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サイバースペースの地政学
サイバースペースの地政学
小宮山功一朗、小泉悠/早川書房
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総合評価

15件)
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    通信技術に関わる仕事をする中で最近セキュリティが注目されている。すこし幅広くいろんな角度から知識を得たいと思っていたところに遭遇した本。タイトルを見てこれは読んでみようとなった次第 ちょっと物足りない。地政学とタイトルをつけるなら地理的要因に関する戦略で国家戦略の経済や技術とどう関連するのか、陸続きの国と海に囲まれた国での違いなどはもう少し詳細は議論があるとよいと感じた。海底ケーブルを巡る各国の状況などや現地の見聞情報、歴史的な説明はとても参考になったが、どういう国家のポジショニングにつながるか、覇権争いなどについてもっと考察の記述があると良い。それでも海底ケーブルを巡る企業の話とサーバーセンターの土地勘は技術者、経営者の人に多少なり参考になる情報提供だと思う。サーバーの土地が不動産に影響するというところは投資家には常識なのかもしれない。この本の情報をもとにアメリカ、中国、ロシアについて海底ケーブルに着目すると有線系通信の戦略議論は考察できそう。ヨーロッパなども含めて無線通信方もどうなるのか考えるとより通信技術に対しての地政学として考えていくことができそうだと思えた。 ヨーロッパでも島国と陸続きの国で無線がどう意味づけられていくのかは、ちょっと好奇心をそそる。 データの流通においてネットワークの重心(グラビティ)に着目した話は、今後のネットワークセキュリティで何(What)を保護するのかという観点とどこ(Where)を保護するのという観点が、セキュリティを考慮する設計で重要と理解できた。あまりセキュリティには精通しておらず疎かったのでよい知識獲得の機会だったと思う。 もっとセキュリティについての知識は学んでいこうっと。

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    投稿日: 2025.11.16
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    サイバースペース→データセンター。データセンターの設置にはデータの独立性を担保する地政学上の特性の考慮が必要。海底ケーブル敷設市場と戦争等の有事の際にどうリスクになり得るかといった観点は考えてもみなかったので新鮮な話題であった。米中のケーブルをめぐる覇権争い。地政学は運命論的であるが、サイバースペースにおける地政学は無線通信の発見のような技術的ブレイクスルーによって人の手によってある程度コントロールすることができる。

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    投稿日: 2025.07.01
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    普段日常生活の中でさまざまなデータをやりとりするが、その実体のないデータを具体的な「モノ」に置き換えて考えることはない。あるいはサイバースペースという概念を知っていても、そこに可能性の広がりを見いだす文脈はあれど、空間的・物理的な制約を見出すことは少ない。 本書は、データ・通信の総体を、「データセンター」、あるいは「海底ケーブル」のような現実との結節点を用いて見える化した上で、その地理的(戦略的)条件について考える本。 まず着眼点がいい。あらゆるデータはデータセンターなくしては運用できず、またそのデータセンターが置かれる場所には一定の制約があることが語られ、このことはITやAIの可能性を語っていく上でその土台となる話であり、まさに「地に足をつける」ための議論だ。 データセンターの集約化、外資の参入状況、警備の多寡、あるいはデータの連絡網である海底ケーブルの脆弱性、ケーブルシップの数的制約...等、目に見えないデータと、現実的な運用実態との結節についての説明は説得的だ。特に海底ケーブルが「庭のホースくらい」の太さしかないことには驚いた。 全編を通してアカデミックな説明よりは少し旅行記じみたくだけた語り口で、著者ふたりの書きぶりも新書ナイズされていて読みやすかった。いわゆる地政学はいわば運命論的だが、サイバースペースにかかる議論は変更可能という話も(運命的な地政学が好きではないので)ふんふんと頷いた

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    投稿日: 2025.05.27
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    読了。 ン十年前、地政学を志して地理学科へ行き、教授たちから日本の地理学において地政学はタブーで封印されている、と言われて学業やる気なくしたワタクシとしては、ここのところの地政学ブームには戸惑いを隠せない。 封印された理由がわかるだけに、気軽な気持ちで学問と政治と軍事を交わらせてはいけないと思うからである。 今の地政学ブームはそういうことをしっかり理解した上でのものではなく、単に使い勝手のいい単語として使っているように感じて、そういう世の中に危機感を覚えていたりする。 というのはさておき。 「サイバースペース」という大地と最もかけ離れたところにある仕組みと「地政学」の組み合わせ、どういうことかと興味深く読んだ。 データセンター、海底ケーブル、通信基地など、サイバースペースといえどリアルの「ブツ」と離れて存在はできず、そしてリアルなブツがあるのならそれは地理学の範疇。その視点、さすがだなあと思った次第。 そしてネットワークに支えられた今の時代、社会、生活を壊すには、なにも核はいらない、という事実に改めて気づき、恐ろしくなった。 現代を生きる人々必読の書かもしれない。 なにより、サイバースペースを語るなら千葉から、という一文。書けるのはハヤカワさんだけだよねとニヤリとしてしまったのだった。 『ニューロマンサー』読み直したくなった春のひとときでした。

