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powered by ブクログオーディブルで とても興味深く読んだ。 ぜひ、教育関係の方達、現場の方にも、教育行政に携わる方達にも知っていただきたいと思う内容だった。 算数文章題が解けないのは、国語力、読解力が弱いせいと思っていたが、それだけではなかった。 そもそも、数学にまつわる基本的な概念(例えば、分数であったり、1、0、マイナスなどの数の概念など)が記号接地(この言葉も今回初めて知った)できていないことにも原因がある。 ただ、闇雲に学力テストをやって、点数を出しても仕方がない。間違った問題の何が理解できていないのか、そこを明らかにしてアプローチしていかなければ根本的な解決には至らない。 そして、学習のための基本的な概念をきちんと記号接地していくために、ゲームなど遊びの要素がある中で繰り返し鍛え定着させていくのは良い方法だと思う。 この本を読んでいて、ふと思い出したのはシュタイナー教育の小学校での教育課程について書いた本(子安美智子さんのものだったと思う) 朧げな記憶なので、勘違いしていたら申し訳ないが、シュタイナーの特に低学年の課程では、園芸、美術、ダンス、手芸や工芸的なものが授業の大きな部分を占めて、実際に自分の手や体を動かしながらその中で、算数国語理科社会などの要素を合わせて学んで行ったりしていたが、あれは実体験で記号接地しているということだったのだなと改めて腑に落ちる思いであった。
0投稿日: 2025.11.17
powered by ブクログ『言語の本質』は共著であったこともあってかオノマトペについての内容が非常に多かったが、こちらは小中学生の、特に学力低位層におきている言語を通した知識が記号接地できていないことについて丁寧に書かれている。 教育者は、PBLや自由進度学習などの著書だけでなく、やはりこういった認知心理学の著書にも手を伸ばしていけるとよい。
1投稿日: 2025.11.06
powered by ブクログ『言語の本質』で一斉を風靡した今井むつみ氏による、子どもの「学力」とはなにかという根底を問うた本。 今井氏が強く推す「記号接地」という概念、ここに大きな社会課題解決があると感じます。
0投稿日: 2025.10.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
記号接地の大切さは分かった。 ってか分かってました。 それを記号接地ということは、初めて知った。 勘のいい先生なら何となく分かると思う。 言葉は車輪のようなものなんだろう。 地面についていないと進まない。 空中で回っているようじゃだめなんだ。 使えて初めて役に立つ。 スキーマの間違いは、経験の豊富な先生なら意識して授業していることだろう。それを正そうと工夫して話しているだろう。 「繰り返しやれば、できるようになる」は間違い、には心から賛同。繰り返しやらせる無意味さは経験すれば分かる。 でもなー、 そのために遊ぶのか…。 んー、むずい。 たぶん何でもかんでも遊べばよいのではないに違いない。科学的にちゃんと裏付けのある遊びだ。 分かるんだよなー。遊ぶと覚えんだよ。それは感覚としても分かる。身に付いていることって、「お勉強」したことより遊んだことなんだよな。 むずかしいなー。 何が難しいって、このことを正確に理解して実行できる人がいないと思われること。理解が不正確だったり、あるいは都合のよいところだけを取り上げるような教育になるだろう。教育改革が行われる度に繰り返される歴史だ。 赤ちゃんは学ぶ本能をもっているのに、なぜ子供は学ぶ意欲をなくしてしまうのか、よく分かった。分からない勉強をひたすら強いるのは虐待だと思っている。 これを何とかしなくてはならない。学校が、社会が解決するために不断の努力をしなければならない、一つの答えのない問いだ。
1投稿日: 2025.10.09
powered by ブクログノリと雰囲気で語られがちな、「学力が追いつかないとはどういうことか?」を、構造的に言語化してくれた良書。という意味で、学校教育にかぎらず、むしろ仕事における「日々学んでいくために何をどうすべきか?」の補助線を示してくれる一冊でもある。 ただ、AIと人間の差分についての語りが、既に古びて見えてやしないか?それこそ「AIは自ら思考できない」というスキーマに入れ過ぎじゃないか?と思える主張が目立った点は気になった。
0投稿日: 2025.10.07
powered by ブクログ「学力喪失」、すなわち「学ぶ力」の喪失ということで、学ぶことに焦点を当て、それは記号を接地することなんだ、ということ。記号接地はおそらく「腹に落ちた」とか「手足のように使える」とかそういう感覚なんだろう。子どものまなびを主題に据えているが、これは大人でも変わらない構図であり、そして大人でも遊ぶように学ぶことを意識した方がいいのかもしれないな。
0投稿日: 2025.09.29
powered by ブクログ記憶とは何か、学力とは何か、知識とは何か。 人間が生きた知識を身につけるプロセスとともに、なぜ子供が学校の授業に躓いてしまうのか、どうすれば躓きを解消して知識を身に着けていけるのか。 子どもたちがどれだけ難しいことをしているのかがよくわかる。 どうしてこんなこともわからないのか?と思うこともあるが子供からしたら「そんな事」がいかに難しいか。
0投稿日: 2025.09.27
powered by ブクログ全ページが面白くて貪るように読んだ。知育とかって言うけど目指す先はどこなんだろう、ということを考えるきっかけになったし、乳幼児が言語を習得するプロセスについても学びを得られる。去年の本なので、生成AIとの付き合い方など鮮度の高いトピックがあるのもいい。認知科学という分野が面白すぎて、心臓がバクバクしてる。今井さんの著書は全部読んでみたい。
0投稿日: 2025.09.24
powered by ブクログ子供が算数などの義務教育についていけないメカニズムを、認知科学の視点で興味深く解説してくれる本です。一方で、大人になっても物事を理解できずに仕事で困るケースはあるもので、子供の話だけではないな、と感じる面もありました。社会に出て仕事を始めると、いろんな業界用語を使ってかかれた文章を目にすることになります。それらを「記号接地」せずになんとなく使って、なんとなく議論に入ることもできてしまいます。その結果どこかで行き詰まって、最終的に失敗するということが少なくありません。子供の教育の話ですが、大人としても考えさせられる部分が多かったです。 AIが記号接地できていないこと、算数の問題が解けない子供がChatGPTに似ているという話が目から鱗でした。生成AIの進歩はすごいので、いつかそれも克服してしまいそうです。そうなった時に、著者にはぜひ人間とAIについての議論を更新していってほしいな、と思いました。
8投稿日: 2025.09.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
今井むつみ著『学力喪失―認知科学による回復への道筋』は、子どもたちの学力低下問題を認知科学の視点から深く掘り下げ、その原因と回復の方法を示した重要な教育書です。本書の核心は、単なる知識不足や暗記の問題にとどまらず、「記号接地」と呼ばれる言葉や数式と実際の経験や身体感覚が結びついていないことが、学びの本質的な低迷につながっているという点にあります。 まず、算数や数学の学習は単純な暗記や計算だけでなく、前の学びが積み重なってできている体系的な構造です。一部分でつまずくと、そのあとに続く学習全体が理解できなくなります。さらに、文章題の理解には文章を正しく読み解く語彙力や時間・空間の理解、論理的な推論力が不可欠です。そこにおいては、言葉の意味が単なる記号として頭の中にあるだけでは不十分で、実体験や身体感覚と結びつく「記号接地」が必要であると本書は説きます。 この「記号接地」という考え方は、生成AIと人間の理解の違いを説明する重要な鍵になっています。生成AIは大量のテキストデータを学習し、言葉同士の関係やパターンを抽象的に処理することができますが、実際の世界や身体の感覚と結びつけることができません。これが算数・数学に弱い理由だとされています。一方、人間の学習は身体や感覚を伴う体験をもとに記号を理解し、これが「腹落ち」として感じられる深い納得感につながります。 また、本書は教育現場の現状として、こうした記号接地が十分に行われていないことを指摘し、その原因の一つに保護者や教育者の理解不足、そして遊びや体験を通した「コンテキスト・リッチな学び」の欠如を挙げています。遊びは、子どもが言葉や記号を実体験に結びつける重要な機会であり、これが学力向上に欠かせないという点も強調されています。 さらに、学習者の発達段階には大きな個人差があり、一人ひとりの接地の状態や能力に応じた教育が必要です。単にカリキュラムを消化するだけではなく、子どもの内面の動機づけや学習意欲も向上させることが、学力回復には不可欠です。 本書はまた、生成AIの進展を認めつつも、AIには本当の意味での「理解」や「意味の把握」が伴わないことを冷静に分析しています。AIと人間の認知の違いを明確に示しつつ、AIの教育利用の可能性と倫理面の課題にも丁寧に触れています。 総じて、『学力喪失』は学力低下の問題を多面的に捉え、認知科学の理論と実証に基づく具体的な教育改善の方向性を示した良書です。知識の「死活問題」である記号接地の重要性、遊びを通じた体験学習の価値、個別の発達差に対応した教育の必要性など、本書の示唆は現代の教育現場や家庭、さらにはAI時代の学びの在り方を考える上で非常に示唆に富んでいます。背景知識がない人にも理解しやすく、教育関係者だけでなく広く一般の読者にも読んでほしい内容と言えるでしょう。
3投稿日: 2025.09.10
powered by ブクログ子どもはなぜ文章題が読めないのか。 そもそも文字の理解とは?みたいなところから進めていってめちゃくちゃ面白かった。 後半の実践も事例が多くてとても勉強になった。
0投稿日: 2025.09.02
powered by ブクログ初年次教育に携わるようになり、「学力とは何か」「なぜ分からないのか」に直面する機会が増えた。 本書はその疑問に認知科学の視点から丁寧に応えてくれる一冊。 具体的には「どうしてわからないのか?」という問いへの解像度が上がる。 『言語の本質』でも印象的だった「記号接地」という概念が、学習における「わかる」の本質を考える手がかりとして本書でも中心に扱われている。 また、生成AIの限界やハルシネーションの話も、人間の学びと対比する形で明快に解説されており、非常に興味深かった。 「時間」の概念につまずく娘のサポートにも役立つヒントがあり、教員としても親としても気づきをもらえた点がありがたい。 アクティブラーニングや授業設計に活かせる知見も多く、監修中という知育教材も期待している。 それまでに娘が時計を克服してくれていたら…と願いつつ、折に触れて読み返したい一冊。
0投稿日: 2025.08.29
powered by ブクログ認知科学に関する見慣れない語句が頻出.しかし、人間が言葉を覚えて駆使する過程が綿密に描写されており非常に楽しめた.記号接地という語句も児童が分数を理解できていない文脈で登場したが、面白い概念だと感じた.人工知能との関連も興味深い内容だった.「たつじんテスト」「時間どりじゃんけん」「時計カルタ」「分数のたつじんトランプ」など工夫された教材の紹介も良かった.p298にある‘’子どもが基本概念に自分で接地をし、アブダクションによって知識を拡張していくことができるなら、何から何まで直接教えてもらわなくても、自分で新たな知識を、それも「生きた知識」をつくっていける‘’が核心だと思った.
