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幽囚の地
幽囚の地
マット・クエリ、ハリソン・クエリ、田辺千幸/早川書房
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総合評価

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  • 2368510番目の読書家のアイコン
    2368510番目の読書家
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    このレビューはネタバレを含みます。

    犬最高ダッシュ最高本。やっぱりどんな時でも一番の相棒はいっぬだよね!心霊写真や体験談を取り上げる時、聞いている側としては、その正体が何なのかを知りたいが、大体はっきりとした答えは提示されない。はっきりしないからこその、恐怖。幽霊なら、ここで死んだ人、未練がある人など色々な可能性を推測することは出来るが、もっと超自然的な精霊となると、もはやそれは人間が理解出来るかどうか、と言われると難しい。山の精霊、人間よりも古い、土地そのものという存在。日本で言う所の禁足地の扱いなのだろうか。そこに入植し、暮らしていく以上、精霊のルールに従わなくてはならない。だが、更に厳格なルールも存在していた。ここで最初の季節を体験した人間は、永遠にその土地に縛られる。旅行は可能だが、この土地を去ると明確に決意した時に、何故か死が訪れる。うわぁ、厳しいなぁ。春夏秋は対処可能だが、冬は例外的に、人を殺したことのある人間にのみ訪れる。結局の所、自分が奪った命には嫌でも向き合わななければならない、ということなのだろう。人を殺すという不自然極まりない行為、命の重み、殺された人間が味わった苦痛や絶望や、その他諸々の感情。それらに向き合うという困難。これを乗り越えた先に来た春には、池の光が一度も見えなかった。そして、夏が来ようとしている。通称、熊追いの季節。精霊は現れるのか、困難は一時的にも克服したのか。それはまた、一年を通してみないと分からない。まぁ、地球側からすれば人間が一番の侵略者な気もしなくもないが。面白かったかな。犬最高だしね、うん。

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    投稿日: 2025.07.06
  • 無題のアイコン
    無題
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    このレビューはネタバレを含みます。

    アメリカの雄大な自然の描写がとても美しかった。特にティートン山脈の描写は、読んでいる最中に深呼吸すれば冷たく澄んだ朝の空気が肺いっぱいに広がるようだった。 そんな美しい景色から生まれ落ちる季節ごとの怪異の中でも、特に衝撃を受けたのは夏のルール。遠雷のような悲鳴が聞こえ、やがて青々とした林の影から裸の男が立ち現われる。背後には黒い熊。男の背後を追っているもののなかなか距離が縮まらない。この時点で既に異様だ。必死に主人公たちに助けを求めるが、名前を聞いても一切返事をせず、ただ必死に助けを求めて徐々に近づいてくる様は本当に怖くて、悪夢としていつか夢に出てきそうだった。

    0
    投稿日: 2025.02.15
  • fukayanegiのアイコン
    fukayanegi
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    このレビューはネタバレを含みます。

    内容紹介を読む限りでは全くもってポケミスっぽくない。 自然を舞台にしたSFのような感じ。 でもまぁ読んでみるかと借りてみる。 話の屋台骨としてはやっぱりSFだと思う。 どちらかというとSFシリーズ(銀色背表紙のやつ)なんじゃとも思うけど、舞台はあくまで現代だしホラーっぽいところもあったりするので、そっちでもないだろってことなのかな。 とても面白かった。 「全然期待してなかったものが意外にも面白いと評価甘くなりがち(元々甘いですが)」現象ではあると思うし、ミステリを期待すると拍子抜けするようなものではある。 大きな事件めいたものがないこの設定で、ここまで読まされるのは自分でも不思議なくらい。 構成の妙、不穏の散りばめ方、ストーリーテリングの巧みさによるものということなんだろう。 アフガニスタンでの従軍経験によりPTSDを抱える主人公ハリーと妻のサーシャの交互語り。 都会の喧騒を離れ、アイダホの田舎の牧場に引っ越す。 程なくして数少ない隣人が訪れ、「この地には精霊が住んでいる」と告げる。 ハリーは「せっかく越してきたそばからそんな与太話してきてふざけんな」と怒り心頭で隣人を追い出す。 が、やはり隣人の言っていたように精霊の訪問を受けることに。 精霊との付き合い方にはルールがあり、春には池に光の玉が見えたら暖炉で火を起こさないといけない。 暖炉で火を起こせなかった場合、ドラムの音が響いてくるので、全部の窓を閉めて家から出てはいけない。 夏には全裸の男が局部を晒した状態で熊に襲われながら、助けを求め走ってくる。 その男はどちらにしろ熊に食われることになるので、銃で撃て。 という具合。 何というか言葉にすると陳腐で奇抜で意味不明で安っぽいのだが、この超自然な精霊の訪問に翻弄されつつ抗う主人公二人の物語が存外地に足ついていて面白い。 もちろん、秋、冬にも精霊との付き合い方があるのだが、それは物語が進むにつれて明らかになっていく。 「こんなのやってられるか」とばかりに精霊達へ一矢報いようとするのだが、、、という展開に、打ち勝てるの?やっぱりだめなの?と物語にのめり込む。 読んでみるもんだなと思った一冊。

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    投稿日: 2025.02.09
  • knk6のアイコン
    knk6
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    このレビューはネタバレを含みます。

    予想外に好みのお屋敷ものホラーだったので、その点では大満足した。条件は良いのに安い物件、美しい景色、前途洋々で愛し合っているけど若干不穏な要素のある主人公たち、大真面目に妙な警告をしてくる親切な隣人、呪われた逃げられないルール、これアメリカの農場でやってるお屋敷ものホラーだ!となって嬉しく一気に読めた。 あらすじが「いずれルールを破って報復される」ことを明かしてるので、いつやっちゃうんだ、どっちがどんなふうに、というはらはらも楽しかった。 秋の終盤が相当怖くて不気味で(夏から秋のルールが気色悪すぎて良い)、土地の呪いが二段構えで罠になってるあたりはすごく好きだっただけに、終盤、そういうふうに乗り越えちゃうのか...と好みのラインから外れていくのを眺めるテンションになってしまった。 完全に好みの問題で、精霊に蹂躙されて終わったらそれはそれでげっそりしただろうし、いやでももっと暗く終わると思ってたな...と終盤の雰囲気の違いにだいぶ未練がある。 トータル面白かったし、和訳のタイトルは途中でそういうことか!となったし、性質の悪さが段階的に明らかになる呪いも、それがえげつないだけに主人公達の土地に惹かれながら精霊に憤る心理も良くてぐいぐい読めたので、作者の次回作は楽しみ。

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    投稿日: 2024.08.12