
総合評価
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powered by ブクログ読む前は、題名に希望だとか、善き未来だとか少しこそばゆい言葉が書かれていたので、なんとなく期待値低目で読み始めました。しかし、率直にいって、まさに題どおり希望、人間に希望が持てるような、かつ明るい気持ちにさせてくれる内容で大変楽しく読めました。 今まで、正しいと思われていたようなエビデンスなどを反転してしまう、そんな爽快さと、自分自身もきれいになったような気持ちよさがあります。 続きも気になります。
0投稿日: 2025.09.26
powered by ブクログ人類・人間は性善説が表す本来的に善な・良い生き物なのか?が語られている。 この手の歴史的題材をテーマにしながら思想を扱う本は、その思想を補強することばかりを述べ立てることが多い。(自己啓発系とか、自称成功起業家の本) しかし、この本は反対意見も吟味しながら、振り子のようにその思想が正しそうか検証していく良書。 下巻が楽しみ。
7投稿日: 2025.09.21
powered by ブクログメモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1936786947017744437?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw
0投稿日: 2025.06.23
powered by ブクログ人間本性の性悪説を支持する研究や言説を叩き潰す。著者のブレグマンはオランダのジャーナリスト・歴史研究者。 上巻で印象的だったのは、ゴールディングの『蠅の王』の章。彼がノーベル文学賞をとった時、私の反応は「えっー」だった。この反応の理由をブレグマンが明快に説明してくれている。 アメリカで行なわれた悪名高い社会心理学的研究をめぐる章も印象的。彼によれば、ジンバルドーのスタンフォード監獄実験は、やらせと演技と演出。ミルグラムの電気ショック実験(別名アイヒマン実験)は、「権威への服従」という無理筋の解釈。「冷淡な傍観者」研究の発端となったキティ殺人事件は、マスメディアの脚色と歪曲(だとすると、研究そのものの前提が崩れる)。大学の社会心理学の授業では、この3つは目玉のトピックだ。さあ、明日からどう教える? 性善説vs.性悪説という構図は、単純化し過ぎだし、論の展開もやや強引だ。でも、それこそが本書の魅力なのかも。
0投稿日: 2025.05.26
powered by ブクログ人間の本質は優しい ①人間の本性についての私たちの見方が間違った方向に進みがちであること。 ②ジャーナリストは、扇情的な話を売るために、容易に世論を操すること。 ③緊急事態において、いかに私たちは互いを頼りにできるか
10投稿日: 2025.05.17
powered by ブクログ本国オランダでベストセラーになり、世界46ヵ国で翻訳され、欧米メディアから絶賛された名著。 人間の本性は善である。実に感動的で、読むべき一冊。 ただし、私たちは、熱心に自らの堕落を信じたがる。何故なら、自らの本質が罪深いと信じると、人は心が休まるから。そう信じる事で、一種の赦しが得られ、約束も抵抗も無駄になるからだ。 マスコミ、メディアのあり方も、問われるべきなのだろう。本質は悪だとした方が、センセーショナルで、商売になるから。
1投稿日: 2025.01.20
powered by ブクログ人は生まれながらにして善であるということを説明している一冊。これに反する実験や論文、歴史的事実は多く、反論は簡単なのだが、実は各種の実験がいい加減だったり、歪曲だという証拠を見つけて覆す。スタンフォード監獄実験、ミルグラム実験、ナチス大幹部のアイヒマンの例など。確かに、元々悪であるなら納得できることが多い一方、善であるとするならば、それを証明することはなかなか難しい。世の中の報道も、「今日も1日平和でした」ではニュースにならない。戦争や殺人で亡くなる人は100年単位で見れば確実に減っていることはわかるが、実感と理性が食い違う代表的な事例なんだろうな。
1投稿日: 2024.11.19
powered by ブクログ● 2024年10月6日、勝間和代さんのYouTubeみてて出身大学を検索したら、ブログの情報が出てきて「激推し。この数年で1番の本」みたいな紹介記事があった。読んでみたい。 ● Yahooフリマで上下セットが値下げされて2500円になった。
0投稿日: 2024.10.06
powered by ブクログ第7回ビブリオバトル全国大会inいこま予選会3-オンライン-で紹介された本です。チャンプ本。 https://www.youtube.com/watch?v=ym3LauZ9yuU 2022.2.12 2022.3.13開催の第7回ビブリオバトル全国大会inいこま決勝に進出。 https://www.youtube.com/watch?v=39UUtKo-xO0
0投稿日: 2024.09.18
powered by ブクログ『ほとんどの人は、本質的にかなり善良だ』 この本は、この一文に向き合い、世界中の事例から証明しようとする本だ。 上巻では、無人島に残された少年たちは争い、ホッブズの「万人の万人に対する闘争状態」に陥ることを小説にした『蠅の王』を覆す『本当の蠅の王』の話から、 ジャレド・ダイアモンドが証明したイースター島の歴史を覆す話、 ミルグラムの電気ショック実験の真実、 キティ(スーザンジェノヴィーズ)の死で有名になった「傍観者効果」の真意、 そして、報道による読者への方向付けの注意喚起までを著している。 導入であり問である『人は本質的に善良だ』に対し、日本で生まれ、26年間生きた僕は、「そう思う。」という感想を持った。 良くも悪くも平和ボケした現代の日本に生まれ育った者は同じ感想を抱くのではないか?と思う。 しかし、なぜ本質的に善良なのか?という問を考えるために読み進める。 各国の事例を所狭しに著している本書は、地名や当事者の名前などでカタカナが多く、ある意味読み応えがある。 注意すべきは、それらの事例や歴史は、誰かの手によって記されており、つまり誰かのバイアスがかかっているということ。 それは多分に漏れず、著者のルトガー・ブレグマン、翻訳者の野中香方子のバイアスもだ。 これは、上巻の最後に触れられているメディアの話にも通ずる。 何を事実とし、何を信じるかを常に注意して読書し続けたい。 最後に思ったのが、この世は反面教師だということ。 善行を証明するために悪行を演じたり、悪行から考える構図になっている。 つまり、悪やマイナスがなければ、善もプラスも証明できない。 戦争があったことで、人権が付与されたことが例。 仮でも両端を捉え、考え、折衷を探るしかないと思った。
1投稿日: 2024.06.09
powered by ブクログ人がいかに悪意に満ちていて利己的か、という話を覆す本 他者と協力しあうことで生き延びてきた時点でそうなのもしれない。 面白かったのは古来の天才族と模倣族の話で、とりも分かりやすく腑に落ちた。 読んでいて擬悪的になったりネガティヴに考える自分をもう少し冷静に見ていかなきゃなと思った。とくにネガティブな情報が蔓延するSNSやメディアからは適度な距離を取るのが大事だと思った。
0投稿日: 2024.05.22
powered by ブクログ人間社会は、人間の根源を悪であるとみなしたがる、ということが如実にでていた。マスコミも、人間の悪が現れるようなことを報道したがる。 本質的な善なのかはわからないが、歴史や報道を真実して受け取るのが最善ではなさそう。 そして人間の良い面を気持ち重視しても、良いのではないだろうか。
0投稿日: 2024.04.12
powered by ブクログ本著を読んでユヴァルノアハラリが価値観を変えたという位だから、新たな視点が得られるのだろうと期待して読み始めたが、期待通り。乱暴に言うと、人間の「性善説」的な本質を証明しようという試みの本。戦争の歴史を歩む利己的な存在という価値観を一変させる。 ー 人間は本質的に利己的で攻撃的で、すぐパニックを起こすと言う根強い神話。薄いベニヤのような道徳性ということから、ベニヤ説と呼ばれもするが、真実は逆。災難が降りかかった時、爆弾が落ちてきたり、船が沈みそうになったりしたときに、人は最高の自分になる。 『蝿の王』という小説があり、私も読んだ。しかしあれはフィクションであり、無人島で人間は憎しみ合い傷つけ合う事はない。実際に、アタ島に漂流した青年たちは、互いに助け合って生き延びた。アタ島の漂流の話はインターネットで検索すれば、当事者の顔写真つきで閲覧する事もできる。これを知っただけでも、本書を読んで良かった。 画面操作による実験で、人間とチンパンジー、オランウータンを比較した。空間認識、計算、因果性認識を調べたが、チンパンジーやオランウータンと2歳の人間の子供ではテスト結果が変わらない。しかし、社会的学習では、人間の子供が楽勝だった。つまり、人間とは、超社会的な学習生物であり、学び、結びつき、遊ぶように生まれついた。人間だけが赤面するのは、本質的に社会的な感情表現。他人の考えを気にかけていることを示し、信頼をはぐくみ協力を可能にする。また、目を見る行為だが、人間の目には白い部分がある。他者の視線の動きを追える。更に面白かったのは、ネアンデルタール人とホモサピエンスの対決の話だが、「天才族vs模倣族」の例え話で理解ができるというもの。 …しかし、オキシトシンの影響は、グループ内に限られる。これが人間の負の歴史を生む。下巻は、この負の歴史の真相に挑む。
32投稿日: 2024.02.28
powered by ブクログめちゃくちゃおもしろい。 今まで信じていた理論って何だったんだろう。 人間不信というかいろいろなものに不信になってしまう。 派生していろいろな本を読みたいが、巻末の注記では文献を探すのがちょっと難しいな。 今最も読み続けたい本であり、著者です。
2投稿日: 2024.02.05
powered by ブクログ面白かったー!スタンフォード監獄実験に疑義が出されてるのはなんとなーく聞いてたけど、他にも聞いたことある「人間の本性、ってさ…」な「科学的」論拠をそれぞれ当時のデータ等再び見直して、実験としてどうなのか、解釈はそれで正しいか、前提として性悪説を論証したかったんじゃないか…などを見ていく。文明崩壊も暴力の人類史も読んだことがあったので、データの扱い方の検証で「えっあれはなんだったの!?」になることも。 ただ、この本で検証されたもとの話はすっと無防備に信じて納得したのに、この本については「これを信じて本当に大丈夫かな…」の疑念が湧く。まさに文中で指摘されてる通り、「現実的」と我々が見做すのは性悪説の方なんだよな、を地でいく状態。たまたま偶然飛行機の事故が直近にあって、まさに現実が(少なくともあの件に関しては)冒頭の惑星Aの方だったのを知ってるのにね。
