Reader Store
海辺のカフカ(下)(新潮文庫)
海辺のカフカ(下)(新潮文庫)
村上春樹/新潮社
作品詳細ページへ戻る

総合評価

1166件)
3.9
312
406
288
50
11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    半年ほどかけてゆっくり読んでいたけれど、ずっと面白かった気がする。 少年がすごく大人っぽくて、私には分からないような話をしていたのが印象的。 村上作品らしく、性の描写が独特だった。 佐伯さんを愛していたんだなぁ、、

    1
    投稿日: 2022.12.17
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    初の村上春樹作品です。上巻はあるシーンが受け容れられないので評価ナシです。 もっとナルシシズム溢れる作品なのかと思って敬遠していたけど、普通に面白く読めました。 ナカタさんと星野青年のコンビ最高です。主人公のストーリーよりもむしろそちらに惹かれました。星野青年が最後の方仙人ぽくなっちゃうのは残念な感じもするけれど、それもまたヨシ!

    6
    投稿日: 2022.12.16
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    とても良かった。やっぱり村上春樹は救いを提示してくれている。 親に愛されることなく育った主人公の旅の物語。メタファーは過激だけれど、神話をモチーフにしているのだと思う。でも、軸としてある話の流れはとても美しかった。

    1
    投稿日: 2022.11.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    分かるようで分からない、不思議な物語。 読了した後も謎が深まるばかりで、単純に面白かったとは言えない。

    1
    投稿日: 2022.11.19
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    はじめての村上春樹作品。 上はなんとなく読めたし、先は気になった。 下で気になってた謎が解明されるのか…!とワクワクしてたけど、ほとんど回収されず、謎は深まるばかり。 これは面白いのか?少なくとも今の自分には理解不能。 この本をお勧めしてくれた友達は「分からないのが面白い」と言ってたけどこれは分からなすぎた。 30代に突入したら違う作品も読んでみよう。

    1
    投稿日: 2022.11.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    むっっっっっず メタファーがなんちゃら、以前にメタファーだけでついていくのがやっとだ! と言っても集大成な気がする、世界の終わりに通ずるものがたくさん出て来た、記憶を保管する図書館とか壁に囲まれた町とか いやーーむずい 最終的にカフカ君は呪い?を打ち勝ち、好きなように生きていい(誰を母親と思ってもいい)みたいなことなのだろうか 難しすぎる 結局親の愛に問題があると正常ではいられないという近年の物語の根幹ではあるな 佐伯さんとかナカタさんとかカーネルとか、よくよく考えたら全く意味はわからんけど、まぁそこにあーだこーだ当てはめたい人は楽しいんだろうな 正直入り組み過ぎて汲み取れん そういう意味ではノルウェイは傑作

    1
    投稿日: 2022.11.10
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    初めてちゃんと読んだ村上春樹作品 面白く読めたけど、スッキリする感じはない やたら性的な描写が多いけどあまり意味を感じない 引き込まれて続きが気になったけど最後まで読んでこれで終わり?って感じだった

    1
    投稿日: 2022.10.22
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

     出会いと別れ。それぞれの人生が、人や物に出会うべくして出会い、役割を果たしていく。その中で失われるものもあるし、形を変えるものもある。  自分の人生にとっての"出会い"をもう一度見つめ直して、大切にしたくなるような作品だった。

    1
    投稿日: 2022.10.08
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    登場人物に愛着が生まれたし、いろんな場所の情景を想像できて実際に自分が旅行した気分になれた。記憶はそこまで重要な物じゃない。

    0
    投稿日: 2022.09.25
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    それぞれの独立したものが意味を持つようになる話の流れが面白かった。 迷宮性が自己と自己の外側それぞれについてのメタファーだという描写がすごく好き。

    0
    投稿日: 2022.09.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    それを抱えていることがどんなに苦しくても、生きている限り私はその記憶を手ばなしたいとは思いません。それが私の生きてきたことの唯一の意味であり証でした。(358ページ) . 道を見失わないこと。道からはずれないこと。それがなによりも重要だ。(477ページ) . あなたさえ覚えていてくれたら、ほかのすべての人に忘れられてもかまわない。(526ページ)

    0
    投稿日: 2022.09.07
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    星野さんとナカタさんのコンビめっちゃ好き! 特に星野さんはあんまり村上春樹作品っぽくないキャラで新鮮、カーネルサンダースとかもいつもとはテイスト違って面白かった!カーネルサンダースのキャッチする時のセリフとか笑った笑 あと星野さん一人になっちゃった時の描写、灰が積もって……って言う比喩が「あぁああ!!」ってなって感動で痺れた。比喩描写の秀逸さは正に村上春樹の真骨頂だよね。 村上春樹作品らしくかつ分かりやすい。下巻半分越えたあたりで一気に物語が動き出して面白くなる。それまでが例え冗長であっても、村上春樹作品なら美味しく読めちゃうから不思議。 そして星野さんとナカタさんのやりとりが可愛すぎて、微笑ましくてにこにこが止まらなかった。

    1
    投稿日: 2022.09.03
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ・1章ごと視点が変わり飽きがこなく読みやすかった ・少年が大人になるりあたり出会う葛藤、それを乗り越えていく成長の様が描かれていた。 ・佐伯さんとカフカのメタファーを含んだ関係性を読み解くことが難しかった。 ・クラシックに触れたくなった。トリオ大公を聴きながらコーヒーを飲みたい。

    0
    投稿日: 2022.08.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    村上春樹作品をあまり読んでいないので、作品群のなかで「海辺のカフカ」がどんな位置付けなのかは知らないが、かなり面白い作品なのではなないかと思った。 この話は要するに、少年がどう大人になっていくのか、その過程をファンタジーで描いた作品だ。登場人物が非常に多く、彼らが最後に合流するまでの道のりが長いため、上巻を読むのはかなりしんどかったが、下巻はその蓄積があってかするすると読めた。特に、佐伯さんとナカタさんが会うシーンは非常に気持ちが良い。 そのあとの展開はメタファー多めなので混乱しそうになるが、比較的分かりやすいよう丁寧に書かれていると感じた。カフカ少年が道に迷わず目的地にたどり着けるように複数人の大人が彼の面倒を見たように、村上春樹によってわたしたちも物語の着地点にきちんとたどり着けるように導かれる。 そこまでの道のりの解釈は個人に託されているけれど、読後の感想としては少年の成長であるとわかるように。長々と書いたが、とても面白く、よくできた作品だと思った。

    0
    投稿日: 2022.08.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    後半は読み進めることが止められなかった。 ナカタさんとホシノさん。 入口の石を開けたナカタさんは閉める前に長い眠りにつく。 ホシノさんはナカタさんの意思を継いで閉めることにする。 佐伯さんは自分の記憶を燃やして息を引き取る。 カフカくんは佐伯さんの思い出と海辺のカフカの絵を大切にこちらに戻ることを決意する。 また、メタファーだ〜

    0
    投稿日: 2022.07.15
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    いちいちオシャレでした。少しメタファーが強い 印象を持ちました。佐伯さんと田村カフカの絡みの 部分が少し私的には、あまりしっくりこない場面がありました。でも理解できないこそが文学なんだなと改めて認識できた作品でした。感じることが大事なんだと、特に村上春樹の作品は、そういったカテゴライズされない作品が多いので、「海辺のカフカ」は特にカテゴライズするのが難しい作品だと感じました。登場人物がユニークでしたね、ジョニーウォーカー、カーネル・サンダースなど、特に下巻での、ホシノ青年と、カーネル・サンダースの絡みが、印象的でしたね。

    26
    投稿日: 2022.07.11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    なんとなくすべて答えが出てチャンチャンになった風だけど、いろいろと辻褄が合わないし解決しないエピソードや登場人物が多すぎて、こんなんでいいのかな、という感じ。

    0
    投稿日: 2022.07.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    星野さんの考え方とか、あまり知的でないところが少し面白いし、でも一生懸命考えているところが好き。少し自分に似たものを感じる。ナカタさんを大切に思って、感謝や思いを頑張って伝えているところも良い。 人柄や情景がすごくストレートに鮮やかに伝わってくる本だと思った。でも世界を行き来したりするところが複雑でついていけない部分があった。 ・325のベートーヴェンのはなし、「偉人というのもずいぶん大変なものなんだ」「こういっちゃなんだけど、俺はとても偉人になんかなれそうにないや」と328 ・326星野さんの大島さんに対する印象、知的で、清潔で、育ちも良さそうだ。それにとても親切だ。 ・★330「音楽には人を変えてしまう力ってのがあると思う?ー…」「もちろん」「なにかを経験し、ー…そこにかるすべての目盛りが一段階上に上がっていることを知ります。」 349戦いについて、タフになる事について 373真ん中表現 377はじめ378 396-399星野さん 404今日の世界の中心的なテーマは現状維持 406沈黙は深く、耳を澄ませば地球の回転する音まで聞こえそうだった。

