
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「いつの時代も、正しさや現代らしさは、病的なものと捉えられるのかもしれない。…あらゆる運動の最先端にいる人たちが病的に見えるという意見をさも分からなくはない。それでも、気づいてしまった人、見えている人は、もう前に進むしかないのだろう。」
0投稿日: 2025.11.18
powered by ブクログ性加害と性被害、女性と男性ではこうも違うとつまびらかに可視化した長編。ねっとりと濃厚な性プレイも描いているので、R-指定的な描写もありますが、案外今の10代の子達は驚かないかもしれませんね。 長い歴史、搾取される対象だった女性という性。それが怒りに変わった時、結局はSNSに告発するしか道はないのか… これのどこがいけないの?と男性読者は思うのだろうし、こんな男最低って女性読者は思うのでしょうね。いや、女性だって性加害に男性寄りの人もいる。真相は誰にも分からない。当事者でさえも…。 自分はこう見えたのに、別の人からはこう見える…「薮の中」現象。告発した女性もバッシングの嵐にあいます。 終盤意外な展開があります。 砂粒ひと粒ずつ描くように登場人物の深淵を力強く活写します。 芥川龍之介の『薮の中』と、22年前に芥川賞をとった作者の『ヤブノナカ』 この因縁が刺さります。 性加害・性被害という当事者以外は見て見ぬふりのセンシティブなテーマを小説と言う世界線に載せてくれた作者に感謝と脱帽です。 ※月刊誌『文學界』6月号にこの「ヤブノナカ」と金原ひとみさんの特集が30ページに及び掲載されてます。ぜひご参考に。図書館で借りられます。
8投稿日: 2025.11.17
powered by ブクログ2020年代になって急激な時代変化を自分自身の価値観と社会をサバイブ(生き抜く、生き残る)していくことが求められていると考える。 人間それぞれに価値観や考え方があって、作中登場人物も1人1人の価値観や考えが全く違う。 時代の変化で苦しむ者や今を生きる常識に苦しむ者。 改めて、人は分かり合えない。 だが、人をわかり合おうとすることはできると思った。 特に、長岡友梨奈の性被害者に対する思いには感化させられる。 性被害に遭って声もあげれず自殺する者、方や性被害を受け流す者。こうした内容がある中で現代でも性犯罪の認知件数と検挙件数の乖離が生まれるのは、被害者が損をする現代社会の総図である。 「こんなふうに生きるくらいなら死んだ方がいいなと思う境界線がとんでもなく下がってしまった」 この文の中で、小中高生の自殺が年々と上がっていることから考えられる死の境界線が下がったという言葉は、変わりゆく現代をサバイブしていかなくてはならない。
0投稿日: 2025.11.17
powered by ブクログ2025/11/17 ヤブノナカ 金原ひとみさん 出版業会のお話 昭和の時代、セクハラパワハラ なんでもござれの時代だった いま、裁きが降る 時代が変わるってすごい 読んで、疲れました
0投稿日: 2025.11.17
powered by ブクログもうもう週末になると金原ひとみさんの作品を読みたくてたまらなくなり、 女性一人称以外の視点がある作品は初めてで、 自分と近い年代の女性以外が怒りや憂鬱を抱えていることを許せない自分は心の狭い人間だと感じる。 自分一人が憂鬱で不幸で世界中の人を呪う権利があると思い込みたいのに邪魔しないでほしい。なんて思う。 そして私は文学をあんまり読まないので、この業界はときめかなかったなあ。この前読んだ2作はときめきました。ファッションに音楽。 途中にあった、破綻の方が正しく美しい、という表現はこれまで読んだ作品にぴったりだ! しんどい描写も多いけれど、うわあこんな風に話を進めるんだ、なんて感心しつつ読みました。 金原さんてストーリーの組み立てもすごく上手だと思う。気持ち悪いようで清々しくて信頼できなくて。単純な話で終わらせない、本気を見せられた感じ。他の作品も全部、本気を感じたけど。 よくみたら同じテーマなのに展開が予測できない。人と人との関わりは本人たちにしかわからない。他人がジャッジできることじゃない。言葉の暴力は身体に対する暴力と同じ。 ああ、ぼーっとしてしまう。衣食住が疎かになるくらいに。 便利になるほど強欲になる、執着が強くなるということに無自覚な日本人たちはどんどん便利さを求めて自分の首を絞め続けている。憎しみに満ちた社会を作り続けている。 羊とかおろしたらどうかな。 なんて始まりから話がどんどん展開する。 振り落とされないようにしがみつくしかできないようで所々美しい場面に泣きそうになる。 暴力的な解決は根本的な解決ではない、という一貫した世界観の中にいるのだと気付かされて息苦しさから解放されてゆく。その中で登場人物たちは何を感じ、何を選んでゆくのか。 いつまでもこのルールに気付けない人、気づいた上で破る人、ルールを守った戦い方を身につけられる人。 きっかけとなった性的搾取、だって男性性の暴力的な解決、とも言える。 ちょうどこの、便利になる転換期に居合わせなかった私は幸福なほうかも、なんて軽薄な感想を持ちました。 15年くらい前の作品の方がわかる。 当時は怖くて読めなかっただろうけれど、今なら遠くてファンタジー。体にばかすか穴を開ける世界をすぐ横に感じていたのだ。 頭で考えることが全てじゃないからバランスよく接したい。本当に大切な人には。身近な人に歩み寄る時は、ちゃんと態度で示さないと。 そうじゃない人はやっぱり悪意のような正義感で社会的に抹殺したくなるのはわかる。 あなたが糾弾されるのは社会とか時代とかが理由ではなくて、相手が嫌がることはしない、それが守れないから社会や時代や法律を武器に戦っているだけ。 無自覚な加害者が多く、何かを知ることが問題の解決になるとは思えないけれど、結局、何か問題が起こった時に暴力的でない解決は何か、ひとつひとつ考えてゆかなくちゃいけないのだ、と思いました。 いやそんなのロマンチックさのかけらもないから、これはどうだろう。 私たちの中には天使が紛れ込んでいて、愚かな人間の行いを断罪してまわっている。私たちは神の使いを崇拝したり恐れたり騙ったりして紀元前から変わらず馬鹿を晒して生きている。芥川には悪いけど藪の中に隠れていられるなんて幻想だ。なんて。 戦っても戦わなくても死ぬかもしれない、 とまで追い詰められた人が選べる解決を。 そこまで追い詰めない方法を。 自分のことを憐れんでいる暇なんてないんだ。
1投稿日: 2025.11.16
powered by ブクログこんな本が出てくる時代に生まれてよかったと思う。オーディブルで一気聞きした。 価値観のアップデートができてない人から終わり。 完全に共感できる人は1人もいないんだけど、自分にもこういう感覚はあるよなって思ったし、自分の中にはある程度思想だったり正義があるんだけど、振りかざして暴走して身近な大事な人を傷つけないようにはしないといけないよねと思った。
1投稿日: 2025.11.16
powered by ブクログ時代の最先端を走っていた20代が終わり30代になった今、徐々に徐々に、搾取する側の人間になっていくことが怖い。 私は価値観をアップデートし続けられるか?「私は理解できている」画面の下で古いOSが稼働してないか? 30代という絶妙な立ち位置の居心地の悪さを最大限に引き出してくれた(褒め言葉)。 なのでもっと若い頃に読んでいたら人生が変わっていたかもしれないと思った。 2025年に書かれたことに意味があるとわかりつつも、この物語を5〜10年前、20代のうちに読めていたら今よりもっと敏感に、繊細に物事を感じられるようになっていたかもしれない。 YouTubeのTBS CROSS DIG with Bloombergで金原ひとみさんと竹下さんの動画が上がっているので気になる人はぜひみてほしい…
0投稿日: 2025.11.16
powered by ブクログ#YABUNONAKA #金原ひとみ #朝井リョウ さんと#辻村深月 さんが対談の中で触れていたので読んでみたよ。 登場人物には、共感や反感を感じたり、考え方が異次元だと感じたり、たくさんの人が出てきて、作者の人間洞察力に畏怖すら覚える。これまでも内容に衝撃を受けた作品はあったけれど、本作は自分の生き方の方向を少し変えた気がする。 問題作という呼び方があまりに矮小に聞こえる作品。 #読書好きな人と繋がりたい #YABUNONAKAーヤブノナカー
5投稿日: 2025.11.15
powered by ブクログ2025!な本だった。各登場人物の視点で描かれる性被害の内容は、どれも納得感があって、そりゃそうだよなと思ってしまった。本当に悪気があってやったこと以外に、本当に100%自分が悪いことなんてないのかもと。自分の言い分が介入することなんて当たり前で、その言い分も、相手がこうしたからこうと少しの言い訳をひっくるめて行動してるんだもの。どの言い分と真っ当に感じて、自分が気持ち悪くなったりも。立場を変えるだけで納得できてしまって、所詮自分も相手も人なんだなと、社会の様相や価値観が少しずつ変わってもそれについていける人といけない人、そしてその価値観が入り混じった状態がずっと続くのだもの、と。なんだか言葉にできないけれど、この圧倒的に言葉で価値観を表してくれるのが小説で、皆が言葉に持つようになったせいでぐちゃぐちゃになった世界が2025だと思う。大変粗雑で複雑だ。でも時代の変化があるときは、こんなふうになるのかもしれない。 p.33 あ、とスマホの通知に反応して溢れた言葉に一哉がうん?と反応する。付き合い始めて七年近くなる彼の、こういう丁寧なところが好きだ。彼は私の感情や意思を取りこぼさない。取りこ ほされ続けてきた感情と意思が彼によって掬われるたび、私は胸の中でポップコーンのように小さな何かが爆ぜるのを感じてきた。彼が私の小さな変化や態度に気づくたび、私は自分が隅々まで感知され、正確に回収されることに歓喜する。それは私がずっと恋愛で得られなかった種類の喜びだった。 一哉は何か言いたそうだったけれど、私は気づかない振りをした。彼は私の意思を取りこぼさないのに、私はたまにこうして不誠実に彼の意思を無視する。もちろんいつもじゃない。今だけだ。今は都合が悪い。そうやって自分や他人に、嘘ではないからと言い訳をしながら嘘の一歩手前のようなことを言い、自分からも人からも用されない、いや、自分からも人からもどうでもいい存在として認識されていくのかもしれない。漠然と思いながら、「一旦アク取ろっか」と何かを割り切るように提案する。そうだねと丁寧にお玉でアクを掬った一哉は、エビの殻入れがなかったねと言いながらキッチンに立つ。他に何かいるものある?と聞かれ、麻辣のミル持ってきてと答えるとふふっと笑う声がした。 p.59 プライドが傷ついている人は、扱いを間違えると大変なことになる。繊細に、丁重に扱わなければ一転して他罰的になり、こちらに火の粉が降りかかる可能性もある。 p.80 笑えるし、YouTubeもよく見てます」 文化的素養のない人と日常会話をすることはよくある。美容師や、家族や親戚、大学時代からの親友の飛人もそうだ。俺は逆張りでもなんでもなく、こういう人たちを見ると「いいなあ」と思う。反知性主義とすら言えない、知性を嫌悪することすら考えない、ただ何も考えない人、例えばジャンプとかを読んで皆と「まじ泣けるよな!」と騒いだり、イエニスト茂吉の YouTube を見て「ためになるから見てみ!」と本気で友達に勧めたりできるような人だ。一ミリたりともなりたいとは思わないが、「いいなあ」と思う。憧れとも違う。ただ漠然と「いいなあ」なのだ。 もしかしたらただ単に、他に感想が浮かばないだけかもしれないが。 p.76 いつ何時も、どの時代に於いても、金払いの悪い男は嫌われる。俺よりも収入が多かった昔の彼女は、たいていどこの食事代も進んで出してくれていたのに、別れ話を切り出した途端設しい 罵倒を繰り広げ、「いつも金なさすぎなんだよデートの日はデート代くらい下ろしてこい!毎回会計の時になって金がないとかこすいんだよお前!」と吐き捨て俺をレストランに一人置いていった。まだメインが出ていなかったため、その場にいた全ての客に「こすいやつwww」と思われながら一人食事を終え、ようやくお会計をしようとすると彼女が先に支払ったと知らされた。 あれは、自分が人生で目にした中で最もインパクトの強いアイロニーだった。お連れ様にお支払い頂いてますと言われ、一瞬ぽかんとして事態を飲み込んだ瞬間、すでに充分痛んでいた胸が突如落ちてきた巨大な砲丸に潰されたように染み渡った水っぽい痛みを覚えている。あの時メインが出てきて、しっかり食べ終えるまであの店に居座った自分の図太さとケチさ加減の競演を思うと泣きそうになる。 それ以来、ほとんどの店で俺は女性に奢り続けている。この間出してもらったから今度は私が、と付き合っている彼女に言われても、心の奥底では俺をこすいと思っているのではないか、本当は俺が「いいよいいよ」と財布を出すことを期待しているのでは、と考え、「いいよいいよ」と財布を出してしまう。そしてそうすれば女性たちは必ず「え、いいの?」と引き下がるのだ。まあ平均ではあるものの生年収は男の方が高いし、大手出版社勤務だし、と自分を納得させてはいるが、結局のところ俺は「こすいんだよお前!」の呪いにかかってしまったのだ。 正直、自分は個人主義の立場をとっていて、基本的には全てのお金を折半したいし、自分が興味ないことやりたくないこと、例えばバーベキューだったり遊園地だったりナイトプールだったりにお金を払いたくはない。行くことになればお金は出すが、本当は全く割りきれない思いでいる。正直にこの愚痴を言ったら、担当作家の長岡さんに「五松さんが付き合えば付き合うほど不幸な女性が増えるだけだから、恋愛やめたほうがいいと思いますよ。まあ五松さんには女を不幸にさせる程の魅力もないから大丈夫かもですけど」と笑われた。あまりにサラッと軽い口調で言われ、周囲がドッとウケていたから苦笑いで流したけど、時間が経てば経つほど思い出した時の怒りが増していく。男だったら分かってくれるだろうと、担当作家の七村さんに同じことを言ったら、「五松くんは誰かにお金や愛情を分け与えられるほど満たされてないんだろうね。まあ、どれだけ満たされてても与える器がない奴もいるけどね」と同情された。確かにそうなのかもしれなかった。自分は昔から、自分のものは自分のもの。で、お菓子もおもちゃも分け与えることができなかった。僕の!僕の!というのが口癖だったと、親に今も笑われる。お母さんお父さん、僕はいまだに僕のお金を女性に使うことにモヤモヤしてしまいます。それでもこすい奴と思われるのは嫌だから、いつもお金を払っています。課金もしています。でもどこかで「払ってやってる」という意識が働いてしまい、彼女達が自分に優しさや体で接待するのが当然だという思いを捨てきれません。自分が現代に於けるマッチョ的害悪であるという自覚はしています。でも自覚以上の境地にはまだ立てていません。 「牡蠣、三種食べ比べにしましょうか。五松さんは食べたいものは?」「最近野菜が足りてないから、この十五品目サラダ頼もうかな」 九八〇円也を選択する。十五品目で九八〇ということは、一品目あたり約六五円。ひよこ豆や… p.85 ネトフリは趣味のない引きこもり予備軍が家に閉じこもるもっともらしい免罪符を与えてしまった気がしてならない。昔は「休みの日は家でネトフリ観てます」と言うとちょっと意識高い系の印象を持ったが、今は同じことを言う奴がただの趣味のない陰キャに見える。木戸さんみたいになりたくない、そう思いながらLINEをぐるぐるしてみるけれど、いつも誘われる側の自分が誘ったらなんか変な意味が生じてしまうかもと考える自分が面倒臭くなって、結局スマホをしまって、なんとなく手持ち無沙汰でコンビニで氷結を買い、飲みながら電車に乗った。 p.129 も彼もまた、私に搾取されていたと感じていたのかもしれません。自分はお金をかけた、時間をかけた、労力をかけた、と。ですが人は好意を持つ相手との関係には、その三つを自然にかけるものです。かけたものを「かけた」と相手に発言するかどうかで、その人の人としての器が測られるのだと思います。