1投稿日: 2025.08.26
powered by ブクログ言葉の習得、数字や記号の理解について、すごく丁寧に解説されていて面白い。 大人が社会で教養を身につけるには、、というような流れを想像していたけれどそんなことはなく、 子育ての前に一読しておきたいと思うような本だった。 とはいえ子供の教育だけでなく、日常のいろんな未知のことについて学ぶ場面でアブダクション推論とブートストラッピングはキーワードになりそうだし、 その一例としてAIの活用への問題提起がされている。 安易なAIの利用、デジタル教材化をして満足するのではなくて、うまく付き合っていけるように、人間らしく思考し続けられるように、必要な学ぶ力を意識して育てていきたい。
1投稿日: 2025.08.22
powered by ブクログ[図書館] 読了:2025/8/15 めっちゃめちゃ面白い。 「学ぶ力」とは何なのか、乳幼児の頃は自らの「学ぶ力」で言語と概念を習得していくにも関わらず、学習年齢になると躓きが始まるのはなぜか。 第2章 誰しもが無意識のうちに作り上げた「スキーマ」を持っており、スキーマに合わない情報はどれだけ分かりやすく説明されたとしても、頭に入ることはない。スルーされるか、スキーマに合うように捻じ曲げられる。 (「イチ」は「一個のモノ」を表すものとしか理解していない子どもは、分数をなかなか理解できない) (分数や割合を理解するには、「一個のモノではない量」を状況や分脈に応じて**「イチ」として見なす**ということをする必要がある) (「数や式に意味がある」ということを理解していない子どもは、文章題に出てきた数字を適当に足したり掛けたりするだけ) 第6章 子どもがつまずく原因として、「思考力そのもの」より「思考の制御の問題」が大きい。 デフォルト思考の「システム1(スキーマや信念で情報の行間を埋めて素早く直観的(直感的)に結論を下す)」 批判的思考の「システム2(メタ認知を働かせて数字で理性的に批判的に見直し、論理的に結論をくだす)」 幼児期はシステム1が圧倒的に優位で、システム1でアブダクション推論をすることでことばも概念知識も急速に増やし、知識の体系をつくっている。 大人でもシステム1が生存のために必要。 **学力につながる思考力の個人差というのは、人間なら誰でも持っている、認知バイアスと思考バイアスに駆動されたシステム1的な思考スタイルを、どれだけ意識的な工夫によって制御できるかで生まれる** 逆に言えば**思考の躓きは、思考を制御する力が弱いことに起因する**と言っても過言ではない。 すると、教育の重要な役割というのは、**知識を詰め込むことよりも、子どもが自分で認知能力という制限の中でうまく思考ができるように工夫することであり、誰もが持つ思考バイアスや思考スタイルを自らコントロールできる力を育むこと** 第7章 「記号接地(シンボルグラウンディング)問題」 AIは、「いちご」を「食用にする赤い実であり甘酸っぱい」と答えることはできるが、いちごの甘酸っぱさ、香り、食感などを地に足をついた形で理解しているわけではない。「甘酸っぱい」とは何か、「甘みと酸味の混じった味」と説明はできるが、リンゴの甘酸っぱさと区別することはできない。 **生成AIは、ことばを別のことばに置き換えながら言語という閉じた世界の中で永遠に循環している**だけなのである。
0投稿日: 2025.08.15
powered by ブクログTwitterかなんかで見かけて評判良さそうだったので借りてきました。 まぁやる気にあふれた教師とかが読めばいいんですかね。もしくは文科省とか?わからんけど。 「ケーキの切れない」なんとかって本と似た感触がありました。 小学生中学生を対象とした様々な問題が出てきます。どれも大人からすればなんでもないもの。間違えようがないもの。うっかりミスとかもないレベル。ところが子供達は間違う。それもかなりの大多数が。問題文を正しく読めていない、掛け算割り算分数時間の感覚がない、理由は様々(しかも複合的)なんでしょうけども驚きの調査結果。 例としてあげられている誤答も子供らしい自由な発想だねと笑えるものではない。なんせ小中学生なのだから。 教育方法の改革が必要だ、とする筆者の主張は理解できます。ただ同時に「人間はそもそも算数が苦手」「現在の小中学校算数は上位5割向けの内容」の可能性がないですかね。 私の友人達は揃いも揃って高学歴ですが、唯一1人だけ私と同じくらいのパーがいます。このパーの友人はとにかく顔がいいし陽気で面白く性格がいいので、オツムのゴミ加減はオフセットどころか埋めてお釣りがくる、なんならパーも魅力のひとつなんですけども、彼はとにかく文章が読めないんですよね。本人は読んでるつもりですよ?でも結論を真逆に読んでたり、熟語を間違って読んでたり(飛ばしたり)、自分が知ってることに文章を合わせにいくというか。表現が難しいんですけど。LINEの返信は2-3割が意味不明。残りの7-8割も「話聞いてた?」「今までなんの時間だったの?」と聞き返したくなる感じ。しないけど。 誤字はほぼ毎回。計算に至っては「お前九九できねぇんじゃねぇの?」「バカを言うな。できるに決まってるだろ。」「4x8」「45」一緒にいた他の友人は下を向き、私も「なんだ出来るんだな」と違う話を急いでしました。 私は彼を教育したところであまり変わらないのでは?と思ってます。私もそうなんですけど私はパーなのにパーであることをそんなに恥ずかしく思ってないんですよね。思ってるけど足りてないというか、パーのレベルにしては恥ずかしさが足りてないってのかしら。そういう人間に教育を与えたところで水は体表を流れ落ちるだけで染み込まないんじゃないですかね。元々の脳みそがね。 途中「難読症」についてのページがあります。 子供は正しく教育すれば読めるようになる、但し難読症の場合は専門医にと。 その通り。我が子の障害の可能性を忘れずに接するのは大切なことですよね。 と同時に。障害ってどれも衝撃的な名前が付いてますが当たり前にデジタルな境界線があるわけではなく、物事皆グラデーションですよね。 この本の中で誤答を出している下位25パーの子供達の脳みそは果たしてどれくらいのグラデーションなのか。大人を見ても一般的に「勉強できるね」とされるマーチとか関関同立とかでもびっくりするような人達がいますよね。しかもかなり。てか大多数。 筆者はとても頭のいい方なので、上から見る「いくらなんでも人間なんだからこれくらいは訓練すれば出来るだろ」のハードルが現実世界よりも、かなり高いのではという気がしました。 長々書きましたが要は「もし下位25パーがなんらかの脳機能障害があるとすれば教育云々あんま関係なくね?」です。
5投稿日: 2025.08.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
教育の本質を改めて問い直す一冊でした。認知心理学の知見をもとに、「学力とは何か」「学びとはどうあるべきか」という根源的な問いに対して、明快かつ実践的な視点を提示しています。 本書の中で特に印象的だったのは、「すべての子どもに同じように効く普遍的な方法は存在しないし、存在するべきでもない」という言葉です。教育現場では、特定の実践方法に頼りがちですが、それらはあくまで手段の一つに過ぎません。教師には、目の前の子どもに合わせて方法を柔軟に調整する力が求められます。どんな教育技術であっても、誰かの言葉を鵜呑みにするのではなく、自分自身の判断でチューニングして活用することが大切だと感じました。 また、「わからない問題を繰り返し解かせることが、理解につながるとは限らない」という指摘には、深く考えさせられました。むしろそのような指導が、学習への嫌悪感を生む可能性があるという点は、日々の授業を振り返る上で重要な視点です。漢字や計算などで、無意識に繰り返しを強いてしまっている自分に気づかされました。 さらに、「教育者の役割は、知識を伝えることではなく、子どもが知識を創造できるように導くことだ」という主張には、大きな共感を覚えました。学習内容を生活経験や他教科と結びつけることで、知識のネットワークを広げる指導が求められます。自分の実践を振り返ると、まだ十分にその視点が取り入れられていないと感じました。今後は、教科横断的な単元改革や指導計画の見直しに取り組みたいと考えています。 また、子どもがつまずく原因として「思考力」そのものよりも、「思考の制御」に関わる認知負荷の問題が大きいという指摘も新鮮でした。授業では「わかりやすく教える」ことに意識が向きがちですが、子どもが「自分で学べる」ようになるための工夫こそが重要です。 分数の理解に関する記述では、計算はできても量的な直感が伴わない中学生のふるまいが、生成AIの挙動に似ているという指摘が非常に興味深く感じられました。この「量的直感」は中学以降の数学理解に不可欠であり、小学校段階でいかにこの力を育てるかが重要です。算数の授業では、数の概念が記号接地しにくいという前提に立ち、より直感的な理解を促す工夫が求められると感じました。 教育における生成AIの活用についても、著者は短期的な成果ではなく、10年後、20年後の人間形成という長期的な視点で評価すべきだと述べています。流行に流されることなく、教育の本質を見失わないための重要な視座であり、現在執筆中の原稿にもこの視点を取り入れることで、実践の価値や危険性をより深く検討できると感じました。 最後に、生成AIの効率化に頼りすぎることで、子どもが自分の頭で考える習慣を失い、知識のかけらを求めて情報の海を漂流するだけの存在になってしまうという警鐘には強く同意します。ネット検索の危険性も同様であり、調べ学習にインターネットを活用する際には、事前指導を徹底する必要があります。情報活用に関する学習が、逆に誤った方向に進んでしまう可能性を常に意識しておきたいと思います。 なお、著者が「ChatGPTは超優秀な『次のことば予測マシン』である」と表現した一節は、生成AIの本質を端的に言い表しており、教育現場での理解を促す上でも非常に有効な表現だと感じました。今後の原稿などで、ぜひ引用させていただきたいと思います。 『学力喪失』は、教育者としての姿勢を根本から問い直す力を持った一冊です。方法論に頼るのではなく、子どもと自分自身の特性に応じた柔軟な実践を構築すること。そのためには、認知心理学の知見を踏まえた「学びの設計」が不可欠です。教育の本質を見失わないための羅針盤として、折に触れて読み返したい一冊だと感じました。
0投稿日: 2025.08.11
powered by ブクログ子どもたちのわからないがわかり、それは大人にも当てはまることだということがわかる本だと思います。 テストの点数が悪い子どもたちにドリルをやらせても学力は上がらない。そもそも学力ってなんだっけ?というところからとても丁寧に述べられています。学ぶとはなにか、子どもたちのわからないは何がわからないのか。5つ星はこれだ!という本に出会った時のためにとってあり、いつもは星4つのことが多いのですが、これは迷いなく星5つでした。
0投稿日: 2025.08.08
powered by ブクログ私には難しすぎた。半分までは読んで理解した気持ちになったが、さてではどう認知に働きかければ良いのかはゴツゴツつまずいて、最後は飛ばし読みしてしまった。
2投稿日: 2025.08.06
powered by ブクログ教員として「どれだけわかりやすく伝えられるか」と日々悩んでいたが、スキーマの構築過程と、知識は「教えてもらうことが当たり前」と子どもたちに感じさせてしまっていることが定着に至らない原因と考える新しい視点をもらえた。
0投稿日: 2025.08.05
powered by ブクログ「プレイフル・ラーニング」という考え方と、その事例の紹介がよかった。遊びの中で「記号接地」や「生きた知識」の習得が可能なことを説明している。 学生時代の「受験勉強」の影響で、私はどうも「学び = 苦行」という知識観をみにつけてしまっているようだ。大人になってから学ぶ楽しさを実感する機会は増えたものの、自らに苦行のような学び方を強制してしまうことも多い(そして続かなくて自己嫌悪する)。 「効率性」を求めるための学びを一度やめてみよう。まずは今の知識観を「学びは遊び」に修正することを目標にして、学び方に工夫を凝らしてみようか。長い目でみれば、これが自分の生活を真に充実させるこに繋がるように思った。
0投稿日: 2025.08.03