1投稿日: 2024.01.21
powered by ブクログこれは希望に満ちた本である。 そして、真実というのはとても見えにくい事がある ・ほとんどの人は本質的にかなり善良だ ・ルソーの思想が正しいのでは? ・過酷な環境になると人は善良に動く ・本当の「蝿の王」はびっくり、本と真逆であり、とても心暖まる話だった。 ・協調が重要 ・「利己的な遺伝子」はホッブズ流 ・アーレントの重厚な哲学(人間は善を装う悪に惹かれる) ・コミュニケーション、対決、共感、抵抗が重要 ・人間の本性についてのわたしたちの見方が間違った方向に進みがち ・ジャーナリストは、扇情的な話を売るために容易に世論を操る ・緊急事態において、いかにわたしたちは互いを頼りにできるか
0投稿日: 2023.12.11
powered by ブクログ目からウロコが落ちるとは、このような本のことだろう。 今まで自分が「常識」として疑わなかったことが、ほとんど否定されている。しかも、そのことが新たな道を発見することにつながる。これは、全世界の人が読むべき著作である。 日本語訳もすばらしい。
0投稿日: 2023.11.13
powered by ブクログ面白かった。 ピンカーの「暴力の人類史」に追随する内容かと思ったが、違った。ピンカーが文明化が進むに従って暴力が減ったとの主張に対し、本書は人間は生まれながらにして善性を備えており文明がそれを妨げているとの主張。反文明化の結論ありきの主張のようにも捉えてしまう。 搾取が悪、人間は善ってエピソードが多く、耳障り良い本としては面白い。下巻に期待。
0投稿日: 2023.10.29
powered by ブクログ有名な「スタンフォード監獄実験」や「ミルグラムの電気ショック実験」が提示するセンセーショナルな性悪説は、実は捏造されていたという衝撃。 人間の本質は善であることを筆者の独自調査で個別テーマを介して明らかにしていく手法で語られる上巻。これはこれで結論ありきで話を自分勝手に色眼鏡通して捉えているし可能性ないか?と疑ってしまうほど通説と真逆の結論を突きつけられる。この爽快感は、なるほど魅力的な。 題材が有名なものであり、語り口が肩肘張ってないのでスルスルと読み進められる。かといって過不足ない進行で飽きるともなく、文章力の高さも本書の惹きつける魅力の一つだなと。下巻は著者の主張が強調されているようで、期待高まり胸躍る。
2投稿日: 2023.10.19
powered by ブクログ定住と私有財産の出現により、自由、平等、友愛の日々が終わった。 文明社会の始まりが暴力、戦争、感染症の始まり。 家畜化された人間と動物、人懐っこく平和的な遺伝子ほど子孫を多く残せた。
0投稿日: 2023.10.04
powered by ブクログ人は生まれつき悪であると考える性悪説と、善であると考える性善説とがある。過去には、善悪説として考えた方が良しとする数々の実験がある。筆者は、それらは全て研究者が恣意的にそのような結果が出るように実験を行ったからだと言う。つまり、人は生まれつき善であると考えるのが正しいのだと。したがって、リーダーは自分のことを犠牲にしても他者のことを考える人が選ばれてきたのだ。 ここで、一つの疑問が浮かぶ。今の社会でリーダーとなっている人に利己的な人が多すぎないか?ということだ。その問に対する答えは下巻で展開される。
0投稿日: 2023.10.02
powered by ブクログ人間の本性は悪である という有名な実験や事件の真相を調査し、嘘やごまかしを暴く。そして、実際は人々が善良に振る舞ったり協力しあっていたことを示す。 勇気が出る内容。だけど、再反論もあるのかもしれない。調べてみる。
0投稿日: 2023.09.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読みながら次々と問いがうかぶ本は面白い。もっと苦戦すると思ったけど、あっという間に読んでしまった。 これまで大学や書籍などで学んだことが覆っていった。論文も怪しいもんなんだな。何が客観的な事実なんだろう?何を信用すればいいかわからなくなった。 戦争の話が出てきた時にふと浮かんだのは、日本人はどうだったのか?ということだ。空襲の際、冷静だったのか?人をあやめるとき、躊躇はなかったのか?
0投稿日: 2023.08.21
powered by ブクログ「人間の本質は善である」 だからこそ人類は、危機を生き残れた。 にもかかわらず、現代の社会が性悪説で設計されているのは、なぜか。 ホッブスの性悪説VSルソーの性善説、少年たちの残虐さを描きノーベル文学賞を受賞したゴールディング『蝿の王』、人間の本性を暴くいくつかの心理実験や実際に起きた事件、それらをひとつひとつ再検証し、人間の本質は悪であることを示しているそれらの信憑性に異議を唱えた。 歴史や心理学の専門家ではない私でも、大変読みやすく面白い本でした。冒頭から、目から鱗なことばかりでした。人の本質について言われている、性善説と性悪説、窮地に立たされた時に出る人間の本性、今までそれは悪であると言われてきたことに疑問を持ち、再検証を地道にしていき、そうではないを示した本書は、とても優しさに満ちた本だと感じました。 今まで自分の根幹にあった、そうは言っても人って性悪説なんでしょ、そういう結果が出ているじゃないかという暗い考えを見事にひっくり返してくれました。 下巻を読むのも楽しみです。
1投稿日: 2023.06.20
powered by ブクログすごい。人は善。ミルグラムや、アイヒマンの話がある中でも人は善。これからの自分の生活の仕方、仕事の進め方を見直さねば。疑ってかかるなんて、ナンセンス。
1投稿日: 2023.05.27
powered by ブクログ分厚いがすらすら読めた。 性悪説の根拠となるような実験や論文は世の中にたくさんあるが、それを筆者がどんどんと覆していく構成で読んでいて気持ちがいい。 性善説、嬉しい。 人は助け合って生きているし、誰しもが誰かを傷つけようとは思っていない。
0投稿日: 2023.02.08
powered by ブクログ人は元来、善なのか悪なのか、という根源的なテーマに対し、古来から現在までに存在する様々な言説がまとめられている。 人を性悪とする言説に対し、筆者自身が取材等含め再度調査し、実は誤っていたのではないか、という話がいくつも出てくる点が非常に興味深かった。 心理学を学んでいた身にとっては、当たり前のようにジンバルドやミルグラムの実験を信じていたが、実は不備が多く(いずれも作為的な)、正しい実験ではなかったことを知り、驚かされた。
1投稿日: 2023.01.22
powered by ブクログ人類にとっては当たり前とも言える「人は本質的に暴力的で残忍な生物である」という前提を覆す本。 ホッブスの「万人の万人に対する闘争」は真実なのか?スタンフォード監獄実験は造られたものだった。 読んでいて自分の固定観念がボロボロと崩れていく音がした。法や秩序というものは人が自然状態では罪を犯し、他社を傷つける、という前提があるから創られたものであると思っていたし、人類の歴史は暴力の歴史でもあると学んでいた。 が、この本に書かれていることはそうではない。 人の本質は善意であって、暴力的ではなく、お互いに歩み寄り、協調性を持つことができる。それこそが人類の本質であると述べられている。 その結論に至る根拠や過去の書物への批判などが全体的な内容である。 まだ下を読んでいないが、この本がもっと世間で受け入れられれば更に世界は変わるんだろうなぁ。
1投稿日: 2023.01.04
powered by ブクログ「万人の万人に対する闘争」は正しくない。「ほとんどの人は、本質的にかなり善だ」ということを多くの事実から証明していく。 ロンドン大空襲、「蝿の王」、「利己的な遺伝子」、銃を撃たない兵士、ジャレッド・ダイヤモンドのイースター島の物語、スタンフォード監獄実験、ミルグラムの電気ショック実験・・・信じられている多くの「事実」は実は事実ではなかったことを暴き、人間が本質的にはどれだけ善かを証明していく。 後半では、「最悪な人間を想定した現在のシステム」= 法の支配、民主主義、資本主義・・・を乗り越えていく「最良の人間を想定したらどうする」から新しい世界を構想していく。コモンズ、アラスカの永久基金配当(一種のBI)、リゾートみたいな刑務所・・。 謎は、本質的に人間はかなり善であるにも関わらず、どうしてホロコーストや野蛮な殺戮や、そしてウクライナへの攻撃が起こってしまうのか、ということである。著者は「私たちを最も親切な種にしているメカニズムは同時に、わたしたちを地球上で最も残酷な種にしている」「友情と忠誠心と団結、すなわち人間の最善の性質が、何百万という普通の男たちを史上最悪の虐殺へと駆り立てたてたのだ」と書く。それは、人類は身近な人には共感するが、1000人、100万人、70億人に共感することは不可能で、身近な犠牲者に共感するほど、敵をひとまとめに「敵」とみなすようになるからだという。つまり、共感が私たちの寛容さを損なうと。 何回も繰り返し読んだけど、ここの部分がまだよく理解できない。では、どうすればこの悲劇を繰り返さなくて済むのだ? それは「最良の人間を想定したシステム」に置き換えていくことで可能なことなのか? ただ、人間はそう簡単ではではない、ということは間違いない。
3投稿日: 2022.12.31
powered by ブクログ人間の歴史を性善説の側面から紐解き直す大作。 著者は88年生まれの歴史学者。 読んでいると心が希望に満ちてくる。 人間の善の側面にスポットを当てて私たちの生き方を問い直す良著。アッパーな頭脳でハッピー
1投稿日: 2022.11.21
powered by ブクログ表紙カバー裏にある「現代の社会が性悪説で設計されていることに疑念をもち、世界中を飛び回り、関係者に話を聞き、証拠を集め」た結果、巷に流布された性悪説に次々と否を唱えています。 で、各章で実際に人に信じられている「性悪説として事実とされている事象」がホントにそうなのか?を腕利きの刑事もしくは探偵さながら情報を集めまくって否を導き出してるのです。学者っていう人種の真実を知りたいという熱量(しつこさ)が感じられてそこがかなり面白い。深堀感半端ない。本質じゃないけど、よくそこまで探せたなという感嘆と、え?それ完全なる捏造という研究者がイッチャンやってはいけないことでは?が多くて私たち市民を簡単に騙してひどい話ばかりだった。(それを筆者は実はそうじゃないんだよと書いてます)。私たち真実を知らず、ショーもなーい研究者とかジャーナリストとかメディアに騙されてた?ショック。 個人的には性悪説を唱えることが独裁者や統治者にとって都合のいいように市民を扇動するためであるということ、本来は性善なはずの人間に性悪が芽生えたのは狩猟から農耕へ文化がかわったこと、悪の存在に立ち向かうには、コミュニケーション、対決、共感、抵抗これらの戦略を繰り返し繰り返し行うことで回避しうると書かれていた所は印象に残りました。 世界は悪いことばかりが起きている訳ではないのだとFACTFULNESSと全く同じことを書いてる所もあって同じ著者か?と確認してしまいました(勿論違った)。 全体的に過去に起こった史実や事件を深堀しつつ、人は本来は大半の人達が性善であるという事実を繰り返し私たちに突きつけてくる本です。どの章もかなり面白くって誰でも読み進められると思います。下巻も楽しみ。
