どぶどろ
半村良(著)
/扶桑社BOOKS文庫
作品情報
江戸の下町吹き溜まり、そこに降って沸いた怪事件。夜鷹蕎麦屋の親爺が切り口鮮やかな一刀のもと殺された。殺しの真相を追う平吉がたどり着いた真実とは?人気作家宮部みゆきに「いつかこんな小説を書いてみたいと思いました」と言わしめ、また彼女の長編時代小説『ぼんくら』のヒントともなった傑作。
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商品情報
- シリーズ
- どぶどろ
- 著者
- 半村良
- 出版社
- 扶桑社
- 掲載誌・レーベル
- 扶桑社BOOKS文庫
- 書籍発売日
- 2001.12.01
- Reader Store発売日
- 2011.07.15
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 492ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (10件のレビュー)
-
構成も内容も、とんでもない小説でした!
宮部みゆき氏が憧れた小説とのこと。それ以外の予備知識は何も持ち合わせず読み始めました。最初は、連作短編集かなと思いました。一つ一つが江戸下町の人情噺っぽく、珠玉の一言等も多く散りばめられています。た…とえば、「本当の苦労ってのは、自分が何かやろうとして、それではじめてぶつかるもんだ」とか、「身が楽より気が楽な方がいいという奴だ」等々。これらが宮部時代小説ワールドに引き継がれているんだなぁと感じつつも、それぞれの話は、どこか尻切れトンボ感もあり、一抹の物足りなさも…。ところどっこい、7つの短篇の後、長編である本編「どぶどろ」に入ると、状況は一変してしまいました。
これまで語られていたバラバラ(と言ってもそれぞれ関連はあったのですが)のものが、すべてこの本編のプロローグとなっています。巻末の解説を読むと、作者である半村良氏は、最初からそのような構成を考え、短篇を発表していたとのこと。また、一冊にまとめるに当たって、順番の入れ替えもしているそうです。もしこれから読まれるならば、この短篇を腰を据えて読む必要があります。本編の方は、かなり込み入った内容となっていますから、短篇だからといって侮ってはいけません。そして、この前半の短篇がすべて伏線となって、推理小説ともミステリーとも思えるストーリーが、「がに股の平吉」を中心に展開することとなります。
舞台は江戸。山東京伝や馬琴の活躍していた時代。実名で彼らも登場します。「どぶどろ」とは、どぶの泥の意味です。つまりお上や一部の権力者による、あったかもしれない、いや、あったに違いない巨大な陰謀の中、閉塞感漂う市井に生きている人々のお話です。この手の小説ですから、あまり詳しく書くわけにはいきませんが、私にとっては、久々に作者の語る世界に、どっぷりのめり込んでしまう小説でありました。流石に宮部みゆき氏をして「こんな小説を書いてみたい」と言わしめただけのことはありました。正直言って、後味爽やかというわけにはいきません。でも、巻末に掲載されている宮部みゆき氏の「平吉の幸せ」という短文に、ちょっと救われた気がいたしました。
これをヒントに書かれた「ぼんくら」は、テレビドラマでは見ましたが、小説はまだ未読です。この小説を踏まえた上で、宮部氏がどんな世界を構築したか、いずれ触れてみたいと思います。続きを読む投稿日:2016.09.26
-
「半村良」の連作時代小説『どぶどろ―昭和ミステリ秘宝』を読みました。
ここのところ時代小説が続いています… 「半村良」の作品は、少年の頃に『石の血脈』、『産霊山秘録(むすびのやまひろく)』等のSF伝奇…小説を読んで以来なので約40年振りですね。
-----story-------------
「半村良」の時代小説の傑作、ここに復刊
江戸の下町吹き溜まり、そこに降って沸いた怪事件。
夜鷹蕎麦屋の親爺が切り口鮮やかな一刀のもと殺された。
殺しの真相を追う「平吉」がたどり着いた真実とは?
人気作家「宮部みゆき」に「いつかこんな小説を書いてみたいと思いました」と言わしめ、また彼女の長編時代小説『ぼんくら』のヒントともなった傑作。
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市井の人々の哀歓を細やかな筆致で謳いあげる大江戸人情世話ミステリ… 絶版となっていたようですが、2001年(平成13年)に「昭和ミステリ秘宝」シリーズのひとつとして復刊された作品です。
■いも虫
■あまったれ
■役たたず
■くろうと
■ぐず
■おこもさん
■おまんま
■どぶどろ
■平吉の"幸せ" 宮部みゆき
■解説 日下三蔵
魔が差して掛け取りの金に手を付けてしまった莨問屋の手代「繁吉」の苦悩を描いた『いも虫』、
亭主に先立たれ商売敵の囲い者となった女房… その子どもたちに乞食が放った痛切な台詞が印象的な『おこもさん』、
等々、江戸時代の一般庶民の悲哀を描いた独立した短篇7篇が続いた後、、、
本所で発生した夜鷹藁麦殺し… 「山東京伝」の従者「平吉」は、その謎を追ううちに、意外な真相に到達するという長篇の捕物帳『どぶどろ』に前7篇が収斂されていくという展開でしたね。
短篇7篇は、それぞれ短篇として成り立っているのですが、やや物足りない感じ… でも、それは『どぶどろ』を描くための伏線だったからなんですねー
全8篇がひとつの長篇と理解した方がわかりやすいかも… 巧みな構成が愉しめましたね。
『どぶどろ』は、短篇に登場する善良な人々が事件に巻き込まれ、それを追及する「平吉」は親と慕う人々の正体を知る… そして、いままで自分が偽物の人情の世界で生かされていたことを知るという切ない展開、、、
暗くて重くて救いようのないエンディング… 敵があまりにも巨大で、非力な弱者は太刀打ちができず、勧善懲悪の清涼感はなく、印象深いけど、ただただ辛いくて受け入れ難い結末だったなぁ。続きを読む投稿日:2024.01.04
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