    0
    投稿日: 2022.06.25
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    どうやらわたしには村上春樹は合わないらしい。 若干のネタバレ。 ファンタジーだから非合理は当たり前、と覚悟していたはずだが、非合理どころか、ぶっ飛びすぎてて不条理だらけのラスト。小学生男子の漫画のオチか?と思うはちゃめちゃぶり。上巻の話になるがジョニーウォーカー氏と猫の描写はとにかくグロい。ジョニーウォーカーに、訴えられなかったのだろうか?その昔、読みやすい!冒険!とか勧められた事があり気になって読んでみたが、最後で台無しになった。

    0
    投稿日: 2022.06.15
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    少年が大人になる過程の、冒険というか、困難というか、家出をした時のあの感覚。始まりからかなり掴まれて、物語に振り回された。ナカタさんや猫たちのなんとも和やかな振る舞いに癒しを得つつ、裏側の世界みたいなものに初めて触れた作品。

    3
    投稿日: 2022.06.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    思春期にモヤモヤと考える悩みや葛藤といった、ある種普遍的なテーマを描きながらも、作者にしか描けないような唯一無二の表現が散りばめられていた。不思議な世界観でありながら、読後感としては爽快さが残り、他の人の感想も気になる作品。

    0
    投稿日: 2022.06.03
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    面白かった。どうしてそう思うのか考える。決して、分かりやすいような物語では無かった。メタファーばっかりで、はっきりと登場人物の心情が、ひどく抽象的に描かれる。台詞の掛け合いは基本的に軽快。なんでだろう。多分村上春樹の選ぶ言葉の一つ一つ、けったいな形容が僕自身を心の深いところで共感させてんだと思う。中学生の頃に読んだ時と、想像するものが一致するのは凄いなと思った。

    0
    投稿日: 2022.06.02
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    村上春樹ダークファンタジー。 主人公が冒険に出て、帰ってくるという定型だとしても、村上春樹が書くと、こうも不思議な読み心地になるのか〜。

    0
    投稿日: 2022.05.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    描写をありのまま受け止めることはできた。ただ、”意味”をつかみ取ることができなかった。辿り着いた結論は”別に結論を出さなくてもいい”で、不思議で、でも不快じゃないこの感覚を、自分だけの感想としていつまでも留めておこうと思った。

    0
    投稿日: 2022.05.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    物語の結末が気になりスラスラ読めました。 こだわりの音楽や 哲学などは、ちょっと よくわからないのでスルー気味でしたが 面白かったです。 ホシノくんの「俺っち」がお気に入り。

    0
    投稿日: 2022.04.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    下になって面白さが倍増した。 謎の多い作品で、わからないことだらけだからこそ、何度も読み込んで理解していきたいと思った。 入口とは世界の境目の場所で、ナカタさんは気絶したときにそこへ入ったから、文字が読めなくなり猫と話せるようになったのかな?そこからカフカの父を殺して均衡みたいなものが壊れたのか?入口の場所には十五歳の佐伯さんが居て、佐伯さんも彼氏の死によってその場所で止まっている人物。カフカもその場所へ踏み込むが、力強く出る。現実で生きていくと決意の瞬間ではないかな?と思った。 色々書いたけど、把握できているのか、だいぶ疑問。

    1
    投稿日: 2022.04.19
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    一言で言うと「村上春樹の世界観は、僕には分からなかった」です。 村上春樹の本は、初めて読みました。 1.読んだ理由 ・読書はするし、ここ半年は小説も読むようになったが、村上春樹は読んだことがなかった。一冊も読んだことがないのは、どうかと思った ・ドラマ「真犯人フラグ」を見ていたら、文学の話が出たり、作戦会議が行われるバー(文学好きの友人の店)でも村上春樹の本が置いてあったりして、興味を持った ・ネットで、村上春樹で初めて読むには何が良いか、調べたら、海辺のカフカがお勧めだった 2.感想 ・自分がSF苦手というのもあるが、ご都合主義でどうとでも言えてしまう展開が苦手 ・森に入っていく話(兵士に会うまでの部分)が、特に冗長に感じた ・主人公に共感できなかった ・星野青年とナカタさんのやり取りが面白かった。星野青年の感情の変化、ナカタさんを受け容れていくところが良かった 3.最後に ・少年の成長の話なら、宮部みゆきの「ブレイブストーリー」が好きです

    0
    投稿日: 2022.04.03
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    主人公のカフカくんもさながら、ナカタさん、星野青年、佐伯さん、大島さん、全ての登場人物に個性があって引き込まれる作品。 村上春樹さんの表現力に圧巻される一冊。風ひとつにしてもこんな表現が出来るんだって思いました。 家出した少年とナカタさんとの世界が微妙にマッチしていく話の展開が面白かった。 どちらかというとナカタさんのファンです。

    1
    投稿日: 2022.03.30
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    読み手によって解釈がここまで180° 変わる作品は初めて出会ったと思う。テーマが戦争 (争い) ということもあってナカタさん編の猫を殺すシーンなどはなかなか過激だった。 上巻ではカフカのシーンが非常に面白かったが、下巻では一転してナカタさんと星野さんとの交わり、入り口の石にカーネルサンダースが出てくる部分が個人的にはテンポもよく、読みやすくて面白かった。 カフカのシーンの性的な描写とかそういうのを含めてタフって意味なのか、最後までタフになるという意味は完璧には分からなかったかな…

    2
    投稿日: 2022.03.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    再読(と気づくまでになかなか時間が必要だった)。 たまに村上春樹ワールドに浸るのも悪くない。 15歳だから仕方ないが、わりと勃起したりするシーンが出てくる。 それは別に良いとして、佐伯さんの書いたものを、本人の意思に従って、二人で河原で焼くシーンがある。ふと思ったのだが、世の中には人目に触れることなく消え去ってゆく文章が想像以上に沢山あって、その中には、読むべきもの、後世に引き継ぐべき価値のあるものが沢山あるんじゃないだろうか。 だからこそ、いまわたしたちが目にすることのできる作品はきちんと楽しまなきゃいけないし、少なくとも、一度読んできれいに忘れちまうなんて、作者に対する冒涜だ、などと考えました。

    0
    投稿日: 2022.03.27
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    村上春樹作品に出てくる主人公の雰囲気が好きです。四国の海辺でゆっくり読書することを想像してみると次の旅先は決まり☺︎

    0
    投稿日: 2022.03.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    読み手によって心に描かれる風景が異なるような物語。森の不思議、幼い頃に別れた母や姉に対する思い、思い出を心の中に整理して新しい世界への旅立ち、様々な心の動きが描かれた作品。

    0
    投稿日: 2022.03.04
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    「でもね、僕にはまだわからないんだ。僕は途方にくれている。母は僕のことを愛していたんだと君は言う。とても深く愛していたんだって。君の言うことを信じたいと思う。でもね、もしほんとうにそうだとしても、どうしてもわからないんだ。なぜ誰かを深く愛するということが、その誰かを深く傷つけるというのと同じじゃなくちゃならないのかということがさ。つまりさ、もしそうだとしたら、誰かを深く愛するということにいったいどんな意味があるんだ?いったいどうしてそんなことが起こらなくちゃならないんだ?」 村上春樹の小説には、嘘がない。メタファーや色んな喩えが含まれちりばめられていても、それは本当のことを私たちがシンプルに察するための親切さになっている。村上春樹の大衆性は、まさにその親切さにあり、面白みというものは文章のテンポの良さや言葉の音感やリズムにあるといえる。 「じゃあ、佐伯さんはそこに戻った僕にいったいなにを求めているんですか?」(略) 「あなたに私のことを覚えていてほしいの。あなたさえ私のことを覚えていてくれれば、ほかのすべての人に忘れられたってかまわない」 なんて残酷なんだろう、なんて嘘がないんだろう、なんて美しいのだろう!以前私はこのブクログのレビューで述べたが、本当に人が他者を愛しうるのは、その人を喪ってからである。村上春樹は、まず『ノルウェイの森』で直子から深い森の中で一緒に歩いている時に「私を忘れないで」と言われたことを「彼女は僕を本当には愛してくれなかった」と言っていた。つまり、それは村上春樹自身も言うように"純粋な恋愛小説"として、これから生きていかなくてはならない人間にとって、愛の反証として記憶が作用していることを浮き彫りにした。今回の佐伯さんとは、そこが違う。カフカくんはもともと忘れられない人として母親の記憶をもっていたが、忘れよう、棄てようとしていたのだ。そうでないと、とても生きていけない、愛の証明として命を燃やせないと思ったから。ところが、佐伯さんは、忘れなくていい、痛みは固有のものだから、そこからいとしい人が立ち上がりいつも一緒にいてくれるということをメッセージにしていた。そして、タフに生きる15歳になり、真新しい世界の一部としてかけがえのない命を得たのである。見事だ、としかいいようがない。そう、痛みは固有のものだから、離れ難い他者との唯一の愛の豊かさとなりうるし、また、繋がりの証左たりうるのだ。

    1
    投稿日: 2022.02.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    重厚感がある物語だと感じた。 「成長」「多様性」、「寛容」、「赦し」といった使い古された薄っぺらい言葉の羅列になってしまうけど、何が大切なことを語っているように感じた。

