
総合評価
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powered by ブクログぞくぞくした気持ちで文字通りの一気読みだった。あるサラブレッドと運命的な出会いを果たした、平凡で孤独なOL・優子が、馬のために会社の労組から1億円もの横領をしてしまう。こう言ってしまえばそれだけなのだが、馬と通じ合ってしまったという確信、自分こそがこの馬を守ってやらねばならないという執心、いけないとわかっていても引き返すことのできない衝動と、優子がたどって行った破滅への道に読者も一緒に静かに引きずり込まれてしまう恐ろしさがある。ふと冷静になってしまえば、これだけ視野の狭くなっている優子のことをアホやなあと一笑してしまえそうなものだが、不思議とそんな気持ちには一切ならず、最後のトレーナーの言葉でハッと目を覚まされた気分だった。彼女に取り憑いていたものはそれほどリアルであり、「馬は人に夢を見させる」という場長の一言が重くズドンとのしかかってくる。実際にあった事件をもとにしているとは読了後に知り、ますます夢と現実の境目が分からなくなる心地だった。
0投稿日: 2025.10.17
powered by ブクログこれが正しい狂気と呼べるのだろう。 作中、印象的な擬音が繰り返されるのだが、最初は陶酔の美しい音だったのに、回を追うごとに呪わしい凶事を表すひびわれた音に変わっていくのが上手い。馬だけに。 畜生は畜生だと言い切るにはあまりに馬という生き物は美しすぎると怯えさせられる良い作品だった。私はこれかなり好き。
0投稿日: 2025.10.09
powered by ブクログ人が何かに魅了される様子をこれでもかというくらいに鮮明に描いた作品。 ページを捲る手が止まらず、狂気にドキドキとさせられました。
0投稿日: 2025.08.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
作中の「馬は、私たちに夢を見せるの」という言葉が胸に残りました。 私事で恐縮なのですが、わたしも馬に乗ることが好きです。といってもたくさん乗ったことがあるわけでもなく、今乗っているわけでもないのですが、子供の頃に観光地で乗った馬の記憶をずっと覚えています。乗ってみると想像より高い視界に、思ったより早く進む馬に驚いたことを今のように覚えているのです。 大人になってからは乗馬を習ってみたいと思いつつ、乗馬クラブが遠方だったり費用の点でなかなか難しく実現はしていませんが…。 そう思っていたので、今回のお話すごくドキッとしました。夢を見せられている、そうか私は馬に夢を見せられていたんだそう思うことができました。御子柴さんはわかっていたのですね。これは夢であると。優子さんは夢と現実の区別がつけられなくなってしまっていたのでしょうか…?現実だとわかっていたら、自分用にバッグは買わなかったのではないか、そう思いました。 私たち人間は分かり合えない時がある。 そんな時、人間は動物に救いを求めてしまう。 彼らが言葉を話せないからこそ、きっと自分と同じ考えをもっていてくれる、そう思い込んで心の拠り所にしてしまうのかなと思いました。
1投稿日: 2025.04.24
powered by ブクログあの瞬間、私はあなたに惹かれた その代償は、一億円の横領… 造船所で働く彼女は、俯き加減で、目立たず、静かに生きてきた。あの国道で、彼を見かけ、目が合った瞬間に世界は変わった… ゴクロウサン、、、金庫の暗証番号、、、 時代を感じつつ、あの日あの時から、沼にハマっていった…
0投稿日: 2025.03.29
powered by ブクログ小さい頃、母はよく姉と私を牧場に連れて行ってくれた。 やぎやうさぎににんじんをあげたり、羊の毛をもふもふして癒されていた。 バター作り体験をしたり、牧場でしか楽しめないことをたくさんさせてくれた。 その中で母が一番好きだったのは、 サラブレッドを見にいくことだった。 サラブレッドは、競馬によく出る脚がスラっと長く美しい。光る毛並み、靡くたてがみ。 私もすごく好きな生き物である。 「お母さんね、馬の中でもサラブレッドが一番好き」 そう娘たちに話しかけているのに、母の瞳は目の前にいる馬だけを見ていた。 誰に聞いたのかは忘れたが、馬は人の感情が分かるらしい。敏感に感じ取って態度を変える。 母はすごく優しい人だ。 それを感じ取ったのか、サラブレッドは母の手を気持ちよさそうに受け入れ、鼻を撫でられていた。 馬はどこか神秘的である。 