2投稿日: 2022.09.24
powered by ブクログ人類が本来的に善なるものか悪なるものかについて、現代の多くの考えが、ルソーの社会契約論とホッブスのリヴァイアサンに基づいている。 ルソーは人間が本来善なるものと唱え、逆にホッブスは悪なるものと主張している。 これまで多くの考え方がこの2人の説に基づき発展してきたが、昨今はややホッブスの考え方が優勢であった。 それは、文明的、科学的であるということは物事を否定的に見ることであり、またニュースは悲惨な出来事ばかり報道するからである。 ネガティビティバイアスにより、人は本能的にネガティブな内容を記憶するが、このこともさらに拍車をかけていている。 そんな人間は本来悪であるという通説に対して、作者は真っ向否定する。そして、人は本来悪であるという主張の根拠となっているいくつかの事件や実験に対して反論していく。 多くの過去の事実や実験結果が、センセーショナルになるよう誇張や操作がされており、そのどれを取っても、人間が本来的に悪であるという確証にはならなかった。 後半どういった論理展開がなされるか楽しみである。
1投稿日: 2022.09.11
powered by ブクログ心清い人類の希望の歴史。でもネットのいざこざ見てると、すこしこういう本でも読んで頭冷やしましょう、みたいな感じはするよな。みんな本読もうぜ。
0投稿日: 2022.07.31
powered by ブクログ人は、社会性を磨き上げてきた生物。学び、楽しみ、繋がり合う様に進化してきた。人間は一皮剥けば野蛮人である。そのため国家やリヴァイアサンが人間には必要だというホッブスの主張やベニヤ説などの性悪説。それらを証明するかの様な事件や実験の主張を本書は根底から覆す。新たな取材を通し、ほとんどの場合人間は性善であると。 ・感情の読み取れる白目、赤面、軟らかなみた目に進化した動物達 →人と人とが結びつくこと、社会的に生きてきた証拠であり進化である ・1940年ロンドン大空襲 ドイツ軍からの8万の爆弾を落とされロンドン市民はヒステリックに野蛮人になると考えられていた。 →皆、落ち着き、メンタルヘルスはむしろ向上、誰もが互いを助け合っていた。 ・2005年ハリケーン、カトリーナ 避難所に詰め込まれた25,000人。略奪、レイプ、銃撃が起こっていたと信じれていた →避難所の死者は6人、内1人が自殺でそれ以外は病死。略奪も警察が協力するなどチームを組んだ利他的なものだった ・1999年ベルギー コーラを飲んだ9人の子供が倒れる。コーラに毒が入っているのではないかと報道され、世界中で1000人を越すコーラを飲んだ子供が病院へと運ばれた。 →コーラには異常はなく、プラセボ効果の反対「ノセボ効果」と思われる。病気になると思わされて飲んだことによる影響 ・銃を撃たない兵士 戦場で実際に撃つものは全体の10〜20%ほど ・イースター島の内紛、人食 ・スタンフォード監獄実験 ・ミルグラムの電気ショック実験 ・キティ殺人事件の傍観者達 →これらは、ほぼ全てが誤りだと。心理学者のプライドや野心、実験自体の不備不正、偏向報道、悪に注目してしまう人々、それらが作り上げた性悪説なだけだった。
0投稿日: 2022.07.25
powered by ブクログ第二次大戦下、人々はどう行動したか あたらしい現実主義: プラセボ効果とノセボ効果 西洋思想を貫く人間観 人間の善性を擁護する人に起きる3つのこと 本当の「縄の王」: 物語が持つ危険な側面 ホモ・パピーの台頭: ダーウィンの進化論、ドーキンスの利己的な遺伝子 ホモ・サピエンスが生き残ったのはなぜか マーシャル大佐と銃を撃たせない兵士たち 文明の呪い: いつから人類は戦争を始めたのか 長い間、文明は災いだった イースター島の謎 スタンフォード監獄実験は本当か 操作されていた看守役たち ミルグラムの伝記ショック実験は本当か: アイヒマンの悪の陳腐さ キティの死: 傍観者効果 ジャーナリズムによる歪曲
0投稿日: 2022.07.21
powered by ブクログ私たちは他者との一体感を渇望しているということに驚きだった。1人で過ごすことが好きな人もいるけど その人もお金を稼いだり仕事をしたりするときは他者とのつながりが必要。
0投稿日: 2022.07.14
powered by ブクログ内容もさることながら、わたしたちが普段いかに多くのことを無批判に受け入れてしまっているかということと、問の立て方などはシンプルだけど、なかなかできていない。 楽観論とはまた違うし、安易な悲観論よりもずっと胆力がいることをやってのけた。 性悪説に人が納得しやすいのは、悪事を仕方ないで片づけられるから というのは、非常に納得した。 人類滅亡など、安易に諦めてんじゃねーと、未来の子供たちに怒られない大人たちでありたい。 また、人は善を装った悪に引き寄せられやすいというのも、思い当たる。悪を行わなければならない時でさえ、善の理由をほしがると。正義やら立場やらが危うい理由。
0投稿日: 2022.07.09
powered by ブクログミルグラムの実験もキティの死も、上部だけの情報で理解していた 次々と真実が根拠と共に示され、痛快と言うか…人の本質のピュアさも悪への加担劇も多様な面を考える機会が得られた
0投稿日: 2022.07.05
powered by ブクログ「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」 何を言おうとしているかは、もうおわかりだろう。そう、人間についての厳しい見方も、ノセボの産物なのだ。 ほとんどの人間は信用できない、とあなたが思うのであれば、互いに対してそのような態度を取り、誰もに不利益をもたらすだろう。他者をどう見るかは、何よりも強力にこの世界を形作っていく。なぜなら、結局人は予想した通りの結果を得るからだ。地球温暖化から、互いへの不信感の高まりまで、現代が抱える難問に立ち向かおうとするのであれば、人間の本性についての考え方を見直すところから始めるべきだろう。 はっきりさせておこう。本書は人間の美徳について説くものではない。明らかに、人間は天使ではない。人間は複雑な生き物で、良い面もあれば、良くない面もある。問題は、どちらを選択するかだ。 つまりわたしが言いたいのは、人は、仮に世慣れていない子どもとして無人島にいて、そこで争いに巻き込まれたり、危機に陥ったりしたら、必ず自分の良い面を選択するということだ。本書では、人間性についての肯定的な見方が正しいことを裏付ける、数々の科学的証拠を提供しよう。 わたしたちがそのような見方を信じるようになれば、それはいっそう真実になるはずだ。 ■人間とイヌの家畜化 ・友好的な行動 ・セロトニンとオキシトシンの増加 ・幼年期・少年期が長くなる ・外見が女性的で若い ・高いコミュニケーション能力 結局のところ人間は超社会的な学習機械であり、学び、結びつき、遊ぶように生まれついているのだ。だとすれば、赤面するのが人間特有の反応なのは、それほど奇妙なことでもないだろう。顔を赤らめるのは、本質的に社会的な感情表現だ。他人の考えを気にかけていることを示し、信頼を育み、協力を可能にする。 心理学者のドン・ミクソンは、一九七〇年代にミルグラムの実験を再現した時、同じ結論に達した。後に彼はこう述べている。「実のところ人々は、多大な苦しみが伴っても、どうにか善良でありたいと思っている。善良であろうとすることに人々は囚われている......」 つまりこういうことだ。十分強くブッシュしたり、しつこく突いたり、うまく誘ったり、操作したりすると、多くの人に悪事を行わせることができる。しかし、悪は心の深みに潜んでいるので、引き出すには、相当な労力が要る。 そして、ここが肝心なのだが、悪事を行わ せるには、それを行であるかのように偽装しなければならない。 このメタ分析から二つの洞察がもたらされた。一つ、傍観者効果は確かに存在する。わたしたちは、時には、他の誰かにまかせた方が筋が通っていると思って、介入しない。また時には、間違った介入をして非難されることを恐れて、何もしようとしない。また時には、誰も行動を起こしていないのを見て、まずいことは起きていないと思い込む。 では、二つ目の洞察は?もしも緊急事態が (誰かが溺れているとか、襲撃されているといった) 命に関わるものであり、傍観者が互いと話せる状況にあれば(つまり、別々の部屋で孤立しているのでなければ)、逆の傍観者効果が起きる。「傍観者の数が増えると、救助の可能性は減るのではなく、増える」と論文の著者は記している。 これが、キティ・ジェノヴィーズの真実の物語だ。この物語は、大学の心理学部の一年生だけでなく、報道記者を志望するすべての若者が読むべきだ。なぜなら、それは三つのことを教えてくれるからだ。一つ目は、人間の本性についてのわたしたちの見方が間違った方向に進みがちであること。二つ目は、ジャーナリストは、扇情的な話を売るために容易に世論を操ること。三つ目にして最も重要なのは、緊急事態において、いかにわたしたちは互いを頼りにできるか、ということだ。
0投稿日: 2022.06.05
powered by ブクログ【総合評価 ⒋8】 ・革新性⒌0 「人間の本質は善である」これについての幅広い観点からの科学的アプローチ、そして圧倒的説得力、これ以上の革新性はないだろう。 ・明瞭性⒋5 幅広い内容をわかりやすく表現できている。ポイントは少々文学的なところ、そのため内容に引き込まれやすい。 ・応用性⒌0 自分の人間観が変わる。これほど実生活に応用できる教えはないだろう。 ・個人的相性⒌0 こういう鷹の目を持った学者の著作ほど面白いものはない。文書についても私にちょうど良い難易度であった。個人的ベストブックである。
0投稿日: 2022.05.21
powered by ブクログスタンフォード監獄実験のような有名な実験に嘘があったとは衝撃的だった。今ウクライナ戦争で起きでいる事を踏まえると、ロシア軍の行動がその実験の正しさを証明しているように思えて、今のところに消化不良に陥っている。 ホモ・サピエンスはより柔和で、より若々しく、より女性的に、幼形成熟してホモ・ハピーに進化した。大きな集団で暮らし、一つの集団から別の集団へと度々移動し、模倣がうまかったことが、体格や脳の大きさでまさるネアンデルタール人を凌駕シた要因であるという点は納得できた!