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    投稿日: 2025.05.10
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    いつも使っているネットはどんな仕組みで動いているのか。 より深掘りしていくと、危うさが見えてくる。 LANは無線も有線も同じ物理的な弱点を持っている。

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    投稿日: 2025.05.07
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    職場同僚の紹介。 Audibleにて。 サイバースペースは仮想世界のはなしとして、どこかふわふわと世界で唯一のフラットで境界のないものを想像してしまいがちだ。 この本ではサイバースペースを実現するための最重要物理層である、データセンターおよび海底ケーブルに着目し、実際に現地で取材した内容をもとに、そのようなイメージを払拭し、サイバースペースにおける地政学を講じている。 日頃デジタル技術を利用するときには意識しないが、堅実にその便利さを支えてくれているインフラに気づかせてくれるとともに、その危なっかしさを学ぶこともできる学びの多い本だった。

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    投稿日: 2025.02.02
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    それこそハヤカワ文庫から出ていた『100年予測』だっただろうか。 未来の戦争は、宇宙空間とサイバー空間の中が主戦場になる。 あっという間に決着がついてしまうだろう、といった話。 本書を読みながら、そんなことを思い出した。 ただ、自分が思っていた以上に、この問題、「物質」に縛られる側面があるようだ。 例えばデータセンター。 大都市から距離があると、通信のタイムラグが生まれるため、大都市近郊に設けられることが多いという。 大量の電力を食うため、送電などのインフラが整っている必要もある。 現在は衛星を使った無線通信などの新しい技術も開発されたとはいえ、海底ケーブルも通信には必要なのだとか。 そうすると、大陸に向けケーブルを通しやすく、陸揚げポイントに適した地形にある程度制約があるため、明治大正の頃に敷設された場所が現在でも重要な場所となるとのこと。 海底ケーブルの維持をする「ケーブルシップ」の活動については本書で初めて知った。 ケーブルは船の錨が当たったりすれば簡単に切れる、もろいものなのだそうだ。 ひとたび切れてしまえば、海中ロボットを使い、どこで切れているかを突き止め、つなぎなおすという超高難度なUFOキャッチャーのような作業をして直していく。 すごい技術だと思うし、このケーブルシップが能登の震災などの大災害時に、海から通信を修復すべく活躍しているという話は面白かった。 本の後半は、「地政学」と銘打つ本にあるような話。 具体的には中国が技術力と資金力でシェアを高めていることや、ロシア政府がどのようにネット監視体制を作っていったかなどだった。 本書からは知らなかったことを学ぶことができたのだが、この辺りを読んでいると、どうも気持ちが沈んでくる。

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    投稿日: 2025.01.28
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     本書によると、「サイバースペース」という言葉は、SF作家ウィリアム・ギブソンが発明したもので、物理空間との関係性の問題が成立当初から内包していたという。サイバー攻撃で特に注意しなければならないのが海底ケーブルで、これが破壊されてしまうと、インターネットに混乱をもたらす。また本書でエストニアについて言及されるが、ソ連崩壊後、エストニアは国家主権を確立するために、ITに力をいれた。

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    投稿日: 2024.12.31
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    確かに、いまや空気のようになってしまっているインターネット空間(≒サイバースペース)だが、どこでどうつながっていて、どういうルートで目的のサーバにたどり着くのか全くわからない。、、が、日本から外国に繋ぐ以上、空か海しかないわけで、その大半を占める「海底ケーブル」の脆弱性について語られていました。 一方、昨今の地震で「スターリンク」が活躍していることから、人工衛星経由のインターネット接続も話題ですね。 前に、アット東京に行ったことがあるのですが、セコム傘下になっているとは驚きでした。

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    投稿日: 2024.10.01
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    サイバースペースの地政学 著:小宮山 功一朗 著:小泉 悠 ハヤカワ新書 026 いきなりデータセンターである ネットワークの7層のうちの下1層、物理層がデータセンターのきもである 千葉ニュータウンにあるデータセンター そのインフラエンジニアの聖地が、本書のテーマである なぜ、千葉ニュータウンなのか ・北総台地の地盤が堅固で、地震を含めた災害リスクが低い ・都心から、30~40Kmという比較的交通アクセスのよい土地である そして、データセンターが集まり出すと ・電力会社は、特別高圧電力の供給を ・通信会社は、高速で、安定した通信回線を、この地に優先して供給するようになる つまり、一度、データセンターが集まり出すと、ネットワーク効果が生まれ、さらなるデータセンターを 呼び寄せることとなる 日本と海外とのインタネット通信量は、99%が海底ケーブルだ 2024年01月現在、世界には、574本、総延長140万kmの海底ケーブルが存在している 海底ケーブルのルートは、19世紀に往来が活発であった海の交易路と似ている マラッカ海峡やスエズ運河などの海上交通の要衝は、海底ケーブルのルートしても、やはり重要なポイントである 実際のデータセンターでの電力消費量は、機器そのものの電力量ではない、機器を最適に保つための冷却装置の電力量、つまり、空調費用がふくまれている データセンターとは過酷なところ ・寒い ・湿気が大敵、長時間いれば、肌がカサカサになる ・うるさい、キーンというファンのノイズが、センターには満ちている ・特殊なにおいがする ここでいうリスクとは、中国の漁船に誤ってケーブルを切断されたり、ロシアの攻撃にさらされないように管理しようだ 目次 はじめに 第1章 「チバ・シティ」の巨大データセンター―千葉ニュータウン 第2章 日本がサイバースペースと初めて繋がった地―長崎市 第3章 ケーブルシップの知られざる世界―長崎市西泊 第4章 AI時代の「データグラビティ」―北海道、東京 第5章 海底ケーブルの覇権を巡って―新たな戦場になる海底 第6章 ポスト帝国のサイバースペース―エストニア、ロシア おわりに 謝辞 ISBN:9784153400269 出版社:早川書房 判型:新書 ページ数:208ページ 定価:1000円(本体) 2024年06月25日初版発行

