赤の女王 性とヒトの進化
マット・リドレー(著)
,長谷川眞理子(訳)
/ハヤカワ文庫NF
作品情報
「同じ場所にとどまるためには全力で走り続けなければならない」(キャロル『鏡の国のアリス』に登場する赤の女王の言葉)。生物の種も、生き残るためには常に環境の変化に対応し進化し続けなければならない。そもそも人間にはなぜ性が存在するのか。普遍的な「人間の本性(ヒューマン・ネイチャー)」なるものはあるのか。それは男女間で異なるのか。科学啓蒙家リドレーが、進化生物学に基づいて性の起源と進化の謎に迫る。
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商品情報
- シリーズ
- 赤の女王 性とヒトの進化
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 生物・バイオテクノロジー
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- ハヤカワ文庫NF
- 書籍発売日
- 2014.10.15
- Reader Store発売日
- 2014.12.02
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 640ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (10件のレビュー)
-
『やわらかな遺伝子』などの著作でも有名な進化生物関連のサイエンスライターのマッド・リドレーの代表作。しばらく絶版になっていたが、再版され、Kindle版も出たため手に取った。内容も古くなく、なぜ絶版と…なり入手できない状態になっていたのかわからない。
タイトルにある「赤の女王」とは、『不思議の国のアリス』で、”この国では同じ場所にとどまるためには全力で走り続けなければならない”、と言った赤の女王のエピソードから取られた学説を意味する(リドレーが初めて用いたわけではない)。いわく、進化とは、遺伝子間の絶え間ない生き残りを賭けた競争の結果であるという洞察を示している。生物は、寄生者との戦いのために遺伝子的多様性を持つことが必要で、その多様性を保つための効果的な方法が有性生殖と言われている。この観点において、有性生殖には、そのデメリット(相手を見つけないと繁殖できない、など)をしのぐメリットがあるのだ。寄生者は、どんどんとその攻撃手法を変えて成功したものだけを生き残らせる。薬に対して常に耐性ができる病原菌が現れるという事実がそのことを証明している。「性」というものは、遺伝子が変わり続けるために、進化の歴史上必然的に生まれたものだ。変わらないものは、生き残ることができないのだ。
さらに、性は、寄生者との競争のために導入されたが、競争原理は同種の異性間でさえ適用されている、と続ける。リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』以来認識されている通り、自然淘汰は、種でも個体でもなく、遺伝子において働くのだ。
「性」の目的は繁殖にあり、その繁殖を司る「性」が淘汰圧を受けていることは当然だ。ヒトを含む生物の特性のほとんどすべてが繁殖成功度を高めることににつながっていることを認めることから始めるべきなのだ。知性や言語能力もその例外ではなく、同性内での競争や異性間の駆け引きを通して、他者を出し抜くいて子孫を紡ぐのに有利であったからこそ人類において爆発的に発達したと言える。
本書では、さらにヒトにおける性差や美醜の基準についても踏み込んで論じている。特に一夫一妻制/一夫多妻制における両性の戦略の違いについて詳細に論じられている。そのような議論の中では、著者も意識をしているように、時に両性平等のポリティカルコレクトネスに抵触しそうになる。この点についての著者の態度は次のフレーズに集約される。
「男性と女性は異なる肉体をもっている。この相違は進化による直接の所産である。女性の肉体は、子どもを産み育てるという必要性や食物となる植物を採集するという必要性に合うように進化した。男性の肉体は、階層的社会のなかで台頭し、女性をめぐって争うという必要性や、家庭に肉を供給するという必要性に合うように進化した。
男性と女性は異なる心をもっている。この相違は進化による直接の所産である。女性の心は、子どもを産み育てるという必要性や食物となる植物を採集するという必要性に合うように進化した。男性の心は、階層的社会のなかで台頭し、女性をめぐって争うという必要性や、家庭に肉を供給するという必要性に合うように進化した。
最初の文章は平凡だが、二番目の文章は挑発的である。男性と女性が進化的に異なる心をもつという主張は、あらゆる社会学者や品行方正な人々に忌み嫌われる。しかし私は、二つの理由からこの主張は正しいと信じている。第一に非の打ちどころのない論理である。...第二に、動かしがたい証拠がある。」
「差異」と「差別」は違う。科学的姿勢とは、その二つを明確に区別をすることだと言える。もちろん、「差別」はほとんど常に「科学」の姿をまとって現れる。そのことに対して正当な警戒心を抱くことが、現代における科学的姿勢というべきだろう。ふと、この本が長らく絶版になっていたことを思い出す。しかし本書は、「差別」に利用される危険性をはらみながらも、ライターとしてそのような姿勢を持って書かれていることは確実だ。
著者は、本書について、「「人間の本性」という特性を探求していくものであり、「人間の本性がいかにして進化してきたいかを理解することなくして、人間の本性の把握はありえない」という論旨に沿って進められる」とはじめに述べる。第一章のタイトルも「人間の本性」だ。そして、最後にて、その「人間の本性」を理解するという目標に対して、「そのゴールに到達することは決してないだろう。そして、そのほうがおそらくよいのだ。それでも「なぜか?」と絶えず問い続けているかぎり、我々には崇高な目標があるのである」という言葉で結ぶ。
「人間の本性」などというから、まるで凡庸な結びであるように感じる。しかし、もはや進化生物学の援用なくして、ヒトについての本質的な理解はできない、というのが共通理解となったということが重要だと思う。続きを読む投稿日:2014.12.28
性淘汰が優勢でイケメンや美女の遺伝子が残ってくなら未来人はどんどんルックスが良くなっていくのかな?
実例が豊富で飽きなかた投稿日:2023.05.31
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