    1
    投稿日: 2022.02.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ー自我の在り方ー  少年は、15歳の誕生日を迎え、家出をしてからの旅を。中年は、失った自分自身の影を探す旅と、魂お入れ物としての半生の旅を。二人の主人公に寄り添った人物たちも、それぞれの人生の一つの章に幕を閉じる。  後半の記憶に新しいのは、ミスマッチ、セレンディピティだろうか。無学な肉体労働者が哲学に触れ、少年は自身のための暗示にむかってひた走っていく。  傷心の未亡人は、書くことを終え、役目を終えた中年は命を落とす。  中学生に読んだ時は、それはもう難解という認識すら持てず、ただ、訳の分からない世界の前に圧倒されるばかりだった。  初めて、モナ・リザを見て、ルーブル美術館の一室で立ち尽くす人のように。  次に読むときのためにこの感想とも言えない記憶の断片を残しておく。  2022.2.13

    4
    投稿日: 2022.02.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    読了。 謎は謎のままに、秘密は秘密のままに、仮説は仮説のままに。 ミステリーやサスペンスは謎を後半で回収していく折り返しの列車だけど、これは違う。 上巻でのいくつもの謎は、下巻では濃密さをましてさらに増えて、折り返すわけでも回収する訳でもなくただもっと先へ、もっと奥へと列車が進んでいく感じ。 ただ不完全燃焼として終わる訳ではなく、片道切符だけ渡されて村上春樹の不思議な世界に降ろされて海辺のカフカは幕を閉じる。 心地よい時間だった。 ちなみに、図書館でこの本を手に取った理由は「海」という文字が目に入ったからだが、このストーリーにおいて海の描写はない。

    0
    投稿日: 2022.02.02
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    村上さんの世界観に飲み込まれた。 2人の世界が交わりそうで交わらないところが面白い。色々な世界の話が入り組んでいて不思議だった。もう一度今度読んでみたい。

    0
    投稿日: 2022.01.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    あらすじ 「僕」田村カフカは東京都中野区野方に住む15歳の中学3年生である。父親にかけられた呪いから逃れるために家出を決心し、東京発の深夜バスを四国の高松で降りる。カフカは高松の私立図書館に通うようになるが、ある日目覚めると、自分が森の中で血だらけで倒れていた。カフカはその晩、深夜バスで出会った姉のように思うさくらの家に一泊させてもらい、翌日から図書館で寝泊まりするようになる。そこでカフカは、なんとなく自分の母親なのではないかと思っていた館長の佐伯と関係を持つようになる。ナカタもまた野方に住む、知的障害のある老人であった。通称「猫殺し」の男を殺害し、東京を離れた。ナカタはトラック運転手の星野の力を借りて「入り口の石」を探しはじめた。その頃ちょうどカフカは、図書館の司書の大島から父親が自宅で殺されたニュースを知らされる。やがて警察の手がのび、カフカは大島が提供してくれた森の隠れ家に移る。一方、「入り口の石」を探すナカタは図書館にたどり着き、そこで佐伯に会う。そしてナカタが帰った後、佐伯は机に突っ伏すように死んでいた。 森の奥でカフカは、旧帝国陸軍の軍服を着た2人の兵隊と出会い、彼らに導かれて森を抜け川のある小さな町にたどり着く。そこで佐伯に会ったカフカは、彼女から元の世界に戻るように言われる。 マンションに隠れ住んでいたナカタは「入り口の石」を開いた後、客死し、ナカタを失った星野は黒猫の助言を受けナカタがやり残した「入り口の石」を閉じる仕事にとりかかった。 最終的にカフカは現実へ戻ることを決意し、岡山から新幹線に乗って東京への帰途につく。 感想 春樹さん作の中でも一二に好きな作品 やはり、お母さんだよね。

    3
    投稿日: 2022.01.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    村上春樹は中二病とよく言われているが、これは主人公が15歳なのであまり違和感はない。無駄に性描写が多いとは思うけど。でも読み易かった。

    1
    投稿日: 2022.01.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    言葉の引き出しが少ない私が読むと、訳がわからない、というのが正直な感想。しかし、人生でこれを読むべきであったとういう自信は持つことができた。少年が成長することができて良かった。星野くんが1番のお気に入り人物。

    0
    投稿日: 2022.01.07
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    言わずと知れた話題作後編。 薄っぺらくあらすじを書くと、自分の存在に意義を見いだせない少年が、様々な出会いと葛藤と他人の深層心理に触れながら、少しずつ自分が社会に適合、または受け入れられるような変化・成長を描いた、ファンタジー長編。 ファンタジーって言葉には語弊があるかもしれませんが、少なくとも私にはそのような感想を持ちました。 前編での感想にも書きましたが、要は作者の世界観が肌に合うかどうかが本作を、もしくは村上春樹作品を楽しむ上での肝となります。 ちなみに、偉そうな書き方になりますが、私は可もなく不可もなくです。 やっぱり少し理解し難い部分もありますし、自分には絶対生み出せない世界観に浸れる楽しみもありました。 別に作者の世界観を分かるからといってどうとかでもないですし、要は純粋に文字が頭に入っていく毎にもっと頭が文字を欲するかどうかが全てですよね。 なんか取りまとめのない、何が言いたいか分からない感じになってしまいました。 繰り返しとなりますが、私は結構楽しく読ませてもらいました。

    0
    投稿日: 2022.01.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    上巻を1日1〜2章、下巻に入ってからは、1日5〜7章程度のペースで読んだ。 読み応えのある不思議なお話。全くかけ離れているかに思えた二つの世界がつながりをもっている不思議さがおもしろかった。 15歳の田村少年が、この壮大な冒険の中で、様々な人と出会い、愛を受け、再び現実世界に戻っていくことができ、読み終わって、さわやかな気持ちになることができた。 大島さんとのやりとりやかけあいもおもしろかった。 ナカタさんと星野さんのコンビもおもしろかった。 今までの自分は現実世界のお話のほうを好んで読んできたが、(考えてみればどちらにしても創り話なのだが)、村上春樹さんのお話を最近読むようになって、ファンタジーの世界に浸るというか冒険することも、けっこういけるんだなぁと新しい自分に気付いた。年を重ねてきて、世界が広がり、頭が柔らかくなってきたのかもしれない。 とにかく読み終えることができてよかった!

    0
    投稿日: 2021.11.18
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ホシノくんの 「ナカタさんならこういうときどう言うだろう、ナカタさんならこういうときとうするだろうって、俺はいちいち考えるかもしれない。それは俺の中で、ナカタさんの一部は生きつづけるってことだから」 と言う言葉がかなり心に響いた。 やんちゃな青年を成長させた、ナカタさんと過ごした短い期間に対しての、これ以上ないような感謝の言葉だと思う。 村上春樹さんの本は、比喩を含めた言葉のチョイスが素晴らしくいつも引き込まれる。長編ということもあり、本の中の彼らと過ごした時間は長く、最後のページをめくった時の彼らとの別れを惜しんだ。

    0
    投稿日: 2021.11.17
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    話の筋が面白いというよりは文体や表現、世界観にとても引き込まれた。文学というものは芸術にもなりうるということを初めて体験した。音楽や絵画が人の心を震わせるようにこの作品にはそういう部分がある気がする。逆に言えばある人が良いと感じた音楽でも別の人が聴くと全く感動しないというケースがあるように、芸術としての文学にもそういう側面があると思う。だからこの作品を読んで面白いという人がいる一方で面白くないと思う人がいるのは当然のことであるような気がする。芸術とは、おそらくその人が今まで何を感じ何を経験しどんなものに価値を感じているかによって感じ方が変わってくるのだと思う。自分も10年後にこの作品を読んだら感想がまた違ってくるのかもしれない。

    7
    投稿日: 2021.11.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    カラスと呼ばれる少年は、 彼のもう一つの人格なのか、 佐伯さんの元恋人と関係しているのか、 はたまたナカタさんと関係しているのか。 実在するのか実在しないのか。

    0
    投稿日: 2021.11.08
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    「君にはわからんだろうが、ねじれというものがあって、それでようやくこの世界に三次元的な奥行きが出てくるんだ。何もかもがまっすぐであってほしかったら、三角定規でできた世界に住んでおればよろしい。」 「世の中のほとんどの人は自由なんて求めてはいないんだ。求めていると思いこんでいるだけだ。すべては幻想だ。もしほんとうに自由を与えられたりしたら、たいていの人間は困り果ててしまうよ。覚えておくといい。人々はじっさいには不自由が好きなんだ。」 「経験的なこと言うなら、人がなにかを強く求めるとき、それはまずやってこない。人がなにかを懸命に避けようとするとき、それは向こうから自然にやってくる。」 「俺は変わった人間って、好きだよ。」ー「こんな世の中で普通の顔をして、まともに生きていけるようなやつは、かえって信用できねえもんな。」 「それはやはり君が自分で考えて、自分で判断しなくてはならないことだ。誰も君のかわりに考えてあげることはできない。恋をするというのは要するにそういうことなんだ、田村カフカくん。息をのむような素晴らしい思いをするのも君ひとりなら、深い闇の中で行き惑うのも君ひとりだ。君は自分の身体と心でそれに耐えなくてはならない。」

