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資源と経済の世界地図
資源と経済の世界地図
鈴木一人/PHP研究所
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総合評価

7件)
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     日本が置かれている経済安全保障の概要を知っておくために読み始めた。ESと経済安全保障についての考え方を知るためにはタイパの良い本。経済を用いた戦いの具体例は2章と3章に集約されている。  2章の中東に関しては予備知識がほぼ無かったので最初は難しかったが、エネルギーを欲しい日本と日本の貿易相手のアメリカと板挟みにされてるという話に終着している。ただ、サハリン2も継続するらしいので、なんだかんだアメリカも許してくれそう。  3章については半導体について。こちらは結構予備知識があったので理解しやすかった。簡単に言えば半導体画ある限りアメリカは台湾も日本も守るしかないし、チャイナは技術で世界一を獲れない。  オランダのASMLという会社は恥ずかしながら本書で初めて知った。調べてみるとこの会社の技術にも日本の技術が必要不可欠らしい。半導体の生産量が少なくなって覇権を南朝鮮に取られたと悲観する人間を多く見るが、そういった方々は思考が短絡的すぎる。半導体の唯一無二のスキルは日本が握っている。 本の結論としては、「大国は力を持っているが秩序を守る責任を果たしていない、日本は国際秩序守るために努力し続けよ。」と言っている。だがそれは力あるものだけが可能な生き方ではないかと思う。力がない我々が鍛えるべきは筋肉よりも技術力、強い者とのコミュニケーション能力ではないかな。

    5
    投稿日: 2025.11.14
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    ロシアのウクライナ侵攻やアメリカの自国優先主義により、国際秩序は大きく揺らいでいる。エネルギーや資源の確保をめぐる競争が激化し、日本の物価高や経済不安もその影響の中にある。本書は、そうした世界の動きを「地経学」という視点から読み解き、資源・経済・安全保障が一体化している現実を示している。中東や半導体問題など具体的な事例を通して、国際社会の相互依存の危うさを実感した。終章の対談では、今後の世界秩序を見通すための思考の枠組みが提示されており、不安な時代を生きるうえでの指針となった。

    0
    投稿日: 2025.10.13
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    コロナ禍からここ3年くらい、世界情勢の生活への影響を強く実感する。物価高もそうだし、半導体問題、円安やそれによるインバウンド需要。もっと具体的に言えば、街は外国人ばかりで飲食店価格もガソリン代も高騰、米不足。 本書で取り上げるのは主にウクライナ情勢やイスラエル情勢による経済影響。キーとするのはES(エコノミック・ステイトクラフト)だが、これは経済的な手段による政治的な外交手段だ。市場が大きくレアな資源も有する中国は、時々、政治的理由で輸出入を制限して嫌がらせする。 ー 2022年以降の物価高は、侵攻を受けているウクライナが世界で消費される小麦の3分の1を生産しており、ロシアによる黒海封鎖などで小麦の輸出を阻まれたことなどから小麦の価格が高騰したことが引き金となっている。戦争が、国際経済から市民の家計にまで影響を及ぼすことを改めて示していると言えよう。また、同じ時期に新型コロナによるロックダウンや経済活動の停滞が終わり、急な消費の拡大が起きたことによる。一方、原油高に関しては、同じくロシアによるウクライナ侵攻が契機だが、侵攻開始直後から西側諸国が産油国であり、天然ガスの産出国であるロシアに対して経済制裁を加えたことが影響している。これまでロシアから資源を輸入していた国のうち、制裁に参加した国がロシアからの輸入を停止した。不足分を中東等で産出される資源で埋めようとしたために需要が高まり、原油価格が高騰しているのだ。ロシア産原油は価格が下落したが、その分、中国やインドなど制裁に参加していない国が安くロシア産原油を購入できる状態となっている。 ロシアに対する経済制裁は、制裁する側にもデメリットが大きいばかりか、その狙いはあまり達せられているとも言えない。北朝鮮が未だにミサイルを飛ばし、国連が戦争抑止に効力がないように、複雑化した世界において、公正な機関が平和的に解決する手段は、ほぼ期待ができない。結局、力の原理で決しているに過ぎない。だからこそアメリカが強く、中国が脅威なのだ。 ー 習近平政権の中国が「千人計画」と称する研究者の引き抜きを行なったり、中国人留学生を大量にアメリカなどに送り込んで、機徴な技術をマスターさせるといったことに対する懸念が高まっている。「千人計画」に対しては学者や技術者にも職業選択の自由があって、個人の移動を妨げることは困難である。また、大学経営上、中国人留学生が不可であったり、中国からの研究資金が重要な役割を果たしている場合が多く、安全保障上のリスクはありながらも、なかなか管理できずにきた。 勉強のため、読んでおきたい、頭に入れておきたい本だ。