powered by ブクログ「算数文章題が解けない子どもたち――ことば・思考の力と学力不振」を読んで、今井さんに俄然興味を持った私は、この本を手にしました。 上記の本は、認知科学の知見から、学習に躓く原因を事細かく分析していました。初めて知ることの連続で、学びの多い本でしたが、どうやって学力を伸ばしていくのかには、ほとんど触れられていませんでした。よって、本書には具体的な方策が語られることを期待していました。 具体的な提案がなされていたのは後半の一部だったので、少し残念でしたが、授業作りのヒントを得ることができました。 ●プレイフル・ラーニング 遊びを通して学ぶこと。人間は遊びから学ぶ。なぜか?遊びは楽しいからである。 人は楽しいから学ぶ。学ぶために遊ぶわけではない。そこに功利的な目的はない。功利的でないから、遊びに子どもは夢中になる。 遊びは生活と深く結びついている。遊びの中でことばを使う。記号も使う。しばしば数や量を比べ、競う。つまり、遊びの中にはことばや数・量について記号接地し、探求をしていくための種がいくらでもあるということ。 「問題が解けた!」「答えが合っていた!」ではなく、「意味がわかった!」という瞬間、「学びは遊び」が実現する。 プレイフル・ラーニングを実現するために欠かせないのは、子どもの学びをサポートする、ファシリテータとしての大人(先生)と、子どもが安心し、リラックスして「わからない」「なぜ」を質問でき、間違いや失敗をすることができる学校の環境である。 ◇「時間どりじゃんけん」(パターンブロックを使ったゲーム) ◇「時計カルタ」 ◇「分数のたつじんトランプ」 【本書に登場した難解な言葉】 ○スキーマ・・・ 経験を自分で一般化・抽象化してつくった暗黙の知識。人は「スキーマ」を使っていることに気づかずに、外界の情報を選択し、行間を埋めて理解し、記憶する。 ○アブダクション推論・・・正解が一義的に決まらない、論理の跳躍を伴う非論理推論。 アブダクションの3つの働き ①点(1事例)を面に広げる→知識の拡張 ②すぐには結びつかない離れた分野・領域の知識を結びつけること→新たな知識の創造 ③時間を遡及して目に見えないメカニズムや因果関係を考える→科学的発見 ○記号接地・・・人は持って生まれた自分の知覚能力と認知能力と思考バイアスを使ってことばを自分で見つけ、その意味に自分に気づき、意味の推論のしかたを自分で発見し、修正しながら語彙を増やし、言語を身体化している。同時に自分の知覚能力や認知能力、推論能力も拡張している。それが、記号接地。
23投稿日: 2025.08.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
対・子供だけではなく、対・大人(自分自身)にも持っておいて損がない視点。 アブダクション推論 システム1、2の思考 記号接地 誤ったスキーマ プレイフルラーニング
0投稿日: 2025.07.28
powered by ブクログ学校教育では、教科の授業を通して過去から継承された知識を一方的に教え込もうとする傾向があるため、子どもたちに誤ったスキーマが形成され、それが知識の活用を妨げているのではないかと感じた。もし、幼児期にスキーマの土台となる体験を通して学ぶ機会が豊かにあれば、学力喪失の問題は起こらないのではないか。本書を通じて、学力のつまずきの背景にある認知的な仕組みや、意欲ある学びを支える方法について深く考えさせられた。
0投稿日: 2025.07.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
学力喪失、というよりも、教育界の何十年もの努力にかかわらず成果を出していない、という、学びの力の養成の課題を指摘している。 喪失しているのではなくて、子どもにとってもともと無い思考法や認知の仕方を、教育の場や日々の世界との触れ合いを通して学んでいて、ということなのだろうと思い、あらためて人間の脳の成長、認知力の発達とその可能性に感心を覚えます。思考停止してしまうのは本当にもったいないから、ぜひその可能性を一人ひとりが活かせられるような教育を施せたら、というような著者の思いを勝手に感じながら読みました。ほんと、これは子どもだけの話ではないですよね。何歳になっても、のびのびと、学びという私たちの脳の弾力性を活かして、いろいろとチャレンジしたいですね。
0投稿日: 2025.07.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
学力とは何なのか。 とても考えさせられる話だったし、実例もとても興味深く、そして恐怖すら感じる内容だった。 子どもたちがなぜ躓いてしまうのか。 いろいろな条件がいるわけだが、言葉の意味が分かっていないということが一つに挙げられていた。 しかもその“言葉”というのが、意外な言葉で。 どこで躓いているかは、もちろん人それぞれだから、一般論としての話ではあるが、教育業界の端くれとしてとても勉強になった。 そして管理職として。 部下で、いわゆる“できない”社員がいるわけだが、なぜできないのか、なぜ躓いているのか、といったことを考えるヒントにもなった。 言葉の意味が分かっていない。何のためのものかが分かっていない。など、確かにこういったことをちゃんと導いてあげるべきなんだろうなあと、痛感した。 話は戻るが、いち教育業界に身を置くものとして。 学力とは何か。 これまでは、“学んだ(学んできた)力”なんだろうと考えていたが、この本を読んで、学力とは、“学ぶ(学べる)力”なんだろうと思った。 わたしたちは子どもたちに、“学ぶ(学べる)力”を身につけさせてあげるべきなんだろうと。
0投稿日: 2025.07.21
powered by ブクログ昔と今、子ども達の学力は変化しているのだろうか? 子ども達の宿題の量などをみていても、どう考えても私が子どもの頃より勉強させられて(笑)いるように思える。 昔と違うことは、調べたいなと思ったらネットで検索したり、AIに色々調べてもらったり何かを作成して貰っていて…これからどんどん、自分で調べて分かったときの喜びとか達成感、意欲等なくなってしまうのかな~っと便利な世の中ではあるけれど…っと考えさせられた。
19投稿日: 2025.07.06
powered by ブクログ乳児期は言語を学ぶというとんでもない力を有しているのに、どうして小学生になると学びが苦手になるのか。子どもたちのテスト解答例を通して、いかに数の概念自体が理解されないまま子どもが勉強している状況かを紹介し、記号接地の重要性が書れている。 学力喪失を嘆くのではなく、今何が不足していて何が必要なのか書かれているのがよかった。 中でも直感的で非論理的なシステム1と呼ばれる思考と、批判的で論理的なシステム2の思考の説明が面白かった。 基本人はシステム1で生きているが、学力高層位はシステム2を発動させやすい。システム2を発動できないと、誤った知識や自分のスキーマを修正できず、学力につながる思考力はシステム1の思考をどれだけ工夫で制御できるかで生まれる という一文が興味深かった。
0投稿日: 2025.06.27
powered by ブクログ学力とは「学ぶ力」であって、学校の成績ではない。 子どもたちの学力をのばす学びについて考える本。 実際に子どもたちに解いてもらった「たつじんテスト」の問題を例に出しながら解説されていて、分かりやすかったし面白かった。ただ、話の大筋としては聞いたことのある内容だったかも。 特に印象に残ったのは、学習と生成AIについて書かれた部分。著者は否定派として次の一文を書いていた。「子どもが自分の頭で考えずにすぐに答えを求めることが習慣になったら、本当に大事なことにも記号接地できなくなり、つねに知識のかけらを求めて情報の海を漂流するだけの人間になってしまう。」 子どもに限らず、自身も刺さる一言だなぁと思ったり。 以下メモ ・生きた知識:必要な時にいつでも使える知識、教えられることでは獲得できず、自ら試行錯誤することで得られる。 ・死んだ知識:テストではこたえられるが実際には使えない。 ・死んだ知識でもないもの:テストのために詰め込んだ情報、記憶(すぐに消去される) ・プロ棋士が盤面を覚えているのは暗記ではない。これまでのデータから現在の駒の配置が浮かび上がってくる。生きた知識を使っている。これが「スキーマ」 ・算数の文章問題につまずく理由の一つは、「ひとしい」「直線」など、日常会話に出てこない単語の意味がそもそも分からないから。 ・記号接地:言葉(記号)の持つ意味を真に理解すること。抽象的で本質的な概念として理解すること。 ・自分でスキーマの誤りに気が付ける能力(メタ認知)を育てることが必要。
3投稿日: 2025.06.22
powered by ブクログタイトルは学力の低下を嘆くような形になっているが、どちらかと言うとその原因を突き止め、解決策を実践を通して考えていく建設的な内容となっている。また子どもたちだけではなく、大人にとっても「学ぶとは何か?」を考えさせる一冊だ。 大人の我々は殆どが「1/2と1/3のどちらが大きいか?」「5時間10分は何分なのか?」といった問題に対して短い時間で答えられるだろう。しかし分数や時間の概念が与えられていない子供はどうだろうか?すぐに理解できる者はごく少数であろう。これらの概念を掴めないうちに勉強が嫌いになってしまうことは大きな損失ではないだろうか?こういった概念を子供達に思考させながら学ばせることはとても重要であると感じる。
0投稿日: 2025.06.22
powered by ブクログ現代っ子の学力は喪失しているのか? 著者は大人たちが子どもたちの学ぶ力(=学力)を喪失させているのではと疑問を持つ。著者らが考案、実施した「たつじんテスト」の結果を元に、知識の獲得とそれを活用できるようになるために必要なことは何かと迫る。 前著「言語の本質」でも語られた「アブダクション推論」「記号の接地問題」。生きた知識の獲得には自分の身体で世界を探索が重要だと説く。大人から正しい知識を教えられるだけでなく、子どもたちが自分でやってみる、試してみる、そういう環境なり状況が学ぶ力を引き出すために必要になるのだが…そういう場が以前より失われているのかもしれない。
0投稿日: 2025.06.22
powered by ブクログ2025年6月読了。 分数と少数の意味がわかっていない子どもの多さ、まずはこの現実に驚かされた。ショック... 読み進めるにつれ、学校の授業って「問題が解ける」より「意味がわかる(体感として)」が大事なんやなと、その後の生活や勉強を深める意味でも痛感しました。 chatGPTと人間の違いも面白かった。chatGPTに欠けているのは、全体を見通して問題の本質を把握するための直感。なのでオープンエンドな問題を解くのはとても苦手。 一方、ゴールと検索範囲が決まっているものに対しての解を出すのはとても得意(確率計算なので)。 記号設置ができてないから、知識はあってもそれをどこで使っていいのかわからないのは惜しいなぁとと思った。これは算数ができない子どもと一緒だなと。 アブダクション推論、スキーマ、記号設置、初めて聞く単語がたくさんありましたが、本当に読みやすくわかりやすく、久しぶりの新書にドギマギしていましたがスルッと読めました。 我々は日々、全体を見通し、パターンを比較し、洞察を得て、いろいろな知識を修正し、推論をさらに向上させているんだなと嬉しくなった。 あと、「乳児がしたいのは、結果がうまく出る方法を見つけることではなく、なぜこうするとうまくいき、なぜこうするとうまくいかないのか、つまりものごとの仕組みを発見することなのである」これにも感動しました。別にタイパコスパ求めてないよね、自分でいろんなパターンを見つけて推論してるんだね...と、姪っ子の行動と照らし合わせて、なんだか人間が愛おしくなりました。 分数のたつじんトランプ売ってたら姪っ子に買おうかな。
0投稿日: 2025.06.15
powered by ブクログ教育史をかじっている人からすれば、系統主義から経験主義に戻ろうというように感じました。 この辺は何度も行ったり来たりを繰り返している話です。 子どもたちの学びが、しっかり記号接地するためには、社会の要請に応じて作成される学習指導要領が、子どもにフォーカスを当てた指導要領に変わっていくののかというのが、筆者の意見としても受け取りました。 いかにそのための理屈を通すのかが今後の課題かなと思います。
1投稿日: 2025.06.15
powered by ブクログ子どもたちの学力を高めていくには何をすればいいのか? この問いに一つの答えを提示してくれている良書だと思います。 ○○をすれば学力は必ず伸びる!みたいな安直な答えではありませんでした。 私なりに本書で提示されている答えを一言で表すと、 「自分の経験をもとに、試行錯誤して失敗しながら、色々な角度から学び続けよう」 このようなある意味抽象的な、やっぱりそうなるよねという答えに辿り着きました。 ただ本書ではそれを広島県での実践をもとに、順序立てて説明してくれています。 簡単ではないけど、色々試行錯誤しながら学ぶのは間違っていないという信念を持つことができました。
0投稿日: 2025.06.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