    0
    投稿日: 2021.11.03
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    少年から青年へと成長していく狭間の、性への目覚め、凶暴性、純粋さ、孤独感… そう言った感情の渦を、登場人物と情景がメタファーとなって紡ぎ出しているような気がした。 何度でも読みたい。きっと次はまた違うものが見えるんだろう。 村上春樹の作品は、やはり読み終わったときの重量感がすごい。 ついストーリー展開だけ追ってしまうことが最近増えてしまったから、読むのが少ししんどかった。

    0
    投稿日: 2021.10.17
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    超常的な描写が多いが、これは物語そのものが、本作のキーワード「メタファー」であるということなのだろう。少年は閉じた世界に逃げ込むが、母なる願いを受けて、現実世界に戻る決意をする。閉じた世界を否定していないのが本作の優しさだ。ナカタさんの口から出てきた白いものは悪意のメタファー(ジョニーウォーカー)だろう。少年の分身であるカラスだけでは悪意を止められなかったことから、少年の見ず知らずの人間ホシノくんの重要性も見て取れる。本作は、人生の苦境に立ち向かうことの意義と周囲の人との繋がりに言及した作品だと感じた。

    0
    投稿日: 2021.10.09
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    雰囲気好きじゃないのに最後に考察よんだらあぁぁぁああってなる感じが好きでした 甲村図書館のモデル行きます

    0
    投稿日: 2021.09.20
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    少年時の危うくもろい気持ちはいずこへ、はたして強くなれるのか。 田村カフカと名のっている少年は複雑でナイーヴなこころの持ち主、あるいは生い立ちのさびしさを持った少年。 ナカタという初老の男もかって少年であった時に異常な出来事に遭遇し、記憶を無くし、字が読めない。やはりさち薄い人生をおくっていた。 そのふたりの旅物語が別々に進んでいくのだが、やがて深い関係にあるのだろうと予想される。超常現象を加味して。ひとりの少年とかって少年であった者が、それぞれに繰り広げていく人間模様。巡り会う人達とのあたたかい交流を通して私たちは知ることになる。 ふたりが成長していくのか、まわりのひとたちが開眼していくのか、そのふわっとした人間模様を豊富な文学的の造詣によって村上春樹は華麗にみせてくれる。 アイロニー、メタファー、アレゴリー、アナロジーなどという言葉が飛びかうが、すなわち、反語、皮肉、逆説、隠喩、寓喩、類似、暗示の世界。 ほんとうは人間のこころのありようなんて千差万別、ひとりひとり違っていて、ひとりひとり複雑であるのが当たり前だけれど、普遍性をひきだされるとあたかも人類がひとりの人間のよう。 ひとりの人の外側は、そのひとの本質と同じであるかどうか。 まわりに合わせるとは、鳥が枝に止まって風に吹かれているようにはいかない。 はっとする言葉や文章がつまっている春樹節、と言っては失礼かしら。

    0
    投稿日: 2021.09.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    村上春樹の中で個人的に1番好き。何度も読むのを挫折したけど笑笑。読んでいると言うよりは不思議な夢を見た時の感覚に近いと言う感想。

    1
    投稿日: 2021.08.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

     以下に書くのは、現時点での個人的な感想です。ネタバレ含むと思います。  いくつもの解釈ができるところに、文学の面白みがあるので、分析や評論という意味ではなく、あくまで今の自分にはこう読めたよー、という意味での感想を述べただけです。作者としてもおそらく答えは持ち合わせていないはずだし、唯一絶対の答えなんて出そうとしてほしくないだろうと思います。小説の役割ってたぶん、問題の出発点を示すものにすぎず、問題の終着駅を示すものではない。出発点を過ぎるとその線路は、読者の経験や考え方を経て、樹形のごとく多様に枝分かれしてくるものだと考えます。  田村カフカが15歳(現実にも15歳)の頃の「魂」(これは即ちカラスと呼ばれる少年そのものでもある)は、カフカ少年がカラスに見送られて中野区を出てからは、ナカタさんの身体を媒介物として(ナカタさんに置き換わって)行為している。カフカ少年の魂は、周囲とは隔絶された空間を生き、時として自分を見失うほどの狂気に駆られる。ジョニーウォーカーとの関わり方一つを取っても、カフカ少年の行動規範(魂)はナカタさんの身体を使って具象化されている。  他方で、カフカ少年の「身体」はこの時、50代の佐伯さんと同じく、生ける屍となる。しかし、その生ける屍に、佐伯さんの死別した恋人の魂が入り込むことで、15歳のカフカ少年の身体が15歳の恋人の身体となる。そして、後述するように、ユートピアでその身体から佐伯さんの恋人の魂が離れ、ナカタ少年の魂が宿ることによって、現実の世界を生きたいという渇望を獲得することになる。  ナカタさんが小学生の頃の魂は、1940年代に空が光って(これは稲妻だろう)入り口の石が開いた時、ユートピアへ入ってしまい、3週間後に石が閉じられた時には現実の世界に戻って来れなくなってしまった(だから影が薄い)。その後、ホシノ青年とともに入り口の石を開いた時、ユートピアでたゆたっていたナカタ少年の魂は、ユートピアへたどり着いたカフカ少年の中に、居場所を見つけた。ナカタ少年は有能・恭順でありながら教師から体罰を受け、愛への信頼を失った。しかし、ナカタ少年の魂がカフカ少年の身体に宿った結果として、愛を信頼してみようと思い直した。遺棄同様の仕打ちの裏に隠された、佐伯さんの母としての真意ーーカフカ少年の身体を通じてこれを聴けたからこそ、愛をもう一度信頼してみようと思ったのである。  佐伯さんは、恋人と死別してからというもの、少女のまま魂だけ抜けてしまい、生ける屍のように、その日その日をやり過ごしている。現実の世界においても、彼女の時間だけは止まっている(記憶が蓄積できない)。そこで、日々の記録(日記?)を継続している。  他方で、15歳の少女の幻影は、入りロの石からユートピアに入ることができなかった佐伯さんの魂である。現実の世界をさまよっている。そして、40年近くの時を経てユートピアにたどり着くまでは、50代の佐伯さんの身体を使って、15歳の恋人(の魂)と交わろうとしていた。  ところで、佐伯さんはカフカ少年の実母ではない。佐伯さんは、恋人との死別後に、ただ何となく結婚し、ただ何となく子どもを産んだ。「ただ何となく」という罪悪感に苛まれて、ある少年を棄てた経験を持つ。  サクラはカフカの姉ではない。ただ旅中で遭遇した知人にすぎない。無意職や観念が具象化し、かくあってほしいという少年の願いと父の呪いとが共犯関係に立ち、姉を掲望する深層心理が夢の中でサクラを犯してしまうのだろう。一方のサクラは、少年に対して姉弟愛を抱いてはいない。だから、少年の渇望は一方通行であり、サクラは小学教師のように出血しない。  ジョニーウォーカー(田村浩一)はカフカ少年の父であり、大佐伯さんの恋人を誤って殺害した人物である。手段が目的化して理念・目的を忘れてしまっている。それは決して善悪の判断を超えているとはいえない。そこにアイヒマンとのアナロジーを見出せる。  一方、ベートーヴェンは、芸術家ではあるものの、ジョニーウォーカーとは異なり、理念を忘れず曲げなかった。  ホシノ青年は何となく虚ろに日々を過ごしてきた現代人の象敵であり縮図である。ナカタさんとの旅を通じて、物ごとに対する感度・感受性や、一つの物・人に対峙する根気よさを獲得していく。それまでは、「ただ何となく」過ごしてきたことへの罪悪感すらないまま「ただ何となく」人生を送ってきた。そんな彼にとって、今という時に吸着して離れないナカタさん、そこに没頭するナカタさんには、何か引っかかりを感じたのだろう。  カーネルサンダーズはホシノ青年の祖父である。認知症で記憶や時間の意味が薄れていく中、これをカーネルおじさんの人形にいわば冷凍保存して、ホシノ青年の人生の転機をサポートする準備をしていた。  白い気持ち悪いものは、カラス(1 5歳の少年の狂気じみた魂)である。父を無惨に殺害したり、肉片になるまで攻撃したりするという少年の狂気的な側面は、ナカタさんが佐伯さんの記憶を焼き尽くすまでは、ナカタさんの身体に宿っていた。しかし、ナカタさんがその身体機能を停止してからは、狂気は行き場を失っていた。カフカ少年の身体に回帰しては、カフカ少年の家出の目的は達せられない。そこで、入り口を塞いで、ホシノ青年によって現実に殺めてもらう必要があった。 記憶と記録ー生きることの意味と文字にすることの意味  現実の世界では、時間が重要な意味を持つ。すなわち、時間が経過すればするほど、記憶は蓄積されていく。ところが、現代人は、うつろに「ただ何となく」日々を送ってしまっている。出逢ったヒト・モノ・コトは深く心の中に記憶されないまま、それらの日々は消費されていく。もちろん、そのために、人生における思考の跡形は、時代とともに見えにくくなってきている。だから、大島さんのように、ギリシャ悲劇という記録を自分の中に記憶し、それを図書館という場を通じて他の人々の記憶にも宿らせようとする試みは、それ自体尊いものである。そして本とは、著者の判断について、その当否を超えて、歴史を超えて後世の記憶として残すための預言書なのかもしれない。  このようなことは、ナカタさんも本能的に理解しているようである。字の読み書きができるようになりたい、そして現実を自分の目で見据え、自分の頭で考えられるようになりたい。字が読み書きできた暁には、考えた跡形を記録として残したいという欲求だって沸いてくるかもしれないーナカタさんのいう「普通に生き」ることとは、主体的意思を伴うものである点において、現代人の多くのそれとは、異なる。  皮肉にも、佐伯さんは、図書館という記憶媒体の館長でありながら、愛する人を媒介として自分を形作ってきた経験や判断が記憶されることを望んでいる。言葉だけでは捕捉しきれないものがそこに潜んでいることは、図書館運営の中で気づいていたのかもしれない。問題は、自分のことを忘れないでいてくれる人、愛する人と出逢えるかどうかである。 人生は捨てたもんじゃない  佐伯さんは、過去に生きる女性だが、ナカタさんに出逢うことで、海辺の絵にはあの恋人以外にも、自分を理解しようとしてくれる大切な人が描かれていたことに、ようやく気づく(虚ろには気づいていたのではないか)。そのため、ユートピアでナカタ少年の魂を宿したカフカ少年に対して、佐伯さんは自分の記憶を受け継がせた(血を含ませた)。それにより、今を生きようとするナカタ少年の魂は現実の世界に舞い戻り、現実から逃避しようとするカフカ少年の若い肉体は新たな生命を取り戻す。「佐伯さんの息子」という新たな生命を。  以上が、僕なりの推論です。有効な反証はいくつもありうると思います。再読を重ねるたびに、僕自身もこの推論に反証を投げかけることもあると思います。

