この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
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「和食」とはどういったのものなのか、筆者なりの”定義”が示されていました。
言ってしまえば、「……和食の基本形は、ご飯と発酵調味料で味付けした料理を組み合わせたものです。日本では長い間、コメのご飯を中…心に料理してきました。……醤油や味噌などの発酵調味料は、江戸時代には庶民の食になりました。これらの食品は、高温多湿の日本の気候の中で発達してきたものです。……一汁三菜が整っていたり、旬のものや土地の食材が使われていれば、理想的です。」(p.198)というものです。
一方で、いかにも「和食」であるような京懐石と、日本から世界に広まった「ラーメン」や「回転ずし」は別のものなのか(日本独自のカレーライスのような料理は「和食」ではないのか)といった疑問について考えるため、「和食」の歴史についてもフォローされています。
どちらかというと、このような歴史の整理や、筆者や筆者の母の食生活の体験を通して、「和食」という”日本の食文化”とはいったいどのようなものなのか、を再発見することをめざした書だといえます。
外食や「中食」が普及した背景にある、技術や社会の変化についての考察は興味深かったです。
さらに、まとめとして筆者が述べている「では、和食とはどんな食文化なのでしょうか。▼それは、この国の気候風土に合わせて発展してきた文化です。私が発酵調味料をこの国の文化と考えるのは、それが独自の気候の中で育まれた食品づくりだからです。旬のものを味わうのが和食文化と言われるのは、その土地で食べてこそおいしいもの、他の土地ではつくりにくいものがあるからです。▼……食べ物の定着には、気候風土が関係しているのです。▼人類はたくさんのものを食べてみて、食べられるものを見つけてきました。そして、食べるときに毒にならない、おいしい食材をよりおいしくなるように、大量に栽培する農業に発展させ、その食べ方が工夫されました。食べ継がれてきたものには、必然があるのです。祖先の知恵です。▼そして、今もなお人々は選び続けています。明治時代に入ってきた西洋料理や中国料理も、昭和の時代にアレンジされた洋食・中華も、そして平成の時代に大量に入ってきたエスニック料理をはじめとする外国料理も、今まさに進化の過程にあり、選んでいる最中なのです。」(p.201~202)という言葉は、いままでの私の中にあった”釈然としない”感覚を払しょくしてくれるものでした。
「和食」=「京都の懐石料理」→敷居が高い/伝統的で他の料理に比べて”優れている”
という意識がどこかにあったのですが、どのような形であれ、日本の食文化=和食という理解は一種の「救い」であると感じます。
社会や技術の時代ごとの変化や、今までにはなかった他の地域の食生活に触れる様々な機会により、私達の食文化は(あるいは「食」以外の分野についても)変化していくことになります。
もちろん「伝統的な食文化」として、いわゆる「和食」と聞いて想像するような懐石料理のようなものを後世に継承する必要はあるにせよ、それ以外の形を全否定すること(特に、「伝統」の形から少しでも逸脱したものを「和食ではない」と否定すること)は、「和食」という日本の食文化を継承してゆくことの妨げにしかならないようにも感じます。
平成という一つの時代が終わろうとしているこれからの世の流れの中で、”伝統”がどのように継承され、また私たちの食生活がどのように変化していくのか、(私自身は台所に立つのは皿洗いだけですが)気になるところです。続きを読む投稿日:2019.01.04
和食=料亭で出されるような料理、それともおふくろの味?明治の開国後の日本の食卓史をふりかえって、肉や乳製品、カレー、ラーメン、コロッケや餃子などいまや定番料理となっているものがどのように受け入れられて…きたかわかる。
江戸時代の長屋は火事対策で満足な調理環境がなく屋台で買ってくるのが当たり前だったとか、システムキッチン以前は揚げ物は家庭ではできなかった、とか、高度成長期の専業主婦が日替わり献立をよりどころにした理由、さらには外食産業の移り変わり、給食や家庭科の教科書までとりあげ、料理だけでなく、生活環境や社会の変化まで見渡していておもしろい。続きを読む投稿日:2015.05.14
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