クズ系男子と裏垢をもつ地味女子の純愛もの、というふれこみだが、読んでみるとクズ系男子の主人公が子どもの頃に年上女性にレイプされているという描写から、実は彼も性的被害を受けた男児であったということに気がついた。この点は明記されていないので一見分かりづらい。女をとっかえひっかえするというのは、言い換えれば自分を安売りしていたということで、性的被害後にみられる自己肯定感の欠如の裏返しと取れないこともない。いっぽう自身の性的奔放さを抑圧して裏垢として発散している地味女子も、家庭環境に端を発して同じように本来の自分を抑圧している。このような過去のトラウマによって自己肯定感の欠如していた二人が出会い、丁寧に互いを理解してゆくことで、お互いを尊重する関係を作り上げてゆくというドラマである。「Happy ever after」のハッピーエンドに終わるロマンスの構図を取っているが、単なる願望充足を超えたメッセージがある。