ですが、私が彼との関係にかけたのは、肉体であり若さです。お金、時間、労力と、肉体や若さはそもそもの性質が違うのではないかと思います。しかも私のそれらは、無自覚に搾取されたものです。愚かな若い女、と笑う人がたくさんいるであろうことは重々承知です。ですが、私はあの時、誰かに馬鹿にされるようなことを、笑われるようなことをしたとは、どうしても思えません。彼は私の窮状に、敢えてつけ込んできたとしか思えないのです。 そして唾液を飲ませることに性的快楽を抱けなくなった途端、雑な扱いをしてポイ捨てした。人を使い捨てにする社会と同じです。 p.165 彼女が煙草を吸いに外に出た時、課長がさっきはごめんねと謝ってきて、君の彼女は何か体の問題を抱えてるのかと聞いた。すぐに真意を察して「いや、彼女はただ、共感能力が僕の百倍くらい高いんです」と言うと、なるほど大変だね、とまるで病人を介護する人に言葉をかけるテンションで言った。いつの時代も、正しさや現代らしさは、病的なものと捉えられるのかもしれない。SDGS、環境保護、動物愛護、LGBTQ+、あらゆる運動の最先端にいる人たちが病的に見えるという意見も分からなくはない。それでも、気づいてしまった人、見えている人は、もう前に進むしかないのだろう。でも彼女は、共感しながら俯瞰していて、実際はどこにも本気で所属してはいないのだけど。そう思いながら、俺は課長の子供がピアノ教室に通い始めたというアルマジロの生態くらい興味のない話に一定間隔でへえ、と声を上げ続けた。 彼女がそうして周囲の人を凍りつかせた場面を、俺は他に何度も目撃してきた。「女なら一度は出産するべき」「あなたたちは顔が綺麗だからたくさん子供を作ったほうがいい」「ゲイには敷居を跨がせない」などなどの発言をした人に対する人格批判だ。彼女の言っていることはまともで、誰よりもまともで、誰も反論の余地はないだろう。でもその無自覚な相手を徹底的に論破しゴミクズに鋭く唾を吐き捨てるかの如き冷酷さは、見る者を不安にさせる。彼女は差別主義者、セクハラパワハラをする人、固定観念に捕われている人々を許さない。俺であっても伽耶ちゃんであっても誰であっても、そのような発言をしたら徹底的に、生まれてきたことを後悔させるほど強烈に叩きのめすだろう。もう脳震盪を起こして伸び切ったゴム人形みたいになった相手をいつまでも左右から殴り続けているかのような、そんなボコボコ感が、俺には耐えられないのだ。 もういいんだ殴らなくていいんだと、彼女を抱きしめたくなる。人がボコボコにされるのは、言葉によってでも、肉体によってでも見ていて辛い。でもきっと彼女は言うだろう。ボコボコにされたのは私の方だ。傷ついているのも私の方だ。あいつらは何一つ傷ついてない。でもそうじゃないと俺は思う。彼らもまた、彼女の思うような形でなくとも、それなりには傷ついているはずなのだ。そしてこれは口にはしないけど、俺もまた彼女が誰かをけちょんけちょんに魅めている時、ガラスの破片を踏みつけたような痛みを感じる。彼女の痛みに共鳴しているのか、それとも彼女にけちょんけちょんにされている人の痛みに共鳴しているのか、それとも二人がぶつかって 飛び散ったガラスを答んでいるだけなのか分からない。それでも誰にも露呈しない痛みではあるけど、俺の痛みもまた本物で、その痛みが彼女にとって取るに足らない痛みであると言う事実のまた、俺にとっては小さな苦痛だった。 p.188 ハラスメント講習会は、正直これがハラスメントになるということを教わらないとわからない人たちがいるのかという絶望の勉強にはなったなという内容で、紹介された参考にするべきサイトや相談窓口もその後見てみたけど、正直だから何って感じのサイトばっかりで、だから何って感じの感想しかなかった。 ハラスメント被害者の講演会は、途中で苦しくなって見るのを止めた。落ち着いてから見ようと思っていたけど、気がついたらアーカイブも期限を過ぎてしまっていた。私の弱さはこういうところなんだろうか。でも誰だって人の苦しかった話、誰かを強烈に恨んだ、憎んだ話なんて聞きたくないんじゃないだろうか。知るべき、考えるべき、学ぶべき、こうするべき、こうしない べき、お母さんはいつもそういうことを言っていて、その「べき」の重さに、私はずっと不感を持ってきた。人が生きる上で、「べき」なんて一つもないはずだ。そんなのは、彼らの個人的な、あるいは組織的な美意識でしかない。私は全ての「べき」から自由でありたい。もし「ベき」を設けるのであればそれは自分にとってのみの「べき」、自分以外の人には一切当てはめない「べき」にしたい。お母さんは「べき」があまりに重すぎ、強すぎることを知らないし、「ベき」を使わない人間は念のない風見鶏だとでも言いたげに批判する。私の念は、そういう言 念じゃないんだ。あなたには念に見えないような脆弱なそれこそが、私の言念なんだ。それだけなのに、私の念が脆弱すぎるせいか伝わらない。 p.235 てよかった。 「お母さんて、どんな人?」 「うーん、理詰めの人。それで自分自身が理にがんじがらめになって、どうしようもなくなってる人。私も人のこと言えないけど、なんであんな面倒臭い人生を送ってるんだろうって思う。私は無性愛者だから、そもそも有性愛者の人たち皆ちょっと面倒くさそうって思ってる節もあるんだけどね」 「それは、無性有性関係ないんじゃない?性がないから単純でいられるってことでもないでし よ?」 「まあ、確かに。でもなんか、猫って毛玉吐くの大変そうだなーとか思う感じ。本人にとっては普通のことなんだろうけど、私はそもそも毛繕い文化共有してないから、なんでそんなことするんだろ、絶対もっと合理的なやり方あるよね?って思っちゃうんだけどみたいな。まあ越山くんのいう通り、逆にそっちから見たら何でそんな生き方すんのめんどくさそー、って思われるんだろうけどね」 p.260 だ。それでも二年の引きこもりの後遺症は多少なりともあって、疲れやすいのに自分の疲れに無自覚だから、五コマや六コマ立て続けに授業を受けるとどっと倒れて半日くらい何もできなくなってしまったり、人と長時間話していると酸素が足りなくなってしまうのか、楽しくてもっと話したいのに息切れして目眩がしてきたり、あと笑えたのは二年間足の裏がふわふわだったのが外に出始めた瞬間からどっと硬くなったことだ。あのふわふわな足は多分、歩き始める前の赤ちゃんと引きこもりにしか手に入らないものなのだ、というトリビアをツイートしたら久しぶりにちょっとバズってなんかウケた。 p.270 あの子のお母さんが私のお母さんだったらという想像をしてみる。なかなかうまく想像できなくて、じゃあ私がレイプされて自殺したらという想像をしてみる。お母さんは発狂するだろう。お母さんは、不当なものが許せない人だからだ。え、それおかしくない?みたいなことが発生すると真っ先に声を上げ、おかしいことが是正されなければ所構わず相手を糾弾する。相手がおかしい主張や制度を撤回するまで、延々爛れた肌に容赦なく鞭を振るうように糾弾するのだ。それこそ、鞭を振るう彼女自身が壊れてしまうのではないかというほどに。撤回されるまで、彼女はまともな生活を送れない。結論を先延ばしにされようものなら、夜も眠れず「おかしい」で頭をいっぱいにさせ、犬が自分の尻尾を追いかけ回すようなループに入る。休学期間が二年までと決まっているところを、大学側に責任があるのだからと休学期間を延ばすよう要求した時もそうだった。私の娘の心はこの大学の教授に壊されたんです。うちの娘だけではありません。あらゆる子供達の夢が、幸福であったはずの大学生活が、安全が、大学が雇った教授によって奪われたんですよ。それで心を病んだ子供を休学二年までだからこれ以上休むなら退学処分、なんておかしいですよね?お母さんはそう主張し続け、すぐに弁護士に依頼して認められなければ訴訟を視野に入れると書面を提出、あっけなく休学期間延長の許可をもらった。今改めて思う。お母さんは、自分の思い通りにならない世界が息苦しくてつらすぎるから、小説を書いているんじゃないか。自分の思い通りになるフィクションを求めているんじゃないか。だとしたら、お母さんの主戦場はフィクションで、彼女にとっての現実は、余興的なものでしかないのかもしれない。だからこそ、あんな風に何にも忖度せず、自分の正しさに突き進めるのではないだろうか。そこで生きていく以外の選択肢がない人があんな風に戦えるとは、到底思えない。憂鬱と憂鬱をかけて、憂鬱と言う答えを出すような思考を繰り広げてしまった、そう思いながら、私はを大学の最寄り駅に到着した。電車から足を踏み出した。
0投稿日: 2025.11.14
powered by ブクログAudibleにて。 各章ごとに、一人の登場人物視点で物語が進んでいく作品。 共感できない人も数人居たけど、その時の登場人物の立場に立って見ていくと『この人は悪くない』みたいになって、章が変われば『えっ!あの人めっちゃ自分勝手じゃん』みたいになって(笑) 他人の思想や考えに配慮するって難しいなーと思った。とりあえず、長岡さんと別居中の旦那さんとの会話はイライラしました。笑
2投稿日: 2025.11.14
powered by ブクログ久々に出会った傑作!こうやって一つの流れを色んな人の視点で見た時、愚かなもんでその人の感情や物語で語られた途端、なんだかスッとその思想のロジックに納得して共感してしまう。みんな可哀想だし、みんな気持ち悪かった。 真実はひとつではないって言うけれど、本当にそう。そりゃあ生まれ持ったステータスが、生きてきた年数が、時代が、獲得してきた情報が全く違うのに、世界の見え方が同じなはずがない。そんな中で、どれだけ違う他者への共感が求められるのだろう。 男女とか生まれ持ったどうしようもない違いに対しては必須?少なくともその違いを持って他者を侵害することは許されないよね。 時代によって形成された違いは?アップデートの必要はあるけど、情状酌量の余地あり的な? 特にそれぞれで違うのは、「何に怒りを持つのか」「何に絶望するのか」だよなと思った。楽しいこと、楽なことって強弱はあれ基本一緒なのにね。 だからこそ、怒りや絶望への共感ってメッチャむずいよなーー。でもその感情の本質を心から理解できないからといって、その人と通じ合っていないというわけではないのではないか。そもそも無理なんだから。そもそも無理、違うものって分かった上で、尊重することが大事なのかな。 ちなみに読み始めは、ゆりなとかずやの関係性が私たち夫婦すぎてビビった。でも周り最近多い、今っぽい。私も自意識と自尊心高いし、他人に求めることも多いし、その割にそんな自分や環境を俯瞰みる(笑)ことが得意だと思ってるし あそこまで沸点低くないと思ってたけど、案外当事者になると、怒りも簡単に湧きそう。 あとはもうどんだけ読んでも金原先生だから裏切られることはないという自信で1000Pと思えないくらい秒で読んだ。
5投稿日: 2025.11.13
powered by ブクログいろんな意味で気持ち悪さを感じる一冊だった。 性加害の告発を題材にしており、告発する女性、告発される男性、そしてそれらの出来事に影響を受ける周囲の人々、誰もが「ここまで歪んでるのか」と思うほど過激に描かれている。感情や思考の描写が細かく、ところどころ共感できる部分もあるが、全体としては行き過ぎていて、読んでいて混乱するほどだった。 一方で、私が知らないだけで、現実にはこうした狂気じみた人間模様が存在するのかもしれないと思うと、今の社会そのものに吐き気を覚える。もちろん、男性が女性への扱いを改めるべきという主張は理解できる。実際、私もかなり気をつけている部分は大きい。しかし個人の感情や正義感に乗っ取られているような人々の姿にも、別の歪みを感じた。 また、正義感の強すぎる長岡に寄り添う存在として、イケイケな高校生の少年が描かれている点も奇妙だった。まるで「今の若くて綺麗な男性こそフェミニストの味方だ」と言いたげで、その構図にも妙な不快感があった。そうしたメッセージ性にも、女性特有のいやらしさのようなものが透けて見える気がする。 読後感は気持ち悪いが、だからこそ印象には強く残る。ただ、人に勧めたいかと言われると、正直ためらう一冊だった。
1投稿日: 2025.11.12
powered by ブクログ傑作、泣いた。感想を書く力量は私にはない。 明日からの日常に、ほんのりじんわり思い返しまとめる時を作ろうと思う。
0投稿日: 2025.11.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
登場人物の視点を移しながら、ストーリーも進めていてとても上手いと思った。最後の章をリコにしたのも。誰が主人公とかないって金原さんは言うかもしれないけれど、私は長岡さんが圧倒的に主人公だと思った。でもきっと長岡さん視点で全てのストーリーを進めたら、息が詰まって読み切れる人が限られてしまうから色んな人を出していったのが多分上手いんだと思う。弱い女の役割を一度は求めてしまった自分とか、動けなくてクソみたいな存在から不可避で影響を受けてしまって出来上がった今の自分とか、世間とずっとずれてしまった自分のこととか、色んな怒りとか、愛情とか。 若者や五松あたりの言葉は私には到底かけないから金原さんの世界は広いなと思った。 木戸のように、アプデートに戸惑う人をたくさん知っているけれど、私はその気持ちの当事者ではないとはっきり感じた。金原さんのインタビュー対話で、本人かインタビュワーが木戸に共感する女性も多いって言っていたけれど、本当にそこまで男性社会内在化してしまったような女の人って多いのか、マジか?と不安になった。 救いたい、守りたい、守れるような強い人になって、無垢でしなやかで新しい人たちを守りたい、私もそう思う。
1投稿日: 2025.11.11
powered by ブクログ幼い子どもを除き、一方的な被害者や搾取だけされる存在はいないのではないかと思わされる。 それぐらいこの社会の中で関係性は混沌としていて、受け取る主体、受け取り方によって真実は無数に生まれる。女性として生きていれば多くの人が覚えのある犯罪にもならないからかいや脅し。それを「悪気はなかった」ですませる加害者たち。笑って済ませるしかなかった時代、なのに笑って済ませてきたから加害はなくならないとさらに責められる。誰がどうやっても加害も搾取もなくならないという絶望。まさに藪の中。 若い世代をこれからの希望として願い話は終わりを迎えるが、その若い世代にもうっすら気持ち悪さを感じてしまう私は搾取する側なのかもしれない。村田沙耶香作品に出てくるクリーンな人達、それが搾取も性加害もない世界には必要に思えてきて怖い。 メインテーマにあげずとも女性作家たちの作品の奥底に流れ続ける搾取や性加害への闘いを思い浮かべた
8投稿日: 2025.11.11
powered by ブクログ文学業界の話 語り手が次々替わり、ひとつ事にも見え方が異なり 言い分も違う 発端となるのは、作家志望のだった30歳の女性が、10年前に受けた性的搾取の加害者を、ネットで実名告発したこと 告発されたのは、50代大手出版社の文芸誌、元編集長、木戸悠介 2度の離婚で、ひとり暮らし 作家として登場するのは、長岡友梨奈42歳 娘、夫とは別居中 20歳の娘は2年間引きこもり中 離婚したいが応じてくれない夫と娘は2人暮らし 友梨奈は、愛する娘との関係もうまくゆかず、分かり合えずに苦しむ 社会の出来事に対する憤りで気分が悪くなる事は確かに有る しかし友梨奈の「正義感」はあまりに強烈すぎて、本人も抑えが効かず、辛いストレスだらけの中で生きているのだろう 友梨奈の担当編集者 五松武夫 付き合う女性にはパワハラ、セクハラ満載で 手ひどくネット告発される 五松の視点で、特に気になったのは p394 50代以上の人には特有のスマホ慣れてなさ を感じる ちょっとした指遣いなんだろが、猿が機械持たされているような不自然さで、惨めだ! 世の中を、女性をナメているとんでもない男 全528ページ 1ページの中に描き込まれている内容が濃すぎて じっくり向き合わないと、理解が追いつかない ザッーとよ読むのはもったいなくてずいぶん時間がかかって読み終えた 自分では気づかず相手を傷つける事はあるだろう むずかしい!
