アクナーテン
アガサ・クリスティー(著)
,中村妙子(訳)
/クリスティー文庫
作品情報
古代エジプト第十八王朝の王アメンヘテプ四世(アクナーテン)は、勢力を増すアメン神の神官団排除のため、太陽神アテンを唯一神とする宗教改革を断行。その歴史的事件をもとに、若きアクナーテンと美しい妻ネフェルティティの愛、民に自由を与えるはずの彼の計画が崩壊する様を劇的に描く。
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商品情報
- シリーズ
- アクナーテン
- 著者
- アガサ・クリスティー, 中村妙子
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- クリスティー文庫
- 書籍発売日
- 2004.10.15
- Reader Store発売日
- 2012.08.03
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (12件のレビュー)
-
古代エジプトを舞台にした戯曲。
ミステリではなく、有名な王アクナーテンの生涯のポイントを描いたもの。
多神教が信じられていた古代エジプト。
中でもアメン神殿が王をしのぎかねないほどの大きな勢力を持っ…ていた。
アクナーテンの母である王妃ティイは、神官の横暴に不信を抱きつつも権力を守るために神殿と結びつき、息子の純粋さを心配しているところから始まります。
軍人のホルエムヘブは信仰心は薄く現実的でまったく違うタイプだが、まじめさに通じるところがあり、アクナーテンは親友と思うほどになる。
王位についたアクナーテンは、太陽神であるアテンのみを信じる一神教とし、遷都して芸術家を集め、皆が愛し合う平和で美しい都を築こうとする。
外敵に襲われた属国や友邦に援軍を送ることを拒み、大罪人も厳罰を与えずに穏やかに反省させようとするアクナーテン。
エジプトは混乱し、次第に衰退していく。
美しい王妃ネフェルティティは夫を愛し続けるが、夫の宗教観を理解はしきれない。
貴族の少年ツタンカーテン(後のツタンカーメン)はネフェルティティの次女と結婚し、後継者となるのだが。
忠実だったホエルムヘブはついに耐え切れなくなり、王の暗殺を決意。
ネフェルティティの姉妹は野心家でホルエムヘブの妻となることを選び、後に王妃となるのだった‥
ホルエムヘブが軍人から王になったのは史実で、第18王朝の最後の王。
アテン神信仰を異端としてアクナーテンら4代の事績を抹消したため、正確なことがわからないんですね。
そのあたり、空想を膨らます余地もあるという。
アクナーテンは一神教をおこしたことでキリスト教社会では人気があるそう。なるほど。
紀元前1350~1334年頃の在位。
キリストの早すぎた先駆者といったところでしょうか。
(日本人にとっては、多神教を信じる庶民感覚もわかる気がするんだけど)
この時代についてはクリスチャン・ジャックの「光の王妃 アンケセナーメン」が詳しく、面白いですよ。アンケセナーメンは少年王ツタンカーメンの妃になった王女です。
アガサ・クリスティは考古学者マックス・マローワンと1930年に再婚。
この作品は1937年に執筆されていたが未発表で、1973年に刊行された。
気に入っている作品だそう。
個性豊かな歴史上の人物をいきいきと描き出した筆致は乗っていて、気に入っていたのはわかる気がします。続きを読む投稿日:2013.06.23
アクナーテン
どんな作品でもそうだが取りかかる順番はとても大事で、相乗効果で面白さが増す事がよくある。今作、「アクナーテン」を読む前に「ファラオの密室」(2024年)という作品を読んでいた為、世界観…が踏襲され、まるで続編を読んでいるかの様な感覚になった。
「ファラオの密室」では神官とこの時代に生きる市民や奴隷、神々を中心に物語が描かれ、「アクナーテン」ではこの時代のファラオ、王族達を中心に物語が進められる。
今作に登場するファラオ、アクナーテン(おそらくアクエンアテンは読み方の違い)は愛と平和に憧憬する王なのだが、歴史上は余り評価されていない。彼が憧れる世界は理想郷であり、人間の悪い部分、醜い部分が一切見れていない。
彼の母親であるアイや妻であるネフェルティティ、心から信頼しているホルエムヘブなど彼を慕う人物達も沢山いる中で、大国エジプトのファラオの強大な権力、影響力が如何に秩序をもたらしていたのかという事がとてもわかりやすく設定されている。
戯曲は読み慣れていないし、実はクリスティ作品は沢山読んでいたが戯曲と恋愛シリーズは手付かずだったのだが、上記のきっかけもあり、クリスティ作品をもっと楽しみたい思惑もあり、読み始めてみた。
また、エジプト史は学生時代に興味を持っていた分野だったので、抵抗がなく、更に「ファラオの密室」で感じた余韻を楽しみたい意図もあり決心した次第だ。
世界観について、クリスティの設定は見事で、考古学に深い理解のある彼女ならではだと思う。
アクナーテンは悪王としての印象があるが、決してエジプトを滅亡に導いた訳ではなく、彼の思想、経験が破滅への土台になっていたという設定だ。彼はエジプトの神々を抹消し、一神教を強要していくが、その中で腹心であったはずのホルエムヘブさえもが彼の元をさり、最後、唯一愛したネフェルティティのみが彼の元に残るのは印象的な結末だ。
同じ時期にエジプトに関わる偉大な作品を、しかもミステリ、戯曲という型で読む事ができ、改めてエジプト史への興味が湧いてきたと同時に、ツタンカーメンに関わる文庫がまだ家にあったため、いずれ読もうと思う。
アクナーテンだけの感想では無いが、とても楽しめた一週間だった。続きを読む投稿日:2024.03.02
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