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完本 神坐す山の物語
完本 神坐す山の物語
浅田次郎/双葉社
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総合評価

15件)
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    Pennybe
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    ★4.2 怖いのに、美しい。 恐ろしいのに、どこか懐かしい。 代々神官の家系に生きる者として、血肉を通して描き出した連作短編集。 筆者の母系実家は東京都奥多摩の御岳山(みたけさん)の宮司を務めており、怪談や不思議譚が語り継がれてきた。 一つひとつの怪異は派手に恐怖を煽るものではない。 むしろ厳か。やけに静か。 「怖いから忘れたい」ではなく、 「怖いからこそ忘れずに守ってきた」。 日本の山岳信仰や自然への畏怖が、そのまま人の物語と重なっている。 継承される語り、思い出として語られる神域の怪異。 それらが少しずつ地層のように積み重なっていく様は、まるで現代版『遠野物語』のようだ。 完本版で追加された関東大震災や伊勢湾台風といった史実を絡めた一編も、自然と人と神との距離を改めて問い直す力を持っている。 いわゆるエンタメ怪談とは一線を画す、「神域の物語」としての幽玄さ。 人の美しさや弱さへの慈しみが息づかいを感じた。 と同時に、残すべき畏怖なのだと、深く腑に落ちる思いだった。

    27
    投稿日: 2025.06.27
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    mr.shinyapapa
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    現世から離れた霊山・御嶽山 凛とした空気に覆われて緑の中にたたずまう神官屋敷という世界観が伝わってきた。その御嶽山で起こった不思議な物語の短編集、子供達が布団の中で恐る恐る聞き入る夜話・寝物語で進んでいく流れも良かった。時代背景やどこか神霊が存在するかのような展開と、結末や結果全てえを伝えるでなく、読者の想像力が膨らんでいくような印象を受けた。随所に荘厳なイメージを受ける不思議な物語であった。

    9
    投稿日: 2025.06.27
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    fiona
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    御嶽山の神主の家系の出である母をもつ主人公が、子供の頃の里帰りの際に母や伯父や伯母から寝物語等で聞いたというていで始まる、不思議な話や怖い話を集めた連作短編集。 大好きな浅田次郎さんの小説と言う事で、急いで読んだりせず、ゆっくり丁寧に時間をかけて味わって読んだ。 どの話も何処かで寂しく悲しみが漂うのだけど、主人公の中に脈々と流れる一族の血筋と温かみみたいなものを感じられてとても良かった。 また好きな作品が一つ増えた。

    1
    投稿日: 2025.03.08
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    Saya hei
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    どこまでが本当の話かはわからないが、戦前からの御岳山における生活等が垣間見れ、自然や色彩がとても美しい文章で表現されている。 登山で訪れたことはあるが、現在とはだいぶ様子が異なり、厳しい環境だったことが窺える。 御岳山に宿泊で再訪したい。

    3
    投稿日: 2025.03.02
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    かはたれ特急
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    青梅の御嶽山、筆者の母の生家は山頂の集落の宿坊。夏休み集まった従兄弟たちに聞かせる叔母の寝物語。 世俗を超越した隔てられた異界ならではの数々のエピソード。 どこまでが創作か分からないが、浅田次郎の作品のファンタジー調な部分は、この幼児体験が影響しているのだろう。

    1
    投稿日: 2025.01.22
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    ブーレ
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    完本、とあるのは様々な文庫や雑誌に掲載したものを集めたからですね。 不便な山の上にある知る人ぞ知る神社での奇怪な物語。叔母さんが少女の頃に体験したことを小さい子供達に伝える形。しかもそのうちの一人の子はちゃんと見えてしまう霊力がある。圧巻は狐が取り憑いた少女たちの狐落とし。 大騒ぎになりながら落とすこともあれば、寂しい結末を迎えることもある。 文章自体が浅田次郎の面目躍如。おどろおどろしい雰囲気を少し古めかしい日本語で記述するので引き込まれる。

    0
    投稿日: 2025.01.08
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    jh3jp
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    不思議でちょっと怖い世界を覗いてしまったような気がする。これは実話なのか?それとも浅田次郎の広く深く豊かに広がっていく心から溢れ出した物語りなのだろうか。 当方は東京在中なので、聞き馴染みのある地名や路線が話に出てくるのも楽しく、何回もハイキングに行ったことのある山の全く別の側面を見た。次に行くときは今までとは別の心持ちで歩くことになるだろう。