26投稿日: 2025.11.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読んでいる間常に気持ち悪さがあり、それが何なのか、何故そう感じるのかは読んでいる間は分からず、読み終えて少し時間をおいた後にじわじわと理解していくという読書体験。 登場人物の人となり、人物像が理解出来ない苦しさだったのかも知れない。 それぞれの登場人物が自分の視点から見た世界が連作で繋がっていく構成で、自分から見る世界(内)が描かれた後、次の章で他者からの認知(外)を受け、登場人物に対し全く異なる印象が引き出されるという形だった。 人は多面であり見るところによって違うというのは勿論理解しているが、創作物において例えば『〇〇さんは気遣いの細やかな人だが家ではものぐさで極力動きたくないらしい』など実はこういう一面もありますという描かれ方が大半だと思うが、この作品の場合は自認識と他認識ではこんなにも人となりが変わるよという事を何度も何度も作者から突きつけられた気がする。 長岡友梨奈と木戸悠介に対しては特に感じた。何が本当なの?と。全て本当の彼女であり彼だが、彼らに対する様々な角度からの人物像に触れてしまったが為に、最後までどんな人だったのか言い表す事ができない苦しさがあった。 本当に、題の通り。藪の中だった。(芥川の藪の中は読んだ事がないのでこれを機に読んでみたい。) 結局のところ、この人はこんな人だと自分なりに輪郭が掴めて初めてその人を魅力的に感じるか共感できるかあまり好ましくないかと判断できるものであり、全て金原ひとみによってYABUNONAKAに覆われ、登場人物達に対して未確認生物と対峙している様な理解し難い気持ちを抱く事となった。 10代の2人(恵斗とリコ)が癒し。若者達には一貫性がありぶれなさを感じ、安心して読む事が出来た。これは若者の多面性に対する解像度を極力低く表したのか、人生経験の少なさからくる真っ直ぐさなのか。歳を重ね様々な事を経験し関わる他者が増える事で人は多面をより細かくしていくのだろうか。 長岡友梨奈の彼氏が20代の若者であると知った時の気持ち悪さと、性被害者に対し正義感を燃やす彼女に共感する気持ちとは両立するもので、同時に相反する気持ちが自身の中で膨れていく為に発生する落ち着かなさも読んでいて感じていた。こんな人だと思っていたのに裏切られた!と感じる事は往々にしてある。その人の一面しか知らないのに。でも傷付く事も、複雑さを許容する事もどちらもあって良い筈で、それがこうせねばならないに変わってしまうと危険だと思う。 今作では、SNSを通じて登場人物の一面のみを取り上げられ拡散しレッテルを貼られる怖さを書いている。人は多面である筈なのに気持ち悪さからつい単純化させてしまう。 人間、複雑怪奇、グレーな部分が多すぎる。それを理解し、安易に単純化して安心しないこととしたい。
1投稿日: 2025.11.07
powered by ブクログある性加害事件を皮切りに様々な年代、性別、立場の人物達が巻き込まれる群像劇。人々はなぜこれほどまでに傷つけられ、怒りを抱えているのに連帯できないのだろう。どのような人であってもその内面には様々な側面を持っており、決して自分では自分自身の姿を目にすることはできない。様々な声が飛び交い、身動きをするだけで棘が肉を抉り出す現代社会の中で、私たちは時に流され、切り拓きながらサバイブしてゆくしかない。
2投稿日: 2025.11.05
powered by ブクログいや~すごい。 読むのに相当エネルギーがいるけど それ以上に面白い。 最終的にリコが一番すごいのでは。。。
0投稿日: 2025.11.05
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金原ひとみさんの集大成であり、怒りや叫びが詰まっているような作品でした。 かなり筆致に勢いがあって、金原ひとみさんならではの鋭い言い回しに不思議とスッキリしたり、そ思わぬ展開が待っていて驚かされたりと感情がめちゃくちゃになりながら読みました。
0投稿日: 2025.11.04
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芥川の「藪の中」の手法で書かれた有吉佐和子さんの「悪女について」があまりに好きすぎて、この本が雑誌でおすすめされてるのを見かけて同じ匂いを嗅ぎ取り、条件反射で購入した。 様々な世代の男女の、恋愛や性愛だけじゃなくて仕事や人生、世の中の捉え方を含めるあらゆる考え方を覗けて、本当に面白かった。 毎日暇さえあれば眺めているXで、最近、「男、特に中年男性は存在だけですでにほんのり害悪」という雰囲気、風潮のようなものを感じ取ることがよくある。極端な例で言うと、電車でおじさんの隣、または女の子の隣のどちらも空いてたら、ほとんどの人が女の子の隣を選ぶ、みたいな。おじさんは足を広げて座るし、不機嫌をあらわにするし、ぶつかっても謝ってこないし生理的に色々無理だから、というようなことが理由だったりする。 この本はその部分を拡大して、いろんな人の視点から1人の中年男性と、彼の過去の恋愛沙汰を、俎板に上げて考えていくというのが大筋だ、と思う。 でも、読み進めていくとその中年男性の実情や心のうち、さらには自省なども知ることができて、なぜこんなに女が偉いみたいな世の中になっているんだろう?驕りすぎてない?ってちょっと反省できた。 というか長岡友梨奈がほんとにいけすかなくてイライラしたー! 最初は自分と同じ、育児丸投げの夫に愛想尽かして絶望して誰の助けもなかったんだーめちゃ共感!夫みたいな考え方するおっさん大っ嫌い!わかるー!って思っていたけど、いやコイツ違うやん、コイツ自身が育児丸投げして男と暮らしてるんやん男女逆転したらようあるやつやん、って気付いて、どんな正論を垂れようとなに抜かしとんねんとしか思えない事態になってしまった。 イライラすると同時に、友梨奈の生活が羨ましいと思っている自分にも気付いたりしてしまった。 最後は衝撃の展開で一気読みだった。 若者世代の考え方に救いを見出せるラストなのもよかった。また読み返したい。けど2ヶ月以上かかっちゃったー。読書ペースが落ちている、ちょっと危惧しないと。
2投稿日: 2025.11.01
powered by ブクログ昔は許されていたことで最近では許容されなくなっていることがあるのはなんとなくわかっていた。夫とも「最近はなんでもハラスメントになるから」という会話をしたことが何度かある。 その価値観のアップデート、それによって明確になるそれぞれの立ち位置など気付かされることがたくさんあった。 私自身は割と鈍感な方だけれど、繊細な心の持ち主には生きづらい世の中だろう。
1投稿日: 2025.10.31
powered by ブクログこれは怒りの小説だと思った。特に長岡友梨奈の、自分が許さないと思ったことに対して特に何とも思わない保守的で考えの浅い人間に対する怒りが鋭すぎる。許さないと思う人間を殺すかもしれないほど彼女の考えは行き過ぎている。 私はそんな彼女が怖いと思うと同時に自分を貫いていてかっこいいとも思う。恋人の一哉はわりと今どきな感覚の持ち主で、私は彼に共感するところが多かった。みんな仲良く平和にできればいいじゃんと思うし、割り切れないところはあれど多少妥協することってこの社会で生きるために必要だと思う。娘の伽耶の思いにも共感する。 この小説全体を通して言えるのは、一つの視点にとどまっていてはダメだということ。許せないことは絶対ある、けど許せない相手のことを知ろうともしないでただ糾弾するのでなくてどんな人生を歩んできてどんな悔しさを経験してきて今に至っているのか、私たちはそんなところにまで想像を巡らせていかないと互いに溝は深まるだけだと思う。
2投稿日: 2025.10.29
powered by ブクログ出版業界で作家と編集者とその周辺の人たちが、男尊女卑、モラハラ、セクハラ、時代と共に変化する常識など複雑な社会の中で傷つき、傷つけられ、理解しようとしても及ばない、という様が描かれている。著者が綴る言葉、文章の一つ一つがナイフのように鋭すぎて気圧される。悪い意味ではないが、休まらない読書をしたような感じ。昭和の空気が良いというわけではないが、令和も生き辛い空気だなとは思う。10−20代の思考や会話、表現についていくのがギリギリだった。現実世界では会話が聞き取れないかもしれない・・。
1投稿日: 2025.10.25
powered by ブクログまずこれを書くのにはとんでもない体力と気力が必要だっただろうなと。読んでるだけでもしんどかったのに。 金原ひとみさんはYouTubeかなにかで「小説にできることの最大限を(うろ覚え)」的なことを言っていた。読んでいる間はこれは小説と言うよりもノンフィクションに限りなく近いんじゃないか(こう読ませるのがすごいんだけど)と思っていたけど、なるほど読み終えて振り返ると圧倒的な小説だった。文章はもちろん構成にストーリーに登場人物に、抉られて嫌だけど面白いから読みたいと思わせられた。 基本的に皆救えないくらい嫌いだけど、全員の嫌なところが自分にあるから本当に嫌だった。逆に言うと、この思考を持っているのは私だけではないのだという安堵と恐怖。特に一哉は年齢も近いし考えていることも近いけど、周りから見た途端に自分が情けなくなった。 社会派苦手〜みたいな感覚は拭えないのだけれど、金原ひとみの文章だから読めたし、金原ひとみの小説だから読めた。そして、他の媒体でなく、金原ひとみの小説だから喰らえたのだと思う。何か考えて欲しいと同動画で仰っていたので、私はまだまだ金原ひとみの小説が読みたいな〜と考えました。すみません。お疲れ様でした。新作お待ちしてます。
1投稿日: 2025.10.23
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面白かった。自分は下等生物だから読んでて辛かった。都会の話だなと思った。 木戸は他の人からタクシー運転手や店員に態度悪いって言われてて驚いた。最初の木戸の章ではそんな感じしなかったから。主観と客観はそりゃ違うよな。 一般人は性加害してもクビにならないんだ。 ゆりな嫌いだ。あの感じでも周りに人がいてうらやましい。理解のある年下の彼君がいてうらやましい。でもゆりなに認めてもらったら舞い上がると思う。そんな日は一生こない顔見ただけで笑われる話したら見下されるできそこないだから。論破好きな人嫌だ。 五松が殺したと思った。
1投稿日: 2025.10.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
人間の弱いところ、汚いところ、醜いところを濃縮させたような小説だった…。 人の嫌なところが描かれた小説大好きなので、めちゃめちゃ面白かった。 どの登場人物に共感するか、何がテーマかなどについてはいろんな読み方があると思うけど、個人的には潔癖なまでに正しさ追求しすぎる現代のヤバさが描かれていると思った。 時に加害性を伴う形で、潔癖なまでに正しさを求めてしまう友梨奈に対してヤバさしか感じなかった。 最終的に彼女がある種ストーリーを生み出す形で亡くなって、社会的に「ほら見たことか」と加害者を必要以上に糾弾する形で世論が強固になっていく。 もちろん、性加害してるほうが悪いけど、その性加害ってなんですか?ほんとにそこまで糾弾すべきものですか?という感覚。 傷つけた人、やってしまった罪に対して無自覚すぎる加害者も悪いけど、正義感を振りかざして悪を追及しすぎてしまう第三者ってなんなの? 若者であるリコや伽耶の感覚が一番共感できて、時代の感覚が変化してるってこういうことなのかなと思ったし、いつかはこの感覚も移り変わっていくのかなと思った。 とにかく小説に内包されている負のパワーがすさまじくて、メンタルしんどい時に読んだら持ってかれる気がする。 でもここまでやりきってくれる小説なかなかないので、ずっしり重い一発をくらいたい人はぜひ。
2投稿日: 2025.10.23
powered by ブクログまず、読了した自分にお疲れ様と言いたい。 ページ数と改行少なめの圧倒的な文字数を追うことによる眼精疲労と、それぞれの登場人物の視点でその心情を読み取ろうと必死でついて行こうとする思考で、もうぐったり。 横文字の用語もよく使われるので、その都度スマホで調べるという作業も結構大変だった。 読了後に思うのは、まさに「藪の中」ということ。 登場人物それぞれの思考のバイアスにより、事実がそれぞれに修飾されている。 結局のところ事実は分からずに、各人の解釈のみが残る状態。 ただ各登場人物に共通して存在する感情があって、それは怒りなのかなと思う。 小説自体が怒りに満ちていて、その怒りをぶつけられた感じでかなりしんどい。だけど、最後の登場人物の描写で、人の可能性というか希望のようなものが垣間見れたことに救われた気がする。 登場人物それぞれを追っていくと、他人事とは思えない描写もあって、自分も被害性と加害性を持ち合わせていることを突きつけられる。私にはすごく刺さる物語だった。
1投稿日: 2025.10.21
powered by ブクログ作中の木戸の独白が「自分はこの先こうなるのか?」と絶望したうえに、自分には長岡のような悪の正義な一面もあると自認しているので「客観視するとしんどいな」と身につまされた。 性加害を軸に話は進んでいくけれど上記2人を中心に各キャラの様々な価値観とその変化をどんどんぶつけてくるので読むと疲れる、だけど読み応えがある作品だった。 読むたびに自分の価値観の変化に気づける作品だと思うのでもっと若い時に読んでみたかった気持ちもある。
1投稿日: 2025.10.20
powered by ブクログ性加害問題に焦点をあてた群像劇 読み応えありました。 500ページ余り改行少なめの文章に読了できるか不安になるものの、読み始めたら止まりませんでした。 難しい問題でそれぞれの怒りが、しっかり書かれた文章で伝わってきた。そんななか、登場人物の若者が自分は何者で、どんな存在でありたいんだろう、と考えるところか救われるように思えた。大好きな作家さん読めて良かった。
29投稿日: 2025.10.20
powered by ブクログ面白かった。けれど、他人事でなさすぎて抉られるから二度と読みたくない。 尊厳をふみにじられた経験は当たり前にあって、でも若い女性なら誰しもが経験することだからと、傷付かないために受け流して生きてきたけれど、それっておかしいよなと気付かされてしまう。気付いてしまうと気持ち悪さと過去を変えられない事実に死にたくなる。 同時に自分の加害性も自覚した。 こういう小説が生まれてくれたことに感謝する。
1投稿日: 2025.10.20
powered by ブクログやっと読み終わった。と言うのが正直な感想。 いやー長かった。そして内容が濃過ぎる。 主に10人の登場人物それぞれの視点で進んでいくが、正直誰にも感情移入できず、だれが正解でだれが不正解もないと思った。一見正解のような友梨奈や恵斗も自分の身近にいたら近寄りたくない人。友梨奈に至っては自分の親だったら毒親認定すると思う。伽耶に随分同情した。でもこれはあくまで私目線で、読む人によって随分感想が違う本だと思う。色んな人の感想読みたい。読んだ上でまた自分の感想がどう変わるか、変わらないのかも楽しみな作品。
35投稿日: 2025.10.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「どうしてもゆるせないことがあります」。 〜性加害の告発が開けたパンドラの箱をぜひ覗いてみませんか〜 本作は「性加害問題」という非常にセンシティブな題材を扱っている。 そして本作は性加害者、被害者、加害者家族のそれぞれの視点からの「性加害」についての解釈が描かれている。 長岡さんには共感できる部分がかなり多くあった。 (自身はフェミ気質に近い考えを持っているから。フェミニズムの考えを持つ長岡さんの考えが理解しやすかったのかなと思う。) まぁ、私には長岡さんのように行動力はない。多分、自分の考えていることを相手に伝えても無駄である。 そう感じ、自分の思いに蓋をして、何も行動せずに生きていた。 そんな私には、彼女が、"フェミニズムのために戦う英雄"であるように見え、彼女を応援したいと言う気持ちを強く持っていた。 (まぁ、多少、過激すぎるなぁと思ったシーンもあったものの……。) ラストの展開に衝撃を受けた。 リコがいたから、多少、救われた物語になったかなと思う。 「わたしも、リコのように、自分に何ができるのか考えつつ、自分の好きなこと、やりたいことの筋を通して前向きに生きていきたい」 そう思えた作品でした。 読みごたえがすごい作品!! 読んでかなり疲れた…。 (本には、年齢制限はないが、個人的には、R15+つけた方がいいのかなと思う作品でした) 是非オススメの作品です!