艶のある毛には品がある。触れたら暖かく生を感じる。 私にも分かる。 馬は美しく、どこか孤高の存在だということ。 「私の馬」は、一頭の黒い元競走馬に魅せられた主人公がその馬のために会社の組合金に手をつける物語だ。 主人公の優子は、造船所で何もない何も変わらない生活を送っている。過去のトラウマから言葉数が少ない彼女は、どこか異性間の関係性も苦手である。 そんな人生の中で一目惚れしたのは、 話さなくても心が通じ合った黒い馬「ストラーダ」 彼女と馬の関係性はまるで恋人だ。 言わなくてもお互いのことが分かる。お互いを好き合っている。 彼のために、彼女は誓う。 絶対彼から離れない。ストラーダは私のものだ。 この感想を読んだ貴方は、この愛をそんなわけないと笑うだろうか? 馬は人間の感情を理解する。 そんなはずはないと、2人を馬鹿にするだろうか? そうじゃない。 確かに愛はあるのだ。ちゃんと。 ただ忘れないでほしい。 愛は時として片方のエゴの元で進んでいるということを。 この物語はそんな言葉にでない愛の物語だ。 ラストまで読めば分かる。 みんな共感できる感情が絶対に生まれる。 そんな作品だった。
0投稿日: 2025.03.05
powered by ブクログ川村元気の小説を読むのは初めてでしたが、最後まで緊張感を保ち続ける一級のクライムサスペンスでありながら、本質的な(ディス)コミュニケーションの話でもあって、なかなか侮れない悲喜劇だった。ハードルは高そうですが、『百花』に続く自らによる映画化にも期待したい。
0投稿日: 2025.02.15
powered by ブクログまさに私の馬。 勤めている会社の組合のお金に手をつけて馬を飼う。さらに騎乗する人のウェア。馬とお揃いのバッグ。 会社にバレないか、と読者もドキドキしながら読み進む。一方で「私の馬」とのコミュニケーションに惹かれる。 しかし…もちろん危ない方向に動いていくわけで、その切迫感と、馬との優しいコミュニケーションの両面を描き分けている。馬は素敵な動物だからハマっちゃうんですかね。この小説では競馬引退して競技をする馬なんだけど、馬が気になるようになりました。
0投稿日: 2025.02.06
powered by ブクログ相手との信頼関係は、所詮独りよがりなのか。 読み進めていくほどに胸が苦しくなる。 平凡すぎる日々を淡々とこなすことだけを課された日常にずっと耐えて来た主人公が、横領という犯罪に手を染めていく過程は同情する部分もあり。 報われない結末ではあるが、妙にすっきりした納得の読後感。
6投稿日: 2025.01.06
powered by ブクログうーん。 終始おもしろそうではあった。 想像は超えてこない。 散りばめられたピースが少ないから、全部余裕で回収しきれちゃってグダったか。
3投稿日: 2025.01.05
powered by ブクログ「世界から猫が消えたなら」「四月になれば彼女は」など映像化された作品も多い川村元気さんの3年ぶりの長篇小説は、160ページという長編というにはあまりに短い作品です。が、著者の勢いが感じられる流れるように進んでいく作品でした。 第一印象は対象は人間と馬の違いはあるけれど、私は角田光代さんの「紙の月」を思い出させる作品だなと感じました。 更に馬という言葉では分かり合えない生き物に、魂を吸い込まれるようのめり込む一人の女性の感覚を丁寧に描いているなと感じました。 世俗的には馬というものに心を通わせるため、全てを注ぎ込み、更に会社でのお金を使い込むという、一線を越える事態にまで陥りつつも最後まで馬と魂を通わせていると信じきる主人公に、単になぜ?どうして?そんなことを信じるの?と言うのは簡単ですが、作中の彼女の現状を鑑みるとそう簡単ではありません。 「世界から猫が消えたなら」「四月になれば彼女は」の頃の川村元気さんの作品はとても読みやすく、失礼かもしれませんが、わかりやすかったと思います。 しかし「神曲」のあたりから、とても意味深く、簡単には読み解けない印象が強くなってきました。今回の作品も意地悪く言えば、好みでないと言う方も多いと感じました。 それでも私はこういう作品を読むことで、自分の読書力が増すと信じ、今後も読んでいきたいと思います。
2投稿日: 2025.01.01
powered by ブクログある意味川村作品らしい、純文学になりきれない純文学もどき小説。エンタメに徹すればもっと面白い作品にもなると思うが、何かカッコつけた文体も胡散臭くみえてしまう。今年最後に読む本ではなかった。