    0
    投稿日: 2024.12.12
  • bauasanoのアイコン
    bauasano
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    10年ほど前に出版されたものを私は読んだのだが、今回は新たな書き下ろしの短編を加えて完本として出版された。 東京都の奥多摩の霊山・御嶽山の上にある神官屋敷は、浅田氏の母親の実家なのだそうだ。 浅田氏が少年だった頃、従兄弟やはとこ達と夏休みのほとんどをこちらの屋敷で過ごしたとのことだ。 就寝前、布団に横になった子供の枕元で、美しい伯母から怪談めいた夜語りを聞かされるのが常だった。 怖い話なのだが、少年少女達は不思議な世界へ引き込まれていた。 これらの話は、太古から神主に語り継がれたもので、浅田氏はこれに脚色を加えて短編集としたとある。 浅田氏のおじさん、おばさんから聞いた話の時代は、明治の頃から戦前の話のようだが、現在の御嶽山の環境とは大違いのような気がする。 神官屋敷の周辺には宿坊としての屋敷が30軒程あったようだが、麓からは険しい山道となっていて、この地域は隔絶されたような集落だった印象を受けた。 この物語の怖いところは、神の所業にあるといっても良い。 神社とお寺の怖さを比較すると、圧倒的に神社の方が怖さは勝ると浅田氏は語っている。 お寺やお墓の怖さには、人間そのものに関わった恐怖だが、神社には八百万の神(やおよろずのかみ)がぞんざいし、その数と種類の多さから様々な異界が生じているためだという。 そういえば他宗教には崇める「実像」が存在するが、日本の神には具体的な「像」というものが存在せず、自然を含めた万物が神というところにあるからだろうか⋯。 山、川、海、岩、大樹、小動物など、あらゆるものが神となる信仰は珍しいものだろう。 この一冊、「日本の言葉」と「日本の自然美」を愛でる浅田氏にとっては真骨頂の内容が盛り込まれているような気がした。

    1
    投稿日: 2024.12.03
  • Tatsuyuriのアイコン
    Tatsuyuri
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    著者の母方の実家が奥多摩の神社ということで、幼い頃から目には見えないけどいる何か、存在に触れながら育ってきたことが窺える。フィクションとノンフィクションがが混ざったような山にまつわる短編集。怪異譚のようだけど、全く怖くない、どこか懐かしいような感じ。

    10
    投稿日: 2024.12.02
  • hosinotukiのアイコン
    hosinotuki
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    このレビューはネタバレを含みます。

    連作短編集 神坐す山,御嶽山の武蔵御嶽神社を実家に持つ浅田氏.子供の頃,親戚の子供らが集まっているところに伯母の昔語り.その語り口そのままに少し怖い話が伝えられていく.峻厳な山の香が漂う中での思い出の中に見え隠れする一族の歴史が興味深い.

    1
    投稿日: 2024.11.08
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    flag1696
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    奥多摩にある御嶽神社の宿坊に集まった夏休み中の子供たち(従兄弟、従姉妹)に明治生まれの伯母が寝物語を話して聞かせる形で神社の宮司だった主人公の曽祖父や祖父に纏わる神座す山のエピソードが語られる。久しぶりの浅田節に思わず泣かされた短編集でした。それにしても著者の作品にはいつもながら美しい女性ばかりが登場します。

    1
    投稿日: 2024.10.20
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    ゆっり
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    表紙とキャッチコピーに惹かれて衝動買いしました。読んでみると少し不思議で、少し怖い話でどれも大変面白かったです。こういう不思議な現象と人間が共生していた時代があったんだな…としみじみ感じました。いつか御山に行ってお参りしてみたいです。 普段は静かな環境で読書しますが、無性に雅楽が聴きたくなりBGMとして流して読みました。とってもマッチして雰囲気が出るのでオススメです。

    1
    投稿日: 2024.10.05
  • ともこ@うさぎのアイコン
    ともこ@うさぎ
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    子どもの頃多摩地区に住んでいたので、御嶽山には遠足で行った記憶がある。 その山が神様の住まう山とは知らなかった。 どの話も非常に興味深く面白く読んだ。 小説ではあるが民俗学的な要素が満ちている。 読み終わるのが惜しいと感じながら、一つひとつ大切に読んだ。 あらためて御嶽山へ行ってみたくなった。

    1
    投稿日: 2024.08.24
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    ichiroh0157
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    八王子児の小生は御嶽山には登ったこともあり麓のこともよく分かる。本書を読んでいると江戸から明治、大正昭和へと時代の移り変わりを感じてしまう。この頃の子どもの楽しみは父や母、祖父、祖母から寝もの物語で怖い話しを聞くのが楽しみであったろう。本書はそれがぎゅう詰めなった一冊だ。楽しく読み終えた!

    1
    投稿日: 2024.07.13
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    ころも
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    どのお話もほんのり怖くて切ない。 とくに「兵隊の宿」。 どうかどうか、みなさん安らかにと願わずにはいられない。

    0
    投稿日: 2024.07.07