1投稿日: 2025.10.19
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金原さんの小説を初めて読んだ。読んでも読んでも終わらなくて、何度も挫けそうになりながら、パラパラ読みなんて出来る内容でもなく、体力のいる本だった。ぐったり。途中から正義をぶんぶん振りかざしていくから危なっかしいと思ったら、やっぱり。友梨奈と伽耶ちゃん、母子が言い合うところが1番印象に残っている。
20投稿日: 2025.10.18
powered by ブクログもう一度読むかと言われると読みたくはないのだけど読んで本当に良かったいい時間だったなと思える金原さんの作品好きです。 読むのに体力がいる。風邪気味なのに怒涛の勢いで読んだのは引っ張る力があるから。 いろんな人の視点から描かれる形はヤブノナカのタイトルにフィットしていた。 ネットに誰もが気楽にアクセスできるようになってから世間の価値観の変化のスピードが桁違いに変わったと思うけれど20代そこそこでスマホを手にした私の世代はどこなんだろう…この登場人物達の中で私は誰に近いのだろうと色々考えながら読んだ。 親くらいの世代の人とは価値観というか生きてきた要となる時代が違うんだなと感じるけど下の世代と交流のない私は下の世代のとギャップというか違いを感じる機会がない。時代の価値観の流れにこれから乗り続けることができるのかな。 長岡さんの狂気じみた正義感がだんだん疲れてきて引いてきて家族にこんな人いなくて心底良かったなと思った。こんなに違う世代の下の娘にここまで憎悪というか軽蔑の言葉をマシンガンの如くぶちまけられるなんて…長岡さんの年齢が全然掴めなくて無邪気で一方通行でヒステリックで。なのに理解のある20も違う年下の彼氏がいる。 多角的に物事を見て世界を少しでも変えたいと思うマインドは私にもあるし共感できるけどここまで極端でもないし、ある程度の年齢いけば適度にいろんな世界の距離感保てますよね?と思っていたので読めば読むほど長岡さんに引いて行った。 いろんな人物の精神的な葛藤を垣間見ることでなんだか人を知ったような気になった。体験してないのに体験したような錯覚を覚えさせてくれる。 最後のリコの締めがちょうど良かったから唯一の救いに思えた。これがあることでいい終わりになったと思う。
2投稿日: 2025.10.17
powered by ブクログ様々な世代の様々な価値観で現代に於いての倫理観や線引きの上げ下げが目まぐるしくカタチを変えながらアップデートし続けている。 所謂#MeToo以降の社会が抱える、「声を上げる正義」であったり、狂気と紙一重なほどの病的なまでの正しさであったり、そうして「正しさ」で他人を断罪することでしか自分を保てなくなっていく人の嗜虐性を含んだ行き過ぎた正義感であったり、様々なハラスメントや搾取に対する寛容や不寛容、声を上げない事は、連帯しないということは、自分も無意識に加担しているのかもしれないということなのだろうか。 正義と暴力の境界が曖昧になる。 自己正当化の欲望、真実という概念の不確かさ、8人の視点から語られる複数の主観は少しずつズレていて、思い違いというよりは価値観の違い、それぞれの言い分はそれぞれの正義によるものなのだろう。 正しさも時間や時代と共にカタチを変える。全員が同じものを見ていたとしても感じ方は人それぞれで、様々な角度から見ても見えないし感じられない何かが人の数ほどあるのだ。 読者として40万字を俯瞰的に読んで何を思ったか。それを問われている気がする。が、今はまだ答えることができない。 「日本文学の最高到達点」という帯の言葉に嘘偽りなし。まさしくそう。令和の最新で最高の文学に没入してしまった。
1投稿日: 2025.10.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
時代が変わっていく中でかつて社会的にOKだったことが、NGになっていく。社会から背負わされてきた役割が、背負わなくてよいものになっていく。 その流れの中で、流れに乗る人(友梨奈)取り残される人(五松)過去の行いにNGを突き付けられる人(木戸)過去を知らない人(恵斗、リコ、伽耶)の人間模様が描かれている。 時代とともに社会的な善悪の判断基準が変わっている。 過去を引きずったり、過去の傷に執着すると苦しい。ただ忘れることも出来ないのだろう。 五松や木戸は相手に対する想像力が欠如していると思う。時代背景もあるんだろうけど。こういう物語を見ていると、女性や労働者といった弱者は当時の強者によって都合の良い役割を担わされてきたよな。と思う。それを必死に演じていたなと。 逆に現代は明確にお願いされてもいない「役割」を担って、辛い思いをしても「自己責任」で片付けられちゃうよね。美津はそれで傷つけられているように思う。 だから、優美のように「自己責任」でもって復讐しするんだろうな。 自分の身を自分で守るのもそうだけど、お互いに相手の領域も守れるようにならないと共存は難しいんだろうな。 いや、共存なんて誰も目指してないのかもしれない。自分が良ければそれでいいのかもしれない。
1投稿日: 2025.10.16
powered by ブクログ1歩引いて考えると、 この世界観を構想した金原ひとみは天才だなと思った。 長岡友梨奈の性格が無理すぎて、イライラして息が詰まった。 私が伽耶ならムキになって「神なの?」って言っちゃうと思う。
2投稿日: 2025.10.13
powered by ブクログなんとか読み切ることができた、というくらいには読むのに体力が必要な小説だった。何度も幻滅しそうになった。527ページの中で余白が非常に少なくて、文字による圧もこの小説の複雑さに影響したな。 ある登場人物目線で読むと、その周りの人の考え方がどうかしているのではと思うし、別の人物の視点から読むと、今度は先ほどの人の考え方がどうなんだと思ってしまうくらいには自分の共感力などが信用できなくなってくる。長岡友梨奈がまさにそんな感じの人物で、読んでいて動悸の方のそわそわ感を終始拭い去ることができなかった。結局自分が一番しっくりきたのは横山一哉目線だったので、志がないと断定されている姿を見て胸が苦しくなってきてしまった。 あとは、木戸悠介の章の「新しいものとの出会い」についての考え方がけっこうずきずき響いた。過去に出会ったものについて、「あれに似ている」ということがたしかに増えてきている感覚があり、それ自体は色々と世界への理解が1つ深まったといった喜びの感情でいたのだけれど、このように書かれてしまうと悲しい気持ちになってしまった。一方で、そうならないようにするためにできることを考えて実践していくこともきっとできるはずだろうと捉え直すきっかけにもなったので、良いタイミングでこのフレーズに出会えたなとも思うことはできた。 ====== いま改めて振り返ると、新しいことに出会えるのは、三十代までだった。四十半ばを過ぎると、新しいものはほとんどなくなった。あっても、これまでの経験と比較できる内容で、本当に新しいものには出会えなくなった。全ての体験は体系化され、体感するものではなくどこかに分類されるものとなった。何かを享受した時「あれに似てる」「あれの系譜」「誰々と誰々の影響を感じる」などと経験済みの何かに当てはめて分かった気になるのが楽しかったのは三十代までで、それから先はもう、「当てはめられるが感想がない」という思考停止状態に陥った。あれは、自分が思考する生き物として終わった瞬間だったのだろう。思えば思考停止に陥ったのは、今の長岡さんと同じくらいの歳だったはずだ。(pp.500-501)
0投稿日: 2025.10.11
powered by ブクログ芥川龍之介の「藪の中」が原作となる黒澤明の「羅生門」も、誰が真実を語っているか、あるいは真実は変化するのか、不明です。
0投稿日: 2025.10.11
powered by ブクログとにかくすごい作品。エネルギーがすごい。 時にまざる若者言葉も含めて、性加害やジェンダーの今現在を描いていると思いました。今読めて良かった。今後も世間の在り方は色々変化していくのだろうと考えさせられました。 色々な考え方を描けるのもすごい。友梨奈視点がこんなに極端なのに、五松視点も描けるってどういうこと? 作家ってすごいと思わざるを得ない。 伽耶のその後が描かれず少し心配になった。おそらく大丈夫だとは思うけど、母親からあんな批判をされたら本当無理だと思う。 エピローグがリコちゃんで、金原さんの視点に近いのかなって思いました。
0投稿日: 2025.10.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
筆者の圧倒的な筆力‼️ 出版業界、性加害が蔓延っているなかで搾取される側の人、その搾取を断じて許せない人。 私は長岡友梨奈さんという作家さんに決して共感はできなかった。 私は事なかれ主義!の人間である、、、 (あんまり良くないと思いながらもそうなのである) しかし、長岡さんは世に蔓延る犯罪、性被害、搾取、加害、傷害、もはや全ての悪に対して「駆逐しなければ!」という強い思いを抱いている。 これは私とは正反対の考え方である。 しかも、長岡友梨奈さんの家族さえ、身近な人でさえ、「あの人は変わってる」という空気が文章には流れている。 木戸祐介が自殺を図った時の描写がとても濃く頭に残る。 しかも、木戸は結局死にきれず自殺未遂に終わる。 あの自殺未遂の表現は初めて見た。初めて見たけどうわ生々しいっ!と思った。 全体として読者私をこんなにも振り回してくれてただただ楽しめたので、私は良かったと思う。
5投稿日: 2025.10.09
powered by ブクログおもしろかった。 すごく読むのが大変だった。 ぐるりと一周囲まれて、わたしはその円の真ん中にいて、大勢の人から一斉にワーーーッと話しかけられていて、頭を抱えているような感覚だった。 図書館で予約して借りるのを待ってたんだけど、思い直して書店で購入。 その判断は正しかった。 手元に置いておいて、10年後とかに読み直したい。
1投稿日: 2025.10.07
powered by ブクログ綿谷りさ氏のパッキパキ北京がとても面白かったので、金谷ひとみ氏にも関心を持ち、こちらも読了。とんでもない字数で、エログロや各登場人物の心情が隙間なく圧倒的に表現されていて、内容を超えた訴える力を感じた。自分たちも頭の中ではこのくらいかもっと多い字数で考え、悩み、苦しんで生きているのだろう。同世代の登場人物には多かれ少なかれ自分の琴線に触れるところはあるが、かといってやはり違うなと否定する気持ちも並行して去来する。ただ、ダメなものは駄目である。ヤブノナカは芥川龍之介の藪の中だと思うが、もっと著者の主張は筋が通っている。
4投稿日: 2025.10.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読書家が良く話題に挙げており、性加害にまつわる問題にも関心があったため読むに至ったのですが、最終的には老後について考えてしまうお話でした。 あまり気持ちの良くない描写に度々本を閉じてしまいましたが、この人たちの末路を見届けてやるぞ、という気持ちがページを捲るごとに強くなり、時間はかかってしまいましたがどうにか読了。 老後、自分はどうなるんだろう。長岡さんに共感できる部分が多くあったけれど(フェミ気質があるからかなあ)あんな行動力はないから、木戸さんみたいに今は社会にしがみついていても全てどうでも良くなる日が来てしまうのだろうか、というかもう来ているかもしれない。絶望、虚無。 死なないと何かを残せないのか。SNSで燃えないと社会に訴えられないのか。どんなに強い気持ちがあっても、それを伝える事に対して特化しているであろう作家、出版業界を取り巻く状況が大変興味深く、なんども本を閉じて考えるきっかけをいただきました。 また振り返って読んでみたい気持ちと、自殺の描写は二度と読みたくない気持ちをメモ程度にここに残します。
1投稿日: 2025.10.05
powered by ブクログ全ての登場人物に共感し、また全ての登場人物に嫌悪感を覚え、正義が軽薄にあっちこっちの肩を持ち始める。ジャッジに疲れ、ジャッジの虚しさに気づいた後は少しだけ覚悟が出来たような気がする。 小説は忘れた頃に静かに自分に返ってくる。それはAIに相談して返ってくるインスタントな答えとは完全に違う。遠赤外線で温められる感覚と似ていて、時間はかかるけど確実に芯まで届く。この小説を傍に携えてこの時代を進みたいと思う。
4投稿日: 2025.09.28
powered by ブクログこの本の前に村田沙耶香の『世界99』を読んだのだけれど、全く異なる価値観の世界がいくつも重なって併存する様とか、正義を求めずにはいられないキャラクタ-(本書の長岡と『世界99』の白藤)とそうでないキャラクターとか、性欲のどうしようもなさとか、とりあげているテーマがいろいろかぶっていて、けれど全然違う物語になっていて面白かった。それぞれの印象を雑にまとめれば、金原は王道で村田は前衛。そしてどちらも言葉の運びが上手。金原の場合、登場人物がここぞというときに、小難しい自分語りを立て板に水で蕩蕩と連ねるが、そんな時はちょっとドストエフスキーみたいだなと思った。
3投稿日: 2025.09.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
序盤の告発文の描写と、男性編集者のプライベートの描写が衝撃的で、思わず本を閉じリタイアしようかと思った本。 間にこの作品の解説をしているYouTubeを見て、思い直して再び本を開いたらそこからは抵抗なく読めた。 ちょうど過激な文章が一段落したところだったということもあったから、自分のように免疫なく「うえっ!」となった人は目を滑らせながらでも読むことをお勧めしたい。 何人もの登場人物の心の中を描きながら物語は進んでいく。 とめどない、句読点さえ無いような文章の流れには、「ああ、人の思いってこんな感じだよな、脈絡なく次から次へと押し寄せて」と著者の上手さを感じた。 そして後半、また凄まじい自殺未遂の描写に圧倒されつつ、激流を泳ぎ切るように読了。 搾取するとかされるとか、深くて難しい問題だ。 正義なのか偽善なのか真実なのか虚像なのか。1人の人の心の中でさえ、それは鬱蒼とした光の見えないヤブノナカ…といったところか。 登場人物の中ではヤヤに一番感情移入出来たかな。 友梨奈さんが激しくヤヤを否定するところが、ここまで我が子をボロクソに否定出来るものなのかと……
2投稿日: 2025.09.23
powered by ブクログ10年前に雑誌編集長に搾取されたと訴える作家志望の女性、訴えられた元雑誌編集長と息子、部下の雑誌編集員、夫と娘と別居しながら年下の男性パートナーと暮らす女性作家と娘、年下のパートナー、それぞれの目線から語られるストーリー。初めて読む作家の本だが、一気に読まされながらも熱量が凄く、読後は心地よい疲労感を覚えた。自分絶対正義の不安定さ恐ろしさを感じた。
13投稿日: 2025.09.21
powered by ブクログ時代の分岐点 ってな事で、金原ひとみの『YABU NO NAKA』 見えない社会が良い時代って事じゃなくって、見えないから知らなかった社会 知らないが故に権力に揉み消されていった社会 ニュースがテレビで流れてく時代になっても、見えずらい社会にまだまだ権力でコントロールされ揉み消される社会 ニュースが権力を持たない人でもSNSで世界に流せるようになったこの時代 善悪も全てを晒され世界で監視し称賛と誹謗中傷の嵐 良い時代になったし悪い時代にもなった そんなグレーゾーンの様な時代で人の考える事は振り幅の広い多様な考え方が生まれてきたと感じるんよね その考え方はどれも正解でどれも不正解 昭和って良かったねとか昭和ってヤバいよねって 何十年後には令和って良かったね、令和ってヤバかったよねって、なってるのかなぁって思ってしまう 人の顔色伺いながら、言葉1つ気にしながら生きていかないといけなくなったこの時代はわしにはちょっとしんどい(あんまり気にしてないけどw) ヤブノナカを読んでて結構しんどかった 時代にアップデートされてない人が読むとこんな感じになるのかと わしは断然一哉タイプじゃな この時代、その先の時代にもわしは陽気に朗らかにサバイブしていきたい そろそろ、みんなにハグするのヤバいかな❓ 2025年22冊目
2投稿日: 2025.09.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
すごく面白かった。 それぞれの登場人物の色んな感情がどんどん流れ込んできて、しかもどれもリアルで生々しくて、忙しかった。 「私たちはグラデーションのように立場が違って、いやグラデーションのように混じり合ってさえいなくて、それぞれの怒り、の中でしか燃えられない」 という一文があったけど、まさにそれ。 どの人の言い分も多かれ少なかれ理解できる部分があるし、人間誰しもどうしようもない所を持ってるはずだし、経験してきたことも皆違う。 ていうか、こんなに長いのに、なんか微妙に気になる所が色々と残ったまま終わった... 藪の中か... 最後リコちゃん・カズマ・恵斗の近況での割とハッピーな締めくくりがどういう意図なのかは分からなかったけど、世界は変わる、未来は明るい的なメッセージだったのか? 少なくとも私はこの本読んで未来に希望なんて抱けなかった。明るい未来に就職希望だわ。 あとリコちゃん良い女なのは知ってたけど、学年1位はさすがに聞いてないよってなった。
2投稿日: 2025.09.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
初の金原ひとみワールド。 放送禁止ワードを連発させ、暴力的なまでにえぐってくる、なのにところどころ激しく共感させられる。最初から最後まで圧倒されっぱなしだった。 小説内では、性加害・性的搾取をした加害者、それを受けた被害者、加害者を批判する周辺人物としてそれぞれが描かれているが、本当に加害者が悪で、それを批判する側が善なんだろうか、いやそうじゃないだろうというモヤモヤが終始つきまとう。 五松を陥れた優美のセリフ「この世に謎に満ちた巨悪とか、理解できない悪とかなくて、一人一人思いの丈を説明してくれたら大抵「あーそういう経緯の悪ね」ってなる悪しかないと思ってるわけ」が、それをどストライクで言い得た真理だと思う。 私が一読しただけでは気づけなかった数多くの伏線が、登場人物のセリフに隠されているのだろうとは思うのだけど、もう一度読む勇気はもうない。
2投稿日: 2025.09.15
powered by ブクログ2025.38 文芸業界の性、権力、暴力、愛。戦慄の長篇性加害の告発が開けたパンドラの箱――MeToo運動、マッチングアプリ、SNS・・世界の急激な変化の中で溺れもがく人間たち。対立の果てに救いは訪れるのか?「わかりあえないこと」のその先を描く日本文学の最高到達点。「変わりゆく世界を共にサバイブしよう。」 「叢雲(むらくも)」元編集長の木戸悠介、その息子で高校生の越山恵斗、編集部員の五松、五松が担当する小説家の長岡友梨奈、その恋人、別居中の夫、引きこもりの娘。 ある女性がかつて木戸から性的搾取をされていたとネットで告発したことをきっかけに、加害者、被害者、その家族や周囲の日常が絡みあい、うねり、予想もつかないクライマックスへ――性、権力、暴力、愛が渦巻く現代社会を描ききる、著者史上最長、圧巻の1000枚。 『蛇にピアス』から22年、金原ひとみの集大成にして最高傑作! ꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳ 推しが紹介していたので、どんな話か 知らずに読んでみたけどまず疲れた 知らない言葉が多くて調べながら 私にも強く主張できる思想や信念はないから 一哉に1番近いのかなと思いつつ 正義感の塊の友梨奈にとっては腹立たしく 思える人種なんだろうなと いい事言ってる!わかる!と思うシーン もあったけど情報量多くて覚えてない 私の語彙力では感想に困る作品 とはいえ面白かった(説得力なし)
0投稿日: 2025.09.14
powered by ブクログ嵐、濁流、猛スピードの車…そんな印象の雰囲気で、あまりの激しさに少し読んでは目を背けてしまったりして読みくだすのが難しく、読了にかなり時間がかかりました。発言や放送では禁句となる用語や展開満載の、でもだからこそ、人には絶対言えないような、なかなか他人が入り込めないような場所に傷を抱える人が救われるであろう作品。
0投稿日: 2025.09.13
powered by ブクログ長岡友梨奈の性加害を絶対に許さない姿勢は正しいし、木戸や五松は確かにクズだと思う。一方で頑なすぎる友梨奈にイライラし、生きる気力を無くした木戸や動画をネタに恐喝される五松に同情もする。どちらか一方に善悪を決めきれない自分の心がまさに藪の中だった。
2投稿日: 2025.09.10
powered by ブクログ※ネタバレ有りです※ すっごく面白かったです! 分かる方教えていただきたいのですが、優美はどうしてあんなに五松さんに執着するのでしょう? 男を憎んでるのは分かりますが、五松さんが優美にとってそこまで有害な存在だったようには思えないのですが… また一哉は友里奈に冷めたような描写があったもののその後も付き合い続けてましたよね。そこについての解釈も教えていただきたいです!
