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さよなら校長先生
さよなら校長先生
瀧羽麻子/PHP研究所
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総合評価

19件)
3.5
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7
2
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  • びびこのアイコン
    びびこ
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    人との繋がりや出会いは生きていく中で大きな財産となるのだと思いました。 細やかな配慮や思いやりで皆を導いていった髙村先生。 ほのぼのとした気持ちになりました。

    0
    投稿日: 2025.06.04
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    hosinotuki
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    長く教育に携わった高村校長先生が亡くなった。偲ぶ会をするにあたり思い出の品を持ち寄ることに。 元生徒、後輩、娘やアイドルのコンサートで出会った人など6人の視点で語られる高村校長先生の人柄がとても素敵だ。

    0
    投稿日: 2025.05.04
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    ともこ
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    亡くなった時になんて言われるかで、 どう生きたかが明らかになるんだろうな。 本人には知る由もないし、 周りの人がなんて言うかも亡くなってみないと分からないかもしれないけど。 高村正子先生。 生前の行動を裏切らない偲ぶ会。 こちらの背筋も伸びる思いです。

    4
    投稿日: 2025.04.30
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    ルビー
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    当たり前だけど、どんな人でも、出会う立場、接する間柄によっていろいろは側面が見えて、感じ方や思い方が違うんだなと改めて思った。 自分はキャリアがないからだめな人間だと嘆いていても、親としては?伴侶としては?友人としては?と考える、その人の側面はさまざまで、一概にいい人、悪い人、優秀な人と決める事できない。 ある一点でだめな人間だと落ち込んで、全てがダメだと思ってしまう自分は少し前向きになれた本だった。 作品自体はほのぼのしていて、読みやすかった。

    0
    投稿日: 2025.04.30
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    mone
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    校長まで勤め上げ周りから慕われていた高村正子が亡くなった。教え子、後輩、ひとり娘…生前関わりのあった人たちから思い出が語られる。 率直に言うと推し仲間が話す「うちわ」の章が一番面白かった。厳格で冷静なイメージの正子がアイドルグループに夢中になってはしゃぐ姿が印象的。 他の章では教師然とした姿ばかりで意外性がなくて、物足りなかったです。

    14
    投稿日: 2025.04.24
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    エル
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    人徳のある先生だったんだなあ、というのが各々のエピソードから伝わる。アイドルのおっかけ話は意外というか、可愛らしいエピソードでしたね。

    1
    投稿日: 2025.03.24
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    かなぽん
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    高村先生いいなあ! テレビで見るような行動力あふれる熱血先生って感じの先生じゃないところが良かった 今春から小学校教師3年目の娘にも勧めたい一冊

    0
    投稿日: 2025.03.15
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    anko
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    みんなから慕われていた校長先生。教師という仕事を全うし、生涯を終えた先生。その死をきっかけに、先生と関わりのあった人たちが先生を思い出す。良い話だったが、もう少し何かあってほしかった。物足りなさも感じつつ読了。

    5
    投稿日: 2025.03.09
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    mayu
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    藤色のスーツを着こなして、颯爽と前を向いて歩く姿が印象的な表紙。 「さよなら校長先生」というタイトルからも分かるように、 この本の主役でもある高村校長先生が亡くなったという知らせから話は始まる。 生前関わりがあった6人が語る 校長先生との出来事や思い出。 それぞれの記憶に残る校長先生は、 ちょっとずつ違っていて、関わる人によって違う一面が見えたりするもの。 芯がしっかりしていて、生徒想い。 みんなから慕われている一方、 理路整然な母親に対し、娘さんにとってはちょっと複雑な部分もあったんだな… と生徒目線と娘目線からの対比は面白かった。 でも、こうして亡くなった後も偲ぶ会を開いてもらったり、思い出してもらえることは幸せなことだなぁと思うし、 人の話をきちんと聞き、自分で考えさせ、 最後には優しく諭してくれるような高村先生の 人柄がとても素敵だった…。

    1
    投稿日: 2025.03.08
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    葉明
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    今でこそ女性管理職が少し増えてきた印象だけど、 圧倒的に男性社会の学校において、 最後は校長を勤め上げた女性の生き様。 誰から見ても誠実な人物像。 私には到底なれないなあ。

    0
    投稿日: 2025.03.03
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    sibasora
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    長年教職に就いていた元先生をめぐるエピソードが連作になっている。教え子やコンサートで知り合った友人、元同僚、指導を受けた実習生、娘など様々な側面から描くことで、高村正子という人物像が浮かび上がってきた。凛とした思慮深い優しさと慈愛に満ちた教師像。全てを書ききらずに余韻を残した話になっていたので、想像が広がって、心に深く刻まれたようだ。藤色をモチーフにした優しい絵を散りばめた装丁も物語の余韻を楽しませてくれている。