0投稿日: 2022.05.03
powered by ブクログ人間の本質は悪であるという性悪説が蔓延していることに意義を唱え、なぜ誤った認識が広まっているのか、を解き明かす本。ちょうど最近ファストアンドスローを読んでいたのでこの本で紹介されている心理学実験や事件は記憶に新しかったが、どれも曲解かれていると知り驚いた。農業革命が起こるまでの生活の方が豊かで自由で平和だったという事実と、しかし我々は高度に文明化した世界に住んでいると言うことを踏まえて、今のまま豊かで平和な世界を保つにはどうすればいいのだろう?その答えを期待して下巻を読んでみることにする。
1投稿日: 2022.04.17
powered by ブクログ「人間の本質は善である」ことが,歴史や小説,実験に反証していく形で述べられています。 イースター島のモアイ,その存在は知らぬ人がいないぐらいですが,イースター島におどろおどろしい歴史があったと言われていることは全く知りませんでした。この本では,その歴史に対して真実と異なるのではないかと述べられていますが,個人的にはこの部分が大変興味深かったです。 また,スタンフォードの監獄実験などは,人間の本質について述べた著作では頻繁に紹介される有名な実験ですが,この実験についても疑問が呈されており,何事も鵜呑みにせず,本当に正しいのかという視点で,再度物事を見直す姿勢は重要だと思いました。 下巻も楽しみです。
0投稿日: 2022.03.26
powered by ブクログ■読んだ動機 SNSでもかなり良い評判を見たので気になって図書館で借りた。 ■感想 「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」 という話だが、最初読んでいるときは「なんとも大雑把な説」と思った。 読み進めてみると、「スタンフォードの監獄実験」「ミルグラムの電気ショック実験」などでは、役割や権力を与えられたら、相手が苦しんでいても罰を与え続ける、人の心の奥底ではそういう本質を持っているという話を否定する話だった。 多くの人は実験で罰を与えることを嫌がっていたが頼まれてやった人がいたと。 結果十分強くプッシュしたり、しつこく誘えば多くの人に悪事を行わせることができる。が、悪は心の深みにあるので引き出すのは労力がいる。 悪事を引き出すにはそれを善行であるかのように偽装しなければならない。 というのが人の本質的な話だった
0投稿日: 2022.03.25
powered by ブクログあの有名なエピソード、心理学実験は本当ではなかった。繰り返される反証に、人間をもっと信頼すべきなんだと価値観が変わっていく。
0投稿日: 2022.03.21
powered by ブクログ上下巻+網野善彦の『日本中世に何が起きたか』と合わせて読むと、人類史の見方が完全に変わる。 資本主義は人間の利己心を掻き立て、性悪説に立った報道やメディアによって完全に負の側面ばかり表に出てきているようにネガティビティバイアスのせいで感じるけど、それは完全に間違いで、人間は利他的で性善説である、という立場に立った社会作りを始めることで、資本主義的側面が瓦解して持続可能な社会に向かうだろうと期待できる一冊。
0投稿日: 2022.02.20
powered by ブクログ本書を「ファクトフルネス/銃・病原菌・鉄/サピエンス全史」に並ぶ四大名著と考える(ジャレド・ダイアモンドは本書は批判対象の一人である事も面白い)
0投稿日: 2022.02.17
powered by ブクログ「世の中は希望に満ちている。」というのが本書を読んだ直後の私の感想。 まさに「希望の歴史」だと感じさせてくれる一冊。 本書では、「ほとんどの人間は本質的にかなり善良だ」ということを様々な分野を横断しながら、多くの人類に対する悲観的な意見を覆してくれる1冊。 そしてただ覆すだけでなく、処方箋まで提示してくれる。 その処方箋を読むと、理想主義者、楽観主義者と言った言葉が頭に浮かぶけど、すごく希望に満ちた優しい提案。(その処方箋だけ読むと、ふーん、って感じで終わると思うので敢えてここでは記載せず) 人間について新しい見方を提示してくれた本書。 この本を読んで現実主義となったのち、どう世の中を見ていくか、どう世の中に参加していくかを考えるたい。 以下、自分の備忘録として。 ・個人所有と定住生活(農業)によって人類は良くない方向に進むこととなった ・人間は超社会的な学習機械である。その理由は赤面することや白目があること。人との繋がりを欲している。 エピローグだけでもたまに読み返したくなる1冊。
0投稿日: 2022.02.12
powered by ブクログこの本は、「サピエンス全史」の著者、ハラリさんが「わたしの人間観を一新してくれた本❕」と推薦されていたので読んでみました。 めちゃくちゃ面白いです。 「人間は本来、善人です❕」という事実を、様々な研究を紐解き、丁寧に考察しています。 ぜひぜひ読んでみてください。
12投稿日: 2022.01.30
powered by ブクログ世間や学術的分野で定説とされていることが、実は意図して作られたフィクションであった。 「スタンフォード監獄実験」「ミルグラムの電気ショック実験」「キティ・ジェノヴィーズ事件」 これらの嘘を暴き、人間の善性を説く。
1投稿日: 2022.01.29
powered by ブクログ人間の本性は善である。 大学まで含めて学んできたことやニュースの報道などで持ってきた「人間は文明がなくなると本来の悪が出てくる」といった世界観が信じられなくなる物語。 キティの死の37人の目撃者、ミルグラムの電気実験、蝿の王の物語など。 人間の自然状態は悪性だという価値観を創り上げてきた物語の舞台裏は衝撃的。
1投稿日: 2022.01.23
powered by ブクログ定性的な観点から、人間の本質は悪であると操作された事象の真実を検証していく。ファクトフルネスの定性版のような印象を受けた。
1投稿日: 2022.01.12
powered by ブクログ自分を信じて、他人を信じて生きよう。そう思うことができ、生きることに期待と大きな希望を抱けた。 そう思えたことだけでなく、人間が、いま、なぜこのように霊長類と自負できているかを理解できた気がする。
1投稿日: 2022.01.05
powered by ブクログ希望が欲しい気分だったので、読んでみましたが、個人的には『サピエンス全史』に出会って以来、久々にものの見方が大きく変わる体験でした。 スタンフォード監獄実験など性悪説の裏付けになっている実験などは、実は科学者たちが結論ありきで操作されたものだといいうことを明らかにしつつ、 定住化以前から助け合いながら生きてきたホモサピエンスの歴史や、助け合いや自主性を尊重して成功した政策などを示すことで、根拠をもって、性善説が信用に値するものだということが説かれています。 個人的には、シンプルに誰かが困ってたら助けたいという気持ちは理解できるので、性悪説との付き合い方を踏まえて性善説で生きていくことは是非やっていきたいと思いました。具体的なポイントまで示されていたのも良かったです。 また、親である自分としては、子供たちに対しても性善説に立ち、勇気をもって自由を与えられるかというのはとても大事なテーマとして自分の中に残したいと思います。 にしても、実験などのでっち上げがエグすぎて、「科学的な根拠」との付き合い方も考えないとな、と思いました。 そんな感じのテーマの本、ないかな。
2投稿日: 2021.12.19
powered by ブクログ人間の始まりホモ・サピエンスから現在までの残酷な記録として残された歴史に「本当に人間は悪性なのか」を疑い、実際に取材し検証したくさんの資料を読み調べ、どんな人にも分かりやすく説明していく内容に共感しました。自国のオランダ人も100年以上前に植民地化したことも事細かに解説されており、説得力がありました。テレビや新聞、ネットなどのメディアでは、悪を報道するほうがみんなが気になり見てくれるし、記憶にも残りやすい。悪は集まりやすく、伝染しやすくなり「善から悪」になることもあるんだなぁと思いました。心理的、哲学的で面白かったです。
2投稿日: 2021.12.13
powered by ブクログ人間が非常で冷酷であるといった過去の歴史、事件、物語、実験を仔細に調査して、人間は性悪ではなく、基本的に性善である、ということを証明しており、希望を与える書だと思う。アタ島の6人の男の子の心温まる物語で、6人を助けた船長ピーター・ワーナーの回想録は、本書の主張そのもの:「人生は私に多くのことを教えてくれた。その一つは、常に人の良い面、明るい面を見るようにすべきだ、ということだ」。
1投稿日: 2021.12.07生来の善良さを素直に喜べない複雑さ
読み物としては面白い。 一人ひとりの脳の大きさや賢さで比べると、MacBook Airの性能しかない人類が、MacBook Proのネアンデルタール人を差し置いて生き延びることができたのは、我々の方にはWi-Fiが付いていたからだという説明など、非常にキャッチーでわかりやすい表現を多用している。 ただ、生来の善良さを擁護するために、何人もの大物学者の著作の粗や汚点を暴きたて反証を試みる様は、どこか法廷で陪審員の心に疑念の目を植え付けようと躍起になってる弁護士に似ていて、その醜悪なやり口に鼻白む思いを感じた。 「正直言って、わたしは当初、ミルグラムの実験のいかさまを暴くつもりだった。数ヶ月も調べれば、彼の遺産を片づけるのに十分な攻撃材料が集められるだろうと思った」。 彼に狙い撃ちされたのは、ミルグラムの他にも、リチャード・ドーキンス、ジャレド・ダイアモンド、フィリップ・ジンバルドなど。 スティーブン・ピンカーは『21世紀の啓蒙』の中で、自らと同じく、世界は過去より良くなっていて、今後もさらに良くなりうると考える楽観論者の同士として紹介していたほどなのに、本書の中で見事に著者の的になっている。 十年後に、どちらの主張が忘れ去られているか、本当に興味深い。 そもそも、アルバムのジャケットのような、ランニングシャツ姿の横顔を写した著者近影を目にした時点から、相性は良くないだろうなという予感はあったのだが...。
0投稿日: 2021.12.05
powered by ブクログ問いかけの書 重いです。 人間の本性を問うもので、過去の様々な狂気の事件に対して、反証をもちいて、実は善良な生物であることを主張しています。 ネアンデルタール人よりも、劣った人類が、生き残れたのは、より柔和だったから? 森で穏やかに暮らしていた人類が殺戮を行うようになったのは、定住したから? そして、人類にとっての惨事とは国家の誕生であると言い切っています。 それでもなお、筆者は、人類史を希望の歴史と綴っています。
10投稿日: 2021.11.30
powered by ブクログ頭に染み付いた性悪説の人間観を、気持ちよく覆させられました。ミルグラム実験などを信じて人間について分かったような気になっていた自分が本当に恥ずかしいです。データや調査に基づいた論理的な本なのに、表紙に溢れるスピリチュアル感が読者を減らしてそう…
1投稿日: 2021.11.27