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    投稿日: 2024.09.02
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    サイバースペース、とは言いながらも データセンターや海底ケーブルなどの物理的な実体やその設置場所からは逃れられない、という事実を改めて考えさせられる本。

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    投稿日: 2024.08.26
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    現代の人間にとってサイバー空間なしの生活は考えにくい。 しかしサイバー空間は当然データセンターや海底ケーブルという物理的インフラがあることで成立している。 物理的なものであるので、機械は電力を大量に消費するし、ケーブルは破損する。 また利用者とデータセンターの通信距離が遠い場合、わずかな通信遅延も発生する。 データセンターが集まる地域はサイバー空間を含めた地政学的な重心と言える。 海底ケーブルの脆弱性にも注目が必要である。 攻撃側が海底ケーブル破壊にかけるコストは防御、修復側のコストに対して圧倒的安価となるため、攻撃側が有利になる。 筆者のうち一人の小泉氏は専門はロシアの軍事安全保障だが、 過去にサイバーセキュリティシンポジウムで基調講演されていたことを偶然拝見している。 本書でもロシアを切り口にしながらもある種普遍的な問題提起をなされている。 サイバー空間を守りたい人、すなわち現代人の全てに読んで欲しい一冊。

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    投稿日: 2024.08.15
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    サイバースペースの物理的実体を捉えて、有事の際のリスクを考えてみようという本。面白かった。 インターネット/サイバースペースは、利用者側からはバーチャルな空間と認識されがちだが、当然物理的な実体を伴っている。 それは物理的なサーバ群であり、それを収容するデータセンター(DC)であり、そこに電力を供給する送電網であり、国間を繋ぐ海底ケーブルだったりする。これらは有事には攻撃対象となり、平時には諜報の対象となる。 個人的には、本書でも紹介されている千葉ニュータウンの某DCに行ったことがあるのだが、千葉ニューって他にもDC多いよな、地盤が硬いのかな?などと呑気に考えていた。本書を読むと、理由はそれだけではないことがわかる。一つDCができると、回線業者が通信回線を増強し、電力会社が送電網を強化する。そうすることで、DCに適した環境になる。そうすると、他の事業者がその地域にDCを新設しやすくなる、みたいなメカニズム。 そうやって集まったDCは有事には敵国からの攻撃対象になる可能性があり、ITインフラの重大なリスクであるとの視点が提示される。 他にも海底ケーブルの敷設や補修の話も興味深い。普段意識しない、知らない世界を垣間見れる本でした。これは男の子が好きなヤツですわ。

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    投稿日: 2024.07.22
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    元同僚がたいへん面白い本を出したから読んでちょ、というので早速買って読んだ。 インターネットが50年の歴史を経て、サイバースペースという名前で呼ばれる大きな大樹(ツリー)に成長したとすると、本書で語られるのはこのツリーの地下茎、海底ケーブルとデータセンターで(データセンターに根っこのアナロジーは少し違和感があるが、目に見えないリゾームの塊ということで)、サイバー空間の健康は根っこの健康と表裏一体であることが本書を読むとよく分かる。根っこだけに日の目をみることは平時はないが、ツリーに異常があれば根の健康を疑えということだ。 インターネットというツリーは本当におもしろくて、レガシーなテクノロジーと最新鋭のテクノロジーが年輪のように50年分刻まれて(いまも有効で)いるけれど、根っこがやられると栄養がまわらなくなるので再生スピードが重要になってくる。 あと、本書を読んであらためて、ポイントtoポイントの暗号化ではなく、エンドtoエンドの暗号化も忘れてはならんと思った。

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    投稿日: 2024.07.12
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    サイバー空間の複雑なリスクとその影響を学び、非常に興味深く感動しました。著者が取り上げた千葉のデータセンターやエストニアの事例を通じて、情報インフラの安全保障の現状が鮮明に描かれており、特にサイバー攻撃の特定の難しさやサプライチェーンの脆弱性についての洞察が印象的でした。現代のサイバーセキュリティの課題を深く理解する良い機会となり、内容の豊富さに感心しました

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    投稿日: 2024.06.22