8投稿日: 2025.09.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なんと感想を持ったらいいのか…というのが正直な感想。 ものすごく醜悪な情景も描かれるのに、それぞれの人物の多面性の中にどこか、身近さがある。全員…それがすごくしんどい。 最後がリコの章になるのは目次の時点で分かっていたので、一体どんな話になるのか不安だった。そこで恵斗も暴かれるのかもしれない。リコの目線での生々しい傷があるのかもしれない。 そう思ったが、まるで予想外の話だった。 しかし、単なるハッピーエンドではない。全然。 明るい雰囲気なのに、この子の未来にもまた、どこかで暗い影との関わりが生まれて、どうしようもない現実と折り合いをつける日がくるのか。狂うのか…そんな風に捉えてしまう。 きっと10代で読んだら違う感想だったろうと思う。 50代で読んだらどうなるか、その時の世の中はどうなってるか…また確認しに来たい。
0投稿日: 2025.09.08
powered by ブクログ個性溢れる、というか個性が濃密過ぎる人物が次々に独白していくスタイルで物語が進行する。目次を見ると、A→B→C→D→E→F→G→F→E→D→C→B→A→Xの順番で独白が続く。最初に語ったAが最後に再び語り、エピローグ的にXが語る構成。目次からして美しくて引き付けられた。 それにしても、これだけ詳細かつ文学的に自分の気持ちを文字に起こせたらいいだろうなぁと思いつつ、そんな人たちでも(だからこそ?)少しずつすれ違って大きな傷を生み出してしまうのかなとも思いつつ。 個人的には横山の人格が自分に一番近しいと思った…てかむしろ私では?と感じてきて怖くなった。
0投稿日: 2025.09.08
powered by ブクログ古い時代の墓標となる小説。 この小説を境に時代は以前以降と語られるに違いない。 いろいろな意味で自分の立ち位置が問われている。 今は、男性重視の社会から男性女性両方を重視する社会へと変わる過渡期で、傾いた天秤を平らにしようとしたら反動でもう片方に傾いたみたいな極端さがあるけれど、女性が搾取されることなく、同時に二度離婚歴のある中年の男性が寂しいと言っても受け入れられる世の中になればいいなと思う。 そうなるかなと、恵斗やリコたちは感じさせてくれる。 『軽薄』にも全てを言語で表現できると信じている人が登場していたが、そういう知り合いが私には以前いたこともあって、そういう人がどんなふうに生きて、年齢を重ねていくのか、これから著者が描くとしたらどんななのかも期待している。
8投稿日: 2025.09.05
powered by ブクログ初、金原ひとみ作品。 『蛇にピアス』芥川受賞当時は中学生で綿矢りさの『蹴りたい背中』の方が共感度合いが高く、そっちだけ読んでた。本書が多くの読書インフルエンサから賞賛得てたので読んでみる。 文章圧が迸っている。 内省的独白部分なんてほぼ余白がないではないか。そこから押し寄せる圧倒感。テーマは図らずも最近手に取る作品が女性蔑視を扱うものが続いている。しかし、本作の普段出会うことのない秘部に至る深層まで掘り起こしている感触は、戦慄。と同時に若干のエクスタシーが湧きおこる。文学でしか味わえない喜びでしょう。 改めてタイトルの『YABUNONAKA』を考えてみる。 認識レベルに完全な齟齬があるわけではない。でも、各々の多面的な一部分しか理解していない。この誤解が起因してすれ違いや事件が起こるわけではない。全く違う文脈で事件が起こり、その解釈によって更なる誤解が生じていく。繋がっていそうで圧倒的な個人としての営みの錯綜。月並みな表現ではあるが、この関係こそまさに人間の業である。 ここ数年の活躍が目覚ましい。近著及び著者の内面も知りたい欲求でエッセイも手に出したい。20年越しの、好きな作家に追加された。
9投稿日: 2025.09.04
powered by ブクログ改行が極端に少なく、一息で話されてるような息苦しさが、内容を更に加速させている。 友梨奈の危うさはまさに「正しく狂ってる」し、理解できないのに寄り添い続ける一哉のできすぎ感も別な意味で怖い。 現実社会で起きている性加害報道も、他人事ではあるし一方だけの主張で他方だけを叩くのもどうかと思ってしまう私は 「OSが古すぎて新しいバージョンに適応できない、あるいはインストールすると容量オーバーで焼け死ぬ脳の持ち主」なのだろう。
0投稿日: 2025.09.04
powered by ブクログ読んで良かった。 冒頭なんてほとんど改行が入らないみっちり詰まった文なのに、上から下まで読んでしまった。 登場人物たちのように自分の気持ちを言語化して並べることができたらどんなに素晴らしいだろうと思うけど それでも人は通じ合えないことがある。 いや通じ合えないってことを、こうやって言語化できるのも作者すごいなあと思う。 これを読んでから自分も、頭の中は饒舌になった。ことばが溢れかえって、誰かと話したくなった。けど、いざとなると言語化できない。出てこない…ユリナさんにキレられそう…
1投稿日: 2025.09.03
powered by ブクログ結構カロリー高い本で面白かった!! この主人公の女性作家は作者の自己投影も多分に入ってるのかなぁ。視点がコロコロ変わる話はあまり好きじゃないけど、この話は必然があり、それがめっちゃよかった。出版社の裏話とかもリアルだし、本作りの現場を覗き見的な面白さもあった。 me tooやキャンセルカルチャー、あらゆる分断、性暴力に対する社会の変化なんかをてんこ盛りにしてるけど、ガチャガチャしてなくて、やっぱり人物像がすごくうまくて、どの人物もリアリティがあって、読んだ後ずっしりきた。
7投稿日: 2025.09.01
powered by ブクログ出版業界の性加害とその告発を巡る人間ドラマ。告発の内容は読むとかなり嫌な気分になる。 が… 正論ずくめもまた害であり、またそちらも嫌な気分になる。 加害者、被害者、その家族や世論…それぞれの言い分がまさに“ヤブノナカ” 深く掘り下げた内省を徹底的に言語化した言葉の洪水がドワーッ!!と押し寄せる。たぶん私の今年1番の一冊かも!
10投稿日: 2025.08.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
カレーとまぜそば食った木戸みたいな、生きてんのか死んでるのかわかんない身体にこの小説がガンガン流れ込んでドライブする モラルもインモラルも正しさも間違いも善も悪も男も女も生も死も全部がグラデーションでその淡いの中で自分の立っている場所がグラグラでそれでも何かを選ばなきゃいけないクソハードモードな世の中 選べないと足場グラグラであっという間に社会から置いていかれる 社会から切り離されて現代人は生きていけなくて、でも揉まれることで心身を切り刻まれることもある クソハードな物語にギャルラッパー志望の高校生が強く羨ましく映る
1投稿日: 2025.08.28
powered by ブクログスケベ描写多いけど、面白い。芥川の薮の中と同様、語る人によって事件の詳細は食い違う。都合の良いことを語り、都合の悪いことは忘れる。性被害は加害者にとっては それぐらいのこと、被害者にとっては一生もの。でも数年前のことを今更言われても・・・と中居君の気持ちで戦々恐々としている年配男性は多いことであろう。正義を振りかざす長岡友理奈みたいなのに睨まれたら、もう逃げるは恥だが隠れるしかない!昔は二人だけの教育的指導OKだったのが、今では個別教室はトライだけにしておけ!SNSに余分なこと書くのは控えましょう。正義は疲れるからほどほどに というのが感想。
2投稿日: 2025.08.26
powered by ブクログ密度が濃い内容で読むのに時間がかかり、すごく消耗しました。 友梨奈のセリフがいちいち過激かつ攻撃的で、読んでいて責められている感が強くて息切れしました。年下の恋人はなぜこんなに献身的なのだろうと疑問。 以下ひとりごと。 昔の出来事を今の価値観で裁くというのは本当に合ってるの!?と常々思っていて(芸能人の過去の言動での炎上等)、法律やモラルがどんどん変化していてその時代には暗黙の了解だったり笑って許されていたことが今罰せられるというのはアンフェアだと思ってしまう自分って令和にうまくアップデートできてないんだろうかと不安になりました。 男女の問題で別れ方が悪くてあの時のあれ実は許せなかったという後出しジャンケン的なものもこわいです。実際美津も今の人生がうまくいっていれば告発しなかったでしょうし、本人の問題もかなりあるんじゃないかなー。とか言ったら加害者擁護になって炎上しちゃうのが今の世の中なわけで。夫婦や恋人等身内にさえもずっと清廉潔白に生きることが要求されているような息苦しい世の中だなと思います。 金原ひとみさんのメッセージ「変わりゆく世界を、共にサバイブしよう。」 読後の心に沁みました。
12投稿日: 2025.08.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
よなよな頁を捲る手が止まらなくて と思いきや、読み返すために戻って 気になるワードが何度も出てくるので その度に色を変えてポストイットを貼って 夢中になって読み進めました。 読み終わるまでに 語りたいことが溜まって podcastに吐き出しながら。 https://open.spotify.com/show/33BraiMfjZ0YbXty8EBAKW ___ 『わたしたちは無痛恋愛がしたい』、『差別はたいてい悪意のない人がする』、『正欲』など引用しながら。「乖離(かいり)」とは。ダブルスタンダード?どっちの自分もいるということ。 ___ 感想を人と語りたいけれど 自分の中でまずは整理したい。 朝井リョウさんの『正欲』が加害のようにみえる中にある被害性だったとすると、『YABUNONAKA』は被害のようにみえる中にある加害性を描いているようにも思える。 読んでいると、自分の中にある加害性を 省みることの連想だった。 時代が変わり、加害性が浮き彫りになってきたのは木戸や五松のような男性が多いかもしれない。 けれど、長岡友梨奈から滲み出る正義をふりかざす危うさと近しいものが自分にもあると認めざるを得ないと思える。 時代は変わっていく、人は? 自分は本当にアップデートされているのか、否、完全なるアップデートをしたときに乖離を許さないことは人を引き裂いてしまう。 人はあくまで地続きで生きているのだから、その人の中でダブルスタンダードを認めることはサバイブするために必要なのかもしれない。 「変わりゆく世の中を、共にサバイブしよう」と金原さんがおっしゃっているように、自分自身をゆるすだけでなく、生きていくためにはある程度、人のこともゆるす必要があるだろう。 でないと、乖離をゆるさない思想のもとでは、生きるための自己防衛がいつしか糾弾に変わり、死に追いやるまでの残酷さを生み出してしまうから。 ※文藝春秋のインタビューもとても良かった。 https://open.spotify.com/episode/2b0vaZwrjq8pYhVZY5iLO6?si=K6NMjD_zTlGmMcwtRO2cBQ 共感できない人を描こうとするのも文学だし、作品の中では乖離や人の心のブラックホールとしての文学でもある。 文学という抽象かつ具体の鏡を通してこそ、人は素直に自分をみることができるのかもしれない。
3投稿日: 2025.08.24
powered by ブクログこちらも、TBSクロスディグで話題に出て、気になって読みました。 世界99からの流れで、またまた男の自分としては食らってしまう内容でした。 大学卒業時に就職を目指していた出版業界の話。同期の友人や先輩が業界にいるだけに、実際どうなの?と聞いてみたい内容でした。 ただ、これは出版業界に限らない話なのではないかと思います。 主たる登場人物の無敵感が増していった後の、最後の展開に驚かされて、後味の悪さもあり、これはまた読み返すときが来そうだなと思い、デザインも良いので手元に置いて本棚に飾っておきたく、鎮座させることにしました。 装丁が凝っていて、帯にトレーシングペーパーを使っているあたり、透かして見えるという素材が、なんとなくストーリーと連動しているようで、素晴らしいデザインだなと思いました。
3投稿日: 2025.08.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み切るのに体力とエネルギーを要した気がする。 金原ひとみ節、炸裂!という感じ。 最後の最後が衝撃だった。 あんなに生きるエネルギーが強そうな人が、と呆気にとられた。 搾取される関係、というのは時を経て思い返せばそうだったのかも、と思うことも人それぞれあるのでは。 奪われただけではなく、自分も相手の何か(お金や時間)を奪っていたという等価交換の関係じゃなかったのか。 その当時は、搾取・奪う、という意識ではなく、お互いが捧げて、与えあっていたのではないか。 若い女性とおじさんは許されなくて、長岡友梨奈と一哉は許されるのか。本人同士が良かったら結局周りがどう言おうと良いんだ。 金原ひとみ作品は「乖離」をよく描くなぁと思う。
3投稿日: 2025.08.20
powered by ブクログ●読前#YABUNONAKA 「あれっ、なんか作風変わったなぁ」と思った『腹を空かせた勇者ども』以降、新作が楽しみでしょうがない。本作は現代社会の問題点に切り込んでいるようで、どう思考を揺らされるか楽しみ。 『情熱大陸』に出演されたことで作品も生まれそうでそれも期待 https://amzn.to/3HmD9O1 ●読後#YABUNONAKA 変化した作風で、金原さんの本質に戻って書かれた作品と感じた。とても深くいろいろ感じさせられる。逆なんだが、それぞれの主人公が金原さんに憑依して語っているようなリアリティさがあり、人の二面性を一人の人間がこれほどまでに表現できることにも驚く https://amzn.to/3HmD9O1 ●心に響いたフレーズ&目次 https://mnkt.jp/blogm/b250410a/
11投稿日: 2025.08.20
powered by ブクログ読んだ感想さえも上手く言語化できない自分が恥ずかしい。 とにかくすごい作家だ。 読んでいる間中、登場人物の脳内を覗いている感覚。どんどん深い海に潜っていくような濃い読書体験だった。
3投稿日: 2025.08.20
powered by ブクログすごく疲弊するけどページを捲る手が止まらなかった。日常で感じる人とのわかり合えなさが凝縮されていて、自分も別に正しくないんだよなと思った。この社会で歳をとって老いていくのが怖くなる。最終章がとても好きで、最後に自分の心の湿度を少しだけ下げてくれた(若い世代に夢を見すぎかもしれないが…)。
1投稿日: 2025.08.19
powered by ブクログ性被害について各立場において深く考え得ることができました。立場に寄って、捉え方や見方が随分違うのも性被害の特徴なのだと改めて思いました。単純に「被害者にも落ち度が」とか、「加害者が全て悪い」「ジェンダーおばさん」という割り切りがなく、深く考えさせる話でした。特に過去の恋愛と性被害、これの線引は特に難しいですね。仕事が絡むと特に難しくなります。いかに円満に別れるかでしょうか。しかし、別れるということはそれなりに葛藤や恨みつらみがあることなので、性被害ということに転化しがちですね。 登場人物によって書き方をかえる著者の切り替えの多様さに感心しました。表層ではなく深いところで登場人物の思いや考えをかき分ける能力があってすごいと思いました。
2投稿日: 2025.08.15
powered by ブクログ世の中の黒い部分を凝縮したような内容で、読み進めながら心がゆっくりと締め付けられていく。一見称賛されるような"正義感"も、時には加害に繋がるリスクを秘めていて、無自覚に生きる人、波風を立てない人、糾弾する人、様々な視点で綴られた紛れもない最高傑作。
3投稿日: 2025.08.12
powered by ブクログここ数年の時代変化が、年代・性別・立場さまざまな登場人物の視点に切り替わりながらとても鮮やかに描かれていた まだ時間があまり経っていない、鮮度が高いうちにこの本を読めて良かったなと思った この時代を生きてる自分の中で顕在化されてきたモヤモヤを、物語を通じて言語化・具体化して貰えた感じ 人物描写がとても細かくて、視点が切り替わってもすごく入り込めたし、全然自分とは属性が違うはずの視点でも何となく既視感があった 本を通してそれぞれの人生の経緯が、共感は出来なくとも腹落ち出来るようなそんな感覚だった 最後の方好きだなぁ 文字数としては数行だったけどすごく突き刺さって、なかなかページを読み進められなかった 満足
5投稿日: 2025.08.12
powered by ブクログ語り手が変わる度に、見える景色や価値観が二転三転するから、まさかと思う人物に感情移入して振りまわされる感覚は、まさに出口の見えない深い藪の中。 読んでいる間中、#metoo と言う言葉を初めてTwitterで見た時のことや現実社会の事件やニュースが次から次へと思い出され(状況は違えど)身近な人達の実体験とも重なり、心の奥にザラリとしたものが残る。“とにかく凄い”の前評判を軽々超えて、凄かった!