    0
    投稿日: 2025.02.09
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    magicalq722
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    (勝手に)思ったのと違いました。 亡くなった校長先生へのそれぞれの関わりを描く連作短編集なんですが、もっとそれぞれの話しが繋がった構成とか、一本全編を通じて本筋があると良かったんですが、話しはばらばらで、校長先生がすごい人だ!という感じもなかったので、もっと面白くできたんじゃないかという勝手ながら思いました。 普通

    0
    投稿日: 2025.02.06
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    あお
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    小学校教師を長く勤めた女性が亡くなった。 生徒、保護者、友人、家族それぞれの目から見た彼女の姿そしてそれぞれの想い出。 関わり方によって人となりも変わる。 面白かったが、もう少し最後に繋がりがあるかと期待してしまった。

    0
    投稿日: 2025.01.30
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    湖永
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    小学校教師として30年以上働き、最後は校長も歴任した高村正子さんが亡くなった。 旦那さんも亡くなって、娘さんは海外で生活しているため、簡単に葬儀を済ませたらしく元同僚たちが高村さんを悼むために「高村正子先生を偲ぶ会」を計画する。 先生との思い出をそれぞれが語る。 ① コンパス〜かつての生徒 ② 連絡帳〜保護者 ③ うちわー趣味仲間 ④ スーツ〜海外で暮らす娘 ⑤ こんぺいとう〜同僚 ⑥ 深呼吸〜教育実習生 高村先生との思い出はみんなそれぞれあって…、そのどれもが先生の人柄を思わせる。 とても親身になり、優しくて思いやりがあって、もちろん伝え方、聴き方も丁寧で安心できる先生である。 先生を離れると趣味が意外だったり、娘にはクールに見えがちだけど…やはり総体的に見ると先生としての活躍の方が素晴らしかったんだろうなと思った。

    54
    投稿日: 2025.01.26
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    虹星そら
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    このレビューはネタバレを含みます。

    高村正子さんという方が亡くなった。 高村さんは主人公ではないが、縁のあった人達の記憶の中の高村さんの話。 コンパス、連絡帳、うちわ、スーツ、こんぺいとう、深呼吸。 新任の頃の高村先生、教職年数経た高村先生、アイドルのライブで出会った高村さん、娘から見た母としての正子さん、おばあちゃんの昔の同僚の高村正子さん、高村校長先生と先生の思い出。 どの高村さんも、素敵な人で先が読みたくてスラスラと読めました。

    14
    投稿日: 2025.01.21
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    あさきょ
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    長く地域に尽力した高村正子校長先生が亡くなり、高村先生をさん偲ぶ会が開かれることになり、教え子や保護者、元同僚や娘たちが先生との思い出をそれぞれが思い描く連作短編集。 教師は聖職者などと言われることもあったけど、やはり一人の人間で、児童や保護者に慕われていても、親子関係はなかなか思い通りに行かなかったのかな。 でも、何だかんだで娘の沙智は、一人でなんでも決めていくところなんか高村先生にそっくりだなと思う。 瀧羽さんの作品はどれも心優しいものが多く、中学入試や高校入試によく採用されるのも納得。

    40
    投稿日: 2025.01.10
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    Jacky
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    もうちょっとずつだけ いろんな人の続きが読みたかったな。 信頼とあきらめは違うような気がするけど って涼花ちゃんの言葉 私もそう思うよ。

