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ヒロイン100人好きにして?
ヒロイン100人好きにして?
渋谷瑞也、Bcoca/KADOKAWA
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総合評価

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    恋人が100人出来る方の作品を想像して読み始めたら、どっちかっていうと神のみぞ知っている作品に近かったね 主人公の夜行は非常に能力が高いのに、モテないという一点において強烈なコンプレックスを抱いている。それは彼が誰かとの恋愛を始める上で大きく不利益となる要素、夜行が次々と女の子を落として行くなんて不似合いに思える 卑屈に成りかけていた彼の運命を変えたのは魔女・ベルカの存在だね。物語を始める上でベルは夜行にとても都合がいい存在に見える 彼が全く知り得ない処で一目惚れしたため夜行は恋愛の努力をする必要が無かった。彼女の魔法はちょっとしたズルなら幾らでも行える。夜行を全力でサポートするベルは女の子達を次々と恋に落とす過程にて優秀過ぎてもはや舞台装置のようにすら思える だからこそ、Episode4にてベルが見せた別の側面が彼女こそ真のヒロインであると驚きと共に感じられたのだけど 最初の救出対象である夏澄は判りやすく背負い過ぎな少女であったかな 女子野球期待の星と囁かれる彼女は自分を高い城に置き続けなければならない。だというのに自分を簡単に打ち取る後輩が現れた。その後輩と共に女子野球の星と成れれば良かったのだろうけど彼女は我が強い人間、他人と席を分け合うなんて許せない だから、彼女の問題を解決する為にはそうした意固地の方向性を少し変えてやる必要があったわけだ 恋をする事でどのような現象が生じるかは人により様々だろうけど、本作の場合は相手に心の一部を委ねる面が見えるね。夏澄は夜行への想いを強くするに従い、彼を通して野球の無い人生を見たのだから 夜行と共に居れば自分を苦しめる野球とは縁の無い楽しい人生が有るかもしれない。でも彼女は我の強さから野球を選んだ。そんな夏澄の為に彼女の愛する夜行が絶対的な壁となる事で野球への向き合い方を問い直せたのだろうね 自分を天衣無縫の強者ではなく、どうしようもない弱者と思い知って、それでもなおボールを投げ続けると決めた彼女の姿は美しかったよ 莉々は大勢の人々から愛される配信者でありながら、大勢の人々に混ざれないコミュ障タイプか 普通であれば、不登校の人間を集団に飛び込ませるなんて難しく思える。けれど、配信者としての実績があるから莉々は集団に紛れ込める素質は有る。問題はそこへどうやって導くか ここで夜行の素質が活きてくるのは良いね。彼とて以前は不登校だったが手を差し伸べる者が居たから学校へ戻れた。いわば莉々にした事は夜行がかつてされた事の再現 莉々が夜行の時と異なるのは、手助けしてくれた彼が最初から関係の終わりを仄めかしている点かな。夜行が目指すのは莉々の独り立ちだから、夜行と共に居る日常を目指す莉々とは相容れない でも、その認識とて夜行が居なければ自分を助けてくれる人が居ないとの思い違いから来る恐怖であって… そうした点が見えたからこそ、莉々は独りではないと教える為に夜行がした自爆行為は笑えるけれど最高に格好良いものだったし、救出過程を忘れた筈なのに再び彼に会いに行った莉々のいじらしさを可愛く思えてしまうよ タイトルがあれで夏澄と莉々という魅力的なヒロインが描かれた後のEpisode4でまさか夜行の救出劇が描かれるとは思わなんだ ただし、これは夜行が救われる物語でありつつ、同時にベルがヒロインになる物語であり、更に言えば夜行が自分自身を救う物語でもあったのかな 元カノである紅羽は夜行を魅了して止まない人物であると重々伝わってくる。このような人間は2人と居ないと判る だから夜行も手酷く捨てられた自覚があるのに、再会した彼女への悪印象を持てない。それどころかキスしてきた彼女に心奪われてしまうほど 紅羽に心囚われたままだから、改めて彼女の魔力を前にしてしまうと異なる魔力を持つベルを受け容れられなくなる。結果的にベルを手酷く捨てる側になってしまうのは因果な話 そのような状態だから手綱は紅羽が握っていると言えて、彼女が本格的に裏切るのを止められなかった訳だ いや、それにしてもあのシーンのダメージは読んでいてキツいものが有ったけどさ…… 夜行はベルを拒み、紅羽は夜行を受け容れる気はなかった。そう知れた最悪の状況であろうともベルが夜行を見捨てなかった点にはもはや都合が良いなんて話ではなく、彼女がそれだけ深い愛を夜行に抱いているのだと知れたよ だから彼女が最愛の人を傷付けた悪女に復讐しようとするのも当然の話で、紅羽を倒す為に他の女の手を借りる事すら厭わないのも納得の話で そう思えたから、ベルの作戦そのものは不発でもベル達に愛されているという自覚から夜行が紅羽への恋心を終わらせられたのだと思えたよ 本編を気持ち良く読み終えたものだから、アフターエピソードで全ての前提が引っ繰り返る真相が明かされて驚愕してしまったり 愛する男を守護する為に愛する男を蹂躙する。恋物語の裏で悪女が宣言した絶望的な決意にゾッとさせられたのでした……

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    投稿日: 2025.02.08