幸運なことに僕は数の概念も、分数の概念も理解できているが、大学の講義では躓いているのは記号接地ができてないことだと思った、これからの勉強で意識的に言葉の意味を、自分の中で咀嚼していけるようになりたい
0投稿日: 2025.06.07
powered by ブクログ県の学力診断のためのテストや全国学力調査が現場に大きなプレッシャーを与えている。そしてそれらのテストが自ら学ぶ力という学力を培うのにマイナスになっている。 筆者は教育批判のためにこの本を著したのではなく、認知科学の観点から学力喪失を分析し、論じている。 「死んだ知識」を「生きた知識」にする。 言葉にするのは簡単だが、実際は簡単ではない。 子どもの躓きを解消するために、類題を何題も解かせることがプラスになるとは限らないとは。学力テストの類題を繰り返し解いたり、丁寧にわかりやすく教えたりして点数をあげたとしても、学力は向上しない。 言語化できない暗黙の知識、学び手が経験から身につけた無意識につくりあげた知識=スキーマに目をつける必要がある。つまり、深い学びを身につけるには学び手のスキーマの修正が必要なのだ。 著者は、言葉と数のスキーマなどを調べる「たつじんテスト」を研究仲間とともに開発して、子どもの躓きを見つけやすくしている。 例を挙げれば、「等しい」「比較する」「曲線」の言葉を正しく理解していない子、時間と時刻の混同、一年か何ヶ月かなどの時間の概念がよくわからない子が多かったことがわかった。 今まで何に躓いているかが朧げながらわかっても、なぜ躓くのかがわからなかっただけにこの本の分析は深い。 プレイフルラーニングは興味深い。 家庭、学校など教育に関わる人にとってこの本は必読書だと思う。「たつじんテスト」が、学力調査や診断テストの代わりに実施されることを望む。
85投稿日: 2025.05.26
powered by ブクログ子どもたちが学校での学習の何につまずき、そしてなぜ学ぶ力を発揮できないのかについて認知科学の面から解説している。 そしてその上で、子どもたちが学ぶ力を発揮できるような学習の方法を、大人たちが提供するヒントについても触れられている。 インパクトの強いタイトルではあるが、まえがきにもあるように当書は子どもたちの学力が昔に比べて失われているというテーマで書かれてはいない。 むしろ、本来子どもたちが乳幼児の時期から言語を獲得するために発揮していた学ぶ力を学校で学ぶようになるとなぜ発揮できなくなるのか、という視点で書かれている。 読み始めてまず印象的だったのは、学力調査を得点化し、順位づけすることに意味があるのかという問題提起。 自分も学生時代にテストを受けると平均点を超えているか否か、順位は何位かということを気にしていたし、何も疑問に思うことはなかった。 けれど当書を読むと、確かに入試等の選抜のためではないテストは順位づけよりももっと大事なことのために使われるべきだと感じた。 また、著者が作成し実施した子どもたちのつまずきを把握するためのテスト、通称「たつじんテスト」の誤答を紹介し、子どもたちのつまずきを考察している点も興味深い。 大人が思っている以上に小学校低学年の子どもたちにとって、抽象的な概念の理解が難しいということ、大人が何気なく使っている言葉の使い分けで混乱が生じているということに気付かされた。 子どもの視点に立って学習について考えるというのは、こういったところから始まるのかもしれない。 メタ認知やスキーマといった、心理学の分野で出てくるイメージの概念が、学習において重要だというのは意外だったけれど、当書を読み進めるととても納得だった。 子どもたちの学習のあり方について考えさせられると同時に、おそらく学校の先生たちは子どもに授業を教えること以外にも様々な業務を抱えており、こういった学習のあり方について考え試行錯誤をする時間や余裕は持ちにくいのではないかと想像する。 子どもたちのつまずきやすさを反映した学習指導要領や、先生たちが学習の仕方を工夫できる余裕を持ちやすくなるように負担を減らす等、制度が変わっていく必要もあると感じた。 他の著書について触れている部分も多かったので、今後今井さんの他の本も読んでいきたいと思った。
23投稿日: 2025.05.25
powered by ブクログ新書大賞から一冊選んで読むことにしていますが、今回は『言語の本質』で知った今井むつみさんの著書にしました。新書大賞は第8位、おめでとうございます! 小中学生が主な対象だったので、高校教師としては出番なしかなと思いつつ読み進めていく。「学力・知識」といった基本的な概念について、私たちの認識を正すところから始まる。たつじんテストにはすごく興味をそそられた。実物を見てみたい! 国語教師的には第5章「読解につまずく」あたりから本番を迎えた。読む作業で私たちがしていることが言語化されていたのが面白く、読むことは一種の運動能力だという意見に大賛成。練習しないと力がつかない。 思考力についても、質の高い思考とは何か、なぜ間違えるのか、など面白く読めた。 前提となる知識がかなり必要で、専門用語も慣れていないと厳しい。サブタイトルにもなっている「回復への道筋」になかなか行きつかないので、もどかしいと思う人は多いかも。そしていざ回復の章に来ても、特効薬はないのでがっかりするかもしれない(生徒集団がそれぞれ違うから、特効薬はなくて当たり前だと思うけど)。 それでも、小学校でのプレイフル・ラーニングの例はとても面白かったし、今後の授業づくりのヒントになった。遊びながら古典文法を学べたら、すごく楽しいし最高。じゃあどうやるか、というところが問題ではあるけれど、夏休みに試行錯誤してみようかな。 また、生成AIについても触れられており、そちらも興味深かった。便利だけれど、生成AIがしていることを理解して使っている人は少ないのではないか。知識や意味を「理解する」ことのない生成AIに、思考させてその場限りの答えを得ていることは、思考できる私たちがきちんと「理解して」使わないといけないなと思った。
48投稿日: 2025.05.25
powered by ブクログ分かりやすく今の教育の問題を説明している。 スキーマ(暗黙知の塊)の誤りが修正されないままの子供が多くいることが分かる。 アブダクション推論により、子供自身にそれらの誤りを修正出来るよう教育する事こそが重要である。 日本の教育環境は世界的にもトップクラスだとは思うが、改善の余地はまだまだあるのだと分かる。
8投稿日: 2025.05.25
powered by ブクログ本当に面白かった。タイトルを読んで「今の人、昔より頭悪くね?」みたいな内容かなと思ったが、結果的には全く違った。これは勉強できない子はなぜ勉強ができなくなるのかを語る本であり、もともと学力が下位層の子どもはどうすれば救ってあげられるのか?に興味があった自分にはとても刺さった。子どもの知識習得の際の誤りについて書かれているものを読むたび、「自分はこれができていたのか、今できているのか?」と自問自答してより深く考えることができる。生まれた時から情報に囲まれ、面倒なことはなんでも機械が処理してくれる子どもが増えている今、全員、特に教育関係者は絶対に読むべき本だと思う。
4投稿日: 2025.05.17
powered by ブクログどんでん返し、、、というのはちょっと違うけど、 終章を読むまで、この新書のテーマは 「算数文章題で躓く小中学生を学校はどう救うか」 だと思ってた。 それだけでも十分重いテーマだからだ。 分数の足し算ができない子供たちに、 身体化された生きた知恵を身につけさせるために どういう「教え方」をすればいいか。 説明だけではだめで、「記号設置」するためには、演繹推論ではなく、 アブダクション推論が必要なのだ ということを色んな事例を交えながら説明してくれる、 これだけでも問題意識が十分持てた。 初めて接した言葉である「記号設置」も、 「アブダクション推論」も、おぼろげではあるが頭に入った。 これを今の小中学校にどうあてはめるのか。 40人学級などでは当然無理。 半分でいい。 しかし教師は忙しすぎる、、、 などと考えをめぐらしていたら、、、 終章を読み始めて、いままでが前置きであることを思い知らされた。 途中でも少しずつ話が出てきた生成AIが主役になる。 いや、あくまで人間が主役か。 最近の、AIが人間にとって代わられる、という言説に対してはっきりと 生成AIと人間の違いを訴えている。 生成AIは自分の持つ知識を使うことができない、と。 都度世界中の情報から最適解を吐き出すだけで、 「生きた知識」は持たないのだ。 言われてみればそうだが、気づかなかった、、、 更問すると平気で矛盾した答えを出すのはそのせいだったか。 人間も、「覚える」だけだと同じことになってしまう。 概念の本質を推論によってつかんで生きた知識とすることができることで、 人間は生成AIと差別化できる。 だから、算数の文章題が理解できない小中学生に、 これを身につけさせることが大切なのだ。 正解だけ求めて、暗記が得意な、偏差値エリートばかり生んでいてはいけないのだ。 というか、偏差値エリートが求められる国ではいけないのだ。 小学生の時に進学塾で勉強して、有名私立中高一貫校に入って、 東大やら早慶やらに入って、大企業に入って、、、、 これが成功のロールモデルみたいに社会が思っているから、 ろくな考え方ができない官僚や政治家や経営者ばかりになるのだ。。 と書いていて、あれ?と思ったのは、、、 有名私立中高一貫校に入るような子供は、算数の文章題はお手の物だよなあ、、、 生きた知識、もってるんじゃないの?と。 それとも、文章題とて「覚える」の延長戦上にある、ということか?。 推論はせずに。。。 ちょっとわからなくなってきたが、 気づきの多い新書だった。 はじめに 第Ⅰ部 算数ができない、読解ができないという現状から 第1章 小学生と中学生は算数文章題をどう解いているか 1 算数文章題につまずく小学生 2 小学生の算数文章題につまずく中学生 3「意味の不理解」が引き継がれる 第2章 大人たちの誤った認識 1 テストと学力についての誤認識 2 知識についての誤認識 3 スキーマなしでは学習できない 第3章 学びの躓きの原因を診断するためのテスト 1 「たつじんテスト」の開発まで 2 「たつじんテスト」は思考力を測る 3 点数をつけるよりも大事なこと 第Ⅱ部 学力困難の原因を解明する 第4章 数につまずく 1 「数」はモノを数えるためにあるわけではない 2 分数というエイリアン 3 かけ算・割り算の意味がわからない 第5章 読解につまずく 1 「読める」とはどういうことか 2 問題文を理解するための語彙が足りない 3 単位、時間、空間のことばを理解できない 4 行間を埋めるための推論ができない 第6章思考につまずく 1 認知処理の負荷に押しつぶされる 2 状況に応じた視点の変更ができない 3 パーツの統合ができない 4 モニタリングと修正ができない 第Ⅲ部 学ぶ力と意欲の回復への道筋 第7章学校で育てなければならない力――記号接地と学ぶ意欲 1 生成AIと記号接地 2 子どもはどのように記号接地しているのだろうか? 3 アブダクション推論とブートストラッピング 4 自走できる学び手へ 第8章 記号接地を助けるプレイフル・ラーニング 1 プレイフル・ラーニングの考え方 2 時間概念の記号接地――プレイフル・ラーニングの実践1 3 分数概念の記号接地――プレイフル・ラーニングの実践2 4 知識を身体化できるのは学び手のみ 終章 生成AIの時代の子どもの学びと教育 参考文献 図版出典一覧 あとがき
4投稿日: 2025.05.08
powered by ブクログキーワードは「記号接地」。 AI関連本で見たことがある言葉だが、子どもは記号接地ができていないと数式の意味が分からず、学力が伸びていかないらしい。 後半では、どのようにして記号接地させるかについての取組みが紹介されている。 そのほかに重要なのは「スキーマ」という概念であり、子どもが経験から推論を働かせて法則などを学習する過程で、誤ったスキーマを持つと、修正が困難であるらしい。 その例として、「問題文にでてくる数を、文章にでてくる順番にすべてそのまま使う」などのスキーマをもってしまっている子どもがいるという分析が出てくる。 ここを読んで想起したのは、「かけ算の順序」にこだわる教師の存在である。 「かけ算の正しい順序」なるものを措定し、これに沿った順序で立式しないと不正解とするのは、子どもが誤ったスキーマを持っているかどうかを発見するのは役に立つのかもしれない。 しかし、これが単なる採点基準として用いられる場合、教師は「式の意味を子どもに理解させる」という本来の任務を放棄し、間違っていればバツを付けて事足れりとしていることになるように感じられる。
2投稿日: 2025.05.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
