
総合評価
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- ま鴨"powered by"
山手線が転生して加速器になりました。タイトルそのまんまの内容の表題作をはじめとした、同じ世界線を共有する短編集。ちなみに、中央線はリニアコライダーに転生してます(笑) タイトルからして直球王道どストレートのバカSFで、実際にこの山手線と中央線が主人公を務める2編は実に本寸法、あっぱれなバカSFです。が、この2編はいわば”前座”です。トリを務めるのは、ある種のポストアポカリプスの風景を描き出す、この短編集を貫く世界観そのものです。 世界中に蔓延した激烈な感染症から逃れるため、人類は都市を捨てた。生き残った人々は山間部や離島などの人口密度が低い地域に移住し、主要インフラは遠隔操作ロボットとドローンに任せた結果、文明は問題なく維持されることがわかり、公共交通機関は遺棄され、高層ビル群は廃材とジャングルの山と化した。そんな状況下、山手線と中央線の遺構を加速器として活用することが決定され・・・ というのが、この世界の”フリ”です。 執筆時期に鑑みて、コロナ禍からインスピレーションを得た世界観であることはほぼ間違い無いでしょう。コロナ禍をベースにしたSFは数々書かれていますが、この作品の特徴は、全作品を包み込む温かい眼差し。生き残った者も、捨てられた物/者も、それぞれに辛い記憶と悔恨を胸に刻み、それでもなんとか生きてこの世の中を良くしようと、試行錯誤を続けています。 一見あっけらかんとして楽しい作品ばかりですが、いったん滅びかけた社会でより良い生き方を求めて足掻き続ける者/物の姿に、鴨は久しぶりにSFならではの上質な”Sence of Wonder"を見た思いがしました。 SF初心者でもとっつきやすいライトな作風ですが、実はかなり骨太な作品です。SF者に限らず、あらゆる読書子にオススメ!
0投稿日: 2025.06.18 - MSTK"powered by"
《目次》 「山手線が転生して加速器になりました。」 「未来人観光客がいっこうにやってこない50の理由」 「不可能旅行者の冒険――けっして行けない場所へ、お連れします」 「山手線が加速器に転生して一年がすぎました。」 「ひとりぼっちの都会人」 「みんな、どこにいるんだ」 「総論 経済学者の目からみた人類史」
0投稿日: 2025.04.07 - たまさく"powered by"
「山手線が転生して加速器になりました」 「未来人観光客がいっこうにやってこない50の理由」 「不可能旅行社の冒険 -けっして行けない場所へ、お連れします」 「山手線が転生して一年がすぎました。」 「ひとりぼっちの都会人」 「みんな、どこにいるんだ」 「総論 経済学者の目からみた人類史」 「付録 作中年表」
7投稿日: 2025.03.25 - chie_e"powered by"
25/02/23読了 パンデミックで都市生活が無くなったあとの世界を舞台にした短編集。 加速器に転生した山手線がかわいい。未来人観光客がこない理由も、長老の話もミダコの話もよかった。
0投稿日: 2025.02.23 - さえ"powered by"
タイトル買いでした。 蔓延する超強力ウイルスのパンデミック。都市文明を放棄した人類は全てリモートで生きている…。 山手線が転生して、加速器になって、しかも意識まであって、言葉もしゃべれて、夏休みに憧れる山手線。おもしろい!! 「ひとりぼっちの都会人」が特に好きでした。これ程極端ではないにしろ…。コロナウイルスによって人生がガラッと変わってしまった方々、計画が狂ってしまった方々、多くの子供たちも不自由な生活を強いられた日々。 実は、わが息子もコロナきっかけで不登校になってしまったのだ。 その事を思うと、辛くなる…。 本当に辛い日々だったことを思い出す。
13投稿日: 2025.02.13 - ともりぶ"powered by"
パンデミック後のSF。山手線を加速器として使うタイトル作が一番好き。山手線が夏休みに憧れたり拗ねたりするのがかわいくて可笑しい。
0投稿日: 2025.01.25 - 南條 義徳"powered by"
タイトルに惹かれて所謂『ジャケ買い』。 仮想と現実がテーマ。 この本の中にあるように、仮想が現実のようになったとき、人の幸福とは一体何なのかを問われた気がした。仮想でなければ発揮できなかった能力を持つ人にも、現実の世界でありのまま生きろといえるのか。或いはその逆はどうか。 答えの出ない問いを前にしながらも、山手線の明るさと中央線の純情さに救われた気がした。
0投稿日: 2025.01.14 - REM"powered by"
2024-11-24 タイトルからバカSFかと思っていたが、なかなかどうして。 知への信頼と憧憬に満ち溢れた、壮大にして希望に満ちた短編群。決して幸せなだけでは無いところにも矜恃を感じる。 そして数多くのイースターエッグが嬉しい。映画、小説、物理学者、数学者。こういう遊び心もたまりません。
0投稿日: 2024.11.24 - ひ"powered by"
山手線が加速器に!というだけでジャケ買いならぬタイトル買い。 パンデミック後の世界、すごいことになってる…
0投稿日: 2024.10.18 - 魚雷屋あすりん"powered by"