powered by ブクログHumanKind ミーンワールドシンドローム マスメディアの暴力的なコンテンツに繰り返しさらされたせいで世界を実際より危険だと信じこんでしまうこと 1. ネガティビティバイアス - 良いことよりも悪いことの方に敏感。なぜなら怖がりすぎても死なないが、おそれ知らずだと死ぬ可能性がある 2. アベイラビリティバイアス - 手に入りやすい情報だけをもとに意思決定する傾向がある。 ノセボ効果によって人の本性は利己的だとしんじ 続ける ウィリアムゴールディングの蝿の王は、子供は本質的に悪いと見做しており、多くのリアリティshowの元に。 子供の頃に暴力的な映像を多く見ることと大人になってからの攻撃性は相関あり。 英国の研究では、リアリティ番組を多く見る少女は、意地悪と嘘は人生で成功するために必要だと考える。 [文化に関する物語は、確かに人間の行動に影響する] ホップズ - 性悪説。リヴァイアサンが人々を秩序立てる。(人は利己的という経済学の思想の元) ルソー - 性善説。元々高潔な人間を自由にせよ。(子供は自由にのびのびさせようという考えの元) ホモサピエンスは社会的な動物。チンパンジー、オラウータンの子供間では、空間認識、計算、因果性認識に差異はないが、社会的学習には差が出る。 マーシャル大佐のレポ。15-25%の兵士しか銃を発砲していなかった。 農業が始まったのは一万年前で、家畜化は5千年前。 定住の始まりと共に所有が始まり、自分のコミュニティに関心を持つことで、外部への敵意が生まれる。 イースター島。 紀元前900年ごろからポリネシア人が祖先。モアイは力の象徴で各部族がこぞって大きなモアイを立てようと試みる。 労働力を増やし、食料確保に地を耕し、モアイを運ぶために木を切り続けた結果、森が無くなり、土地の侵食が始まり、モアイを作れなくなった。結果、部族間の衝突が起こり、(長耳族vs短耳族)、モアイは倒され、生き残った部族も人を食うよになり、数千人しか残らなかった。 今の地球と同じ?より大きく強くなって国の威厳を保つために森林破壊をし温暖化を進める。その先に待つ未来とは。 追記 - 最後にペルー人が目をつけ、奴隷にして、連れ去る。生き残りは天然痘のウイルスを持って島に帰され、イースター島は壊滅した ミルグラムの実験、段々と電圧を上げてしまう、は、人間は無分別に悪に服従する、のではなく、人間は善を扱う悪に惹かれる、という洞察が得られる。ナチスの戦犯、アドルフアイヒマンは、自己のやったことに疑いがなかったが、精神異常もなく普通だったし、ヒトラーから明確な命令がありそれに従ったわけでもなかった。彼はそれをやる事が人類にとって善であるということを疑わずやっていた。 共感 - より良い世界はより多くの共感からは始まらない。共感は寛大さを損なう。選ばれた少数に明るいスポットライトをあてることで、その他大勢は視野に入らなくなる。 人間の集団バイアス - 私たちと彼らの観点から考える傾向 - 戦争の悲劇性は、人間の最良の要素である忠誠心、仲間意識、連帯感が、人に武器を取らせる。 一万年前の定住と私有財産を持つことによって闘争が始まる。他者への共感とアウトサイダーへの敵意が帰属意識を優先させる行動を取らせた。 ヴィクトールフランクル それゆえ私たちはある意味、理想主義者でなければならないが、それは、そうなって初めて、真の現実主義になれるからだ。 ピグマリオン効果 抱く信念は、真実であっても想像であっても、同様に命が吹き込まれ、世界に変化をもたらす。プラセボ効果と似ているが、自分にではなく他者に利益をもたらす。 アメリカの小学校で、コインで各学生の数名の生徒を選ぶ。彼らは頭の良くなる素質が大いにあると教師に伝えると、教師は優しくなり、子供は自分をどう見るかを変え、本当に成績が良くなる。 ギリシャ神話でキプロス島の王ピグマリオンが、自分が作った彫刻の女性にあまりに夢中になったため、神かわその彫刻に命を吹き込んだ話から。 反対はゴーレム効果。悪いマイナスの期待をするとその通りになる。 偏見はどこから生まれ、どうすれば防げるか。 人は見知らぬ他人をぞんざいに扱う。のであれば、交流を増やして知り合いを増やすべきだ。私たちが愛せるのは知っている人だけだ - 接触理論。わ 1900年以降の抵抗運動では、暴力が伴うと26%、非暴力だと50%の成功率。なぜなら、老若男女、より多くの人が参加するから政治が抵抗できない。 信頼と交流は有益。アメリカでは国境から離れた地域こそ国境の壁建設に反対し、イギリスでは主要都市から離れるほど離脱に賛成した。 多元的無知 - 誰も信じていないが、誰もが”誰もが信じている”と信じている状態。
1投稿日: 2021.11.25
powered by ブクログ著者の「人は基本的に善良である」に対する信念が強く、情熱をもって証明していると感じられた。現在常識となっている理論を調査に基づくファクトを持って批判している。そして、とても読みやすかった。 「スタンフォードの監獄実験」、「ミルグラムの電気ショック実験」、「傍観者効果」など過去に読んだり学んだりした常識を反証しており新たな知識になった。 結局は、人はセンセーショナルな内容に気をひかれ、メディアはそのために誇張しておかしくしていると思う。「ナラティブ経済学」のメッセージも同等の事だと認識している。また、本書の冒頭にも平和になると移民や暴力に関する報道が増える的な内容が記してあった。 よって、上記の実験や効果も地位や名声目がくらんで操作されたのだろうと理解が落ち着く。が、”基本的に善良”に対して矛盾になっている?
1投稿日: 2021.11.25
powered by ブクログスタンフォード監獄実験など、人間の悪性の証拠とされるものの嘘を明かしていく様が心地よい。価値観がアップデートされた感がある。下巻にも期待。
1投稿日: 2021.11.10
powered by ブクログp104 狩猟採集民は、全ては繋がっていると考えていた。彼らは自分のことを何か大きなものの一部であり、他のすべての動物と植物、さらには母なる地球とつながっていると考えていた。 p125 他のグループとの対立が起きると、彼らは話し合って解決するか、それば無理なら、次の谷まで移動する。アタ島の少年たちとよく似ている。喧嘩が起きると、彼らは島の別々の場所に行って、頭を冷やした。 p126 確かに彼らは30人~40人という小さな集団で狩猟採集をするが、その集団は家族ではなく、主に友人で構成され、しかもメンバーは常に変化する。結果として、狩猟採集民は巨大な社会ネットワークを持っている。2014年の調査によると、パラグアイのアチェ族とタンザニアのハッツア族は、平均で生涯に1,000人の人に出会うと推定された。 常に新しい人と出会うことは、常に新しいことを学ぶことでもある。 p130 狩猟採集者は一般に――ほとんど脅迫的なまでに、――他者に支配されないことを重視する。 p131 また、狩猟採集民の間で等しくタブーになっていたのは、備蓄と貯蔵である。歴史の大半を通じて、わたしたちが収集したのは、物ではなく友情だった。 p132 科学者は、男女が平等だったことが、ホモ・サピエンスをネアンデルタール人などの他の人類より優位に立たせたのではないか、と推測する。フィールドワークによって明らかになったのは、男性が支配する社会では男性は主に兄弟や従兄弟と共に行動するが、男女が等しく権威を持つ社会では、人々はより多様なソーシャルネットワークを持っていることだ。そして、友達が多いほど、人は最終的により賢くなる。 p134 歴史を振り返れば、厳格なヒエラルキーがないまま神殿や、さらには都市さえ築いた社会はいくつもみつかる。 p135 支配者が権力の座に就いたとしても、じきに彼らはその座を追われたと考えている。数万年前から私たちは、偉そうにする人を倒すための効率的なシステムを持っていた。ユーモア、あざけり、ゴシップだ。それらが効かない場合は、背後に隠していた弓矢を使った。 p136 ルソーは何と言ったか。「最初に誰かが、杭や溝で土地に囲いをして、これは俺のものだ、と言うことを思いついた。」そこから、全てが悪い方向に進みだした。 p137 狩猟採集民のメンバーシップポリシーはかなり緩やかだった。彼らは常に見知らぬ集団と出会い、容易に合流していた。しかし、村を築いて暮らすようになると、人間は自らのコミュニティと所有物に、より関心を向けるようになった。ホモ・パピーはコスモポリタン(世界主義者)をやめて、外国人恐怖症になったのだ。 p139 狩猟採集民は非常に安楽な生活を送っていて、一週間の労働時間は多くても平均で20~30時間だった。 p144 祖先たちに予測できなかったのは、人間の数がいかに増えるかということだった。居住地の人口が増えるにつれて、周辺の野生動物の数は減っていった。不足を補うために、肥沃な土壌がない場所にまで、畑を広げなければならなくなった。突然、農業は楽な仕事ではなくなり、祖先たちは日の出から日没まで、農作業に追われるようになった。 p220 公式の命令はめったに出されなかったので、ヒトラーの信奉者たちは自らの創造性に頼らざるをえなかった。彼らはただ指導者に従うのではなく、総統の精神に沿う行動をして「ヒトラーに近づこうと努めた」 p221 アイヒマンは他者の視点に立って考えることができなかった 彼は、自分は歴史的な偉業を成し遂げたのであり、後の世代に賞賛されるはずだと信じ切っていた。その信念ゆえに彼は、怪物にもロボットにもならず、同調者になった。
1投稿日: 2021.11.07
powered by ブクログ人間は生来「善」か「悪」か。本書では「性善」を説き論証を試みる。危機回避本能として生物はマイナスイメージに引き摺られ易く負の感情と歴史を強烈な印象として残してしまう。ゆえに「利己的な遺伝子」で語られるように利己的と説明されると妙に納得してしまう。しかし本書内にも登場する「人類の暴力史」で語られるように生物としての人は段々博愛化している。いや、もっといえば元々「善」であるというのが本書の主張だ。「蠅の王」「イースター島」「スタンフォード監獄実験」の逸話が如何に不正確であるか、ブレグマン氏の執念の賜物で、我々が如何に「性善」か暴かれる。帰納法でやや不安定な面はあるが、ポジティブでチャレンジングなテーマで面白い。
1投稿日: 2021.11.05
powered by ブクログルドガー・ブレグマン「希望の歴史(上)」読了。性悪説はホッブスで性善説はルソーとする対比は興味深かった。性善説を支持する著者がミルグラムの実験等に対し矛盾や誤認をつくのは圧巻だった。その二元論は極端だと思うが彼の主張は自他ともに人間不信が蔓延する現代において強く必要とされるだろう。
4投稿日: 2021.10.17
powered by ブクログ【#HumanKind #希望の歴史 上巻】読了 いや〜、めちゃくちゃ面白い! しかも、読んでて気持ちいい♪ 話だけでも『善意に触れれる』ってのは良いものですね。 そして、現時点ですでに、 「なぜ人は性悪説を信じるのか?」 がほんのりと分かって来た気がする。 性悪説を取れば、自分を甘やかせれるし、 承認欲求も満たされ易くなるんですね。 例えば、 何かで責任を放棄しても、 「人間てそういう生き物じゃん?」 で済ませられるし、 何か良いことをした時に、 「普通なら私利私欲に走るところを、私は他人の為にこんな善いことをしました!」 って言えば、性悪説とのギャップで賛美の声が大きくなる。 他人をコントロールしたい人は、 「人が集まれば集まるほど、意見はわかれ、対立し、ろくでもないことが起こり、収拾がつかなくなるのです!なので、ここは私が仕切ります!」 などと言って自分の思惑に誘導しやすくなる。 非常に『都合がいい』のです。 【#サピエンス全史】を読んだ方は共感してもらえると思いますが、 「人類は性悪説を持ってして文明を作った。」 と、この本を読んで僕は感じました。 でも、この本に書いている事実は、 「人類は性善説である。」 ということ。 まぁ、とにかく面白い! 下巻が楽しみ!