学力とは何か。 記憶力以外の学力にはどのようなものがあるのか。 考える力とはそもそもどのようなものなのか。 それをどのように測ればよいのか。 どうすれば身につけることができるのか。 前半は筆者が開発したテストについて詳しく書かれている。 後半はそのような力を身につけるための教材を使って、小中学生が実際に学びを深めていく様子が書かれている。 学んだことを確実に理解することを「接地」という言葉を使って説明している。とてもわかりやすい。 学力を喪失しないために、小中学校でやるべきことが多すぎると思いました。
0投稿日: 2025.04.28
powered by ブクログ知識は大きく育てたい。 そのためにアブダクション推論は欠かせない。 そうすると間違うことは避けられない。 しかし、間違いは修正しなければならない。 けれども、大人が正解を言っても間違いは簡単に修正されない。 このジレンマから抜け出すには記号設置をしなおす習慣を育てること。 乳児がしたいのは、結果がうまく出る方法を見つけることではなく、なぜこうするとうまくいき、なぜこうするとうまくいかないか、つまりものごとの仕組みを発見すること。
0投稿日: 2025.04.22
powered by ブクログ子供向けの学力不振の原因調査のテストから見える、理解レベルと子供がどう理解しているか、そして終盤ではそれをどう理解できるように学ぶか。ゲームにするのは正しい。 そしてこの理解ができていない、論理性がないとか解釈のステップを飛ばすのは子供に限った話ではないという実感はある。 また親となった時に子供の理解に沿った教育ができるのか?学ぶべきことはある。 学者さん故か少し文章が難しいが、教育系では読んでおきたい。
2投稿日: 2025.04.14
powered by ブクログ今井むつみさんは、今をときめく言語学者。文章も非常に上手で引き込まれる。認知科学を用いて説明してくれる内容がとてもわかりやすく納得度が高い。 プレイフル・ラーニングを続けることで、学び手は「学びは楽しい」を超えて、「学びは遊びだ」と思うようになる。のだそうだ。「学びは遊びだ」という境地は本当に素晴らしい。 メタ認知は意識的なもの。自分の思考がうまくいっているかどうかやその結果を、少し自分から離れた客観的な視点で評価するものだとのこと。私自身はメタ認知をしっかり行うために、その場ですぐ反応してしまうのではなく、文章にしっかりと落とし込んだ上でコミュニケーションすることを意識している。文字に落とすという、一見非効率的なステップを踏むことでしっかりとメタ認知を行い、理解や伝え方を適正化し、急がば回れを実現できていると感じている。
0投稿日: 2025.04.13
powered by ブクログ学習とはとても内在的なもの、と教わったことがある。体感としてもわかるあの感覚を、スキーマや記号接地といった専門分野の概念を使ってわかりやすく説明している。 理論から実践例まで納得の内容だが、子どもたちは実際旧態然とした教育シラバスと評価システムの中にあるので、その中で個人でやってあげられることと、テストと言う結果への反映までの時間のなさを解決するハードルは高いと感じた。
0投稿日: 2025.04.10
powered by ブクログ途中途中で紹介するテストの情報量が多い。結構飛ばして読んだが、それでも十分に読める。贅沢だが、私には不要だった。 AIに関する考察はとても勉強になった。記号接地、身体化、生きた知識。学びの重要性が注目される昨今、すごく頼りにしている認知科学。今後も楽しみ。 勝手解釈すると、AIにより人間が劣化してしまう事を懸念されており、教育現場での活用には特に心配されていると読んだ。これは、猫も杓子もAIというなかで、流されない中之島のような、心理的安全性を感じることができた。 もうちょっと、AIに寄っていくのは待ってみようと思う。
0投稿日: 2025.04.09
powered by ブクログ・学力喪失は、大人の誤解が生み出すもの ・出てくる数字を全部使う、 ない数字を勝手につくらない、 という掟に縛られる ・「意味の不理解」に落とし込まれる ・生きた知識と死んだ知識 ・丁寧にわかりやすく説明すれば良いという誤解 ・接地しかけている概念を何度も使い身体化する ・本当の意味での「学力」は「自ら学ぶ力」 ・目に見えていないものをイメージてきること ・大事なのは「意味」→図化の大切さを感じる ・補助線など、認知的な負荷を軽減できるような 方法を自ら見出せる力を ・効果があることは、失敗すること
0投稿日: 2025.03.31
powered by ブクログ教育委員会にぜひ読んでほしい。「たつじんテスト」 文章題が読めていないのは、言葉の意味がわかっていないから。前と後、等しいとは 分数や割合がわからないのは、数字の意味がわかっていないから。2分の1とは わかっていないのがわからないのは、直感的な思考だけで強引に突き進み自己修正しないから。 教師がすることは「プレイガイド」。指摘ではなく気付かせる学び。 習っていなくても遊びで経験値を積んでおく。遊びながら学ぼう。ゆとりある教育課程を。
0投稿日: 2025.03.20
powered by ブクログ・学力喪失と聞くと、今の子どもたちの学力が昔と比べて下がっている話と思われがち。 しかしそうではない。 子どもたちが本来的に持っている学ぶ力、なぜ十分に発揮することができないのか、その原因と回復への道筋を認知科学の視点から解き明かしたもの ・算数、数学の文章問題の正答率が低い。 ただ問題を見ると正直、これは引っかかる子が多いだろうなと思えるような問題も多い。 著者の言う通り、数字や演算記号の意味が腑に落ちていないと言うのは最もであり、算数・数学に対する学習性無力感を持つ生徒はさらに増加しているのも指摘の通り。 ・何度も繰り返し問題を解く練習をすれば、子どもたちは理解できると大人(行政、教師、保護者)は考えがちで、そうした教育をしてきた。 その結果、局所的な対処療法だけが考案され、子どもの中で知識が生きた知識とならず、死んだ知識となっている ・テストは客観的な点数化が絶対必要と考える人も多いが、それは定員のある入試のみ。 学習内容の確認であれば、客観的な点数化は最優先ではない。 ・分数、小数の理解度も正直、壊滅的な答えが多い。 「意味がわかっていない」回答が目立つ。 例 2分の1は、1の半分だが、10等分の目盛りの2つ目だと思っている、など ・「読み」という行為は、実は複雑なパラレルな実行過程 文字の認識→単語の理解→単語の音声への変換、 脳内の意味の記憶貯蔵庫 ・日本では、子どもに「まだこれを習っていないからこの概念を授業で使ってはいけない」と気を使いすぎる ・身体理解を伴うのが◎ あと50ページくらい 再読が必要
1投稿日: 2025.03.10
powered by ブクログ分数や小数が自動化されてないの、ものすごいわかる… 今でこそなんとなくわかるけど、 小中の時なんて混ぜられたらわからなかったよな… 分数の達人トランプやりたい…! p.254 分散学習と多様学習 ドリルでないとしたら、何をしたらよいのか。時間を使った別の遊びをするのだ。学習科学で、有効性が確立した学習法がある。分散学習と多様学習だ。分散学習は、あることを学習するのに、同じことを一気に集中して学習するより、少し間を置きながら分散して繰り返し学習するほうが記憶の定着がよいという理論である。多様学習は、あることを学習して定着させるのに、同じことを繰り返すより多様な環境で学ぶほうが定着がよい、という理論である。 どちらの学習法も、人間の記憶や学習の仕組みの観点から、理に適っている。 同じことを続けていると、身体は慣れていく半面、気持ちが緩んできて、集中がしにくくなる(もちろん学習者のモチベーションによるので、一般的にはということで理解してほしい)。子どもはとくに飽きやすい。だから同じことを短期まんタ」で時間の操体を確実に! 間に集中して勉強するより、少しずつ時間を空けながらしまたの炭地を促進する問題に戻る たほうが記憶の定着はよい。その意味で、一夜漬けは効果はわり言っていると思ったの がうすい。というより、試験が終わったらすぐに忘れてしまう。効果的なのは、練習の時間が長くなりすぎないよう避けるところまでもっていく に、一定の時間集中したらその後休むか、別メニューで練習するというやり方だ。 多様学習というのは、その意味で、たいへん効果的だ。 多様学習は違うことをしていくので学び手は飽きにくく、学びの集中力が持続できる。さらに、同じ概念(あるいは同じ技)を異なる文脈で使う練習をするので、応用がききやすくなる。言い換えれば「生きた知識」を習得しやすくなるということだ。例えば、バスケットボールで3点取れる長距離シュートを練習するとき、同じ場所から打ち続ける練習をするより、距離や角度を少しずつ変えながら打ったほうがよい。同じ地点からばかりシュートを打つ練習を続けていると、その場所からのシュートの成功率は上がるだろう。しかし、実際の試合では、状況に応じて様々な地点からシュートを打たなければならないので、多様な状況での練習こそ必要なのだ。同じ地点、同じ環境で同じ練習を続けていると、頭(脳)も身体もその環境のもとで順応し、最適化を図ろうとする。すると、ちょっと環境が変わると適応できなくなるリスクが生まれる。臨機応変にパフォーマンスができるようになるには多様学習を心がけなければならないのである。 「時計カルタ」で時間の操作を確実に身体化する時間概念の接地を促進する問題に戻ろう。ずいぶん脱線して理屈ばかり言っていると思った読者もいるかもしれないが、記号接地が難しい抽象的な概念の接地を定着させ、身体化するところまでもっていくには、多様な形で楽しみながら概念を使う練習をすることが必須なのだ。その理屈を理解してほしかったのである。これまでの教育実践ではその観点が足りなかったように思う。丁寧に教えて、子どもがそのときは理解して納得した様子だと、「わかったね」として、次の単元に移ってしまい、せっかく理解した概念を使う練習をしない。すると、そのときに理解していても、すぐに忘れてしまう。それが人間というものなのだが、そのようなサイクルが続けられている印象だ。 学習した単元を完全に身体化するまで絶けることは現す的には無理なことは承知している。だから、授業時間の外で、例えば休み時間や、朝の時間など、ちょっとした関間時間にできる遊びで、学習した概念を使う練習をするのが有効だ。 時間の概念を身体化させるために、筆者は慶應義塾大学 SFCの今井研究室の学生たちと「時計カルタ」を考案した。小学校低学年の子どもたちは、そもそもアナログ時計を読むことにとても苦労している。時計の長針と短針が、時間の推移とともにどう動いていくのかを知らない子どももいる。時計の秒針が一回りで1分、すると分針が一目盛り進み、60回進むと1時間経ったことにリアリティを感じられないと、時間概念の接地は難しい。 時計を読めるようになるにも練習して熟練することが必要だ。時間の進みや戻りを、手で針を動かして確認しないとわからない状態から、頭の中で操作できるようになると時間概念の接地が進むはずだ。 「時計カルタ」はいたってシンプルだ。時刻を示した時計の絵が1枚のカードになっている(取り札)。この取り札は百人一首のように、机にランダムに並べてある。一方、読み札には簡単な文章が書いてある。例えば「きょうもいちにちがんばろう!ごぜん8じはん」などと時間が書かれている。だれかが読み札を読んだら、その時刻を示している時計のカードを一斉に探す。百人一首方式だ。一番早くに正しいカードを取れた人が、そのカードを自分のものにできる。
0投稿日: 2025.03.06
powered by ブクログ小学校の学習内容を理解していない(使えていない)子が発生する背景・理由や対策を紹介した本。本や学校で知識として学ぶだけではなく、生活の中で(できれば自発的な)体験・意味を伴うものにしていくことが大切。プレイフル・ラーニングの有用性。
0投稿日: 2025.03.04
powered by ブクログp.208 "ChatGPT がもっとも得意とするのは要約の作成と翻訳だ" 日頃 copilot を使っていて同感だが、いつまでそうなのだろうか、、 これまで同じ著者の本を読んできているので、私が感じる「新鮮味」は失われつつありますが、それでも学びはあるとは思います
0投稿日: 2025.03.02
powered by ブクログ前半は「算数文章題が解けない子どもたち」でも紹介されていた「たつじんテスト」についての分析(中学生版も開発されてた!)。後半では学ぶ意欲をどう回復していくかについての手だて。記号接地―言葉の意味を、生活のなかで実感として理解してゆくこと、が一つのキーワード。プレイフル・ラーニング、遊びを通じて学んでいくことの大切さは、実感として納得できるものがある。時間どりじゃんけんや時計カルタ、分数の達人トランプは具体的で試してみたいって人は多いと思う。(何より楽しそう!)
