はい、泳げません
高橋秀実(著)
/新潮社
この作品のレビュー
平均 3.6 (60件のレビュー)
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村上春樹推薦
村上春樹さんが「無類に面白い本です」と単行本の帯で推薦しています。
また「走ることについて語るときに僕の語ること」の著書の中で、若い女性の水泳コーチに教わる話が紹介されているのですが、おそらく高橋桂コ…ートのことと思われます。続きを読む投稿日:2016.02.04
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【概略】
「泳ぐ」などというレベルではなく、とにかく「水」が嫌いな筆者、夏になるとプールの授業が本当に嫌で、あらゆる手段を用いて授業から逃げていた。そんな筆者が大人になってから水泳教室に通うことに。…「泳げない」から「泳げる」へ。そこには「泳ぐ」以上の何かがあった。
2024年01月08日 読了
九州遠征の最中に手に取った一冊。有隣堂書店の YouTube で紹介されていたものをリストに入れてあったのだよね。
人情噺を聴いているような感じだったよ。前半は抱腹絶倒、後半はどことなく哲学的な風味、なんとも爽やかな読了感。
主に飛行機の中で読んでいたのだけど、前半は声を上げて笑ってしまった。ワードチョイスが落語みたいなんだよね。「水というより、人の視線の中を泳いでいる気がした」なんてくだり、秀逸至極。また「泳ぐ」ことに対しての理屈のこね方がなんともいえない。人は嫌なもののためには、かくも細やかな言及ができるのかと感心したよ。
そして後半、「泳ぐ」に向けてまさしくもがく展開なのだけど、これがまた深い。一般的な水泳のレッスンは、顔を水につける、とか壁に手をあてて足をバシャバシャさせるとか、そういったものを連想するかと思うし、筆者もそういったものを想定して臨んでいた。しかしながら師事した方・桂コーチの考え方はもっともっと俯瞰した感じ、身体の機能のところを意識した内容になってるのだよね。たまたま「水泳」というテーマになっているけれども、どちらかというと「武術」「武道」を感じさせるような、そんな内容なのだよね。これは桂コーチが、幼少からガチの水泳トレーニングを受けて創り上げられたスイマーという立場から、交通事故によって身体が動けなくなるという立場に変わり、そこから「身体を動かす」ということが当たり前ではなくなったところから意識して「身体を動かす」ことを習得したことに由来していると思う。実に興味深い。
技術的な観点からも目から鱗だったなぁ。自分も日常生活の中に「泳ぐ」という事柄が入っていて。・・・といっても毎日泳いでる訳ではない。水中で歩く・泳ぐを休みながら1キロ分、こなすというもの。ラストは潜水25メートルを2セットやって終了というものなのだけど、本を読みながら早速プールで試したくなったし、桂コーチのレッスンを受けてみたいと思ってしまったからね。
また面白いなぁと思ったのが、教える側と教わる側の言葉のすれ違い。よく教わる側は「もっと具体的に」なんて言うじゃない?たとえば「ちょっとだけ顔をあげて」の「ちょっと」はいくばくなものか?3センチなのか5センチなのか?嫌なものを習得しようとする時、人はとにかくやらなくてよい理由を探すもの、今回も筆者はとにかくこの「ちょっと」がわからないという。これはまぁ、無理もない。そしてこうも言う、「コーチは毎回、言っていることに矛盾がある。昨日は〇〇だと言ったのに今日は△△だと、昨日の話と矛盾する言い方をする」というもの。ところがコーチはコーチで考えがある。コーチ曰く「人の身体は一つとして同じものはない。色々な言い方をすることでカチッとはまることがある」という。そして筆者は「泳げる」という状態を理解することで、全てのコーチの言葉を理解するという。物事は落ち着くまでに時間がかかるのだよね。
本書全体で桂コーチが発言している身体の動き、これは介護であったり、年配の方達が運動機能を落とさないようにするために凄く重要な気がした。どうしても年配の方達に手厚く、寄り添う介護がされがちであるが、実は自身の身体で動くということは、大事なのではないかと思ってしまう。
問題は・・・心を鬼にしてそれを年配の方達に強いることができるか?自分の両親の将来を考えながら読み進めたよ。続きを読む投稿日:2024.01.11
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