    12
    投稿日: 2024.12.27
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    さてさて
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    あなたは、小学生の担任の先生を覚えているでしょうか? このレビューを読んでくださっている方の年齢はマチマチです。もしかしたら現役の小学生ですという方、卒業しましたがまだ10代ですという方もいらっしゃるでしょう。その一方で小学校を卒業したのは半世紀以上昔の話で、遠い記憶の彼方ですという方もいらっしゃるかもしれません。 人の記憶は不思議なところがあります。必ずしも古い記憶だからといって全てがすべて等しく薄れるものとも言えません。あの時この時、多くの者にとって何のことはない一瞬が、ある人にとってはいつまで経っても忘れることのできない記憶として刻まれ続けてもいる、そんなこともあるでしょう。記憶というものも不思議なものだと改めて思います。 さてここに、亡くなった『校長先生』の『偲ぶ会』が開かれることを耳にした人たちに光を当てる物語があります。先生の言葉を振り返る中にその先の今を生きる主人公たちが描かれるこの作品。そんな主人公たちの今の姿が描かれるこの作品。そしてそれは、6人の登場人物の語りの先に『校長先生』の在りし日の姿が浮かび上がる物語です。 『ただいま』と、『市立第三小学校』に通う孫娘のリナが『駆けこんできた』のを迎えるのは主人公の信介。『数十年前には』『自身も通った学校』の通学路に『梅本酒店』という酒屋を営む信介。『徒歩数分のマンションに』暮らす娘が『実家の店を手伝ってくれているため、学校帰りにはたいていこちらへやってくる』孫娘のリナ。店番を娘と交代し、リナと食卓を囲む中、『学校はどうだった?』と妻がリナに尋ねます。『楽しかった』と『元気よく答える』リナは、『あとねえ、モクトーもした』と付け加えます。『校長先生が死んじゃったんだよ』とさらに言い添えるリナ。 場面は変わり、午後の配達から戻った信介は『知ってた?三小の高村先生、亡くなったんだって』と娘に訊かれた信介は、リナが話していた『例の校長先生のことだろう』と思い『さっき、リナに聞いたよ。学校で黙祷したって』と答えます。『その先生、家族はいるのかな?奥さんとか、子どもとか』と『言葉を継』ぐ信介に『胡乱なまなざしを向け』る娘は『高村先生だよ?お父さん、覚えてないの?』、『お父さんも習ったことがあるって言ってなかったっけ?』と続けます。そんな娘の言葉に『そうだ、習った。信介は小学三年生で、彼女はまだ「高村先生」ではなかった。校長でもなかった。三年四組の担任となった、大学を卒業したばかりの初々しい新任教師は、独身で、当然ながら旧姓で呼ばれていた』と思い出した信介は『平野先生か』と呟きます。娘も世話になった高村先生とは、『娘の卒業式』で再会したものの、挨拶もままならず『もじもじしているうちに、先生はよその誰かに呼ばれ』、それきりとなってしまいました。『いい先生だったよね』と『しんみりと言う』娘の言葉を聞く信介。 再度場面は変わり、高村先生の『追悼会が開催される運びになったと聞いた』信介は、『案内のチラシ』の『会場内に、高村先生ゆかりの品々を集めた展示コーナーも準備する予定です。先生との思い出の品をお持ちの方は、ぜひご協力下さい』という記述に目をとめます。『ゆかりのもの?ちょっとおもしろいね』、『なんかないかな、うちらも?』と会話する妻と娘を置いて、物置と化した部屋へとやってきた信介は、『わざと隠そうとしたわけではない。うまく話す自信がなかっただけだ』と思いつつ、そこに埋もれたある品を探しつつ記憶を遡らせます。そう、それは信介が『小学三年生に上がる直前の春休みに、母が家を出ていった』ときのことでした。『姉だけを連れ』、置いていかれた信介は『お母ちゃんは?』と問うも『もともと寡黙だった父は』『無表情に』『いない』とだけ答えます。『その日を境に一段と口数が減った』父と、『同じく無口な祖父も、沈黙を貫いた』というそれからの日々。そして、『祖父と父と息子、男ばかり三人が残され』ました。祖母も数年前に亡くなっていたという梅本家の危機の中、『隣町に住む伯母(父の長姉)がやってき』ます。『生まれ育った実家で、勝手がわかっている』という伯母『の手によって家が快適に、また清潔にととのえられていくのと反比例して、信介の心は日に日に暗く濁ってい』きます。『息子を置き去りにした母にも、母に選ばれた姉にも、黙りこくっている父や祖父にも、腹が立った』という信介。そんなある日、平野先生が『家庭訪問にやってき』ます。『素直ないい子なんです。若干、頼りないところもありますけど…けっこう甘やかされてたみたいで』と説明する『伯母の言葉に』愕然とする信介は、自分が『頼りない』、『甘やかされていた』なんて『考えたこともなかった』と思います。そして、『それからは、気をひきしめ』、『自分でできることは自力で対処するように心がけ』るようになった信介。 