ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」
高瀬毅(著)
/文春文庫
作品情報
長崎にも「原爆ドーム」があった――。それは爆心地の北東500メートルほどの位置に立つ、高さ25メートルの鐘楼を持った浦上天主堂。しかし1925年に完成し、東洋一と謳われたこの天主堂は原爆によって廃墟と化す。当初、被爆遺構として保存に積極的だったはずの長崎市長だが、訪米を経て「原爆の悲惨を物語る資料としては適切にあらず」と発言し、撤去路線に転換。結果として旧浦上天主堂は1958年に撤去されるに至る。世界遺産クラスの被爆遺構はなぜ失われたのか? 市長の翻心の裏には何があったのか? 丹念な取材によって昭和史のミステリーを解き明かした渾身のノンフィクション。
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商品情報
- シリーズ
- ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」
- 著者
- 高瀬毅
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2013.07.10
- Reader Store発売日
- 2013.08.02
- ファイルサイズ
- 5.7MB
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この作品のレビュー
平均 4.6 (8件のレビュー)
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驚愕のルポルタージュ
これは絶対に読むべき一冊です。
浦上天主堂という物を私はまったく知りませんでした。
戦争の悲惨を物語る遺物や遺構は年とともに風化し、人々の記憶もやがて薄れていくものですが、あれだけの、人類の歴史上あ…れほどの大量殺戮を、私たちは忘れてはならないし、もう二度と繰り返してはいけないと思います。それはもう、地球に生きる一人の人間として思います。戦争に勝った負けたなどというくだらない話ではなく、戦争を二度と起こしてはならない。
そういう決意にもとづけば、記憶や、記憶を呼び覚ます遺物は、あらゆる努力で風化に抗う責任があり、多くの資料館や式典などがそれを可能にしてくれています。しかし、私たちは記憶を呼び覚ますための最も貴重な遺物のうちの一つを失った。人の手で、意図して、消し去ったのです。この地上から永久に。戦災で傷ついた街並みが復興するように、復興の励みとして。被災した浦上天主堂です。
今、その遺物を思えば、その失った事実自体がまず辛すぎるのですが、この本は、それ以上の辛い可能性を伝えています。天主堂が作為によって撤去されたかもしれない、と言うのです。取り壊しの経緯に潜む愚かな策謀があったかもしれない事を指摘しているのです。長年の調査による、驚くべき根拠を示しながら。著者のその努力にただただ感謝しながら、読みました。
本書を3カ月前に読んだのですが、そのときはこのwebページがレビューを書けるようになっていなかったので、本当に残念で、わざわざソニーに電話までして問い合わせたのですが、著者の意向かそういう本もあるとのことでレビューを書くのを諦めていました。69回目の原爆忌に報道で浦上天主堂が取り上げられたこともあり、再度このページをみたら、現在はレビューが書けるようになっていたので、書きました。
皆さん、本当に、ぜひ読んでください。続きを読む投稿日:2014.08.11
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広島には原爆の悲劇を後世に伝えるための象徴的なモニュメントとして「原爆ドーム」がある。しかし長崎にはそのようなものがない。それはなぜか。
実は長崎にも「原爆ドーム」になり得る被爆遺構があった。浦上…天主堂だ。
戦後もしばらくは撤去もされずに残った遺構を、原爆の記憶として残すことに、市議も市長も保存に向けて前向きだった。同地に天主堂の再建を目指していた司教も、市民が望めば、遺構を保存することにやぶさかではなかった。行政も市民も土地権原者も保存に向けて動いていたのだから、現存していてもおかしくはなかった。
しかし戦後13年目にして、取り壊されてしまった。
ひとつのきっかけとして市長の変節がある。
戦後10年を機に長崎にアメリカのセントポール市との姉妹都市提携の話が持ち込まれた。今でこそ姉妹都市なんてそこら中にあるので珍しくもないが、これはその第1号、日本初だった。
この話を進めるためにアメリカに渡った市長は、行く先々の都市で歓迎を受け、繁栄を極めるアメリカに魅了されてしまい、言うなれば懐柔されてしまった。(アメリカが浦上天主堂の遺構を撤去するように市長に迫ったかどうかは不明。長崎市に対してなにかしらの条件を出したかどうかも不明。なので、市長がただただアメリカに魅了されただけなのか、長崎の発展のためにはアメリカと友好関係を第一にしようと考えたのか、その辺も不明)
当時のアメリカは反共政策のひとつとして、その財力にものを言わせて、世界各国の要人や若者を招いては歓待をし、親米家を増やすということをやっていたらしい。そのための専門機関(USIA)もあった。United States Information Agency の略で日本語ではアメリカ広報・文化交流庁というらしい。日本語にするとちょっとした観光促進とか、文化交流の推進みたいなイメージだが、目的は反共政策だから、その規模は推して知るべしだ。
もう一つのきっかけは土地権原者である浦上天主堂の山口司教が、これまたアメリカ各地を巡り、天主堂再建のための寄付集めに奔走したことだ。でもこちらは変節ではない。天主堂再建は司教にとっても信者にとっても復興の第一の眼目なのだから。
浦上という土地は江戸時代から、何度も何度も迫害を受けた土地だった。隠れキリシタンとして潜伏し数百年に渡り信者は耐え忍んだ。天主堂の建てられた場所はかつて信者たちに踏み絵を強要し、拷問した庄屋のあった丘だった。彼らは自分たちの信仰を弾圧した権力者の建物を壊し、その上に天主堂を建てた。その意味から、遺構を残したいからといって、天主堂を違う場所に移転するということは簡単なことではなかった。やっぱり同じ場所に復興の証として再建したいという思いがあったのだろう。
このような経過で撤去への動きは加速していく。市民も権原者も撤去へ、残りは市議と市民の声が頼りだが、実は市民の関心はそれほど高くなかった。それも浦上という土地に関係している。
当初の原爆投下予定地の長崎市内中心部から浦上は西に少しずれている。原爆投下時、市内が前日の空襲の影響で煙っていたため、浦上に目標がずれてしまったわけだが、市民の中には「浦上は耶蘇教の土地だから天罰が下ったんだ」と考えている人もいた。市の中心付近の人たち比較的被害が少なく、諏訪の神様が守ってくれたんだ、と思った。(有名な『長崎くんち』は諏訪神社のお祭り)
市民の声も、なんとしても保存!というような強いもの、強いまとまりはなかったようだ。
東日本大震災のときも震災遺構の撤去と保存の問題が住民の間であったから、保存ということでまとまるというのはなかなか難しかったのかもしれない。あの遺構をみると原爆を思い出すから早く撤去してくれなんて声もあったろうし。
でも、たぶん市長が変節しなければ、残った可能性は大だ。
一方の広島の原爆ドームは何で残ったのだろう? 調べてみよう。続きを読む投稿日:2017.08.15
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