12投稿日: 2025.08.11
powered by ブクログ読んでて辛い、けど読み進めてしまう。 私的には友梨奈の娘、伽耶と自分の感覚が近い気がした。理詰めで世界を変えないといけないと意見を持つことを強要する友梨奈のような人には辟易してしまう。もちろん男性から嫌な思いを受けることもあったけれど、女性からも嫌な思いをすることもあって、私は個人間の問題だと捉えるようにしているのかもしれない。その方が楽に生きられる気がして。
10投稿日: 2025.08.11
powered by ブクログ好きで読んでるくせに何だそれ、と思われると思うが、小説を読んでると読んでる間は楽しくもあるのだけど、読後に虚しさ?のようなものを感じることは多い(ハッピーエンドとかバッドエンドとかは関係ない)。元々小説読みじゃないこともあるけど、これだったらもう小説読まずにノンフィクションとかもっと学術寄りの本ばかり読んだ方がいいなーと思うことはしょっちゅうだ(そしてもちろん学術寄りの本でも、涎が出るほど面白い本は山ほどある!)。 しかし、本書のような作品に出会うと「小説ってすげえ、すさまじい、、、」と、語彙力少ないながら改めて思い知らされてしまう。 と言うものの、ちゃんと自分が読解出来ているかどうかは心許ないところもある。しかし本書を読んで自分が感じている(本書中にある表現を借りれば)ブラックホールのようなものは、小説やフィクションでないと感得しえないものだ、と思う。
1投稿日: 2025.08.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
女は抑圧され、男は優遇される。 そういう現代です。以上。みたいな話だったな、と思った。横文字でカッコよく色々書いてたり、テンポよく難しいことを書こうとしている気がして萎えて読みづらかった。 女性作家と編集者について、視点を章ごとに変えて書かれる。女性作家は夫と娘がいるが、夫も娘も放置して7年間若い彼氏と同棲。でも夫と娘の家賃を払い、傲慢にしている。担当編集は50代で、元嫁と子供に養育費に母親の老人ホーム代に妹の精神病院代を払い、マチアプで女ヤリ捨てる。作家志望の女子大生と、本人曰く恋仲、JD曰く搾取、でそのことを告発されバズる。 作家は娘の友達が教授から編集者に献上されて搾取され自殺したことに強い反感を示す。娘はそれもあの子の選択の結果だしと冷めており、それにも酷く詰る。 とまぁ、そんな感じの女とか男とか搾取とか目線とかの話。
0投稿日: 2025.08.10
powered by ブクログ文学界に携わる人たちの性加害、性被害にまつわる話 MeToo、SNS、マッチングアプリ… 様々な切り口から 登場人物それぞれの視点で語られる 尊厳を踏みにじる行為だからか、どれだけ時間、年数がたっても許せない思いにずっとつきまとわれてる 当事者たちであってもまったく違うことを思ってる 片方は「搾取された」 片方は「搾取してない」と 総527頁 おもしろかったけど 読む側にエネルギーがいる 元気じゃないと読めないかもしれない
33投稿日: 2025.08.09
powered by ブクログなんでこんなに時代のこと書けるの。すごすぎ。 まじで藪の中。 時代に残された編集長、新しい時代に乗る女性作家、30代のマチアプ狂いの編集者…などなど。それぞれの目線から見た”社会”と加害者、被害者の話。 かなり面白かった。 女性の性被害と、別の感情の結びつき。告発と、行き過ぎた非難。 我慢することが当たり前の中年の男は被害者になり得ないのか。なり得ないのだろうと思った。 作中で五代くんが言ってたけど、まじでおっさんになりたくねえ。 時代も社会も”男”の味方はいないもんな。まあたくさんの人が生きやすくなったんだからいいのかな。
1投稿日: 2025.08.07
powered by ブクログ金原ひとみ『YABUNONAKA-ヤブノナカ-』、読了。こ、、これはすごいものを読んでしまった。今まで読んだ金原ひとみ作品の中で一番好きかもしれない。 表題は芥川龍之介の『薮の中』を想起する。構成はそれを実現しており、複数人視点。でも金原ヤブノナカはさらに現代テーマを盛り込み重厚。
1投稿日: 2025.08.06
powered by ブクログmetooという言葉が世間に出た時は「なんだそれ」と思っていたが、この小説を読んで改めて事の重大さを知ったし、昔はそれが当然のようにあり、現在も明るみになっていないだけで行われている可能性があり、苦しんでいる人もいるのかと思うと人ごとではないと感じる。
0投稿日: 2025.08.06
powered by ブクログ真実すらもやっぱりわかんないよなあという気持ち。自分の信念も好みすらも時代の影響が大きく、過渡期の代償、犠牲とも言える加害者の存在にしっかり生理的不快感が湧く自分も不快だから一生俯瞰していたい 2章 長岡友梨奈 当時は自分の中で「そういうこと」として引き出しの中に収納していたものが、後々に被害というラベルをつけられ、抑圧された苦しみとして時限爆弾のように爆発する これが卑怯な気もする あとからラベルが作られてそれに過去を当てはめたら、あの時あんなに苦しかった、あんなに惨めな思いをした、という気になるのは当然では。 あなたはショックで麻痺しているだけで、あとから恐怖や嫌悪の実感が湧いてくる、その苦しみは本物ですよ、みたいなカウンセリングの言葉をよく耳にするが、それも当たり前のはず 人の心をよく理解していますよと言わんばかりのラベル製造人間に暗示されたら、そう思っていたんだな自分は、って後から解釈を重ねて過去が鋳型に嵌められていくのは必然 本当にその時感じた気持ちなんて後から振り返ってわかるはずない コップの大きさと内容量の関係性の比喩がp51にあったが、その時その時のコップと内容量の関係で相手の罪を判断しないと、あとから容積をいじれるなんて、そんなの後出しジャンケンでは なかったかもしれない古傷をどんどん生成する作業には疑問を感じる p57「当時は大して気にしていなかったことが、どんどん大きな罪になっていく。時代の変化によって、そしてその変化によって呼応した自分によって。」 変化に呼応するのはごく自然なことだが、罪を認識する上で、行為が行われた時点と、判断する時点とで時相を合わせないとフェアじゃないと思う 行為の時点で少しでも擦過傷があったら、時代の変遷ともに呼応した自己が過去を振り返ってその傷を抉り、じりじりと傷口を開いて、もとからそれくらい流血のポテンシャルがあった重大な怪我のように思ってしまうから、もう後出しジャンケンは止まらない。友梨奈視点の夫との言い争いを見ていると、長い年月にわたって継続している問題は、もはや何がもとからの深い傷で、何が幻の古傷かすらわからなくなってしまい(まあ日記とかで支えられる部分もあるかもしれないけど)、訴えられている側もどうにでも言い訳可能だし、お互い使える武器を使い通して、あとは運に身を任せて決着をつけるしかない気がする 人は慣れに飼い慣らされて生きている。未来では痛みと表現されることが、今この瞬間には慣れゆえに全く疑問も感じずすんなり受け入れられている、そんなようなことが無数にあるに違いない ここからは被害です、苦痛です、マイナスですと指し示せるような絶対的な0の指標なんてないのに、時代の経過とともに続々とマイナスのカテゴリに入れられるものが増えていくと、それにより絶対的な0の指標を浮かび上がらせる作業が一歩進んだかのような錯覚を抱く 相手の柔和な態度の背後に潜む(潜んですらいなかったかもしれない)性的搾取の香りを薄々と感じ取りながらも、プラスの側面(p52 唯一縋れる存在だった)を多少享受していることもあり拒否しきれなかった側が、被害者という服を着て完全防備できるのはなんでなんだろう 性的文脈以外でも人間関係なんて欺瞞に満ち溢れていて、お互いの都合のいい部分を摘みあっているに過ぎない。相手が甘美な言葉を使用してまで何とかこちらを利用としているのなら、こちらも知識を身につけ利用されないように応戦したらいいじゃん、と思う。詐欺や強姦などの罪名がつかないだけで、自分も含め人間が下心をもって損得利害で動く場面なんてたくさんあるんだから、無知で防衛手段を知らない側は守られるなんていうユートピアのイメージは捨て去って、抗いたいなら自分で防衛するしかない。犯罪の文脈から外れた日常においては、そのことを皆自然に受け入れられている気がするのに、一旦犯罪という枠にハマると、とたんに、弱者です被害者ですという名札をつけて無邪気に守られようとするのは何。 権力的/物理的に弱い側が強い側に支配されるなんてそんなの当たり前 その影響から逃れるために、知識を身につける、近づかない、など、まだ試していない防衛手段が残存する中で、その支配を受け入れて憎悪の念や被害者意識を温める構図あるあるだなあと。 抵抗、精一杯の努力をした上で被害者であることを痛切に自覚する姿には同情できるけど。 あなたはそういう被害を受けたことがないから言えるんじゃないという糾弾も煩わしい。 p53「流れでそうなったのなら、自分の意思でそうなったとは言えないのではないのだろうか。」「そんな意思のないアメリカンドッグの皮みたいな女だから搾取されて捨てられるんだ」とあったが、流れで行動決定をしている人が大半だと思うし、自分はどう思っているか?と行動選択のたびに自分に問いかけて自分の意思で全てを選び取ったとしても、「その時私は錯覚していた」とか後から心の動きのよくあるパターンを学習して書き換えるんだったらどっちも同じじゃん。 家庭内で生じる不和(ワンオペなのに、追い打ちをかけるように、子供と出かけて息抜きしてきなよ、と夫に声をかけられるという例があった)は、隣人の家が糞尿にまみれていても、自分の家さえ臭くならなければ干渉しない構図と一致すると思う。ただ、家庭内だと、どこまでを一つの家と捉えるかっていうのが曖昧だから、期待も少なからずあり、裏切られる度に失望や怒りが増幅する 3章 五松武夫 ルッキズム糾弾の流れによって、ルックス以外の特徴(やさしい、話がたのしい、〜してくれる)への注意配分が大きくなっただけで、性格も含めてスペック重視ということには変わりない なのにそれをあたかも成熟した人間性のように表現するのよくある流れ。それも嫌い p93「猥雑なもの、乱暴なもの、激しいものに研磨され皮膚を厚くしないと生き延びられないような世界で、頑強な精神を持ってサバイブすることだけが人間にとってのあるべきかたちとは思いません。少なくとも、ここは自分の生きるべき世界ではないと閉じていき、しんと死んでいく者の慎ましい生を否定するような人間にはなりたくない」 時代や地域で環境への順応形態が異なり、個体差もあることにより人の傾向が多様なものとなっているのに、比較できないものを比較しようとしている 変数が複数ある時に、変数が一つだけになるように他を固定する試みをせず、乱暴に定数として全てを比較している 4章 橋山美津 橋山にはやっぱり素直に同情できない。どうして自分のことを、自覚せぬまま若さと肉体を搾取された、本来庇護されるべきなのに適切なサポートを受けられず救済の網目から零れ落ちた人間だと、無垢な立場を主張できるのか。木戸側は費やした金と時間と労力に見合った見返りを得られなかったと主張し、橋山側は、生活苦に選択範囲を狭められ縋るべきところが限られている無知な若者を力ある立場が搾取したと訴える。どちらもお互いを利用したいという思いがうまく実を結ばなかった。それを相手のせいにして他罰的になっているという点で五十歩百歩に感じる。力関係の勾配、どれだけ社会を知っているかという知識の差が少なからずあったとして、下のものに必ずしも救済措置や同情の目が優しく差し向けられるほど世の中は秩序だったものではない。過度に世の中の平衡に期待しすぎでは。愚かと笑われるべきとは全く思わないけど。親に守られるべき子供や介護されるべき認知症患者。これらと並列で支援を与えられるべき存在と認識されるほどには、社会の非情に無垢な存在は、客観的評価のしづらさ(その危うさが年齢や社会経験に必ずしも比例するものではないし)ゆえに、その弱さをポジションとして確立しにくい。全てのビハインドを均してスタート地点を整えてくれるほど、世話焼きでお膳立てされた世の中ではない。(「そんなのおかしくない?」と橋山が思い続ける気持ちはかなり理解できる。負けた側は煮え切らない敗北感を持ち続けるものなので。10年かけて、スタンダードが被害者に少し優しく変容したであろう世間に語りかける試みをしているというのも彼女なりの武器の使い方である気が。一貫して無邪気な被害者であろうとする姿勢には嫌悪感あるけど) 人間関係においては、水面下で相手の腹の中を探り合いながら、無意識のうちに利用されていないか、享受できるメリットと引き換えに自分が削り取られていくのをどれくらい許容できるか、日々問答し、自分の武器を効果的に駆使して生き残るしかない。結局は1人であることを痛烈に自覚するという弊害も生じるが、それを甘受して常にバックグラウンドで戦闘の姿勢を燃やしていないと淘汰されてしまう、世の中そんなもんでは。人をまるっと信じ込むというのは、そういうリスクはもういいから、と白旗をあげて、人間関係の幻想的な純粋さに一か八か賭けた状態なので、それで被害を被っても後から何も文句は言えない さらに、金や時間など測りやすいものの見返りを無意識に求めてしまう男性的な視点は(五松視点で語られていた)、現代社会で保証されている正当性を盾に、とんでもなく酷い言葉で詰られることもしばしば。そのような前時代的な視点は環境から自然と吸収して否応なく身についてしまったもの。時代の流れに沿った価値観を無意識レベルにまで植え付ける手術がまだ行われていないだけ(実際五松は、自分のマンスプっぷりを自覚はしている)なので、無垢な女性に同情するのなら、彼らも同情に値するとおもってしまう。 5章 横山一哉 私は友梨奈に似ている。誠実な対話をこの上なく欲していて、できる限り自分が対話に携わっていることによる影響を排し、純粋な意見を聞きたがる。相手の意見が言葉にまとまらない時には、そのかけらだけでも純粋なものを回収して知ろうとする。自分がその場で主張していることには絶対的な自信があるが、納得のいく反論や違う意見があれば、それも含めて再構築して、より妥当性の高い説明や信念を組み立てたいという態度。生活していてふとした瞬間に爆発的に違和感や嫌悪感を抱き、その度になんでそう思うんだろう、そう感じるんだろうと自分なりの理屈をつけて納得して、それを放出して自己完結(+さらに完成度の高い理論を打ち出したいし、自分の意見に完全には自信が持てないから信頼できる人にどう思うか聞いてみたりもするけど、興奮状態の時は言葉のラッピングもままならないから、相手はこちらの理屈っぽさに耐えられない。一哉ぐらいの相手がバランスがよいのかも、わかった気にもならず分かろうという姿勢を保ってくれる)している姿が自分と酷似していた。社会改革には興味も資質もなくて、ただ、どんなダイナミクスで人々が動いているのか細部を知りたいという関心しかないというのは、乖離した友梨奈に似ている。 そして一哉の扱いも笑えるほどそっくり。大した人間だという理由づけもできないけど、好きだという感情は直感的なものだから自分がいつも批判している人間たちと好きな人とを別枠にしてしまう。 p144の「正しさ」に対する態度も同感。「ただただ時代にはそれぞれの正解がある。移り変わる正解の波の中で、今の環境における正解を正確に捉えることだけが、今を真っ当に生きる術だよ」 排除されず生存し続けるためには刹那的な常識を無意識下にも組み込み、流れに乗り続ける必要がある。流れに上手く乗り相対的に速度が0になる時点で「正しい」という確固たる座標のようなものを手に入れることができる。 p164の課長批判は自分こそ課長という1人の人間の気持ちを慮ってなくないか?