    5
    投稿日: 2021.08.26
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    いろんな場所を行き来した。 どんなに遠くまで行っても、自分に降り注ぐ時間からは逃れられないし、自分の取り巻く音からも逃れられないし、運命からも逃れられない。 それを静かに受け入れるために、強くならなきゃいけない。 間違ったことをしてしまったとしても、どんな状況に陥ったとしても、それがいいことなのか悪いことなのかを無理に判断するのはやめて、流れに自然に身を任せる、それだけでいいし、道筋はもうあらかじめ決まってるから、それを知らされてないのは自分だけだから、なぞっていけばいい。 出てくる人たちがみんな温かった。 母との温かみに触れられる作品。

    3
    投稿日: 2021.08.25
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    難しかった。 分からない部分が多い。 佐伯さんの、 「あなたに私の事を覚えていてほしいの」と佐伯さんは言う。そして僕の目をまっすぐに見る。 「あなたさえ覚えていてくれたら、ほかのすべての人を忘れられてもかまわない。」 という言葉が好き。

    0
    投稿日: 2021.08.16
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ミステリーではないので、結局謎は謎のまま謎として残る謎の終わり方だった。 つぎの3つの大きな問いだけでも答えをはっきりさせたくて、いろんなひとの意見を覗いてみた。 問1 佐伯さんは、カフカの母親なのか? 問2 さくらは、カフカのお姉さんなのか? 問3 ジョニーウォーカーとカフカのお父さん(有名彫刻家)は同一人物なのか? 『読者の自由な解釈でよい』が作者の公式見解のようだが、たぶん、No, No, Yes, っぽい。 ナカタさんと星野青年の漫才風珍道中は、読んでてホッと出来た。佐伯さんの『必要以上に内省的』な姿勢とは対照的に。(『 』内の表現は、鳴らない電話機の描写として登場。妙に記憶に残ったので使ってみた。) 『入り口の石』とかナカタさんの学級の集団催眠とか、理由がよく分からない部分は、たくさんあるけれど、物語としては非常に面白くて、すいすい読めた。 カフカ君は、どんなふうにタフな大人になるのか。登場人物の中でいうと、大島さんのお兄さんが、一番近そう。なんといっても、脱走兵二人に入り口へ案内して貰う、という共通の経験があるし。

    11
    投稿日: 2021.08.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    村上春樹著『海辺のカフカ』読了しました。 他の村上春樹作品同様、物語の中に引き込まれるけど、全体として何が答えなのかが分からない。というかそもそも答えが作られていないのかもしれない。長編小説で読むのにはかなり時間をかけた分、読了した瞬間にその世界から引き離されてしまった感じがすごい。現実ともう一つの世界を歩んでたけど、現実だけになった。みたいな?難しい メインの流れがギリシャ悲劇のオイディプス王のようになっていて、ただその運命に抗うようにナカタさんがいる風。カーネルサンダースやジョニーウォーカーなど、なにかの象徴のような人が出てきて、訳わからないこともあったけどこの小説は理屈ではなく、感覚で読むんだ!と思いながら読んだ。 にしても村上春樹の作品の主人公は根暗、発言少なめ、本好きみたいなのが多いな。だからこそ引き込まれるような魅力があるのだろうけど。 何を言っているのか分からないけど、何故か記憶に残る。自分の人生を1cmくらいレベルアップさせてくれる

    1
    投稿日: 2021.08.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    何度目かの再読。初めてこの作品を読んだのは確か小学6年生の頃で、当然のように意味がわからない箇所がたくさんあったけれど、十数年を経た今でも大好きで定期的に読み返す作品。これまでの春樹作品の登場人物がうまく帰ってこられなかった場所から帰ってきて、勝てなかったものに打ち勝って生き続けていくカフカくんは強い。新しい世界の一部となった彼のこの先を見てみたいとも思う。

    0
    投稿日: 2021.07.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    むずかし!わからね! これを読み終わった数日後に東北で大地震があって世界がガラリと変わった なんか因縁めいたものを感じちゃって、再読したい気持ちがあるんどけど、また何か起きたら…なんて怖気ついちゃってなかなか読めないんです

    0
    投稿日: 2021.06.02
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    「あなたには私のことを覚えていてほしいの。あなたさえ私のことを覚えていてくれれば、ほかのすべての人に忘れられたってかまわない」

    0
    投稿日: 2021.05.30
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    それぞれの物語が最後に綺麗に一つにまとまる感じがいい。 セリフとナカタさんの存在が純粋で好き。 少し回りくどい言い方が考えさせられる。 もう一度何も知らない状態で読みたい。

    0
    投稿日: 2021.05.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    初めての村上春樹のため、不思議な話(現実性のない)話しで驚いた。でも途中から止まらなくなり一気に読了してしまった。物語の結末は読み手の捉え方次第なのだなという感じ。物語にはなにかを象徴するような、人間ではない存在が多く登場した。 個人的にはホシノ青年がナカタさんと共に旅をしてるデコボコな感じか好みで、ホシノ青年がどんどん世界を広く捉えていくのが印象的だった

    0
    投稿日: 2021.05.17
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    今までの自分と決別するためにカフカとナカタと共に行動していた青年がメタ的な出来事を反復しながらここにいる意味というのものを知っていく話に感じた。青年が旅をきっかけとして音楽や本を教授することの重要性を知ったこと、またそれを味わうためのシュチュエーションが関係してるのではないのか、という点が印象に残った。

    0
    投稿日: 2021.05.08
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    前篇を読んでいるときに、ああ面白いという気持ちになっていた。図書館で生活することが決まったとき、一方、ナカタさんとジョニー・ウォーカーが他方では登場していたりと。象徴の話といえど、上巻は現実的な物事を軸にしていたから、物語に心を置きやすかったと思う。下巻は象徴的なものが〈象徴〉として描かれていたと思う。そこには受けるべき時間の制約もないし、あるのは想像力で作られた形だった。だから海辺のカフカは、想像力を携えてもう一度読まないといけない。というのが正直カフカ少年のパートで思ったことなのだけど、それよりナカタさんと星野青年のふたりの物語がものすごくよかったというのを言いたい。このふたりは海辺のカフカにおいて影の役割なのだろうけど、その役目だからこそとてつもなく輝いて見えたのかもしれない。サービスエリアで会う場面もよいし、カーネルサンダースのアパートでナカタさんがご飯を作ってふたりで食べるところもよかった。なにより石を巡る彼らの軌跡はずっとずっと心に残るだろう。 〈カラス〉、〈図書館〉、たまたまとはいえ自分の以前書いた話に似ていると思った。勘違いか.....。けどあのとき書いた話は観念だけで突き進んだから似たような気も少ししている。

    0
    投稿日: 2021.05.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    何を伝えたいのか、とかそういった意味を考えるのはやめてこの世界に没頭した方がいい。 言葉では人に伝えられない。 哲学書としても読める。