三度場面は変わり、『次の定休日にも』『物置部屋に足を踏み入れた』信介は、『中身を示す注意書き』を見ながら探し物を続けます。そして、『なにも書かれていない一箱を選んで床に下ろしたところで、背後から』『なにをしてるの?』と『声をかけられ』飛びあがります。『探しもの?』、『記念のもの?』と重ねて訊かれ観念した信介は『コンパスなんだけど』と答えます。『小三から道具箱に加わった新入り』という『コンパス』に隠された信介の高村先生との思い出が描かれていきます…という最初の短編〈コンパス〉。人によってさまざまなものに大切な思い出が隠されていることを実感する好編でした。 2024年12月9日に刊行された瀧羽麻子さんの最新作でもあるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、2024年10月に小川洋子さん「耳に棲むもの」、11月には寺地はるなさん「雫」と南杏子さん「いのちの波止場」の二冊…と、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを毎月一冊を目標に行ってきました。そんな中に、”左京区シリーズ”など青春、恋愛小説に定評のある瀧羽麻子さんの新作が出ることを知り、これは読まねば!と発売日早々この作品を手にしました。 そんなこの作品は、内容紹介にこんな風にうたわれています。  “第三小学校の校長として、長く地域に尽力した高村正子さんが亡くなった。彼女の死を悼んだ後輩の教師たちにより、生前勤めた学校で「高村正子先生を偲ぶ会」が開かれることに。教え子、友人、趣味の仲間、同僚…生前、彼女と関わっていた人々が偲ぶ会に持ち寄るための思い出の品を準備しながら、高村先生からもらった言葉や教えを振り返る” 月刊「文蔵」2023年6月号〜2024年7・8月号に連載されたものを加筆修正の上刊行されたこの作品は、内容紹介にある通り”学校の先生”が登場します。”学校の先生”で思い出すのは、高校時代に国語を教わった教師と居酒屋で偶然に再開したことをきっかけに新たな物語が始まる川上弘美さん「センセイの鞄」、高校時代に好きだった教師と再会することから始まる島本理生さん「ナラタージュ」などがあります。しかし、この作品はかつて同じ時代を過ごした教師の名前が登場してもこれらの作品とは大きく設定が異なります。物語はこんな風にはじまります。  『その訃報は、小学一年生の孫娘によって信介のもとにもたらされた』。 『その訃報』とは、書名に登場する『校長先生』のことを指します。亡くなっている以上、そんな『校長先生』に視点が移動することはありませんし、そこから先生との新たな関係が始まることもありません。そうです。この作品は、亡くなった『校長先生』に縁のあった人物を描く物語の中に『校長先生』の生前の姿を浮かび上がらせていく物語なのです。似たような想定を取るものとしては柚木麻子さん「伊藤くんAtoE」、川上弘美さん「ニシノユキヒコの恋と冒険」が挙げられます。ただし、柚木さんの作品も川上さんの作品も書名に名前が挙げられた男性に出会った女性たちが語る当該男性の姿という物語であり、趣は全く異なります。しかし、本来的には主人公と思われる人物に視点が移動しない中に、当該人物像を浮かび上がらせていくという手法は同様です。そして、この瀧羽さんの作品では、その当該人物を『校長先生』としたことで、より幅の広い人物から見た『校長先生』像を描けるメリットがあります。また、上記の通りそんな『校長先生』がすでに亡くなっていると出発地点で物語を整理したことで、より滋味深い感覚を読者に与えもします。 さて、そんなこの作品は6つの短編が連作短編を構成しています。共通となる繋がりはもちろん『校長先生』ですが、そこに瀧羽さんはもう一つ面白い仕掛けを用意されています。校長である『高村正子先生を偲ぶ会』が企画される中、その『案内チラシ』が作成されます。そこにこんな一文が記載されているのです。  『会場内に、高村先生ゆかりの品々を集めた展示コーナーも準備する予定です。先生との思い出の品をお持ちの方は、ぜひご協力下さい』 『各人の「思い出の品」を借り受け、簡単な説明を添えて陳列する』という記載に各短編の主人公たちは、高村先生のことを思い出し、その思い出の中に『思い出の品』について思いを巡らせていきます。そして、そんな品々が各短編のタイトルとして記されています。では、それぞれの短編のタイトルとその短編で主人公となる人物、そしてその人物から見た高村先生の印象を見てみましょう。ネタバレにならないように敢えてアッサリとまとめさせていただきます。  ・〈コンパス〉: 信介    高村 → 大学を卒業したばかりの初々しい新任教師、三年四組の担任     印象『思慮深げできまじめ』  ・〈連絡帳〉: 明代    高村 → 四十代の後半、息子のツトムの一年一組の担任     印象『どちらかといえば小柄なのに、姿勢がよく所作が堂々としていて、ただならぬ威厳があった』  ・〈うちわ〉: 希実    高村 → 七十歳、あるグループのライブで知り合う     印象『品のよさそうなおばさん』  ・〈スーツ〉: 沙智    高村 → 仕事に邁進する母親     印象『優秀な教師だった』、『ただ、優れた教師が、必ずしも優れた親になるとは限らない』    ・〈こんぺいとう〉: 涼花    高村 → おばあちゃんの元同僚     印象『小柄なおばあさん』  ・〈深呼吸〉: 忠司    高村 → 教育実習先の校長先生、一緒に過ごしたのは、たったのひと月にすぎない     印象『凜とした声』、『泰然とした』姿 6人の登場人物の属性は見事にバラバラです。また、高村の年齢も『大学を卒業したばかり』の時期から『校長先生』となり、そして定年後の姿までと幅広いのも特徴です。それぞれの人物は、高村との関わり合いの中にそれぞれの印象を抱いています。そして、上記した『思い出の品』がその物語の中にサラッと描かれてもいきます。一方でそれぞれの短編は6人の登場人物の過去の一時点を描いてもいます。 〈コンパス〉の主人公・信介は小学三年生の時に姉を連れて母親が出て行くという経験をしました。『いらないものを母は全部置いていった。夫も息子も、家も仕事も』と、母親が姉を連れ自身を置いていったことに胸を痛める中に、担任の平野(高村)との出会いが気づきを与えてくれます。また、フェントとも言えるのが〈うちわ〉の主人公・希実と高村の出会いです。書名からは先生と生徒もしくは先生同士という組み合わせが自然と思い浮かぶ中に、この短編だけは生前の奥村の違った側面を見せてくれます。教師も一人の人間であることを認識させてもくれる絶妙な主人公の設定には驚かされます。そして、ある意味で一つのメイン短編とも言えるのが〈スーツ〉の沙智の物語です。〈うちわ〉の物語も教師を離れた視点で高村の異なる一面を見せてくれましたが、この短編では母親の正子を見る実の娘・沙智視点の物語が展開していきます。  『優れた教師が、必ずしも優れた親になるとは限らない』 そんなショッキングな一文は高村が見せる母親としての姿を描いていきます。数多の子供たちを育ててきた教師の目がそのまま実の娘に向けられる時、そこにはどのような関係性が生まれるのか、この短編はある意味で冷酷なまでにその姿を物語に浮かび上がらせます。『腹立ちまぎれに言い返したり、不機嫌に黙りこんだり』しても『顔色ひとつ変え』ずに対峙していく奥村の『心の奥底までのぞきこまれるような視線』を『うつむいて避け』る娘の沙智。そんな沙智の記憶が綴られるこの短編が与える印象は鮮烈です。親と教師にはそれぞれの役割がある、そんなことを再認識させてもくれます。そんな物語は、他の3つの短編含め、読み進めば読み進めるほどに生前の高村の姿を読者の中にハッキリと浮かび上がらせていきます。その元となるものがそれぞれの短編主人公に対して奥村が発してきた言葉の数々でもありました。  『顔や名前は記憶から失われてしまっても、かけた言葉や教えた知識が、どこか心の片隅に残るかもしれない』。 そうです。私たちは人と人との関わり合いの中でさまざまに言葉を交わします。言葉の重みというものは時に人を動かし、もしくは思い留まらせる力をもつものです。6つの短編の主人公たちは、それぞれの人生の中で高村と同じ時を共にしました。そんな主人公たちに高村が残したもの。上記した通り物語冒頭に高村はこの世を去った状態で物語はスタートします。人はいつか必ず死を迎えます。しかし、人が死しても生前発した言葉はそれを受けとった人の心の中いつまでも残り続ける、そして、それがその人の人生を支え続けても行く。「さよなら校長先生」と、別れの言葉を書名に冠したこの作品、そこにはそれぞれの主人公たちの過去に一つの起点をくれた高村正子という人物の生前の姿を振り返る物語、それぞれの人物たちの深い思いが詰まった物語が描かれていました。  『知ってた?三小の高村先生、亡くなったんだって』 そんな言葉の先に、生前の高村を知る者たちの過去語りが綴られていくこの作品。そこには、高村のことを今も忘れることのできない者たちの熱い思いが6つの短編に綴られていました。バラエティ豊かな登場人物の設定に唸るこの作品。そんな登場人物たちの高村を見る目に高村の人となりが自然と浮かび上がってもくるこの作品。 「さよなら校長先生」という書名の絶妙さにも唸る、瀧羽さんの上手さを感じる作品でした。

    257
    投稿日: 2024.12.14
  • natsuki813のアイコン
    natsuki813
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    30年以上、小学校教師として働き、校長も歴任した 高村正子が亡くなり、同僚たちは「偲ぶ会」を 計画する。かつての生徒、保護者、友人、同僚らの 思い出の品から”先生”の姿が浮かび上がり…。

    2
    投稿日: 2024.12.09