と思った 課長は子供に対する思想の時代的変化がインプットされていないだけで、悪意はないし、マイノリティの存在に想像力を働かせて考慮しようとしたらきりがなくて終いには何にも発言ができなくなる窮屈な状態になってしまう 多少マイノリティが圧排される構造は致し方ないというかごく自然だとおもってしまう 「共感しながら俯瞰していて、実際はどこにも本気で所属してはいない」のなら声をあげて徹底的に批判する意味がわからない 誰よりも早く時代の敏感な動きを察知して新しい価値観を自分の中にダウンロードし、自分が時代を変える必要もないと普段は俯瞰的な視点を保ちつつ、酒が入ると一気に感情がスパークして、物書きという仕事も相まって、価値観の過渡期に悪者として浮かび上がるものを糾弾する友梨奈は、感情と論理がバラバラで見ていて息苦しい。彼女が何よりも優先するべき正義だと感じる部分に覆い隠されている細やかな事情が、人によっては一番の優先事項かもしれない 感情に支配されて衝動的に動く友梨奈は、彼女自身が正解を疑うような冷静さ、正しさを持ちたいと普段意識しているだけに、余計痛々しく感じられる。 一哉は、自然に新しい価値観が染み込んでいて(完全には浸透していないけど)、誰とって何が重要で、どう行動したら弊害を生じさせずに物事を良い方面に持っていけるか考えようとした上で自分が救済の力を持たない無力な存在であることを感じ取り、心を痛めながら周囲を見守っている その姿がなんだかんだ一番平衡がとれているような気がする 7 章越山恵斗 常識や価値観が揺らいで新旧が混ざり合う過渡期においては、何が本能的に骨の髄まで染み付いていて、何を知識として理解しているかが人によってバラバラだから、お互いに価値観を押し付けるなと険悪な雰囲気になるのかな それぞれの時代にそれぞれの価値観があったということを頭でわかっていても、自分の時代のものはもう本能に刻まれているから、反射的にそれに反するものを忌み嫌ってしまう。露骨に否定する人もいれば、自分の時代以外のものをあからさまに遠ざけるのは自分の狭小さを露呈するだけだからと、お互い尊重することが大切だよねというポーズを取りながらやはり侮蔑心をどことなく隠せず、それを敏感に嗅ぎ取られて老害扱いされてしまう人もいる。 お互い尊重しようね、と頭でわかっていながら、どうしても自分に染みついた本能で時代を超えて断罪しようとしてしまうのはもうどうしようもない 友梨奈の伽耶に対する発言は理にかなっている 親元で育てられた子供が、親により少なからず触れる情報や経験をコントロールされて、それによる影響で自分の意見や思考が形成されていくから、自分の意見の背後にうっすらと、その土台となったものの存在(それを打ち壊したのであれ、その上に思想を築いたのであれ)が透けて見えてしまうのは致し方ない。主張していることは途轍もなく正しいけど、対話の場面において、自分の思考や、その思考に至るまでの過程、反駁された時にそれに応じて意見が再構築される過程、明確な単語では語れないけど確かに存在するゆらぎ、そのようなもの全てを言語の形に落とし込むことができる(言葉にしづらいというもどかしさすらも)からこそ生じる圧迫感(主張の強さ、というより主張を形にできる確かさの持つ圧)は相手を被支配意識で追い詰める。友梨奈は言語を武器として使えるけど、同じものを他人も保有していると思い込みすぎている気がする。友梨奈と伽耶は対話のスタイルがあまりに違くて、それ自体に関係性の拗れも多く起因しているから、互いに理解し合おうとコミュニケーションをとればとるほど捻れていきそう。何を話しているか、その場の雰囲気や感情を差し置いて発言内容を剝き出しで放り投げて受けとめる、そんな会話が出来たら理想だが、現実では、語調や話し方、空気感など言葉そのもの以外の部分がコミュニケーションを支配することがほとんど。「ヒートアップしている」「とにかく否定しようとしている」と言われ肝心の発言内容がおざなりにされることもよくある。でも、それは、どっちがいいとか悪いとかじゃなくてただの傾向だから、伝えたいことがあるなら伝えたいと思っている側が努力して相手のスタイルに歩み寄るしかないと思うのだけど。 承認欲求という生理的な欲求を持て余して他者を蔑むことでしか生きのびられず、そうした自分にも疲れ、枯れるままに身を任せて何のために生きているでもない、ただ死んでいない状態を続けているような姿が疎ましく思われるのは悲しい(恵斗が父親に対して強烈な苛立ちを感じているように) 無様であってもただ生きているのを、そういうものとして放っておいてもいいのではないか 8章 安住伽耶 女子大生の飛び降り自殺についての私の考えはかなり伽耶に近い 口を噤んでいた人が多くいて、たとえ声をあげていたとしてもどういうふうに事態が進行していたのかは今となってはわからない。こうだったら防げたかもしれない、という、数ある分岐のうちの1つでしかない幻の道筋に注目して後悔を募らせて何になるのか。 世の中は単純な矢印で説明できるほどシンプルじゃないし、私たちには到底整理不可能なほど多くの交絡因子が複雑に絡み合って出来事が生じるのだから、生じた出来事を出来事として観察することしかできない(p264「ああしていたら、こうしていたら、の域を私はもう乗り越えてしまった。歴然と、私はどうもできなかったのだ」こういう気持ちが大きいと思う) p293あたりの議論でもそう感じた。どこまで自分が責任を感じて、どこからは自分の関与する範囲外と捉えるのか、その配分に個人的な感情の担う割合が大きすぎる。私的感情を反映させて勝手に責任を感じたり問題に介入したり、これは防げた、これは曖昧なまま放置しておいた方がいいと分類したり。心を動かす感動ゲームの駒にあらゆる被害を用いてしまっている気がする。 人生の動力学に自分の一手で何か影響を及ぼせると考えるのは傲慢な気すらしてくる、その一手は決定的なボタンのようなものではなく、ただ「こうなりますように」と願いを込めてコインを放り投げているに等しい。p295「私たち一人ひとりが良心を持ち、志を高く持てば、この世界は変わるんだよ。私はただ、自分自身が世界を作っているという意識を持って欲しい」という発言になんともモヤモヤする。 加害者がその行為に至った背景や生来の性質など理解せず、真実も再解釈を重ねて経時的に(だいたいは悪い方向へ)変化していくのに、罪に相当する罰を作り出すことが困難だし、その罰によって何が変わるのか? p266友梨奈の爆発的な非難って本質的じゃないなって思ってしまう。「ピル飲んでる子がいるの?中学生で?」これをデフォルトマン的安住から発した女性への侮蔑的発言と捉えるのは全然わかる。だけどそのデフォルトマン的安住は自由意志によって選択的に手に取ったものではないし、今流行りの価値観や知識に出逢う機会がどれだけあったか、それを吸収しようとする必要性に迫られていたかどうか、そういう偶発的要素によって、もともと染み付いていた感性が改訂されるか、そのまま保持され続けるかの道がグラデーション的に分かれる。それだけのことでは。もっと普遍的な事実として、自分の感性にそぐわない人に侮蔑を示す態度に嫌悪を示しているのなら、それって友梨奈にもブーメランだよねってなるし。だから私も伽耶と同じで「傷つかない。ショックは受けない。こんな人がお父さんってガチか残念、とは思うけど、ただただ本当にそれは「ガチか残念」であって、ショックではない」と感じると思う。 p273タイパ重視の世の中で自分が影響力を持つという期待すら希薄になっているから、何かを変えようとするエネルギーも湧かない、そんなうっすらとした絶望の中を生きているというのにも共感。 長期的に影響を及ばすことを信じて何になるんだ。確かにsnsコンテンツによってどんどん短期的な報酬に慣れている傾向は現代にあるけど、私たちが何かに願いを懸けて行動して、それにより何かが変わったとしても、流動性ある常識、価値観の変化の一部に過ぎないのにやる気がでるわけがない 願掛けや根拠のない意味づけを正義のように語るのにも違和感がある 不安定で時代によって形を変える正義に絶対的な重要性を見出して、それこそが魂の証拠だなんていう友梨奈は盲目だと思ってしまう。 9章 横山一哉 友梨奈の会話スタイルが完全に私と一致していてつらい。言語に潔癖すぎる。その潔癖さに無理やりつき合わせるのこそ怠慢で傲慢なのだということを認識しないといつまでもフラストレーションで身を焦がしてしまう 踏み絵的な質問スタイルも似ている、実際元彼に言われていた 友梨奈は、会話を通じて互いの思想や信念を照らし合わせること、一人一人が悪に立ち向かった時に社会が正されるような幻想的な理想世界において振る舞うべき方法で悪に立ち向かうこと、これがなによりも大切だと信じて疑わないところが自分で自分の首を絞める原因になっている。彼女が表層的だ一掃するものの上を、慢性的な空虚感を押し殺して何とか一歩一歩踏みしめて歩いている人が多くいることを実感した方がいい 一哉をみていると、自分の意思らしきものでそれっぽく何かをコントロールできているような感覚(マーケティングがこう言い表されていた)でみんな生きているのだから、ぼんやりと漂うように生きるのがなぜ否定されなくてはならないのか、それっぽいものを明確な自由意志だと声高らかに宣言して押し付けるのこそ不健全じゃないかという気持ちになる。 恋愛は互いの搾取とも言える利用し合いだから、熱が冷めたらその構造があらわになるのも致し方ない。 10章 橋山美津 被害者同士が連帯するかどうかも条件がちょうどいい具合に重なるかどうか次第 当事者同士で復讐なり何なり敵対するのは致し方ないとして、腐敗遺伝子の定義もあやふやな段階で、第三者が首突っ込んで断罪するのって正義を娯楽として捉えているだけでは 結局橋山も、自分の方が執筆活動でリードしていると無意識に下に見ていた小夏が、よりにもよって木戸の手を借りて再起動、活躍している姿に自尊心が打ち砕かれ、その苦しみが告発の背中を押していた。憎悪の気持ちをストーリーに乗せて自ら過去の傷口を抉ってしまったあとは、何が実際不快で、何に当時苦しんでいたかという純真な事実を振り返っても探り当てることは決してできない 11章 五松武夫 客観的な事実を聞いて周りが創作するストーリーと、本人のバイアスがかかったストーリーとどちらで裁くべきなんだろうか 12章 長岡友梨奈 潔癖すぎる。どうせ自分が何をどうしても世界は変わらないし、世の中の改善や是正にかける意気込みがわかない。生きてるけど死んでもまあいいやくらいの執着しか持てないうっすらとした絶望の世界の上で目の前の小さな幸せがあったとて意味がないって、完璧主義すぎる、まあ私もそっち派だけど。 時代は刻一刻と変化しているけど、最近は価値観があまりに急激に変化していて、何か良い方向に変えようという動きも、結局変えられるわけがないという虚無感と脱力感で封じ込められ、魂を込めずに生きている人が多いというのが友梨奈を苦しめているのかな 13章以降 世界も社会も自分もどうでもいい、だから死ぬまでではない。それくらいの消極的選択肢として生を選ぶくらいなら、自分が抉れても「まあどうでもいいけどねそんなこと」と乖離せず生身で全力で世の中に感情を投じようと思って、無敵の人にならないように心をむき出しにしようとした結果友梨奈は死に向かっていったのだろうな
9投稿日: 2025.08.05
powered by ブクログ雑誌連載2022−2024、単行本2025年。 これは、素晴らしい。現代日本の小説の傑作だと思う。 こないだ読んでとても魅了された『ハジケテマザレ』は若者言葉によるパロールの洪水が楽しい作品だったが、本作は横に流れゆくパロールを駆使しながらも、垂直方向の思考で全てをコンポジションするエクリチュールの側面が強く、その部分でとても成功している。 古い昭和的なジェンダー問題、たとえば(地位のある)中年男性が立場を利用して若い女性を「性的に搾取」するといった問題が前面に出ているため、まるで桐野夏生さんの小説のようなテーマ性を持っている。 アメリカでMeToo運動が湧き起こってしばらく後に日本でも男性性のパワーに基づく性暴力がどんどん曝露されるようになってきた、この10年ほどの時代の推移をリアルタイムに表出した小説として、内容的にとても興味深いものがある。 しかし重要なのは、それが多数の人物の視点から順々に見つめ直すことにより、ハイレベルな重層的視点がひらけてくることだ。それぞれの人物の見方・感じ方・考え方に一定程度以上の説得力があるのは、作者の人生経験の賜物だろう。 この多視点の小説構造は、バフチンによるドストエフスキー小説の読解における<ポリフォニー>に十分匹敵する。 本作には編集者の五松武夫のようなどうしようもないバカ男も登場する一方、ジェンダー問題で鋭く言表する作家の長岡友梨奈のような、どうも「こういう人はダメだろう」と思わざるを得ないような女性も登場する。長岡はあまりにも「正義」を振りかざしすぎて、他者を苛烈に断罪し、言葉で攻撃しまくる。明らかに暴力性を持った人間であり、その暴力性は性の側面ではないというだけで、男性による性暴力とさほど変わるものではない。そしてこの女性が「弱いものを助けるため」などと突然フィジカルトレーニングを始め、ムエタイを身につけて、実際に男性らとケンカを始める辺り、いよいよ暴力の権化そのものと化してゆく。 このあたりの狂気と歪みを、作者はもちろんじゅうぶんに把握して描いていて、そのリアルな生々しさに吐き気がするほどだ。 多数の人物の視点を章ごとに切り替えてゆく本作は、数を減らして単純化すると A-B-C-D-C-B-A といった真ん中で線対称になるシンメトリー構造でつくられており、このようなスピノザの幾何学趣味みたいな遊びで構成しながら、物語はちゃんと必然性を持って着実に前進していくところが凄い。 もっともこのシンメトリー構造の最後に「Z」のようなおまけというか、コーダ部分がつく。ほんの脇役であった女子高校生リコが突然前面に登場して独白するのだ。この軽やかな「構造の破」によって、その前の章で終わってしまっては後味が悪くなってしまうところをうまく口直しして爽やかな読後感へと導く。 この明るい女子高校生の軽やかなフィーリングが、やっと混迷の社会に希望をもたらしてくれそうな予感をもたらしてくれるのだ。 しかも彼女は将来はラッパーになろう、と決めることで幕が閉じる。ここでラップが登場するアイディアは凄い。批評でもなく、他者を真っ向から批判する言表でもなく、言葉がやむを得ずストレートな形にならざるを得ない文学でもなくリズムに乗り洒落に韜晦した遊戯であるかのような日本語ラップというものへの道が開けてくるあたり、なかなかの浄化が成就されている。 金原ひとみさんは早い時期の作品ではどうも今ひとつピンとこないものもあるようだが、若者パロールのヴィヴィッドさとグルーヴ感が素晴らしい『ハジケテマザレ』(2023)といい、今年単行本化された本作といい、今年42歳という近年になっていよいよ大家として花開きだしたのではないだろうか。小学4年から中、高とほとんど不登校だったという女性が、思考と自己鍛錬を通していよいよ注目すべき文学者となってきたのではないかと考えるとワクワクしてしまう。
4投稿日: 2025.08.03
powered by ブクログすごく評価が高い作品だったけど、私には刺さらず。SNSをやらないからなのか? 世の中に、何かに激しい憤りを覚えることもなく、諦めているからなのか? もっと楽な生き方あると思う。
0投稿日: 2025.08.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
常に臨戦体制の戦うフェミニストさんの頭の中を文章化、それに当てられた人、時代の流れの犠牲者たち… 彼女は理想的な小説の中で生きている。 なぜ世界は残酷なままなのか?理想とのギャップにより感情は揺さぶられ、理想とのギャップにより燃え尽きる。 (なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか。ジョナサンマレシック)
1投稿日: 2025.08.03
powered by ブクログ性加害を告発する者、される者。それを見て憤り行動に移す者、移さない者。様々な立場で描かれ、全くわかり合えない立場にいる人達の描写のはずなのに、不思議とそれぞれの登場人物に共感できる部分があった。「相手の立場に立って考えること」。小学生でもわかるような簡単な理屈だが、前提が全く異なる相手を理解することの難しさをまざまざと感じさせられた。
