中国東北部の「昭和」を歩く
鄭銀淑(著)
/東洋経済新報社
作品情報
戦争を知らない世代が見た旧満州の残像――。
私は歴史学者でも、研究者でもありません。
ただ、日本の植民地時代に思いを馳せるのが好きな旅人に過ぎません。
幸いにもさまざまな縁があり、かつての満州国で暮らした方たちと出会って、いろいろな話を聞くことができ、このような本を書く機会に恵まれました。
私が住む朝鮮半島や、中国東北部、台湾の日本植民地時代については、個人によって評価が異なるので、その是非をどうこう言うつもりはありません。私は、かつての満州の地を歩き、満州時代の日本人や中国人、朝鮮人がどのように暮らし、どんなときに笑い、どんなときに泣いたのかを想像してみたかったのです。
歴史の難しい話は抜きにして、海洋まずは中国東北部に出かけてみませんか。──著者・鄭銀淑
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
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「歴史の難しい話は抜きにして、まずは出かけてみてほしい」 行きましたがな
鄭銀淑さんは韓国人の紀行作家で日本の植民地支配下の1910〜40年代の当時の生活に興味を持ち、旧植民都市群を歩いた記録を『韓国の「昭和」を歩く』というタイトルで出版した。これはその第二段日本人、朝鮮人…、中国人がともに暮らした満州の都市を歩き当時の様子をインタビューしている。しかし当時は日本人が「一等国民」朝鮮人が「二等国民」そして中国人が「三等国民」とされ「五族共和」はどう見ても建前、中国人は朝鮮人移民のことを日本の大陸侵攻の走狗と見ていた。終戦後中国人からの恨みを買うことを怖れて中国からはなれる人、そのまま現在の朝鮮族として暮らし続ける人、色々な人がいた。
元々朝鮮人が中国に移住しだしたのは清朝のことで満州族は中国本土に移住する一方で満州への異民族の移住を禁じた。満州は空き地のような状態になりそこに自然災害の続く朝鮮から豆満江(図們江)を越えて中国へ移住する人が増えてきた。豆満江の中州を意味した間島は朝鮮人移住地のことを意味するようになり、ロシアの南下政策に対抗するため清朝は移民を奨励するようになった。1909年に日本が清と交わした間島協約で間島は中国領と認められ、1910年の朝鮮半島の植民地化、1932年の満州国成立と日本の移民政策で間島には多くの朝鮮人が住み着いた。ここが延辺の朝鮮族自治州になっている。
間島は抗日パルチザンの活動拠点にもなっており、イデオロギーどっぷりのないようになってもおかしくはないし、日本に対しては言いたいこともあろうがそれはこの本のテーマにはなっていない。当時からすんでた人の生の声や当時の雑誌の内容は紹介しているが「歴史の難しい話は抜きにして、まずは出かけてみてほしい。本書がその小さな後押しになりますように。」という本だ。
第1章は延辺の中心都市延吉と龍井、第2章が図們、琿春、和龍、第3章が長春(新京)、第4章が瀋陽(奉天)で第5章が大連・旅順だ。しかし何と言っても旧間島の第1章と第2章が面白い。しかも本書が発行された2011年の夏にこの内の4都市に行ったので読む前に出かけてしまっている。中国赴任中に行った場所の中でも中国、ロシア、北朝鮮国境が1点で交わる琿春の防川は最もインパクトのある場所だった。
延吉は当時の間島省の首府で中国人の中心地、そして龍井が朝鮮人の中心地だった。今では延吉の59%が朝鮮族になり逆転している。90年代以降韓国との国交が結ばれると「コリアンドリーム」を追いかけた多くの朝鮮族が韓国に渡り、今では逆に韓国からの訪問者が増えている。延辺と言えば名物は犬肉だ。しかし訪問中は毎日飲まされ続けぼろぼろだったので味は全く覚えていない。ちなみに有名な龍井茶は浙江省の産なのでこことは全く関係ない。それでも鄭さんの一番のお勧めはこの龍井だ。当時の龍井で食べられたそば粉で打った冷麺と一番近いのは延辺やソウルではなく東京赤羽の『東京園』という焼き肉屋のものだと言うのが面白い。
図們は北朝鮮との国境の町、図們江公園では入場料2元で図們大橋の橋の真ん中の国境線まで歩いていける。鄭さんは「ただの線なのに越えられない。」と書いているが見張りもなく観光客はこっそり越え放題だった。ここの川幅は広めだが流れは穏やかで、下流にはもっと狭いところもある。中国には戸籍のない人も多いしそりゃ脱北もするわなと思ったものだ。
琿春はロシアと北朝鮮の国境の町、ロシア人が普通に買い物に来ているし街も少しロシア風だ。鄭さんの乗ったタクシーは軍関係の偉い人が通り過ぎるまで待たされたが、私たち一行は何のコネだか国境警備隊の隊長さんが案内してくれた。普通にいける防川国家風景名勝区を越え、朝ロ鉄橋のすぐ近くまで行けた。携帯電話の伝播はロシアのものだ。(名勝区に行くまでにロシアの土地を借りて道路を引いている)またこの隊長さんがめちゃくちゃ酒が強い。ここでもつぶされた。
そして和龍市、鄭さんが行ったのは満州時代に建てられた旧駅舎、中を見たいといったがケンモホロロに追い払われた。私たち一行が行ったのは場所を覚えていないのだが山の中の農家料理。歓迎してくれたのが市の副書記だったような。水も空気もきれいで養殖した鱒やら野菜はうまかったが同じくつぶされた。
長春、瀋陽そして昨年生きそびれた大連と旅順。機会があれば行ってみたいものだ。つぶされなければ。
続きを読む投稿日:2015.03.10
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戦前、「五族協和」というスローガンを掲げ、多民族が共存していた満州国。事実上日本が支配していたこの国で日本人は「一等国民」とされていた。現地の中国人は「三等国民」。ここで「二等国民」とされていたのが…、朝鮮の人々だ。
韓国人の著者は、延辺、長春、瀋陽、大連と旧満州の残像を訪ね歩く。中国に住む朝鮮族の人々にスポットを当てるあたりは著者ならでは。中国からの引き揚げで大変な苦労をした日本人や、中国残留孤児の話は何度も読み聞きしてきたんだけど、この視点は新鮮だった。
海外に行くとついつい古い建築に目を奪われてしまう私。日本はアジアの旧植民地で多くの建築を残しているけど、日本の傀儡政権だった当地もしかり。日本と瓜二つの建物がいまだに残っている。驚いたのが、291㌻の大連駅舎。完全なる上野駅のコピーだ!
他にも印象に残るような旧満州時代の古い建物が残されているこの本のエリアに行ってみたくなった。続きを読む投稿日:2013.09.10
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