    0
    投稿日: 2021.05.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    私が生まれた年と同じ年にできた物語で心が惹かれた。私が大好きな海でのシーンが沢山出てきた。人が海を見ると落ち着くのはきっと何もないからなんだねという所が一番心に残った。ナカタさんは、小学生の時に気を失い、記憶と字を失った時から、はっきりとした形とアイデンティティのない白いものに取りつかれてしまっていたのかな。そうだとしたらナカタさんに申し訳ない気持ちになる。でもナカタさんだけでなく、誰の人生もはっきりした意味は持っていないのかもしれない。時間は沢山あるから、意味に追われず自分のしたいことをすればいいという村上春樹からのメッセージなのかもしれない。

    0
    投稿日: 2021.04.30
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    どんなものでも、数量があるポイントを越えると、リアリティーが失われてしまいます。 今日の世界の中心的なテーマは『現状維持』であらようだった。

    0
    投稿日: 2021.04.26
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    15歳の少年が高松に家出をする物語。 一人称で語られる時もあれば三人称で語られることもある、さらにはロシア文学のように呼称も様々に変化する文が素敵でした。 多くの人が印象的だとレビューしている 大島さんの「万物はメタファーだ」と言う言葉は物語の中軸を担う表現になっている。

    0
    投稿日: 2021.04.11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    はじめて読了した村上春樹。 世界の万物はメタファーなんだ。 とても印象的だった。 カフカが暗示したものはなにか。 想像の世界があってはじめて現実がありうる。 想像・夢と現実が対等なんだという考えと、タフな少年になりたいカフカくんが想像の世界の中で呪いを解いていくことを考えると 結局自分の弱さや不条理さの答えはすべて自分の中にあって、それを知って認めることなのかなと勝手に解釈した。 大きなメタファーの中からそこで暗示されていることを見つけ出していくのは、なんというか社会学的?なような気がして私は結構好きなジャンルだなと思う。 あとは、カフカはじめ自分が物語とか思想とかに熱しやすいこともわかった笑

    0
    投稿日: 2021.04.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    この世界はメタファーだ 大島さんの知的な喋り方好き。現実におったら何喋ってんねんってなるんやけどな 村上春樹は深読みしてこそなんやろなって思うから、時を経てまた読みたいと思います

    0
    投稿日: 2021.04.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    あらゆるものがメタファーで、一度流し読みした程度では到底理解できない…ああ、村上ワールドって確かにこういうのだったよなと勝手に納得してしまった。 佐伯さんの言う「絵を見る」ことで「生きる意味」を見出す、大島さんの言う「いろんな大事なものをうしないつづける…それが生きることのひとつの意味」 これからも15歳のカフカ少年は「生きる」ことの意味について模索していくのだろう。

    0
    投稿日: 2021.03.25
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    バラバラだった物語の筋が、一本の糸になるみたいに纏まって、謎だった部分が明かされていく快感。村上先生は全てを語ってくれないスタイルなので、読んだ後に色々考察してみるのも面白い。

    0
    投稿日: 2021.03.08
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    高松・甲村記念図書館という場所に、田村カフカ、ナカタさん、2人の人物が強く強く引き寄せられていく。 いくつも張り巡らされた伏線、 徐々に明らかになっていくけれど、明らかにしてはならない数々の物事、 田村カフカの成長していくタフさ、 ジョニー・ウォーカー以外の愛すべき登場人物たち、全てにおいて夢中にさせられました。

    0
    投稿日: 2021.02.22
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    登場人物の情景が浮かんでくる作品で、読み進めやすかった。物語全体でみると、訳もわからず読み進めてしまった感が残るが、それぞれの場面で何かしら繋がりがあってそれを感じながら読めたのでとても満足している。感想を、と思っても言葉が繋がらない。答えが出てこない。それを探しているタイミングで「言葉で説明しても伝わらないものは、まったく説明しないのがいちばんいい。」と書いてくれてあってほっとした感じがする。読後には人それぞれの感想、考え方、捉え方があっていいと思う。そう思わせてくれる作品。 数年後、また読み返してみたい。

    1
    投稿日: 2021.02.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    はじめてこの作品を読むときには、他者の考察を伴わずに読み進めることをおすすめする。 「わけがわからない」、それでもなんだか「納得がいく」そんな不思議な読後感を、自分だけのフィルターを通して味わって頂きたい。 無数のメタファー、交錯する世界・時間。 私もはやく、自身の半身を見つけ出したいと思う。

    1
    投稿日: 2021.02.19
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    現実の世界や夢やメタファーがそれぞれ存在感を持ちながら物語はさらに大きく展開し、終結した。 この物語を読み終え、改めて、何が起きて私は何を感じたんだろうと考えるが、とても言葉にできそうにない。沢山の残った謎も、そのままにしておきたい。答えはいらないと感じている。 カフカが言った、「ことばで説明してもそこにあるものを正しく伝えることはできないから。本当の答えというのは言葉にはできないものだから。」と言う表現が相応しい。 カフカと呼ばれる15歳の少年が求めた強さとは、勝ったり負けたりする強さではなく、外からやってくる力を受けてそれに耐えるための強さだった。 この旅で、本当に強くなることとは、自分の中にある恐怖と怒りを乗り越え、明るい光を入れること。冷えた部分を溶かしていくことだと知る。

    4
    投稿日: 2021.02.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    中学生か高校生の頃に読み、久しぶりに読み返してみました。 お伽話のようなお話ではありますが、登場人物が魅力的で情景が浮かんでくるので、楽しく読めました。

    0
    投稿日: 2021.02.11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    一組の男女が若くして深く愛し合うも少年を突然の不条理な死が襲い、二人は分たれる。少年の死を境に少女もまた生気を失い、生きながらにして死んでいるような影の薄い存在になる。時を経て、なにかのきっかけで少女の命が失われた時、二人は再開を果たす。この展開はノルウェイの森にもあった展開。 少女は結果的には少年の後を追って死ぬこととなるがその死のタイミングは一種、運命的なものに決められていてそれまでは少女は(本人としては無意味に)生き続けざるを得ない。悲しみは悲しみのまま、損なわれた心は損なわれたまま、受け入れる強さを持つ女性の不思議な魅力(同時に危険でもある)はノルウェイの森の直子なり、本作の佐伯さんなり、色褪せることがない。 下巻のナカタさんと星野くんの旅は悪しきものの住む異世界への扉を開け、そして時がくればその扉を閉める旅に他ならない。そしてこの扉を閉めるには誰かの命が代償として必要となる。このモチーフは騎士団長殺しに繋がっていくものだろう(異世界との交通が生まれる村上作品にはありがちな展開なのかもしれないが)。 終盤のメタフォリカルなカフカ少年の旅の意味を深く考察することはできなかったが再読の機会に譲るとしたい。

    7
    投稿日: 2021.02.07
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    「生きる」とはどういうことなのか。奇しくも、読書とは関係なしにちょうど自分でも考えていたところ、読了。我々は何のために生まれ、死に向かって生きているんだろう。 作中では、「絵を見なさい」つまり「私を忘れないで」というメッセージが遺されている。大切な人を忘れないでいること。 多様な解釈が許容される作品であるとは承知の上でも、解釈をまとめるのは難しい笑 でも、たくさんの知識と示唆を与えてくれる村上ワールドを、今回も堪能できました。

    1
    投稿日: 2021.01.17
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    素晴らしい思いをするのも君一人なら、深い闇の中で行き惑うのも君1人だ 読みすすめるときは止まらなかったけど、内容はちょっと複雑で理解できなかった 後は回りくどい言い回しがちょっとめんどくさい カラスは、あの男の子カフカの中の、客観的にみた自分なのかなあ ナカタさんも、ホシノさんという男の人も、いい人そう 佐伯さんも結局お母さんだったのかわからないし、 ナカタさんが殺した猫ゴロシのジョニーウォーカーは、カフカのお父さん?で、佐伯さんはなんでその人と結婚したんだろう よくわからない しかもめっちゃセックスするし、描写が細かい

    0
    投稿日: 2021.01.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    2020.4.19 "This book is basically text-based LSD" "This is one of the most vivid books I've ever read. I'll never forget the scenes and imagery portrayed in this book."

    0
    投稿日: 2021.01.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    初めて読んだ村上作品。情景の描写がくどくどしていて、読んでる最中は嫌になったけど、違う人の作品を読んだときに物足りなさを感じるくらい背景がはっきりと頭で浮かんでいたのが衝撃だった。結局この話のキーワードはメタファーで自分が今見てるものにも違う見え方や考え方があるのかなって勝手に解釈しました。また大人になって思慮深くなったら読みたいです。

    1
    投稿日: 2021.01.09
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    上巻に続いてゆっくり読み進めた。 本の中の空気を味わって、 ゆっくりゆっくり。 読後は狐にはなをつままれた気分。 今度は書評や下敷きになっている本、 映画化舞台化したもの、 見ていこうかな。 結局、村上作品最初から見ることに なるような。。

    4
    投稿日: 2021.01.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    物語に乗せた、芸術性溢れる哲学書のよう。 村上春樹さんにハマりたての私が言うのもなんですが、 作家というのは寄せ付ける人を選べる職業だなと。 発信する質が良いほど ついてくる人の質も良いし、 相乗効果となる。 村上春樹さんの唯一無二の世界観と 溢れる文才、芸術性が詰まった作品だと思います。 村上春樹さんくらいになると 読了後も残る謎までも 味になりますよね。 作家の創造性として評価してしまう。 戦略でしょうか。笑 考察を読んで、メタファーについて、納得しました。 深すぎる!!!

