎて兵士があちこち用事を足していると歩くのが嫌になってしまうというパロディマンガを書いていた。
宇宙活劇といえば英雄的な主人公が登場する1950年代のアメリカSFに抗って、本書では文句タラタラ(その名もコンプレイン)のしがない男を主人公に据えたのもイギリスSF界の気概だったようである。意外に古くさく感じないのはそんなところもあるし、ますますわれわれは宇宙船地球号に乗っているという意識が強まっているご時世もあるのかもしれない。続きを読む投稿日:2016.02.28
面白いとか面白くないとか以前に、翻訳が酷すぎる。そこは「を」じゃなくて「が」だろ、といった細かいものから文章全体がおかしいもの、もはや意味がわからないものまで、気になって仕方ない。
最後まで読めたの…で面白くないわけではないのだが、ここまで翻訳がひどいと感じた本は初めてかな。続きを読む投稿日:2023.09.26
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