    83
    投稿日: 2025.08.30
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    ES economic statecraft とは、 経済活動を通じて政治的な目的を達成しようとすること。つまり、政治のために経済を使った他国への攻撃。 これを防ぐために経済安全保障がある。 攻めと守り。 経済安全保障のためには、 自立性と不可欠性を高める事が重要。 他国に依存しすぎると、それをとりあげる交渉をされたときに弱くなる。 グローバルサプライチェーンにおいてなくてはならない存在となることで、攻撃されづらくなる。 これまでは、各国が得意なことに特化して お互いに依存しあうことが暗黙の了解であり、 政治と経済は分離されていた。 この関係が崩れてしまった今、経済安全保障が必要となる。 これって、政治の世界だけでなく、いろんな応用が効くのではないか。

    3
    投稿日: 2025.03.03
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    読みやすくわかりやすい地経学。 ES(economic state craft)に基づき、だろう、はずだという思い込みではなくどういうロジックが各国家の行動背景にあるのかを読み解くことが重要。

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    投稿日: 2024.09.30
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    【読書レビュー 654】 鈴木一人『資源と経済の世界地図』PHP研究所、2024年 経済安全保障について。以下、本書より。 日本唯一の同盟国であり、価値と規範を共有するはずのアメリカがリベラル国際秩序に背を向けている中で、同志国を見つけること自体が困難な状況にある。 そんな中で日本が取り得る選択肢は、リベラル国際秩序を共有すべき国々との連携が難しくとも、その価値と規範を守り、維持していく姿勢を常に見せ続けていくことであろう。ポピュリズムの嵐が永遠に続くとは考えにくく、「自国ファースト主義」の国々が主張し合う国際秩序は持続的なものにはなりにくい。 グローバル化が進む世界において、自国の利益だけを前面に出し、国際協調を忌避しながら国家間関係を維持することは容易ではない。現在の対立的で自国中心的な国際秩序がいつの日か終わりを告げる時もくる。 そうなれば国際秩序の再構築の契機が訪れ、国際秩序の中核をなす価値や規範を誰が提供するのか、ということが問われることになるだろう。その時のために、日本はリベラルな価値と規範を維持し、国際社会に訴え続けていくことが必要になるのではないだろうか。 現在のリベラル国際秩序は、すでにその価値や規範にコミットしない国々が幅を利かせ、現在の状態をそのまま維持することはほぼ不可能である。しかし、リベラル国際秩序が一度崩壊しても、それを作り直す機会はいずれやってくる。そこでリーダーシップを発揮し、先頭に立って新たなリベラル国際秩序を構築していく役割を日本は担っていると言えよう。 ポスト冷戦の30年を通じて日本は外交政策の選択肢を増やし、価値観を基礎に据えた外交戦略を展開してきた。そうして蓄えてきた外交的能力を来るべき時に備えて磨いていくことこそが「リベラル国際秩序を担う」ということになるのであろう。

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    投稿日: 2024.09.13
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    現在の経済安全保障課題が忖度無く分かり易い言葉で説明されている。読みやすい。旧ソ連崩壊以降、「市場経済が民主化を招く」という思い込みが間違いの始まり。リーマン以降、中国の「国家資本主義」も頼もしく感じたものだが、、、。資源のない貿易立国日本、今となっては仕方がない。米中両国への依存は解消不可能。どちらからも儲けさせていただきましょう。まいど!

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    投稿日: 2024.08.20