    5
    投稿日: 2021.01.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    もうただただ不思議な話。ナカタさん、好きだなぁ。ナカタさんを見ていると、自分がものすごく汚れた人間のように感じる。猫を惨殺するシーンはリアルすぎて本当に気分が悪くなった。でも、こんなよくわからない話の設定で書ける村上春樹は本当にすごいと思う…

    0
    投稿日: 2021.01.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    多分中学生くらいの時に読んだけど内容がさっぱりだったのと、描写にうわ〜ってなった記憶 今読むと違うのかな、、、

    1
    投稿日: 2021.01.04
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    よくわからないことがのよくわからないまま終わった笑 理解力が足りない? けどナカタさんと星野くんのコンビは好き。

    1
    投稿日: 2020.12.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    恥ずかしながらこの年になってのハルキデビュー。 デビュー作としてカフカは適当だったのかどうかは不明。 舞台となっている高知に2回ほど訪れているので土地勘が少しあり、何となく情景が浮かびやすいかなぁと思ってハルキデビューをカフカにしました。 これが春樹の世界なんですね。 フワフワ浮いてて、俯瞰的てか鳥瞰的な感じがする。 カフカ少年と老人ナカタさんのパラレルワールドが続き、途中で交わる。 散りばめられたネタはある程度回収されている。 ある程度だよねぇ、わかんないままの部分も多い。 カラスと呼ばれる少年の謎とか、ナカタさんがなぜ猫と話せるようになったかとか、星野青年はこの後、ナカタさんになるのか?とか。 気になりだしたらキリがないけど、このままフワフワしたまま終わるってことでいいんですね。。。春樹ってこういう世界ってことでいいですね? (誰に念押ししてるんだか、、笑) 最大の謎は海辺のカフカの場所。 ここが画を描いた場所。ってところに佐伯さんとカフカは実際に行くんだけど、、それっぽい場所が地図を見てもわからない。 どなたか教えてください(笑

    0
    投稿日: 2020.12.03
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    ジョニー・ウォーカーに続き、カーネル・サンダースの登場など、ワクワク感が止まらない(とはいえ、カーネルさんは実在の人物なので、問題はないのかな、という点と、そもそもどこまでイメージでどこまでが現実で、というテーマにはあまりそぐわないのかな、という2点は気になった)。 大島さん「僕らはみんな、いろんな大事なものをうしないつづける・・それが生きることのひとつの意味だ。でも僕らの頭の中には、そういうものを記憶としてとどめておくための小さな部屋がある。きっとこの図書館の書架みたいな部屋だろう。そして僕らは自分の心の正確なありかを知るために、その部屋のための検索カードをつくりつづけなくてはならない・・言い換えるなら、君は永遠に君自身の図書館の中で生きていくことになる」 図書館が一つの大きな意味を持つこの物語は、それをまさかの内面化することで終わりを迎える。本のない図書館、というのは、華氏451度を思い出させる。趣旨は違えど、それの有する意味合いはどこか似通っている。

    0
    投稿日: 2020.11.26
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    「海辺のカフカ」は歌であり、絵であり、田村カフカ自身だ。 ナカタさんも佐伯さんも、入口は違うのだろうが、かつて森の奥の町に行ったのだろう。ナカタさんは長く居たため、文字が読めなくなり、記憶もあいまいになった。佐伯さんは、その時の景色を歌にした。 田村カフカは、これからも、世界で一番タフな15歳であり続け、現実の世界で生きていかなければならない。 ホシノさんがナカタさんに巻き込まれ、苦労させられる姿が、ユーモラスで好ましい。ホシノさんは、自ら望んでナカタさんと一緒に行動するわけだが。

    1
    投稿日: 2020.11.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    村上作品を読むのは2作目だったが、人気が出るのが何となくわかった気がした作品。 独特の感性があるなと思ったが、同時に好き嫌いが激しくマンネリ化しないかとも思った。

    0
    投稿日: 2020.10.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    めっちゃくちゃ面白かった。中日ドラゴンズの帽子をかぶってアロハシャツを着ている星野くんがとてもすき〜。面倒見よくて良い青年だったなあ。ナカタさんと星野くんのパートは全部すきだった。ナカタさん…死んでしまったのが悲しいよ…。やっぱり村上春樹の長編は面白いなあ。

    4
    投稿日: 2020.10.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    やはり、村上春樹の世界は独特で、その独特さゆえに人を惹きつけるんだなと思った。象徴的な存在をあそこまで難解ながらも想像をさせる文章は、村上春樹ならではなのではないかと思う。

    1
    投稿日: 2020.10.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    これほど楽しく読めて難解な小説もなかなかないであろう。スイスイ物語に引き込まれるが、「よくわからない」という点は変わらない。 15歳のタフな少年カフカくんは、カラスという名の少年の囁きのもと、夜行バスで東京から四国へ向かう。「ここに居てはいけない」という絶対的な信念が彼を四国へと導く。まず、夜行バスでは姉のような存在のさくらと出会い、あらゆる意味で世話になり、関係をもつ。そして香川の私営図書館に入り浸るようになり、管理人の大島さんと仲良くなる。大島さんと日々を過ごすうちに、館長の佐伯さんと出会い、やがて関係をもつ。佐伯さんは、若い頃に大切な人を失い、その後の人生に価値を見いだせず淡々と生きてきた。カフカくんは、その佐伯さんに対し、幼い頃に家を出た母の影を感じていた。 一方中野区在住で文字の読めない老人、ナカタさんはネコ探しのアルバイトをしながら、変わらない日常を送っている。しかし、ある依頼に応じてネコ探しをするうちに、ネコ殺しのジョニーウォーカーと出会う。目の前でネコを殺すことに耐えかねたナカタさんは、ジョニーウォーカーを殺害し、近所の交番に出頭。しかしポリスは認知症の戯言として相手にしない。やがてナカタさんは逃れるように、四国へ向かうようになる。その途中、トラックの運転手、ホシノ青年と出会い、2人のあてもなき旅が始まる。 カフカくんは中野区で父が殺されたことを知る。警察が参考人として彼を追うため、大島さんの案内で高知の山奥に身を隠す。そこで父なるものを殺し、母のような存在、姉のような存在と交わった自分に悶々とする。 ナカタさんは香川を徘徊し、やがて図書館にたどり着く。そして佐伯さんからノートを預かり、それを燃やす約束をする。佐伯さんは全てをやり遂げたかのように、その場で果てる。ナカタさんは自らは読めない文字を自ら燃やし、仕事を全うした後に静かに息を引き取る。 カフカくんは、森の奥へ彷徨い歩く。森の奥で出会った佐伯さんは、彼に自分のことを忘れないでほしいと伝える。そして、現実の世界に戻るよう伝える。カフカくんは、佐伯さんが母なのかどうか尋ねるが、佐伯さんは巧妙にはぐらかす。 ナカタさんが死んだ後にホシノ青年は入り口の石を閉める作業に取り掛かる。そこで、石から現れ出た悪の根源(ジョニーウォーカーのメタファー?)を退治する。そうしてホシノ青年も現実世界へ戻ってくる。 カフカくんも、佐伯さんの言を聞き入れ、東京へ戻る。 あらすじとしては、二部構成のロードムービーのようでありながら、あちらこちらにメタファーが飛び交ってて、非常に難解である。ナカタさんはカフカくんの意思が乗り移った存在として、ジョニーウォーカーを退治したのか?佐伯さんは本当にカフカくんの母なのか?この辺りがスッキリしない、深読みしても分からないあたりが氏の特徴ではあるが、多くの村上ファンが言う通り、謎解きは重要でないのであろう。そう思うと、このストーリーで印象的だったのはカフカくんを助ける大島さんとナカタさんを助けるホシノ青年の存在だ。 大島さんは家出少年のカフカくんを匿いながら、孤独な彼に寄り添いつつ実に適切な助言を与えている。フェミニスト団体が来て図書館に好き放題言い放つとき、彼らは大島さんがLGBTであることを理解していない。押し付けがましい非寛容さや想像力の欠陥を恐れるという大島さんのセリフは非常に印象的だ。大島さんはシューベルトを聞くには訓練が必要だ、不完全さをもった作品は不完全が故に人を惹きつける、など、文化的教養でカフカくんを包み込む。 一方のホシノ青年はやんちゃなドライバーだ。やんちゃな自分の面倒を見てくれたおじいちゃんに似ているというナカタさんを放っておけず、ズルズルとついていく。何の目的もない旅だが、ナカタさんの世界を見る姿勢を気に入っていたホシノ青年は、ナカタさんを全力でサポートする。大島さんとは真逆のタイプだが、ホシノ青年はナカタさんを適切にサポートし、ナカタさん、ひいてはカフカくんの目的達成に貢献する。 それぞれの人物が導かれたメタファーに抗わず、非論理的ながらもその世界に身を流していく姿はまさに人間世界の面白さと理不尽さを表している。人は自分にとっては主人公ながら、誰かにとってはメタファーであり、思ってもいない人が、重要性を帯びていたりする。安直に名前のつけられない関係性の相手が、精神的の井戸の底に眠っていたりする。それを手繰り寄せるのは手繰り寄せる側にしかできない。彼らは運命と自分の哲学を信じて生きている。その中で流れに身を任せたり、必要な場合は戦って生きている。そういう意味では風変わりな出来事に揉まれながらも、我々の人生と何変わりない日々を生きている彼らに共感を覚えざるを得ない作品である。