0投稿日: 2025.02.24
powered by ブクログ小中学生の学ぶ力について、認知科学の観点からわかりやすく丁寧に説明してくれている本です。 小中学生はどのように学習につまずくか?そのつまずきはいつか解消されるのか?大人たちの学力についての誤解とは?学ぶ力と意欲の回復への道筋とは? 「子どもたちが本来持っている『学ぶ力』をなぜ十全に発揮できないのか、その原因と回復への道筋を認知科学の視点から解き明かしたい」というゴールに向けて、そもそもに立ち返りながら語ってくれています。 データを元にした説明はどれも納得のいくもので、自分の中の枠組みを新しくすることができました。 本書にあるように「どう対処したらよいかを事細かく述べるマニュアルではない」のですが、これからの子供たちとの関わり方を考えるために十分過ぎるほどの指針を与えてくれました。
0投稿日: 2025.02.24
powered by ブクログ話題の認知科学者による子供の学力不振についての本。問題提起だけでなく解決策まで提示している所が素晴らしい。文章題が解けない、分数の計算がわからないなど、センセーショナルな話題が先行するが、子供にとってそれらがいかに難度の高いことであるか認知科学的に説明してくれる。 生成AIについて、膨大なパターン分析を瞬時に行う優れた「次の言葉予測マシーン」ではあるが記号接地していないという解説はわかりやすかった。 学生もはタイパ重視だが、生み出された時間をどう使うのかというビジョンもなしに、生きた知識が身につかない「効率的」学習法に飛びつくのは危険であるという警鐘は刺さる。
1投稿日: 2025.02.24
powered by ブクログ子どもが学びや学習、つまづきポイントがすごく理論的で分かりやすかった。 確かに、数と量の感覚が一致してない、頓知算数になってしまっている所がすごく共感できた。 読んで良かった。 耳が痛いところもあり…。
0投稿日: 2025.02.23
powered by ブクログ記憶力のみではない生きた知識をどのように学校教育の現場で子どもたちに身につけさせれば良いかというヒントが記載されており興味深い。
0投稿日: 2025.02.15
powered by ブクログめちゃくちゃ面白い本。教員や子育て中の人におすすめ。 子どもたちは、大人が思っているところよりももっと前で勉強に躓くことがわかった。 記号接地とスキーマがひたすら大事。これを獲得することで、自ら学ぶ力も獲得できる。そしてこれらを獲得するためには遊びの中で学ぶことが大切。
0投稿日: 2025.02.13
powered by ブクログゆる言語学でお馴染み今井むつみ先生。 近年、「学力」を認知科学の点から考察した書。 算数(はまだ辛うじて解けていたが高校数学・理科の)文章題が苦手だった私には刺さりまくった。いやそうそう、具体的な想像が出来ないんだよなあ……。基本的な計算問題は解けていた私、本書に書かれているような「その等式・公式の意味がわかっていないために使い方がわからない」高校生だった可能性…。 歴史のような具体の塊みたいな科目を愛していた(る)ので、理系科目のような抽象度の高い科目が苦手なのはそういうことなのか? 身に覚えがありすぎてページを捲る手が止まらず、岩波新書にしては珍しく1日で一気に読み終えた(私の場合、岩波新書を1日で読み終えることは非常に稀)。 最終章の記号接地についての章は、自分も教育関係の仕事に就いているから意識したいことだった。幼少期にふれたものや元々知っているものの本質を理解した時って、感動する忘れないよね。
5投稿日: 2025.02.06
powered by ブクログ2025年、始まって1月ちょっとしか経っていないけど、もう自分ベストが出てしまったかもしれない… 認知バイアス、認知心理学の本が大好きなわたしには、とんでもなく好きな本でした! ひとはどう学び、どうつまずくのか そもそも「学ぶ」とは何なのか 教育の話であり、発達の話であり、認知の話であり、機械学習の話であり、人生の話でもある… 学力がどうとか、偏差値がどうとか、意味がないとは言わないけれども、たぶんこの本ではそこの話ではなくて、 自分で自分が何に興味を持っているかを見つけられるか、 見つけた興味に対して、自分のからだを動かして取り組んで、試行錯誤して楽しめるか そういう能力を身につけられると、放っておいても自分でどんどん学びを進めていくよ、という話だったと解釈しました。 そういう学びを進めていける子は結果として学力にもつながってきそうな気がします。 その始まりが、乳児期(胎児期)の母国語習得にあるというのはとても驚きました。 (スキャモンの発達曲線がふと思い出されましたが、関係あるかな……) 個人的には、分子構造とか、電気とか、記号接地できなかったな…してみたかったな…… 以下、自分用まとめ ひとは、学校で学ぶよりもっと前に、赤ちゃんの頃から母国語の習得という学びを始めている 文法やルールを教えられたわけでもないのに、母国語についての「言語化できない生きた知識」を身につけていく システム1の思考でアブダクション推論をし、形成されたスキーマを実際に使いながら、システム2の思考でメタ認知しながらスキーマを修正・洗練させていく フィードバックの回路を活性化させるには、とにかく数・量にふれることが大事だし、 たくさんのものから必要なものに注意を向けるには、必要なもの以外の不必要なものに注意を向けないこと、注意の切り替えをスムーズに行うことも大事 情報処理の負荷が上がったときに、自分で負荷を軽減する工夫をできることも大事(メモを取ったり補助線を引いたり) 直感的なシステム1思考は素早いが認知バイアスや思考バイアスによって誤りも多い、そこをメタ認知のシステム2思考で待ったをかけて冷静に考えを見直せるか 「思考の躓きは、思考を制御する力が弱いことに起因するといっても過言ではないのである。」 (おぉ!強!! 精神論につなげるつもりはないけど、いわゆる根性とか胆力みたいな要素ともつながりそうという感想) 重要なキーワード「記号接地」 AIは「いちご」の意味を答えることができるが、いちごを体験することはない しかし、「いちご」を食べたことがある私たちは、体感として「いちごの意味」を知っていると感じている 「AIの状態は、一度も地面に足をつけることなく回り続け、記号から記号を漂流し続けるメリーゴーラウンドのようだ」 ブートストラッピング(発達心理学) 何かを学習するときに、子どもが自分で手がかりを見つけ、洞察を得て、学習を加速させていくプロセス 自らの力で、自身をより良くする(より高い発達段階へひき上げる) 「プロダクティヴ・フェイラー」=「創造を生み出す失敗」 自分の知識を使ってアブダクション推論をした仮説が、実験などで実際に試してみて誤りだとわかったとき、その経験は通常よりも深く記憶に刻まれ、失敗しなかったときよりも高い学習効果が得られる 以下、引用 「現代にも、『探究する人』はいたるところに存在する。著名な人物に限らない。他者に評価されるためではなく、高収入を得るためだけでもなく、今の自分より向上し、少しでもよい仕事をするために探究を続け、学び続ける。向上することに価値と喜びを見出す。そういう人たちが大勢いる。」 (感想:こうして、好きな本を読んで感想や読書メモを残すことも「探究する人」に入りますよね?)
5投稿日: 2025.02.06
powered by ブクログゆる言語学ラジオで知って、本屋さんで見かけたので購入。 「言語の本質」の今井むつみ先生、単著では初めて読んだ。 てか、岩波新書が初めてかも? あんまり新書は読んでこなかったからなぁ。 横書きが読み慣れないのと、小中学生の算数問題とその結果の羅列が大部分を占めるので、ちょっと読むのに時間がかかったが、丁寧な検証はとても興味深かった。 学力喪失という、ちょっとショッキングで、この語彙の印象だと現状の学校教育システムへの警鐘かとも思えるタイトルだから、ゆる言語学ラジオ聴いてなければ多分手には取らなかっただろう。 でも学びや知識の認識を改めるのには、いい歳の大人にとってもいい機会になったし、自分が小学生や中学生の頃、数学に躓いた理由もよくわかった。 以下、わたしが本文を読んで感じた、内容にはあまり関係のない感想。 概念というのは本当に難しい。 わたしたちは言葉によって世界に触れ、世界を作り出すが、抽象度の高い言葉は特に、必ずしもわたしとわたし以外の世界では一致しない。 共通の絶対的抽象概念を共有しているつもりでも、実は個人個人のスキーマで個人個人の中にある暫定的概念を持ち寄った状態で世界はふんわり作られているんだと思う。 この感覚を持ち続けるのは難しいし、常に意識して生活するには負荷が高すぎるから、世の中にある概念は絶対的であると仮定しながら人は生きていく。 子どもの頃は、この世界が、自分の持っている絶対的概念と同じに出来ていると考えて、でも何かの、どこかのタイミングで躓き、スキーマごと訂正され、あるいは自ら訂正し、そうしているうちに、このふわっとした世界暫定概念に寄せられながら自分の概念もなんとなく固められていくのだろう。 実は世界の概念さえ共有概念ではなくその社会の個人個人が持ち寄ったものである…ということに、たまに振り返ってみるのがメタ認知としても有効なのではないかと思った。 うーん自分で書いていてもワケがわからなくなってきたな。 言葉にするってのは本当に難しいね。
1投稿日: 2025.02.04
powered by ブクログ記号接地の重要性。学生時代の自分自身に思いあたることも多く、そういうことだったのかと納得しました。大人になってからは割合や分数を日常的に使用するシーンが多く、否が応でも感覚的にわかるようになってきた気がする…
0投稿日: 2025.02.02
powered by ブクログこの人の書く本は何読んでも面白いね。 もし40年前にこの本が出てたら、ひょっとして小学生の自分も算数が接地できていたかもと思うと、ちょっと悔しい。計算ドリルなんて『算数嫌い製造装置』にしかなってない。 でもこの接地論も適用範囲には限界があるよね。大学の代数学で複素数(虚数)の積分が出てきたが、一体これは何を計算しているのかてんで意味が解らなかった。こんなの接地しようがないと思うのだが、世の数学者は何の抵抗もなく使いこなしている所を見ると、接地だけではない他の認知システムがあるように思われてならない。 著者は大人が適切なサポートをしてあげれば誰でもスキーマの修正や記号接地ができると言うが、本当だろうか?そういった能力にも個人差がかなりあって、全くサポートがなくても自然にできる人と、いくらサポートしてもできない人はやっぱりいると思う。そうなるとこの方法で成果が上る人は、一部の中位層だけということになる。この意味でも限界があるように思われる。
1投稿日: 2025.01.31
powered by ブクログ勉強ができない子が「なぜわからないのか」「何がわからないのか」と問われて「どこがわからないのかもわからない」というようなことを言う場合がある。自分のつまずきを言語化できない子どもだからこそ勉強ができないのだからしかたがない。この本は子どもの代わりにつまずきの原因のいくつかを解き明かしてくれる。
0投稿日: 2025.01.31
powered by ブクログ著者がゲストで出ているpodcastで部分的に聞いた話がまとまって読めて良かった。抽象化はつまづきやすいので、それを乗り越えられる土台づくりとしての広がりに期待
0投稿日: 2025.01.25
powered by ブクログスキーマのズレを修正できないという問題は学生のみならず社会人となってもかなり大きな問題を成していると思われる。企業の重役レベルでも、自らの間違ったスキーマを修正する能力を持たずにイノベーションを阻害しているケースを多々みてきた気がするので、本書で指摘されているようなスキーマを修正する認知能力こそこれからの日本で強く必要とされている能力だと感じる。 memo 「死んだ知識」を「生きた知識」にする鍵となる概念が「記号接地」である。記号接地無しで獲得される知識には応用性がないため、生きた知識になることができない。 プレイフルラーニング(遊び学習)は記号接地を促進させる一つのアイデア。 また、広島県福山市の学校では学生同士が一緒に学ぶという形式で体積などの抽象概念について現実の事例を語り合いながら理解していく試みがなされている。
4投稿日: 2025.01.20
powered by ブクログこの本では「生きた知識」と「死んだ知識」という言葉を使っているが、なるほどと思いました。 同じような考えで「生きた身体」と「死んだ身体」もあるなあと感じました。 みなさんの身体は生きていますか?
