国家の存亡 「平成の開国」が日本を亡ぼす
関岡英之(著)
/PHP新書
作品情報
国論を二分するほどのTPP(環太平洋経済連携協定)参加問題。「日本はバスに乗り遅れるな」とマスコミは喧伝し、経済界もメリットは大きいと旗を振る。しかし、日本の市場は、本当に閉ざされているのだろうか。こうした議論もないまま進められるTPP推進論。農業問題だけがクローズアップされているが、医療、投資、労働、金融など、国のかたちを変えるほどの大問題なのだ。果たして、国民は24の幅広い分野で検討されていることを知っているだろうか。事実上、TPPは日米間取引であり、推進の裏には、米国の国家戦略が垣間見える。さらに、その先には中国の陰も見え隠れする。たとえば、日本の民有林(7割、国有林3割)を外国人バイヤーが買うことを手放しで受け入れていいのか。水の確保や安全保障上、重大な問題を孕んでいることが指摘されている。国の存亡にかかわることだけに、国民はそのことを十分知る必要がある。
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商品情報
- シリーズ
- 国家の存亡
- 著者
- 関岡英之
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2011.05.01
- Reader Store発売日
- 2011.07.01
- ファイルサイズ
- 3.2MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (10件のレビュー)
-
TPP(環太平洋経済連携協定)の解説書でもあり、医薬品業界の規制緩和の今と未来への変化を感じ取るには、必読の書と言えるでしょう。
投稿日:2011.08.16
著者は銀行員を勤めた後、独立した方。4年前の民主党政権時代に書かれた本だが、タイトルがわかりにくかったのでTPPがテーマとは気がつかなかった。TPPはもう妥結してしまったが、国民の代表である国会の批准…はこれからだから、まだ読む価値はあるだろうと思った。
1989年の宇野・ブッシュ会談で合意されて、日米構造協議が2年間行われた。1993年の宮澤・クリントン会談で日米経済包括協議を合意したのを受けて、年次改革要望書が翌94年から開始された。95年からは保険分野の市場開放を目的とした郵政民営化があげられている。民間保険市場は95年に法律が改正されて開放され、2000年前後には9社の中小生命保険会社が経営危機に陥って外資系に買収された。2001年の小泉・ブッシュ会談で「成長のための日米経済パートナーシップ」に変わり、年次改革要望書は2008年の麻生政権まで続いた。
日米経済包括協議の一環として「投資・企業間関係作業部会」(後に日米投資イニシアティブ)が設置され、1998年にアメリカから提示された提言には、M&A、労働、土地の3分野18項目があげられていた。M&Aの分野では、連結納税、株式持ち合いの解消(時価評価制度)、企業統治(社外取締役制度など)、M&A(三角合併)、会計制度(減損会計)、会社倒産手続き(会社更生法の改正、産業再生機構を設立)、労働分野では、労働市場の流動性を高めることを目的とした確定拠出型年金制度、労働者派遣事業の自由化、土地の分野では、賃貸契約の規制緩和(提起借家制度)、不動産証券化(日本版REIT)が小泉政権までに実現した。
民主党政権に代わって、蓮舫大臣が主管する行政刷新会議の下に規制・制度改革分科会が2010年3月に設置されたが、これは後にTPP参加交渉とリンクされた。さらに、2011年2月に日米経済調和対話が開始されて、三位一体として推進されるようになった。
2011年の日米経済調和対話でアメリカ側から示された関心事項からは、攻略目標が農協と医療に移ったことがわかる。農業の小項目には、残留農薬問題、有機農作物、食品添加物、ゼラチンが、医療では医薬品・医療機器があげられている。農協については、金融部門を分離することが掲げられており、郵便公社の4分社化と同じ目的。医療の事後チェックとは、患者が自己責任で治療を選び、被害にあった場合は裁判で解決すること。
アメリカのグローバル化戦略は、1980年代のGATTウルグアイ・ラウンドで、金融・情報・通信などのサービスや、商標・特許などの知的財産権の維持・強化に重点を移し、1990年代のクリントン政権では、資本移動の自由化や国内規制の撤廃を迫るようになった。NAFTAでは投資分野においてアメリカのルールを盛り込むことに成功したが、WTOでは各国の危惧を招いて部分的成功にとどまった。OECDでも多国間投資協定(MAI)の成立を画策したがフランスが離脱し、米州自由貿易地域(FTAA)でもブラジルが反発して、いずれも失敗した。TPPでも、投資条項は当初の参加4カ国の協定には存在せず、アメリカが持ち込んだもの。
ISD条項は、外国資本が相手国政府に損害賠償を請求する手段として用意されたもの。審理は世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)で非公開で行われ、強制力を持ち、上訴することもできない。ISD条項はNAFTAで導入されたが、WTO、OECD、FTAAの失敗の原因となったが、米韓EPAで盛り込まれた。NAFTAでISD条項を受諾したカナダは、ガソリン添加物の神経有毒物質を禁止した規制が撤廃に追い込まれたり、水の大量輸出を禁止したBC州が損害賠償を請求されたりしている。
前半の日米構造協議に始まる歴史、小泉政権で次々に実現した政策や民主党政権下の規制・制度改革の実体、郵政民営化と農協改革の目的などは勉強になった。アメリカの要求はアメリカの関連業界の思惑に基づいている。アメリカの要求が日本の国益に資するものであればアドバイスとして参考にすればいいが、日本にプラスになった具体例を著者は思いつかないと書いている。「同盟のコスト」がいかに大きいかを改めて知らされた。続きを読む投稿日:2015.11.17
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