    1
    投稿日: 2020.09.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    15歳の少年の脱皮の記録。 村上春樹を久しぶりに読んだけど、こんなに面白い世界だとは思わなかった。10代で読んだら私にら理解不能だったと思う。 主人公の田村カフカは父親からの呪いの言葉から逃れるよう四国へ旅立つ。そして仮説の母、姉と出会いその人たちとの関係を経て、また結果的に許すことで、その呪いから解き放たれ、新しく生き出すことができた。その彼のストーリーの裏で、猫と話せるナカタさん、トラック運転手の星野さんの不思議な冒険が繰り広げられる。彼らは一体何のために、、と疑問も多いのだけれどこの試練も彼らの人生には必要不可欠な通過儀礼だったのだろうか。 其々の視点に神妙さと心地よさがあって、上手く絡み合ってカフカの世界が作り上げられている。 文章で交響曲を作っているようなことなのかな。

    0
    投稿日: 2020.09.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    上巻に続いて、ストーリーが繋がっていく様に引き込まれていった。星野くんが旅の途中でかなり成長していくのが、個人的に好きだった。

    1
    投稿日: 2020.08.31
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    下巻まで読みました。【ネタバレ注意】 色んな解釈がある本なんだなと思いつつ自分なりの解釈(仮説)。 海辺のカフカは佐伯さん(カフカの母)とナカタさんが、あるきっかけで半身を別の世界に置いてきてしまったことで世界のズレが起きてしまったという話。このきっかけは、佐伯さんが恋人の死をきっかけに別世界との「入り口」を開いてしまったこと。ナカタさんは、引率の教師の強い思い(戦争で会えない夫とつながりたい)により入り口が開いてしまい、その時に教師に叩かれたショックで放心状態になったナカタさんが半身を入り口に置いてきてしまった。 そこで"悪"が入り口を介してあるタイミングで カフカの父であるジョニーウォーカー(このきっかけは、恋人を失って以来空虚だった佐伯さんに、ジョニーが捨てられて放心状態だったから?)に取り憑いた。 以来悪は、自分の悪を息子に継承させたいと願う。そのために、それを実行させる「器」を探していた。そしてそれが、ナカタさんだった。 ナカタさんがネコと話しているのをみて、器であることを、悟る。 悪はナカタさんを標的にしナカタさんによって自分を殺害される。しかし、ナカタさんが手を下したのではなく、実質はカフカによってということになっている?これによって悪を継承させようとする。(死によって悪が移るということか?) ナカタさんは、カフカの父を形式上殺害して以来不思議な能力を使いはじめる。イワシやヒルを降らしたり。。これは、入り口をかつて出入りして以来使えるようになった能力とのこと。そして同時に、入り口の石を見つけてもう半分の自分を取り戻すことを求めはじめる。最終的には、取り戻したあと入り口を閉じる前に死んでしまうが。 (これは、ジョニーウォーカーではなく、父の思いをナカタさんが受け継いだのか?) 入り口を開いたのち 佐伯さんは、ナカタさんと会い、20歳以降の自分の人生が空虚であったことを悟り、書き付けた書類を焼き払うことをナカタさんに頼み、現世でやり残したことはないと息を引き取る。 しかし、想像の中で、息子のカフカに自分のことを覚えておいてもらうことを頼む。 ナカタさんは、頼まれた書類を、焼き払い息を引きとる。 終盤で、カラス(カフカの本来の意思のようなもの)が、生と死の境で悪と遭遇し対峙するシーンでは、 悪は自分の悪の魂が、開いた入り口を介して息子のカフカに、継承する経過の場面で、 カラスはそれを阻止しようとした、が実態がないためそれができなかった。 最後に兵隊に連れられた生と死の間の場所で、カフカが佐伯さんに会う。(カフカは入り口にから、佐伯さんは死によってそこにいた)そこで、まず15歳の佐伯さんとおぼしき人に会う。 この佐伯さんは、「死の世界」側の人で、そのときが来れば馴れている。というそのときとは、死ぬとき。もしくは、入り口が閉じてしまったときのこと。このとき脱出していなかったらカフカは永遠に現世と離れた、死に近い世界で存在し続けることになったと推測。 そのあと、現在の佐伯さんに会う。佐伯さんは「森から出なさい」と強く諭す。これは、現世にもどって生きろということ。 戻ると佐伯さんには会えなくなるが、海辺のカフカ を渡して、佐伯さんを記憶に留めておくように頼まれる。佐伯さんからの思いをカフカはしっかりと受け取り、前に進んでいく覚悟を固める。 これで、呪いに打ち勝ったカフカ少年(森脱出時に呪縛が解ける描写があった)は、その後自分の運命を受け止め、かつて自分を捨てた佐伯さん(母)を許し、血を受け継ぎ、人生を柔軟に、強く、生きていくことを決心する。 その直後に、ナカタさんの口から「悪」が出てくるが、最終的にその悪は、カフカが脱出したことで、ナカタさんの口から出てきたと思われる、そこホシノさんが入り口をふさいだところで、行き場を失いホシノさんにやっつけられる。そしてこれは、ナカタさんが望んだことであった。

    1
    投稿日: 2020.08.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ナカタさんとホシノくんのやりとりをずっと見てたい。 断固たる偏見を持って殺される命。 なぜ人は戦争するのか。 世界の端っこでは絶え間ない戦争が続く一方で、半永久的に規則正しく一週間が繰り返される図書館が戦争に対するメタファーなのかと思う。

    1
    投稿日: 2020.08.20
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    やはり難解な話でした。しかし、読み進めていくうちに引き込まれていったのも事実です。気になるフレーズに貼る付箋もたくさんになりました。 カフカ少年の成長の物語のように見せて、成長したのはホシノ青年だと思いました。身の回りに関心をもち、人と関わろうとするようになったのが彼の変化です。 では、カフカ少年は?彼は、自らの運命(予言)と決別したのではないでしょうか。もしくは、運命を受け入れて、生きる意味を見つけて生きていくことを決める、そういう話だったと思います。ありがちな言葉で言えば、自分探しでしょうか。(そして、青い鳥と同じで、自分ははじめからそこにいたのだと気づいたのだと思います。) カラス(=カフカ)と呼ばれる少年は、「魔女の宅急便」でいうジジの存在ではないでしょうか。自分が自分と対話している。人前では「カフカ」だけれど、物事を考えるときは本名の少年が考えている。それを後押しするのが理想像(自分を知らない人の前では、理想を演じることができる)のカラスと呼ばれる少年。全てが終わって、理想と実像とが一体化したときに、カラスと呼ばれる少年はいなくなったのでは…なんて考えました。 カフカ少年とナカタさん。一人の男性に大きく人生を左右された二人が交わりそうで実際には交わらないことの面白さがありました。 カフカ少年は、佐伯さんの恋人の生まれ変わりだったのかな、と思いました。そして、入り口の中にいたときに、同じく中にいたナカタさん(お椀山のときに入った…?)に出会っている。だから、二人は影が薄いという共通点がある。そして、そこで出会ったときに描かれたのがあの「海辺のカフカ」の絵。 整合性があるかどうかは置いておき、点と点を結び付けたくなる話でした。これは、読んだ人と語り合いたくなる。そりゃあ熱狂的なファンもいるよなあ、と納得です。 もう一度読むか、と言われれば、「うーん…」と悩んでしまいますが、読んでよかったかと問われれば、「イエス」と答えられる話でした。

    0
    投稿日: 2020.08.18
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    毎朝の10分読書として本書を選択したのは失敗だった。 数々の伏線が段々と繋がってくるストーリーである為、時間を掛けずに記憶が薄れる前に読むべきだったと反省。 一方で自分にとって本書が初の村上春樹作品であった為、妙に生々しく具体的に描かれる描写は読み慣れていないからか少し胃に来るものがあった。

    0
    投稿日: 2020.08.16
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

     非常に面白く読めた。上巻とは異なり、大分方向性が定まってきて、物語が進んでいる感じがあるから、中心的な2つの視点の、どちらが始まっても面白い。そのせいで、区切りが来て視点が切り替わるのがもどかしく思えたが、それが読む原動力にも繋がっていたと思う。  言葉の意味をつぶさに理解しながら読んだ訳ではないが、本編中で語られる話よろしく、メタフォニックな作品なんだろうな、と思う。独特の言葉選びは結構好み。展開自体に意外性はそこまでなかったが、優しく、思索的で、読み心地のいい小説だった。

    0
    投稿日: 2020.08.11