0投稿日: 2025.01.14
powered by ブクログ乳幼児は言葉を獲得していく学ぶ力を持っている。小中学生になって学校の勉強についていけなくなるのはどういうことか、詳しく解説していた。知識を獲得し、それを応用発展させていく自ら学びとる力は、やり方一つで伸ばせるという。算数の分数や小数、割合や比率で躓く子は多いので、自分の子どもにも、体感して直感できる記号接地をしてあげたいと思った。学校の先生や保護者に必読の書かもしれない。
5投稿日: 2025.01.10
powered by ブクログなんとなく感じていたことを、全て言語化してくれたような本だった。全体的に興味深く、わかりやすいので飽きずに読めた。 自分は教育者でも何でもないけれど、勉強や学ぶことは好きなので、そういう子が増えたらいいなと思った。
1投稿日: 2025.01.05
powered by ブクログ昨年はAIで持ちきりだった。ChatGPT等生成AIを駆使しよう、時代に取り残されるなと。本書では、AIに頼ることの危うさ、記号接地、知識の身体化できることの重要さを説く。表題の学力とは、学校での成績を上げるものでなく、学ぶ力であることを念頭に読み始めてほしい。2025.1.3
0投稿日: 2025.01.03
powered by ブクログ子供の「学力」がどうやって形成されるのか、どうすれば身につくのか、そういうことに焦点を当てた一作。 甥っ子に生かせる
0投稿日: 2025.01.01
powered by ブクログ赤ん坊として生まれてきたとき、誰もが驚異的な学習能力をもっているにも関わらず、なぜ小学校に上がるころにはその学習能力を発揮できずに落ちこぼれている子が生じるのか? 認知科学の見地に立って、著者自らが開発した思考力を測定するテストから見えてきた「学びの躓き」を解き明かし、その処方箋を探る。 即効性のある本ではないが、全教育関係者が目を通した方がいいのでは?と思うくらい、興味深い一冊だった。 まず認知科学観点から見る知識の習得とそれを阻害する要因を解き明かし、著者が作成したテストの結果から思考力は何か、その思考力を妨げるものは何か、それを踏まえ教育者が本来生徒を導くべき方向はどういう方向なのか・・・かなり丁寧な筆致で解説される。 理解が促進しない場合の多くは誤ったスキーマを持っていることによる。 算数ができない子は「記号接地」ができていないケースが多い。 直感的思考に流され批判的思考が発動しない(思考の制御ができない)。 子どもが何かを学習する手順:ブーストラッピングを加速させ、支援することが、自走する学び手を育成することに有効である・・・ などなど、これだけ掻い摘んでも何を言っているか分からないかとは思うが、読めばかなり腑に落ちるものばかりである。 今までのわが子への接し方を振り返ると、いくつかの教材が、上記の論点を踏まえた設計になっていたことに気づいたりして感心したりもした。 子どもに学びのヒントを与えていくにあたって、踏まえておきたい考え方の詰まった一冊だった。
2投稿日: 2024.12.31
powered by ブクログあらゆるものに意味を見いだしていくという人間の本質に素直に向かい合う学びが必要であることがよくわかる。
0投稿日: 2024.12.31
powered by ブクログ今井むつみ先生のご著書にだいぶハマってしまっていますが、この本も多くの学びがありました。 いろいろと悲観的になることもありますが、「探究し続ける人間」、心のうち底から湧き上がってくる「・・しなければ」という衝動に突き動かされて何かに打ち込む。そうした人間の姿に想いを馳せることのできる一冊です。
0投稿日: 2024.12.30
powered by ブクログ認知科学の知見から、主に幼児から小学生の人間の学びの構造を整理し、そのモデルを元に生成AIの影響についても言及されている。死んだ知識ではなく、生きた知識とは何か、記号接地とアブダクション推論という難しい言葉を使っているが、遊びなどでその意味をつなけていくこと、スキーマを育て、修正できるようなシステム2のメタ認知ができるようになること。子ども主体でたくさん遊びたいと思った
0投稿日: 2024.12.22
powered by ブクログなぜ子供たちはもともと持っている「学ぶ力」を、学校で発揮できないのか。「生きた知識」を身につけるにはどうしたらよいのか。躓きの原因を認知科学が明らかにしていく。 新聞で紹介されていたので、即購入、私にとって必読の書となりました。 子供たちができるか、できないかではなく、どこで躓くのかを把握し、学ぶ力を発揮させていくという視点に、今の現場にまさに必要な学力観だと感じました。 また、認知科学の視点から豊富なデータをもとに論じられているので、とても説得力がありました。 まさに、自ら学ぶ力が生きる力になるのだという学力観を実践していくためにも大切なことだと再認識しました。 ぜひ、今後も研究を進め、現場に還元していただき、子供たちの未来の可能性を広げていってほしいですし、私たちはそのための努力を惜しんではいけないと改めて心に誓いました。
43投稿日: 2024.12.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
流し読み。文字も数字も体験して意味を体感することが必要だということ。 なるべく大人が答えを言わないようにしよう…とは思っているけど頓珍漢な答えが返ってくることが多くてなかなか難しい。
1投稿日: 2024.12.18
powered by ブクログとにかく数字が子ども時代から苦手、どうしてこんなに分からないんだろう、数字の問題がスラスラ解けたらどんなにいいだろうと何度となく思っている私が読みました。 「認知科学による回復への道筋」が副題の本。著者の「言語の本質」を以前に読んでいたので、その中の子どもの言語習得の過程が頭にあり、思い出しながら読みました。 「記号接地」という専門用語が出てきますが、この言葉は言葉の本質でも出てきて重要な概念です。今や人工知能(AI )は記号(ことば)を流暢に扱いますがどんなにことばを駆使しても、例えば、「いちご」という概念を本当に理解していることにはなりません。なぜならコンピュータには身体がないから、そのものを経験できないからです。生きた知識を持たないので、「一度も地面に足をつけることなく回り続け、記号から記号を漂流し続けるメリーゴーランドのようだ。」と人間の持つ知識との違いを表しています。 小学校で算数につまずくのは、分数や割り算を習う辺りだとありますが、実際の問題の解答を見ると、正に自分にも当てはまります。この辺りで分数という意味を理解することなく。機械的に解き方だけを覚えていっただけでした。大人になって買い物などの実生活から、商品の何割引きなどの概念や洗濯で溶液を薄めるなどは体験して身に染みて分かります。しかし、学校での授業はひたすら問題を繰り返し解くだけで、わからないから益々嫌になりました。 著者は、…算数文章題が解けない問題が何十年もずっと解決されないままになっているのは、このような解き方の方略の分析に終始し、子どもに大人が分析した「正しい(もっともよい)解き方」を教え、覚えさせてきたことが大きい原因として存在しているからなのである。…と断言しています。 このような実態を踏まえ、著者は子どもたちの学ぶ力、意欲を回復すべく遊びを通して、様々な数字の概念を接地し身体の一部になるように定着させる試みを始めています。(プレイフル・ラーニング) 本題から逸れますが、野球で飛び抜けたパフォーマンスを見せる大谷選手は“野球は楽しいからやっている”と言っています。常に自ら誰に指示されることなく努力する姿勢は、これにも通じるものでしょう。 私を含め多くの算数嫌いを生み出してきた(多くの犠牲者⁉︎)これまでの教育を変えて、子どもたちが生き生きした授業を受けられるようになって欲しいと切に願います。
0投稿日: 2024.12.11
powered by ブクログとても興味深く、内容のある本だった。記号接地を助ける活動事例も、興味深いもので、小学校理科の学習過程がこのプロセスを踏んでいることが多いのに得心がいった。活動事例は実際の学習過程に入れるには時数などの壁があり、やはり指導要領の改正は必要と感じた。
0投稿日: 2024.12.10
powered by ブクログ教育に携わる全ての人間が読むべき本、と個人的に思えるほどいい内容。日本教育へのモヤモヤの言語化ができる。
0投稿日: 2024.12.09
powered by ブクログだから文章題は図にして考えるのが大事なんだな。数直線が苦手なのも量感がわかってないからなんだな。記号接地。記号接地。これ読んで、言葉を自分のものにするには読み聞かせがやっぱり大事で近道じゃんと思った。算数教えるときにはその子が量感つかめてるか図りながら接するようになりました。理論も実践もわかりやすくてめちゃくちゃタメになる本だった。これが売れている日本、希望ある。時間どりじゃんけんとか分数のトランプとかすぐやりたいなー。 そう、余談だけど「あわせてって書いてあるから足し算だよね」は呪いになっちゃうから言わないぞと思った矢先に某チャレンジのDMが家に届いて、そこの小1向け問題。我が子がつまずいてたからのぞいたら、「あわせて」系のキーワード使ってないんだよね。「…で、〜で、いくつですか」みたいな文章読み取って状況想像できないと立式できない形になっててベネ◯セちょっと見直しちゃった。取らないけど。
0投稿日: 2024.12.05
powered by ブクログ子供たちが勉強で躓くのはなぜか。認知科学の観点から、知識の有無ではなく問題解決能力や思考力がどのようにして獲得されていくのかを考える。 とくに算数・数学面での躓きについて詳しく書かれていて、なぜ分数でわからなくなる子供が多いのかなどが例に挙げられているが、実際に自分が算数〜数学が苦手な子供だったのでなるほどと思うことが多かった。(つまり私は基本的な概念が理解できておらずただパターン学習で解決しようしていたために行き詰まったらしい) この本で紹介されているような学習方法で算数の概念を学ぶことができていたら人生違っていたかもしれない。
1投稿日: 2024.12.03
powered by ブクログ学力とは学ぶ力 P293 乳児がしたいのは、「結果がうまく出る方法を見つけること」ではなく、「なぜこうするとうまくいき、なぜこうするとうまくいかないか」、つまりものごとの仕組みを発見すること メモ ゆる言語学ラジオ 作者コメント https://youtu.be/oWBznhMApjY?si=5VhZw7mGpjc9DdcF
0投稿日: 2024.12.03
powered by ブクログ読後に子供の学びのプロセスがこんなにも明確な本があるのかと驚きながら読んだ。言葉、数、抽象的な概念を生きた知識とするまで沢山の壁がある。生まれついた時から、赤ん坊はこの未知の壁を全身でよじ登り、挑戦する姿勢は見習いたい。 学力とは何か?小学生や中学生の頃に抱く、分数や文章問題を理解できない、できた気になってる、言葉にできない引っ掛かりがとれる本だった。 数字や言葉の概念を理解する 答えを出すのではなく、世界の構造を探索する 探索するためには記号設置により五感を対象に埋め込む 自らの記号設置を使いプレイフルラーニングする(楽しむと探求を繋げる工夫)
0投稿日: 2024.11.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