0投稿日: 2024.12.31
powered by ブクログ一つに執着することのリスクと歓喜を教えてくれる小説。 馬に惹かれる気持ちがとても間近に感じる不思議な小説でした。 馬って昔から人と過ごしていた歴史があるからこそ。 馬に魅力を感じるのかも知れませんね。 所有力が悪い方向に向いた結果がこの小説の伝えたいことなのでしょうか。 読む価値はある小説でした。 もう少し、この小説の世界に浸りたくなり馬に会いたくなりました。
19投稿日: 2024.12.24
powered by ブクログ題名だけで選んだ本。 競争馬と共に成長するような話を勝手に想像していたので、ちょっと違いました。 登場人物の行動には、ちょっと共感できなかったです‥ 自分を見てくれている!と感じるモノがあると人はどこまでも力をもらえるのかもしれません。高揚感があるし、それは凄く魅惑的な刺激。 でもそれが天国に駆け上がっていくのか、闇に転がり落ちているのか、その境界線が見えなくなってしまうのかもしれない。怖い。 心が寂しい時ほど、それが顕著なんだろうか‥
4投稿日: 2024.12.18
powered by ブクログ帯を読まずに読めばよかった。 最初から結末を想像してしまい残念… せめてラストの3頁前で終わっていればまだ救われた。
23投稿日: 2024.12.08
powered by ブクログなんだかスッキリしない。宮沢理恵主演の映画思い出す。勝手に懸想されたストラーダも可哀想。「動物には言葉なんて使わなくとも、コミュニケーションをとる能力があるってことだ。人間だってそれができたはずなんだが、もう無理だ。俺たちはすっかり洞察したり共感する能力をなくしてしまったからな」
1投稿日: 2024.12.07
powered by ブクログ川村さんの世界観は大好きなので、こちらもさっそく読んでみました。が、ちょっと物足らない感じがしたのは期待が大き過ぎたからでしょうか? また、「ドゥダッダ、ドゥダッダ」な擬音がうまく耳に入ってこず、それもややストレス。 ただ、日常に疲れた優子がストラーダへ傾倒していく様やだんだんそれが”狂気”になっていく描写はさすがだと思いました。 そしてそして、最後の一文が「ただの馬だった」で締めくくられたところはやや拍子抜け、、、ではないでしょうか? 、、、映像化はないかな。
4投稿日: 2024.11.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
言ってみればホストに入れ上げる様な感じで馬に入れ上げ会社の金を着服する話である。ただ、その馬との心情の通い合いが現実か妄想か迫真に迫る記述で埋め合わされお腹いっぱいになった。
0投稿日: 2024.11.19
powered by ブクログいつも面白く読む、川村元気氏だが、これは合わなかった… なんだろ?初めから誰かの作品をパクってるような雰囲気だし、内容も馬に狂った1人の女が会社のお金を横領してまで馬に費やす… なかなか共感の難しい話だった。 何かに夢中になる気持ちはわかるが、前後見境なく、中毒性溢れた話だった
2投稿日: 2024.11.03
powered by ブクログ主人公の夢か現実場面かわからなくなる。エッチな場面とか無ければ中学の教科書になりそう。結局馬はどう思っていたのかな?ホストが出てきたところは唐突すぎるけど意味があるんだろうな。あんまり面白くなかった。
2投稿日: 2024.10.05
powered by ブクログ馬の躍動する姿が目に浮かんでくるものの、読む前の本を手に取った時の期待を裏切っている。 馬の動きや躍動感などワクワクドキドキした感動が伝わってこない。 内容は素晴らしい❢ 引き込まれ、情景が目に浮かんでくる。
0投稿日: 2024.10.04
powered by ブクログ200頁にも満たない本書。あっという間に駆け抜けた。関わる人物は彼女をどう見ていたのだろう。愛馬は彼女をどう見ていたのだろう。
0投稿日: 2024.09.30
powered by ブクログ馬好きなので読んでみた 自分の馬か〜 ええなぁ〜って読み始めた なんか思ったのとだいぶ違った 横領しちゃう人には まさにこんな精神状態になる輩も きっといるんだろう 犯罪に手を染める人の 日常?を書きたかったのかな 個人的には読み終わったとき 動物はそんなこと思ってませんよ っていうブラックユーモアだな って思って 意地悪なのでちょっと笑っちゃった 星は3つ
0投稿日: 2024.09.01