1投稿日: 2021.10.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
人間社会に対する見方を変えてくれる本。『サピエンス全史』の批判も載っているが、その著者ユヴァル・ノア・ハラリが「わたしの人間観を、一新してくれた本」と賛辞を送るほどのことはある。 人間はもともと善人なのか悪人なのか、どうして人間がネアンデルタール人も含めて他の動物より広まることができたのか、について幅広く考察している。 特に衝撃的だったのは、「スタンフォード監獄実験」は捏造まがいだったという章。心理学の実験は再現性が低いものが多いと聞いていたが、まさか捏造とは。 本書の"人間はもともとは友好的である"というのは、実は日本人にはそんなに驚くことでは無いかもしれない。逆に西洋人の人間観が垣間見れて面白かった。 本書の価値は、人間は善人なのになぜ残虐な行為をするのかと考察をさらに進めていること。そして、最終章で、「人生の指針とすべき10のルール」を挙げていることだろう。自分には「1 疑いを抱いた時には、最善を想定しよう」というのから始めることにした。
1投稿日: 2021.10.11
powered by ブクログ人間の本性が善であることを論証するとともに、性悪説が今日の社会で通説となっているメカニズムを解き明かすことで、冷笑的な人間観から脱却し、信頼に基づく新たな現実主義を提唱する啓発書。 著者は、性悪説の根拠として有名な「ミルグラム電気ショック実験」、「キティ・ジェノヴィーズ殺人事件」、「イースター島の悲劇」などの事例を丁寧に検証し、それらの多くが事実誤認や捏造によるものだったことを突き止める一方、戦争や大規模災害といった非常事態において人々が善意に基づいて行動した数多くの出来事を紹介した上で、そもそも社会的動物として信頼・友情・愛を基盤に進化してきた人間の本質は善に他ならないが、1万年前に狩猟採集から定住に移行したことが私有財産と人口増加による不平等を生み出し、権力や階層構造の固定化、さらには自集団への共感と帰属意識が排他主義につながり、集団間の相互不信が性悪説を「自己成就予言」として定着させているのだと主張する。 性悪説は法制度や企業経営、教育といった幅広い分野において現代社会に根深く浸透しており、そのような中で性善説を唱えることはともすればナイーブで非現実的な理想主義として批判されるリスクがあることは認識しつつ、それでも著者は、今日においても信頼に基づくマネジメント手法によって成功した複数の企業や自治体などの事例を引き合いに、楽観主義でも悲観主義でもない、人間の本性=善に基づく新しい現実主義を提唱する。決して夢物語ではなく、未来への希望を圧倒的な説得力を持って語る良書。
1投稿日: 2021.09.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
とりあえず上巻だけ読んだ。 人間の本質は善で、良心がある。 スタンフォード監獄実験も、ミルグラムの電気ショック実験も、キティの死(傍観者効果)も、ヤラセや曲解だった。 という調査と主張。
2投稿日: 2021.09.20
powered by ブクログレビューはブログにて https://ameblo.jp/w92-3/entry-12698854566.html
1投稿日: 2021.09.19
powered by ブクログ人間は凶暴性、残忍性を持ち、戦闘が好きな生き物だと言うことを示していた歴史、事件、実験が、実は真実ではなかったという話。 性善説基づき、人は生きている。 そう思うと多少は生きやすくなる。
1投稿日: 2021.09.14
powered by ブクログ人間の本質は善である。 私たちはなぜか、性悪説にしたがって、未来を絶望視していた。しかし、真実は希望の歴史を築いているのだ。 私たちの、私たち自身に対する考え方を180度転換する内容だった。 特に戦争で銃を発砲し、射殺した者がいかに少ないかというところは、映画や漫画、ドラマ、メディアなどでの光景とは異なり、人の優しさ(それとも臆病なのか)を感じた。 非常に面白いと思う。
1投稿日: 2021.09.12
powered by ブクログHumankind ◯ほとんどの人は本質的にかなり善良 ・WW2でドイツ軍の空襲もイギリス軍の反撃の空襲も敵国の繊維を挫くどころか高めることにしかならなかった。調査の事実があっても為政者はこれを認められなかった。 ・権力者は自ら同様他人も皆私利私欲に支配されているというシナリオで全ての人を見ようとするためにエリートパニックが起こる。 ・危機に瀕すると人の善良さを引き出す。 ・世界価値観調査によれば、国を問わずほとんどの人は身近な人には信頼できると直感的に思う一方、ほとんどの他人は信用できないと考えている。 ・メディアの暴力的コンテンツ、ニュースに繰り返し晒さられることで、世界は実際よりより危険だと信じ込んでしまう。 ◯ホモ・サピエンスが生き残った理由 ・遺伝子にほとんど違いはない ・社会的学習能力が際立っている。白目があった。眉の動きがわかりやすい、赤面するといったように表情が豊かで感情表現ができる。協調と連帯が生き延びさせた。 ・歴史家マーシャルによれば、実際に戦場で発砲した兵士は15%ほどしかおらず、多くは撃つことができない。ほとんどの兵士は敵を殺そうとしていない。本来ヒトは暴力的ではない。 ・定住の始まりが、貯蓄を可能にし、食糧を得るため農業という働く時間を長くし、貧富の格差と戦争を生んだ。定住の始まりが不幸の始まり。感染症に苦しめられた。 ・元々は文明が起こった魅力的な肥沃な土壌で定住のし始めたのがきっかけだろうが、人口が増えすぎてしまったのが想定外で、食べさせるためにさらに定住を深めるほかなかった。 ・惨事のピークは国家の成立、文明は平和と進歩の代名詞、未開は戦争と衰退の代名詞と捉えられているが実際には逆だった。文明化が良いアイデアに感じられるのはごく最近になってからだ。 ・イースター島の歴史は、増えすぎた人口、森林を使い尽くし殺し合いが起こったというのは事実ではない。外部からやってきた欧米人による奴隷搾取、解放時に持ち込まれた天然痘による大幅な人口減が真実。 ・前者の過った歴史は、環境問題を引き起こし、全てを不毛にし、気づいた時には手遅れにするという未来を彷彿させるが、これはノボセ効果になり、一層温暖化を加速させるのではないか。人類の回復力を過小評価している。イースター島では、最後の木がなくなった後、新たな技術を開発して収穫を大幅に増やした希望の物語だ。 ◯大量虐殺、ホログラム ・ミルグラムの電気ショックの実験はあまりに有名だが、実は実験自体は権力への服従よりも、いじめの強要という内容に近く、無理矢理ボタンを押させられている点が否定できない。加えて56%がそもそも本当に電気ショックを与えているとは信じていなかったというアンケート結果と、信じていた人の多くはスイッチを押さなかったということがわかった。 ・それでもなお、一部の異常者だけと言い切るには多すぎる数の人がスイッチを押した。 ナチスのアイヒマンも怪物ではない。なぜ彼らは非情なことができたのか。それは彼らが完全に正義、善なることをしているという確信に基づいていたから。 ・アイヒマンは全て命令に基づいて執行したと証言していたが、実はナチスには公式な命令はめったになくらヒトラーに気に入られようと創造的に人を出し抜いて過激な手段を考え出すようになった。その過程には、何人にもわたるプロパガンダによって、ドイツ人の心が毒され、教化、洗脳、操作されてきたつみあげがあった。そこにあるのは同調性
0投稿日: 2021.09.11
powered by ブクログ学術書でありながら一気読み。 この上巻は最高に面白かった。 自分がこれまで読んできたジャレド・ダイヤモンドの『文明崩壊』やスティーブ・ピンカーの『暴力の人類史』などの本や、人間の狂気をあらわすとされたフィリップ・ジンバルドー教授の「スタンフォード大学・監獄実験」等を真っ向否定する内容。 いや~。驚かされました。 この本はすごい。 目からうろこが落ちるとはこのことだった。
17投稿日: 2021.09.11
powered by ブクログ人間は元来善良である。それは科学的事実によって示唆されている。法といったリヴァイアサンの支配が必要と考えたホッブズよりも文明以前人間は善良であるとしたルソーの方が現実主義的である。性悪説を裏付けるとされていた文学、学問研究、実験、事件は、どれも事実が歪まされている。性悪説を描こうとした方が人々にウケやすいし、信じやすいのだ。しかし、事実はそうではなく、我々は孤独ではなく、助け合えるのだ。特に危機には。それゆえにここまで発展した。 人間は基本的に善良であり、ほかでもないそれゆえにここまでの発展を遂げたとすれば、人々の善良さを信じ、自らも善良に生きていくことが結局1番なのだと実感した。学問研究でさえ、信じたいように事実が歪まされていたことは衝撃であった。
2投稿日: 2021.09.10