3投稿日: 2025.07.30
powered by ブクログ性加害と告発。私は女性の立場でこの小説を読んでいるけど、男性の側の立場や言い分にも納得する部分が大いにあり、普段は自分に都合のいい意見だけを吸収して世論に帯同できている気になっていたんだなと思い知らされる。 構成が本当に面白くて、どんなクズにも狂人にもその人物の視点に立ってみると共感できてしまう。章が進むごとに1人の人間を内側から見たり外側から見たりできるからどんどんイメージが変わっていく。 女性が不当な扱いを受けたり、搾取されたり、悲しい事件が起きたりする度に私は毎回怒っているだろうか。 もちろん同じ女性として辛い気持ちに共感はするし痛ましいことだと思いはするけれど、結局は他人事なわけで、そこに対して怒りに発展するまでの熱量を持てていないことが大半である気がする。 こういう風に加害者側が叩かれているんだろうなという文脈を想像して、SNSで検索して、想像通りの批判が多数派であることに安心して、それですぐに忘れていく。この誰のものかもよく分からないような怒りを咀嚼するような私の行為は、一体なんなんだろう。 自分のこととなると話は別で、昔の恋人に対する怒りが時限爆弾のように後から爆発して、あれはレイプだった、あれは暴力だった、あれは……といくらでも列挙しやり場のない許せない気持ちを抱える事象にはかなり覚えがある。 世界が、世の中が腐っていることにはそこまで怒れず、大衆の波の中で流れに逆らわずにいることで自分の身の安全を守っている。誰かが代わりに怒ってくれているからそれでいいと思っている。だけど当事者となると強烈な怒りをもって相手を完膚なきまでにボコボコにしたくなる。私の感覚は果たして一般的なんだろうか。 長岡友梨奈のような、圧倒的な正義と使命を携えて生きている人はそう多くないだろうと思うし、見ていて宗教的な感じがするのも事実だけど、じゃあ私のような態度が“正しい”のかと言えば正しいのは多分長岡友梨奈の方なのかな。 恋人との穏やかな時間と確かな社会的立場と収入があってなお、世界が生きるに足りえないと嘆くことができる、そこまで正義に狂うことが出来る所以は何なのだろう。 でもやっぱり狂っているのは長岡友梨奈ではなく私なんだろうかという気持ちも拭えない。 淡々と、色々な人物の視点で明確な答えの出ないまま物語は進んでいくけれど、最後の50ページ程で、急激に物語の速度が上がるような出来事が起きて驚いた。何もないまま終わるんだろうと思っていた。 私はここの、まぜそばとカツカレーを無心で食べる木戸の描写が全編通して1番好きで、胸を打たれるような感覚があった。一度は死んだ男が、決して報われることはなくこれからも嫌われていくことは分かっていながらも食べることで生きることを取り戻していく描写に何故か涙を流していた。 なかなかの長編だけど必ず再読したい。 今年読んだものの中でもかなり心に残る1冊だった。 カズマが唯一の癒しでした。彼の視点の物語も読んでみたいなあ。
10投稿日: 2025.07.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読むの、疲れた~。長岡さんみたいな喋り方をする人を知っているので、もう自分が責められているようでした。私などは長岡さんに速攻見限られる人間ですね。 ワカモノ言葉というか現代人が使っているらしい言葉の数々や、難解読字に出てきそうな訓読みがいっぱいあって、もう恥ずかしさもなく何回も辞書やグーグルのお世話になりましたよ。 しかし、長岡さんの言ってることは正しいことばかり。溜飲が下がるところもたくさんありました。 まだ若かったことのあれこれを思い出して、あれなんかも搾取だったよなと思うことしきり。私も闘わなくてはならないのでは?と何度も思いました。 木戸も五松も、それほど悪い奴ではなく、どこにでもいる男性ですが、あえて彼らを断罪することで、男性全体に訴えかけているのでしょうか。 それにしても舞台を雑誌編集部にするなんて、モデルがいっぱいいたのかなと邪推してしまいます。どこにでもいるんだろうね。きっと。
2投稿日: 2025.07.23
powered by ブクログこの前テレビを見ていたら、わたしの好きなお笑い芸人が「家事を手伝っても奥さんがありがとうとか言うてくれへねん」とか文句を言っていて、女性タレントから「そもそも手伝うという発想がおかしくない?何で奥さんがやるのが前提なの?」と突っ込まれ、頭の良いその芸人さんは一瞬キョトンとしたあとすぐ気づいて、何か適当に大声で叫んでウケを取ってた でも、それを見ていた視聴者の中には、手伝ってくれるだけでも羨ましいという人もきっといるだろうし、家事はもちろん分担しよう!という夫に1ミリ単位で分担を決められて息苦しく感じている人もいるかもしれない 絶対的な正しさなんて、藪の中にあるのかもしれないし無いのかもしれない 人間を取りまくそんな多面性や両面性や二面性を、(家事よりもずっと重いテーマで)心にグサリと突き立ててくる、そんな小説 The other day, when I was watching TV, my favorite comedian said things like, “Even if I help out with the housework, my wife never says thank you.” A female celebrity immediately called him out, saying, “Isn’t it strange to even think of it as ‘helping’? Why is it taken for granted that your wife is supposed to do it?” The comedian, who’s actually quite smart, looked baffled for a moment but quickly caught on, and then covered it up by loudly screaming something to get a laugh. But among the viewers watching, I’m sure there are someone who would think, “Even having a husband who helps out would be enviable,” while others might feel stifled by a husband who insists on dividing up the chores down to the last detail—“Of course we should split the housework!”—and makes it feel suffocating. Maybe there’s no such thing as absolute rightness, or maybe it’s hidden somewhere unknowable. This novel drove a sharp stake into my heart with its depiction of the multifaceted, double-sided, and ambiguous nature of humanity—and it did so with themes far heavier than housework.
87投稿日: 2025.07.23
powered by ブクログ一哉には根幹をなす信念がなく、あるのは傾向や一般常識である。そして「友梨奈と一緒にいたい」という信仰に近いものが、彼の行動原理となっている。友梨奈の傍にいられるか、という基準を除いては、偏見や思想傾向に縛られない軽やかな主体ともいえる。 伽耶は「べき」を持たず、持つ場合にも自分のみに当てはめる「べき」でありたいと考えている。彼女の語りから、一人一人が自分の物差しで物事を決定できる環境を望んでいることが分かる。伽耶には信念があるが、友梨奈には認識されない強度のものである。 友梨奈は強い解離性を持つ人物であり、一哉は彼女に別人格のようなズレを感じる。これにより、「本当の友梨奈」が誰なのか、なぜ彼女がそのように振る舞うのか分からないことが不安を増幅させる。一哉の不安は、友梨奈の内面や行動の「分からなさ」と、両者の世界観の根本的な相違から生じている。 友梨奈は自分自身の怒りや悲しみを一般化し、自分から切り離して分析することで痛みを軽減している。また、スパークした感情やスパークを引き起こす構造、その分析に面白さを見出して冷静さを保っている。彼女の行動は前時代への強い怒りと知的好奇心に突き動かされている。この怒りは、現代の「正しさ」の枠組みを通じて正当化され、爆発的に表現されている。
14投稿日: 2025.07.21
powered by ブクログヤブノナカ―「藪の中」なのかな〜と 各自ですれ違う意味、とか自分にとっての正解の多視点での問題提起的な話なのかと思っていたけれど ずっと重くて掴みどころも見えず、 正しいこと、生きる意味って?と 次々と襲いかかる命題にクラクラし、 いづれも強烈な個性を持つ登場人物たちに苛ついたり、毒づきたくなったり 何だかとても消耗しながら最後まで一気に読んでしまった。 元気でキラキラしている現代の若い女子たちの未来には「搾取された」と感じるような黒歴史はもう訪れないのか、あるいはまたどこかのフェーズで何らかの「転換」が起こり何者かを呪うようになってしまうのか。 ただ穏やかに平和に幸せに生きることだけをを求める一哉は数十年後どうなっているのかも気になるし、(彼は何だか生命力が弱そう) 若くて怖いものなしで万能感MAXの恵斗は、やはり数十年後、今の彼が忌み嫌う父親そっくりになっていてその事実に気づいて激しく動揺する…というようなことになるのだろう。 社会の在り方や価値観は時代とともに変わってもそこに生きる人間の中身は実はあまり変わっていないのだと思う。
2投稿日: 2025.07.18
powered by ブクログものすごい質量のある本だった。どの視点からもなるほど、と思える考え方が出てきた。これ感想難しいな〜!長岡さんと娘のかやちゃんが対立するところすごかった。自分に感覚近いのは一哉さん、かやちゃんあたりかな。越山くんがお友達のカズマについて、「友達って男?女?みたいに聞いてこないからフラットに付き合えていい」的な一節を読んで、わかる〜!となった。読み終わって改めて題名めっちゃいいなって思った。
1投稿日: 2025.07.17
powered by ブクログ金原ひとみさんは初読み!にしてこのボリューム!!というか、もうホント長くて…読むのよそうかと何度も思いながらも、時間もかかりながらも何とか読了できたのでレビューあげることができました。 年代も性別も様々でそれぞれ事情を抱えた人物が登場しますが、誰にも共感することができなかったな…。ある意味、私とは別の世界の住人なんですよね!その最たる人物は小説家の長岡友梨奈…彼女は夫からレイプされたことを訴え、年下の彼と同棲中でもあります。そのせいか、女性の被る性的被害に敏感で…いや、過剰なほどに反応しちゃうんですよね…。それが痛々しいけど、その反面何もそこまで??とか思っちゃう私もいました。他にもやっぱり、えっ??なんで??って思うことが多くって…だいぶ、しんどい読書になりました。 金原ひとみさん、こういう作風の作家さんなんだぁ…って思うと、もうしばらくいいかなって!あぁ…選書間違えちゃったかなぁ(^-^;
76投稿日: 2025.07.16
powered by ブクログタイトルから勝手に、セクハラにあった被害者と加害者の言い分が違ってて、真相は藪の中ということを著者の世界観で描いてる小説だと思ったら、全然違かった。 物事はそう単純なことではなく、読み終えたらとても疲弊してた。 長岡友梨奈に徹底的に論破されてもうくたくた。 私ももし長岡友梨奈の娘だったら加那みたいにひきこもりになっていただろう。 彼女は軽症で連絡を絶つことで立ち直っていったけど。 でも、なんであんな死に方で終わらせたんだろ。 間接的な自殺? ここに出ている出版業界の男たちは木戸悠介にしても五松武夫にしても最低の最低。(特に五松) あと長岡友梨奈の元夫も。ひどい。 もちろんセクハラやモラハラマイノリティの人たちの問題に鈍感ではいたくないけど、長岡友梨奈のやり方は軌道を逸してる。 長岡友梨奈は死んだことで神格化されたけど、果たしてそれは真実なのかYABUNONAKAってことかな。
0投稿日: 2025.07.15
powered by ブクログなんだろう、とんでもなくエネルギーを消費した読後感。体力のいる小説だった。語り手が変わる度心がざわざわするし、性描写もなかなかエグい。搾取する側と搾取される側、男と女、アップデートできない人間は容赦なく断罪される今の世界。それぞれの世代が混じり合いすぎて、便利になりすぎて、多様性になりすぎておかしくなったんだと思う。苦しみを抱えたまま、タイトルの通り、みんな藪の中。
17投稿日: 2025.07.15
powered by ブクログそれぞれの人物の短編集のような話を見事に繋いで、それぞれの違う視点から見る人物像、本人の思っている人物像、世間から見た人物像など、さまざまな人物像が描かれていた。 登場人物達は、正論だけでもダメ、大手企業でのらりくらりと仕事をこなすだけでもダメ、マチアプで好き勝手もできない、なにかやると告発されるかも…一冊の中にホントいろいろと考えさせられることが多く、長編大作ということだけでなく、いろんなものが心にズッシリと重くのしかかってきた。 また、現在は短い間に社会の常識や価値観が大きく変わる時代であり、考え方が偏ってしまったり、「これが正しい」と決めつけてしまいやすくなる。 そうなると、知らず知らず危険な考えに染まってしまう恐れもあると思われる。 だからといって考え方のアップデートに囚われ、自分の考え方がブレブレで、それが今の多様性の時代だと意固地になってもいけない。 多様性と変革の時代だからこそ、もっと自分の感情などに素直にならないといけないのかもしれない。 個人的には、正しいことは正しいのだから間違っていないのだから、それを主張することは大事だと思うが、相手を追い詰め、論破することで、正しさという武器で相手を傷つけてしまうその行為は正しいとは言えないと思うが、正しさを伝えることはどうしたらいいのかわからなくなった。 そもそも自分が正しいと思っといることは正しいのかとも不安になる。 「普通」という言葉があるが、そもそも「普通」って何?って感じである。 でも、自分の正しいと思うことがあっても、口を閉ざして、見てみぬフリをすることは正しいとも思えず、ストレスも溜まって自分には非常に悪いことのようにも感じられる。 金原さんの思いを汲み取れていないと思うし、私の理解力の問題かもしれないが、今回読んだ私の感想としては、いろいろなことが折り重なって複雑に絡み合って、みんなが向かうべき方向を見失ったよつに思えた。まさにタイトルの「ヤブノナカ」なのではないかと思った。
19投稿日: 2025.07.15
powered by ブクログ登場人物全身の視点の解像度が高く、どの人にも共感でき、同時に不快な気持ちを持ったりする。木戸さんの中高年の視点については、異性なのに深く共感してしまった。老いから来る仕事への諦め、わかるわ…。大学生や高校生の視点、あの厭世観もおそらくそんなにずれてないんだろう。金原ひとみさんの描写力が半端ない。 性的搾取は絶対に嫌だし、性的なこと以外でも女性を搾取することは不愉快でしかない。でも、男性の気持ちもわからなくもないし、女性もやりすぎと感じることもある。一哉の気持ちがよくわかる。 読んでいて必ずしも楽しいわけでもないし不快なシーンも多い。それでも先を読みたい気持ちが止まらなかった。すごい本を読んでしまった。
4投稿日: 2025.07.14