職場で、学力向上のための取り組みを何かやれ、というミッションを受けた若い先生にいろいろ質問されるので、私も勉強するんだけど、公立の中学校でやる「何か」というのは朝自習の時間にみんなに共通の課題に取り組ませるとか、学級で勉強に関して何か目標を立てさせるとか、そういうことしかできない。で、それをやったから学力があがる、なんてことは常識的に考えても起こりえないと私は思う。 だからと言って「公立中学校で学力を上げることは無理」とか言っちゃうと責任の放棄になっちゃう。 私個人としてはちゃんと答えをもっていて、すべての先生が、自分の専門の教科の授業に責任をもって、ちゃんと授業をするのが一番の「学力向上の取り組み」だと思っている。とにかく中学校は、本来の仕事(プロの授業を作ること)以外の仕事が多すぎて、授業がおろそかになっている先生が多い。 さて、本の感想。 本書ではまず、「たつじんテスト」というオリジナルのテストの分析などを通して、学力が身につかない小学生が、いったい何につまづいているのかを解説している。算数の文章題の意味がわかっていなかったり、数直線や分数が全く理解できていなかったり。これは実感として、すごくわかる。私は専門は数学ではないが、他の教科の問題でも、そもそも問題の意味がわかってないよね、意味が分からないからテキトーにしか答えてない、もしくは最初から考えようとしていない、もしくは全く意味がわかっていなかったり、間違って理解しているまま一生懸命考えていて、思考が全く違う方向に行ってる…とか、そういう生徒を日々目の当たりにしているから、すごくわかる。 本書では、そういう子どもが「意味がちゃんと分かる」ように、体験・経験を通して「記号接地」させることが重要だと説明している。 これも私にはすごくよく分かる。というか、私は子育てするときに、そういうことを意識して子供に語りかけてきた。例えば洗濯機に液体洗剤を投入するとき、「0,6杯だから、キャップのこの辺までだよ。半分だと0,5杯だからね」とか。料理や手芸をするときにも算数の概念を使う。子どもが3歳くらいのときから、分数や少数を使う会話は、日常生活で自然と生まれる。 学校でもそういうふうに、生活に結びつけて教えることが大事と。そういのが、「生きた知識」である。概念がわかり、生活から学び、逆に、学んだことが生活に生かされる。いくら社会科で語句を暗記しても、実際に社会参画に生かせなかったらそれは「死んだ知識」だ。 すごくよく分かる。 ここからまた、本の感想じゃなくて愚痴になっちゃうけど、子どものころから親に(大人しくさせるために)スマホの画面をずっと見せられて、暇な時間はずっとゲームのコントローラーを握って育ってきたような中学生は、生活体験が全然ないので、記号接地させるのは難しい。洗剤をキャップの半分まで入れたらそれは「0,5である」ことすらわかっていない中学生が、信じられないくらいたくさんいる。こちらはそれくらいは分かっていることが前提で話を進めるので、もう中学校の授業は成立しない。 こういうのは公立中学校の一教員ではどうにもならないので、もっと政府や、文科省や、子ども家庭庁?やらが、ゲームやデジタル機器が子育てに及ぼす影響について広報するべきだと思う。 ↑この頃新書読んだらだいたいこういう結論にしか至らないよ…。 p226 子どもは言語の発達の道筋で、このように、身体で感じてすぐわかる類似性を使って、見てもわからない、抽象的で本質的な類似性に注目して一般化ができるようになる。自分で気づくことができる手がかりを使って具体から抽象へ自分の力で登っていく。これがブートストラッピングである。この変化は一度だけでなく、、発達の過程で何度も繰り返して起こるし、実は、ことばの学習だけでなく、すべての学習で起こることである。 すべての知識の学びにとって、子ども自身で点を面に拡張することは、必要不可欠な過程なのである。
10投稿日: 2024.11.24
powered by ブクログ前作「言語の本質」が面白かったので購入。 記号接地問題、アダプション推論に加えて「スキーマ」という概念が登場。 全国学調の点数=学力と捉える風潮に意を呈するところは賛同ですが、代わりになる指標がどういうものだと授業や施策の評価ができるのかは難しそう。
0投稿日: 2024.11.16
powered by ブクログ「1(イチ)」にしても時間にしても分数にしても、自分自身はそれらの概念を知らない間に理解していたので、なぜそれらがわからない子どもたちがいるのか不思議だったけど、この本にはその理由がよく説明されていたのでやっとわかりました。 でも、どうすればそういった概念を子どもたちがきちんと理解できるのか、確実な手立ては紹介されていません。恐らくこれからも研究者や教員は試行錯誤するのでしょう。そんな中でヒントとなるのが「プレイフル・ラーニング」、遊びを学びに。人間は「ホモ・ルーデンス」であることを原点として、これからの学びを考えていきたいです。
0投稿日: 2024.11.15
powered by ブクログタイトルと内容には若干ずれがあると思いますが、内容としては、とてもよい本でした。 学校で身に付けるはずの、いわゆる「学力」について、学力が伸びない原因を、より根本的に追究することで得られた知見をまとめた本、といえると思います。 この本に出てくる概念のうち、「記号接地」については、とくに重要だと思います。 「記号接地」とは、何らかの概念を理解する際に、いわゆる「腑に落ちる」状態を表す、と考えればよいと思います。 本書では、「記号接地」がうまくいっていない例として、何回も「分数」が出てきますが、「分数」の理解には、そのベースとなる、整数、割り算(割り算のベースとなる、足し算、引き算、掛け算を含む)についての「記号接地」が必須。 しかし、整数や割り算についての「記号接地」がうまくいっていないがゆえに、分数の理解に至らない、というケースが非常に多い、とのこと。 つまり、分数を理解していない子を相手にする際には、整数や割り算の「記号接地」がうまくいっているかどうかをまずは確認しないと、分数の「記号接地」には至らない、ということ。 本書では、分数のケースを含め、小学校で学ぶ算数において、記号接地がうまくいっていないケースに対する改善策として、プレイフル・ラーニング(遊びの要素を入れた学び、といえばよいでしょうか)の具体例をいくつか紹介しています。 ただし、プレイフル・ラーニングについては、遊びが重要なのではなく、知識の「記号接地」のための、知識の「身体化」が目的。 そこを履き違えると、単に楽しいだけの遊びになり、学びの観点が欠落してしまう点には注意が必要かと。 教育を考える上で、いろんなヒントが詰まっている本ですし、この本は、購入したいと考えています(今回は、図書館で借りて読みました)。
1投稿日: 2024.11.11
powered by ブクログ考えてみれば自分も、分数の割り算は記号接地していない。手続きとしては記憶していて計算できるけれど、何をやっているかの意味がわかっていない みんな言語の習得みたいな難しいことはできるのに、なぜ算数の文章問題で躓いてしまうのか。本書中には明確に書かれていなかったと思うのだが、自分なりに次のように理解した。言語の習得においてはカーネマンのシステム1(速い思考)が優勢で、かならずしも論理的でないアブダクション推論を使って量とスピード重視で学んでいく。一方、算数の文章問題となると、システム2(遅い思考)を使っての記号操作が求められるから。記号の意味を腹に入れればなんとかなるのだが、それが難しいと
3投稿日: 2024.11.10
powered by ブクログ「生きた知識」を持って毎日勉強、仕事していたら一日の終わりに疲れるのは仕方ないと思わせる。自己の選択したプロセスを俯瞰し検証したり、示される記号を外界に起こる事象に当てはめたり、時には類推、直感からゴールを想定し段取りしたり、人との関わりが他者自己のブートストラッピングサイクルの助けになったり、大人にとって、誤った知識を捨て去るプロセスとして役立ちます。
1投稿日: 2024.11.10
powered by ブクログ感想 抽象的な概念。手に触れることはできない。だから推測するのみ。思いがけないところで躓いている。そもそも土台がない。一から組み立てる。
2投稿日: 2024.11.07
powered by ブクログ目から鱗が落ちたようだ。 1 はさわれないのだ、概念です、だなんて。 触れることができるのは、1個のモノのみ。 大雨の日に外出できずに読むには もってこいな一冊でした。ありがたい。
16投稿日: 2024.11.02
powered by ブクログ数の概念が分からない、文章題を読み取れない小学生。認知科学的になぜか、どうすればよいか解き明かす。 子どもがどうして間違えるのか、そのプロセスが分かるのはスリリングだった。
2投稿日: 2024.11.01
powered by ブクログ子どもたちは何に躓いているのか? とても興味深い問いである。 算数を例に具体的な躓きを見せ解説してくれる。学テを何度繰り返しても子どもを点数で並べるだけで、躓きに取り組む指導は生まれて来ない。 認知科学の立場からの分析は鋭い。鋭いが自分の頭ではよく分からない。政治家や教育委員会も学力の捉え方が本当のところ分かってないのだろうということは分かる。 学校現場の先生たちもよく分かってないだろうことが経験からも分かる。 どうしたらいいのだろう?との思いがぐるぐる回る。 「記号接地」が重要らしいと分かるが、何度振り返っても意味が分からない。 認知科学がある程度身についた者なら分かるのだろう。 もっと私レベルで分かる本に翻訳してほしい。
4投稿日: 2024.10.28
powered by ブクログ<目次> 第1部 算数ができない、読解ができないという現状から 第1章 小学生と中学生が算数文章題をどう解いているか 第2章 大人たちの誤った認識 第3章 学びの躓きの原因を診断するためテスト 第2部 学力困難の原因を解明する 第4章 数につまずく 第5章 読解につまずく 第6章 思考につまずく 第3部 学ぶ力と意欲の回復への道筋 第7章 学校で育てなければならない力~記号接地と学ぶ意欲 第8章 記号接地を助けるプレイフル・ラーニング 第9章 生成AIの時代の子どもの学びと教育 <内容> 恐ろしい時代になったな、というのが最初の感想。そして高校へも確実にこうした生徒が入ってきてるな、と言う実感。対処法も載っているが、まずは我々大人が、殊に教員が、この事実を知り、どのように考えていかねばならないか、どのような教育をしなければならないか、真剣に考えねばならないだろう。 第1部が状況の紹介。最後にある「たつじんテスト」は、けっこう難しい。第2部の分析は、ちょっと難しいが、実感としてはわかる。第3部は生成AIの話で、ここは年寄りの私には違和感があったが、そういう時代になっていくのだろう。そこに書いてあった「子どもが自分の頭で考えずに、すぐに答えを求めることが習慣になったなら」というフレーズに寒気を感じた。今見ている生徒がそういう傾向にあるからだ。「考えてほしい」。これが私の願いである。
2投稿日: 2024.10.26
powered by ブクログ赤ちゃんは誰に教えられるでもなく、ものすごいスピードで周りの情報から言語を習得していく。人間には本来、学ぶ力が備わっている。しかし、いつの間にか大きくなるにつれて、学ぶ力が十分発揮できなくなってくる。その原因と回復への道筋を認知科学の視点から考察した図書。 学校教育は時として、知識を教えるものの、それが生きた知識となっていない。今後の学校教育では、ある知識から知覚・感覚的にアクセスできる概念を見つけ、そこに接地する記号接地が重要とのこと。これにより、記号を他の物事に紐づけたり、抽象化していくことができる。この記号接地を起こすには、ゲーム感覚、自分なりに体感してみる、という要素が必要らしい。知識を詰め込むよりも、知識の比較、紐づけ等が大事なようだ。 今後の教育だけでなく、自分の学習についても役立つ内容かもしれない。
1投稿日: 2024.10.21
powered by ブクログ興味深く、一気読み。 赤ちゃんは懇切丁寧に理論を教えてもらわないのに、自らの経験を通じて母語を学ぶ。 学校教育はなぜそのような学びになっていないのか? とっても面白い視点だと思う。 …部外者としては。 一方で、学校関係者がこのような指摘を受けたら、、、頭抱えるしかないのでは、とも思う。 指摘されていることはいちいち面白い。 文章題に出てきた数字をもれなく使ってとんちんかんな答えを導きだすようすetc. 概念が「接地」していない(身についた知識になっていない)例がこれでもか、と紹介されている。 指摘だけでは無責任だと思ってか(?)、分数や少数概念の「接地」に役立つカードゲームなどの提案もある。 うん、こういうゲームが役に立つ子もいるかもね。 でも、全てをそういう授業にするのは難しそう。 学校教育って、難しい、、、、(ように思うけど、案外当事者たちにとっては、そうでもない、のならいいのですが)
14投稿日: 2024.10.21
powered by ブクログ概念を抽象化して、記号接地し、生きた知識を学ぶことの難しさ、重要性を学んだ。 高校の頃から頭の良い人は共通してこの能力を持っていたなあと、今考えれば思う。高校は時間がなく、効率を求めるあまり、目の前の具体的な部分の知識に捉われ、抽象化して考えることができなかった。それでは死んだ知識も同然で、AIとなんら変わらない。 これに今気づけたことが最高のタイミングと考え、今日からは物事の具体性のみに捉われず、抽象化して考える癖をつけていこうと思う。
4投稿日: 2024.10.21