powered by ブクログニュースは砂糖のようなもの、快楽的で取りすぎてしまう ニュースになるのは人の気を惹きつけること、必ずしも多く起こっていることではない かなり昔から、人の性根は悪だと言う教えがあった 蝿の王はその思想を後押しした 実際に漂流した子供は協力して生き延びた キツネの実験で人懐っこい者同士を交配させていくと、4世代くらいで人懐っこくなった。そして、可愛らしく穏やかになった。 人は協力をすることで生き延びたどうするネアンデルタール人の方が脳が大きく賢かったがコミュニケーションが苦手で集団で餌のとり方とかを共有できなかった。ホモ・ハピーはコミュニケーションが上手でイノベーションが起きると共有して皆で使えるようになったから生き延びた。 定住し、家畜を買うことで植えなくなったが、感染症と労働に追われるようになった。災害について原因が欲しくなり、神が出来た。国家ができたことにより、今でこそ自由もあるがほとんどの人は特権階級の奴隷だった。国家から逃げ出す人は多かったが、逆はいない。未開人のほうが人を信じていて友好的で健康だった。文明が便利に使えたのはここ最近であり、それまでは結構な不幸を作っていた。 イースター島は有限である資源を使い尽くした。せっかく、人間は優しいと考えていたのに。と考えられていたけど違った。モアイはただの暇つぶしで、木がなくなったのは、ネズミのせいで、優しい人間が島に住んでいた。そこから、大航海時代の人間が奪っていった。 最後は奴隷商人による感染症によって滅んだ。強欲で島の資源を使い尽くしたのではなく、適応してたのに。 スタンフォード監獄実験も自発的ではなく、発表者がかなり誘導して作られた。誘導無しで再現すると、サディスティックなことは起きず、共同体を作っただけ。アイヒマンはヒトラーの思想を心酔してどうしたら近づけるか、この行為は正義だと思っていた。上司の命令にただ従ったわけではない。 人は基本的に優しい。ただ、正義のために暴走することがある。国とか宗教とかで分断されたときに、起きてしまうことがある。そこを取っ払えば、話せばわかることが多い。残虐であったり、悪であると考えるほうが、自分が悪いことをしたときに救われる。あとは、センセーショナルで広まりやすく、心理学者たちも功績を認められたい1面もある。今まで信じていた有名な実験が嘘だということが衝撃だった。もしかしたら、嘘というのが嘘かもしれないけど、嘘でしたって報道は拡まらないからあり得るかもなって思う。面白い本でした。
2投稿日: 2021.09.10
powered by ブクログとても面白くて一気に読んでしまった。歯切れが良くテンポの良い文章で読みやすいのもいい。ユーモアのセンスも!下巻も早く読みたい
2投稿日: 2021.09.03
powered by ブクログ【感想】 人間の本性は善良なのか邪悪なのか。 性善説と性悪説は、数百年にわたり様々な議論を生んできた。今や学術的研究の枠を超え、映画や小説といった娯楽作品にもテーマとして取り入れられるメジャーな概念になっている。 性善説として有名なのはルソー。人間の本性は善良であり、自然状態は自由と平等が実現されている素晴らしいものであるが、歪んだ社会制度の中では人は邪悪に変わりうると述べている。 一方、性悪説として有名なのはホッブスだ。人間の本性は邪悪であるため、放っておけば万人が万人に対して闘争状態になる。社会契約に基づく国家だけが、人間を卑しい本能から救えると述べている。 では筆者の立場はどちらか、というと、「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」として、ルソーの性善説を支持している。 筆者も文中で述べているが、この主張はなかなかに過激だ。というのも、現代社会では「人間は本来誰しもいい人なのだ」ということを、実感として受け入れがたいからだ。毎日のように殺人が起き、国同士が戦争している。SNSでは誹謗中傷が日常茶飯事だ。「人はすぐに過ちを犯す罪深い生き物だ」という考えは、キリスト教的価値観を有していない人々の中にも、もはや自明の理として定着していることは疑いようがないだろう。 筆者も自らの主張と世間のギャップは認識している。それを前提とし、「じゃあ一番最初までさかのぼると、実際はどうだったのか?」というところから、本書はスタートしている。 議論は一番最初、つまり狩猟採集時代の人間のコミュニティから始まる。 狩猟採集時代の人間というといかにも野蛮人を想像してしまうが、実は彼らは戦いよりも調和を重んじる民族であった。現代でも原始的な生活を行う部族・民族の間では、一人の子どもを大勢の手で育てることが当たり前になっている。また、部落の中で強権を振るおうとするもの、つまりリーダーではなく専制者としてふるまおうとするものに対しては、コミュニティが一丸となって追放に動いたり、殺したりする例も珍しくない。当時は男性も女性も育児・狩りを行うのが一般的であったため、われわれの想像よりも「平等的な」社会が形成されていたと言えるだろう。 その証拠に、原生人類の攻撃性を考古学的証拠から調査した結果、家畜化や農業や定住が始まっていなかった時代の遺物において、戦いの証拠になるものはほとんどなかった。文明が始まる前においては戦争が定期的に起きていたとはいえず、人間は本来的に戦いを好まない動物だと考えられる。 筆者はこれに補足する形で「文明の呪い」という章を設けており、ルソーの性善説と合致する内容、つまり定住化と文明の発展が人々に戦争を始めさせたことを論述している。それによると、1800年までは世界人口の少なくとも4分の3が、裕福な支配者の奴隷として暮らしており、文明がわれわれの生活にいい影響を与えてくれたのは直近のたった2世紀だけであるという。 では、その2世紀に起こった非人道的な出来事――大戦争とホロコーストについてはどう説明すればいいのか?これこそ、人間の邪悪さが頂点にまで達した究極形ではないのか。 この論点について、まず戦争をミクロ的な観点から検証している。兵士の個人的な感情を調査し判明したのは、「戦争に参加した人間のほとんどは、誰も戦争なんてしたくないし、殺したくない」という事実であった。 大佐で歴史家のサミュエル・マーシャルは、太平洋戦線とヨーロッパの戦場で兵士たちとのグループインタビューを行った。そこで判明したのは、戦場で銃を打ったことのある兵士は全体の15~25%しかいないという事実だった。新兵でも射撃の名手でも、この割合は変わっていない。彼らは打つことができなかったのだ。 「平均的な個人は、人を殺すことに抵抗がある。(略)ほとんどの人は『攻撃することを恐れて』いて、その恐れは、人間の『精神的構造』に本来備わるものだ」とマーシャルは言う。 そして兵士の行動原理は、「祖国を守ろう」「共産主義やナチスを打倒しよう」といった政治的な要因よりも、むしろ「仲間を守りたい」という思いによるものが圧倒的多数であった。人間は相容れない他人を排斥しようという衝動よりも、仲間を傷つけられたくないという友愛をもとにして戦いを行うのである。 一方、ホロコーストについては、スタンフォード監獄実験とミルグラムの電気ショック実験を引き合いに出し、興味深い解説を行っている。 この有名な2つの心理学実験は「やらせ」であることが本書で明らかになるのだが、やらせだとしても見過ごせない事実が一つある。それはミルグラムの実験において、電気ショックが本当だと思い込み、研究者から一度もプレッシャーをかけられなかった人々のうちでも、電圧を最大の450ボルトまで上げた人が「想像以上に」多かったことである。人びとが善良であるならば、これはいったいなぜなのか。 それは、アウシュビッツで虐殺が起きた理由とも合致する。加害者たちは、「自分たちが正義の側にいる」――電流実験に参加することが科学の発展に寄与し、ユダヤ人を殺すことがドイツの国益につながる――と信じるときに、悪を実行するのだ。つまり、人々は悪意ではなく、善意に基づいて人々を攻撃するのだ。 ―――――――――――――――――――――――― 以上が上巻の概要である。 総評としては、内容が非常に面白い。実際に起こった出来事の面白さだけでなく、「実はあの有名な話の裏にはこのような事実があったのだ」という暴露本的要素も合わさって、ページをめくる手が止まらなかった。 筆者の提唱する「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」という主張には、個人的には賛成なのだが、筆者の主張に都合のいい事実を中心的に取り上げているため、いささか主語を大きくして語っている感が否めない。そのため、反証を挙げようとすればいくらでも挙げられるだろう。このあたりの判断、つまり「人は生まれながらにして善良だ」という主張が妥当と言えるのか否かは、下巻を読み終えてからしっかりまとめたいと思う。 下巻の感想↓ https://booklog.jp/users/suibyoalche/archives/1/4163914080 ―――――――――――――――――――――――― 【まとめ】 1 人間は善良だ 本書を貫く考え:ほとんどの人は本質的にかなり善良だ 人間は本質的に攻撃的で、すぐパニックを起こす、という根強い神話がある。しかしながら、9.11のテロやハリケーンカトリーナといった未曾有の緊急時においても、「観察された行動の圧倒的多数は、社会のためになる行動だった」という研究結果がある。デラウェア大学の災害研究センターは1963年以降、700件近くのフィールドワークを行い、映画でよく描かれるのとは逆に、災害時に大規模な混乱は起きないことを明らかにした。「略奪が起きたとしても、物やサービスをただで大量に配ったり、分かち合ったりという、広範な利他的行動に比べると微々たるものだ」と同センターの研究者は指摘する。 にもかかわらず、「人間とはあくどい生きものだ」という考えが蔓延しているのは、自分がそう思い込んでしまうから成就してしまう、いわばノセボ効果によるところが大きい。 では、なぜわたしたちは人間を悪者だと考えるのだろうか。それは、「ニュース」という毒物の影響である。現代のメディアが、平和な世界の中のとびきり例外的な事象を取り上げ、人々に悲観を植え付けているのだ。 シニカルな物語は、わたしたちの世界観にも大いに影響する。英国で行われた研究によると、リアリティ番組を多く見る少女は、いじわると嘘をつくことは人生で成功するために必要だ、と答えがちであることがわかった。実際のリアリティ番組では、出演者が礼儀正しく何もトラブルが起こらないため、ディレクターがわざと挑発させたりけしかけさせたり多くの小細工を行っているのだが。 2 性悪説vs性善説 ホッブスの性悪説…人間はほうっておけば万人が万人に対して闘争状態になる。人間の本性は邪悪であり、社会契約に基づく国家だけが、人間を卑しい本能から救える。 ルソーの性善説…人間の本性は善良であり、社会制度のせいで邪悪になる この2人の哲学者の持論は数百年の間、政治、教育、世界観に重大な影響を及ぼしてきた。