前に出版された『シュレーディンガーの少女』が良かったので、最新作のこちらの短編集も読んでみた。 先に巻末付録の「作中年表」を読むことをおすすめする。何の説明もなしに「撤退宣言」とか「モラヴェック」といった言葉が出てくる。この年表に基づいた、人類が都市を放棄して、リモート暮らす世界を描いている。つまりは、連作短編集のような体裁となっている。いや連作短編集と言っていいのだろう。 表題作は、鉄道としては廃止された山手線が円形加速器に再生され、さらに自意識を与えられるという話。加えて中央線が直線加速器になっている。さらにその1年後を描いた一編もあり、アイディアとしては秀逸。
47投稿日: 2024.10.18 - グゥ"powered by"
完全にタイトル買い。おもしろおかしく楽しい物語かなと思っていたら、ただ単にそれだけではなかった。 ちなみに山手線が転生した加速器の正式名称はミューオンリングコライダー。本文中の説明をそのまま使わせてもらうと、衝突(コリジョン)を起こすからコライダーであり、山手線の環状を転生させた衝突型加速器だからリングコライダー。加速して衝突させるのは点のように小さな荷電粒子で、この粒子を電車の車両のようなかたまりにして列車のように並べたものがビーム。そのビームは加速空洞を通るたびに電場で加速され、二本のレールをパイプにしたものの中をそれぞれ反対方向に何度も回し、限りなく光に近い速さまで加速してから衝突させる。というものらしいのだが、専門的なことは全く分からない。 そして、意識もあるので喋るし考える。過去(山手線時代)の記憶もあってストライキまでしてしまう。中央線まで転生しており両者の掛け合いは面白く、人とのやりとりもほのぼのとして可愛らしいところもある。 こんな感じで始まるのだが、実のところ地球の生命滅亡の危機があったり、超強力ウィルスのパンデミックを経た地球の変化だったり、介護と仮想空間の未来だったり、地球外知性との遭遇だったりとなかなかに色々と味わえる七篇の短編集。ほぼ全編がパンデミック後の世界のことなので、現実世界でも経験したコロナ渦中から現在までを連想してしまう。もしも都市文明の放棄がここまで進んでいたら今ともまた違った世界になっていたのだろうか? さらに巻末には宇宙開闢から宇宙終焉までの年表が付いており、読み終えた後に見てみると作中のそれぞれの出来事がどう繋がるのか分かる。ちょっと切なかったりワクワクしたりととても楽しめた。
22投稿日: 2024.09.06 - TaHi"powered by"
松崎有理「山手線が転生して加速器になりました。」読了。近未来SF短編。科学&SF好きには堪らない蘊蓄や展開があり大きく心を揺さぶられた。最高に面白かった!身近な山手線から始まり時空を超越した世界に各お話が絶妙に絡み合う。AI、加速器、タイムマシン、ダークマター、ブラックホール、てんこ盛り!
5投稿日: 2024.08.18 - mui-mui"powered by"
表題作は、パンデミックにより都市が放棄され、東京から人がいなくなり無用となった山手線を線形加速器に転用しちゃったお話。本としては同じ歴史を共有するシェアワールドSF短編集という感じ。どのお話も人々は地方に分散し、リモートコントロールのロボットを使ったり、仮想空間で仕事をしてる。総じてみんな楽しそう。 難しい描写は少ないので手軽に読めますが、それでもSFなので情報量は多い。作品全体で歴史線がしっかりしているので、今後も活用して作品が出てくるといいなと思う。
24投稿日: 2024.08.17 - freddy"powered by"
タイトル見て即買いしてしまった。 転生前の記憶を持ちながら加速器になった山手線。パンデミックで人がいなくなった都市。VRで作り上げた空間で繰り広げる空想。タイトルの通りぶっ飛び設定が詰まっていて物理好きに刺さる作品だった。どんな風に考えたらこの世界観に辿り着くんだろう。 あとは献辞の時点でニヤつける。
1投稿日: 2024.08.13 - NORIS"powered by"
SF短編の詰め合わせ。出たらかならず買うと決めてる作家の一人。 とある感染症のパンデミックを経て人類が都市文明を放棄してリモートで暮らすようになった世界を舞台にした連作短編(「小説宝石」に発表された5編+書き下ろし2編+付録の書き下ろし作中年表)で、文庫オリジナルというハンディさがうれしい。さっそく移動のお伴に。 巻頭言で言及されているスティーヴン・ウェッブのサイエンス・エンターテイメント「広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由: フェルミのパラドックス」「広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由」(青土社)へのオマージュにあふれた一冊で、読み始めればぐっと引き込まれ、さまざまなテーマに沿ったどの話も科学知識(素粒子、ブラックホール、フェルミ・パラドクスからダークマターまで)にほどよく人情やユーモア、楽しいギミックが散りばめられていておもしろく、期待に違わぬ松崎有理ワールドを堪能した。最後に年表をながめたら最初から読み返さずにはいられない。 コロナ禍の最中にはもちろん興味深く読んだ<パンデミックに伴い人類が都市文明を捨てたリモート世界>という設定は一息ついたいまも古びることはなく、全編どれもよかったけれど、仮想空間こそが生きる場所となった人々が切ない「不可能旅行社の冒険」とそれぞれに孤独な大人たちと孤独な子どもの邂逅をえがく「ひとりぼっちの都会人」が特に好き。
3投稿日: 2024.08.12