では、どちらが正しかったのか? 3 自然淘汰に生き残ったのは「人懐っこさ」 わたしたちホモ・サピエンスの外見に変化が起きたのはおよそ5万年前、私達よりも脳が大きく、筋骨隆々で、明らかに強かったネアンデルタール人が姿を消したころだ。 このときに私たちの外見はどう変わったのかというと、子供っぽくなったのである。オオカミが犬に変化していったのと同じように、人間の顔と体は、より柔和で、若々しく、より女性的に変わっていった。 そしてもっと決定的な部分――人間が他の動物よりも特徴的な進化を遂げた部分は、社会的学習を身に着けたことにある。目や眉、額が変容し、自分の感情を顔に乗せて発信することができるようになった。 以上をまとめると、人間は進化の過程で「周りから好まれるように発展を遂げた」ということになる。 3 身内びいきの罠 人間はときに最も残酷な種となる。その理由に「オキシトシン」というホルモンのはたらき――自分によく似ている人々には強い親近感を抱くが、見知らぬ人に対しては嫌悪を強める――が関係している。社会性を獲得するように進化したのが人間であったが、実は身内びいきで外国人嫌いの性質が生まれながらに備わっているのだ。 過去の類人猿の化石には無数の傷が確認できる。おそらく戦闘によるものだろう。原初時代の身内、つまり定住社会が確立したころから暴力は増え始め、社会が発展するにつれ暴力の数は減少している、と数々の書籍や調査研究が物語っている。 では、やはりホッブスが正しいのかというと、そうとも言い切れない。 大佐で歴史家のサミュエル・マーシャルは、太平洋戦線とヨーロッパの戦場で兵士たちとのグループインタビューを行った。そこで判明したのは、戦場で銃を打ったことのある兵士は全体の15~25%しかいないという事実だった。新兵でも射撃の名手でも、この割合は変わっていない。彼らは打つことができなかったのだ。 「平均的な個人は、人を殺すことに抵抗がある。(略)ほとんどの人は『攻撃することを恐れて』いて、その恐れは、人間の『精神的構造』に本来備わるものだ」とマーシャルは言う。 また、原初人類の攻撃性を考古学的証拠から調査した結果、家畜化や農業や定住が始まっていなかった時代の遺物において、戦いの証拠になるものはほとんどなかった。文明が始まる前においては戦争が定期的に起きていたとはいえない。人間の本来の性質は攻撃的ではないのだ。 4 文明の呪い もし人間が生来、暴力を嫌悪するのであれば、どこで道を間違えたのか。何がわたしたちに戦争を始めさせたのか。 その答えは農耕による定住と私有財産の出現である。狩猟採集生活が終了しコミュニティの概念が発生し始めた時代においては、1%の人々が99%の人を抑圧していた。口先のうまい人間が指揮官から将軍へ、首長から王へと出世した。不平等が拡大し、自由と友愛の日々が終わりを告げた。 最初に定住を決めた理由はおそらく、土地があまりにも魅力的だったからだ。チグリス川とユーフラテス川の間に広がる肥沃な氾濫原は、手間をかけなくても作物が育つ。ここで人間は致命的な勘違いを犯し「農業は簡単だ、ではやってみよう」と思うようになる。ただ、祖先たちには人間の数がいかに爆発的に増えるかを予想できなかった。狩猟生活に戻ろうと思っても、増えすぎた家族を養うためには定住生活を続けなければならない。 雪だるま式に膨れ上がる農耕民族は、やがて国を建設する。初期の国のほとんどは奴隷国家であり、貨幣や法はもともと奴隷制度を維持発展させるための道具であった。こうして、文明という呪いが始まっていったのである。 この呪いは西暦1800年まで続く。1800年までは世界人口の少なくとも4分の3が、裕福な支配者の奴隷として暮らしていた。もちろん文明はわれわれの生活を改善してもくれたが、そうしたいい影響が起こったのは直近のたった2世紀である。 5 スタンフォード監獄実験・ミルグラムの電気ショック実験 人間は本質的に優しいというのが本当なら、そろそろ、避けられない問いに取り組むべき時間だ。アウシュビッツをどう説明するのか。 スタンフォード監獄実験、ミルグラムの電気ショック実験は、いずれも長く性悪説を裏付けてきた有名な心理学実験だ。しかし数々の追跡調査により、この2つの実験は捏造、やらせだということが判明している。 スタンフォード監獄実験では研究者のジンバルドが被験者に試験の方向性を示唆しており、被験者は実験の狙いを推測し、それに合った行動を取ろうとしている。ジンバルドは「囚人に課したルール、罰則、屈辱は、すべて看守たちが考え出したのだ」と言い続けているが、「囚人を番号で呼ぶ」「足首に鎖をつける」といったルールは、実際には研究者の発案であった。それだけでなく、研究者は看守たちに囚人をもっと厳しく扱うよう圧力をかけ、厳しさの足りない看守を叱責してもいた。 2001年にBBCがスタンフォード監獄実験を再現するリアリティ番組を制作・放映したが、特に何も起きなかった。 ミルグラム監獄実験も同様に「電圧を上げろ」と指示されている。 ミルグラムの台本の通りに動こうとしない被験者は、強いプレッシャーをかけられた。ジョン・ウィリアムズという名の生物学教師は、被験者により高い電圧のスイッチを押させるために、8回も9回もそうするよう求められた。ミルグラムはある46歳の女性と口論になったことさえあった。彼女が電気ショック発生器のスイッチを切ったからであり、彼は再びスイッチを入れ、実験を続けるよう命じた。 また、スイッチを押すと本当に電流が流れると信じていた被験者は、全体の半分に過ぎなかったという。多くの人が最初から茶番だと分かっていたのだ。 だが、ミルグラム実験は一つの重要な点を示唆している。それは、電気ショックが本当だと思い込み、研究者から一度もプレッシャーをかけられなかった人々のうちでも、電圧を最大の450ボルトまで上げた人が「想像以上に」多かった事実である。人びとが性善であるならば、これはなぜなのか。 それは、アウシュビッツで虐殺が起きた理由とも合致する。加害者たちは、「自分たちが正義の側にいる」――電流実験に参加することが科学の発展に寄与し、ユダヤ人を殺すことがドイツの国益につながる――と信じるときに、悪を実行するのだ。つまり、人々は悪意ではなく、善意に基づいて行動するのだ。
21投稿日: 2021.08.29
powered by ブクログふと立ち寄った本屋で一目惚れして購入した本書。まずもって問いが衝撃的だった。「なぜ社会は性悪説に基づいて設計されているのか」本当にそうだ。周りを見回しても善人がほとんど。なのに社会全体に広げると悪人だらけだと思ってしまうのはどう考えても矛盾している。まさに電流が走ったような感覚だった。 それでも性悪説はいろいろな裏付けがあるだろう。筆者はそれにベニヤ説と名づけ、今まで疑うことのなかった裏付けのまやかしをどんどんと暴いていった。心理を学ぶ身としては本書終盤の話は天地がひっくり返ったような驚きだった。 早く後半を読みたくて堪らなくなっている。
1投稿日: 2021.08.17
powered by ブクログ考えさせられる内容が多い いくつかの実験を否定しその否定の理由を述べているが、その内容より身近な事柄に合わせた例に強く共感し同意できる。
0投稿日: 2021.08.17
powered by ブクログ<目次> 序章 第二次世界大戦下、人々はどう行動したか 第1章 あたらしい現実主義 第2章 本当の「蠅の王」 第3章 ホモ・パピーの台頭 第4章 マーシャル大佐と銃を撃たない兵士たち 第5章 文明の呪い 第6章 イースター島の謎 PART2 アウシュビッツ以降 第7章 「スタンフォード監獄実験」は本当か 第8章 「ミルグラムの電気ショック実験」は本当か 第9章 キティの死 <内容> われわれ人類は「性悪」なのか「性善」なのか?第7章~9章の話題は、心理学的に有名であり、専門家でない私も知っていた。しかしこの本を読むと、その事実は学者やジャーナリストが意図的にあるいはねじ曲げて仕組んだ結果(そうなるように仕組むかレポートするかしたもの)だという。また読んだことはなかったが、『蠅の王』も著者が創造したもの(実際の事件を基にしているが)だそうだ。つまり、われわれ人類(ホモ=サピエンス)が、現在地球上にはびこることができたのは、「性悪」ではなく、「性善」であったため。お互いが殺しあい、支配者が君臨してそれ以下のものを奴隷化し(一部は支配者に媚び諂うことで生き延び)、そうした結果の文明化ではないことを証明していく。下巻では、今問題の「民主主義」に視点が行くようだ。
0投稿日: 2021.08.14
powered by ブクログ人類の本質は利他的で善、と考えるとすべて辻褄が合う。これまでの常識がひっくり返る。https://katsumakazuyo.hatenablog.com/entry/2021/08/12/162845
0投稿日: 2021.08.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
資源の枯渇によって島民同士が殺し合ったとされてきたイースター島の歴史も、ひとは容易に権力にしたがい倫理的でなくなるというスタンフォードの監獄実験やミルグラムの電気ショック実験も、違う側面から新たな希望に満ちた解釈を提示してくれる そして「なぜ今までそれらが人間の性悪説に基づいて解釈されてきたのか」という疑問に対して、第二次世界大戦におけるホロコーストを安易に解釈しようとしてきた結果だと論じる。特に、わかりやすい答えやストーリーを求めがちなメディアと、それを簡単に受け入れてしまう大衆によって。 歴史を学ぶ意味とそれをどう未来に活かすかを、強烈に考えさせられた。 非常に感銘を受けた。
1投稿日: 2021.08.08
powered by ブクログ【『サピエンス全史』著者、推薦! 世界的ベストセラー】欧州の若き知性が、近現代思想の”性悪説”をエビデンスで覆す衝撃作。「様々な分断を統合しうる一冊」(ユヴァル・ノア・ハラリ)。
0投稿日: 2021.06.25
