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地下鉄道
地下鉄道
コルソン ホワイトヘッド、谷崎 由依/早川書房
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総合評価

31件)
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12
6
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    ハヤカワ文庫の80冊に入っていた本作。何気に手に取ったが読んで圧倒された。 19世紀アメリカ、黒人奴隷の少女コーラが自由を求めて逃亡する物語。 もう衝撃的過ぎて驚くばかり。息付く暇が無いほどスリリング。残酷な描写も多くテーマが重い。私は黒人奴隷の歴史を何も知らなかったのだと気づかされた。読んで良かった。 「地下鉄道」とは昔の奴隷逃亡支援組織の名称で架空の物らしい。著者は本作でフィクションとして地下トンネルを走る鉄道を描き、これを利用して逃亡する物語に仕上げている。フィクションにする事でエンターテイメント化し、読者層を広げ、黒人奴隷の歴史を知らしめる事に成功している。(私が読んだぐらいなので) 黒人は奴隷船で運ばれ、二束三文で売られる。ジョージアの綿花農園での酷い扱いには読んでいて辛くなる。命がけで逃亡する理由がよくわかる。しかし、逃亡した後、状況は良くなる所かもっと悪くなるんだよね〜。これでもか!ってぐらいに。奴隷狩りを仕事にしている白人も居る。捕まえに来るから安心できない。 州ごとに黒人を取り巻く状況は違う。助かった〜、自由を得た〜と思ったのもまやかし。結局は白人の都合の良い体制になっている。特にノースカロライナは恐ろしかった。 逃げるコーラは賢く強い女性。様々な人々により彼女は助けられる。その中には白人も居れば黒人も居る。バレれば死刑が待っている事を知りながらも手助けをしている。刑の執行のやり方がムゴイのよ。虐待の様子もそうだけど、人間扱いしてない。 だから、黒人の反逆を恐れるのでしょう。人口が増えるのを恐れ、文字を学ぶのを恐れ、集会を恐れる。終盤のランダー氏の演説は意味深い。アメリカだけではなく、全世界のテーマとも言えそうだ。私個人としても国や歴史、人種問題を学ぶ必要があると感じた。 合間に入る人物エピソードがいいんだよね。それぞれに人生がある。特にエセルの章には救われた。 コーラは自分を置いて逃げた母を憎んでいたけど、逃げおおせた事に希望を見出していたんだろうね。最後に母のエピソードがあり、読者には真実が明かされる。 終盤がこれまた凄くて2度読みしました。 最近、ハヤカワ文庫の棚を見る事が増えた。読みたい本がまだまだある。80年の歴史は素晴らしいですね。

    39
    投稿日: 2025.10.04
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    前から気になっていましたが、俺的乗れなかった。読むのに時間が掛かってしまった 黒人奴隷、黒人差別。頭の中では分かってるし、映画もいろいろ見ているが、実感がない。 これが、いろんな賞を数多く取ってるが、アーサー・C・クラーク賞ってSFの賞ですから、受賞されているのにびっくり。 2025/03/29 8冊目

    0
    投稿日: 2025.03.29
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    米国で「ブラック・ライヴズ・マター」の主張が声高に叫ばれていた時に目を通して以来、四年ぶりの再読。黒人奴隷逃亡介助の役割を担う秘密結社として実在した「地下鉄道」を汽車の路線網に結び付けると云う大胆な発想のもと史実と虚構を巧みに融合し、物語性の高い作品を創造した手腕は見事。奴隷狩り商人リッジウェイが捕獲対象たるコーラに少なからずシンパシーを感じている部分は興味深かった。結びも安易に感傷的にならず良い

    2
    投稿日: 2024.09.04
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    奴隷制度の残るアメリカ南部。 奴隷が逃げ出すために、地下に鉄道が作られていた、という設定。 地下鉄には駅があって、それぞれの駅から地上に出るごとに全然違う場面に転換する。今っぽい視覚的効果だし、各場面の残虐さもネットドラマみたいな印象は拭えない。 それでも、奴隷制度の残酷さや理不尽さは十分に伝わるし、自由を求めて進んでいく主人公と、途中で命を落とす仲間達や支援者達に、胸が痛む。

    1
    投稿日: 2024.02.26
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    綿花農園に数多く囲われている黒人奴隷たち。その農園主からの過酷な体罰から逃れるため、たびたび奴隷たちが逃亡を図るも、一人の女性を除き逃げ落ちた者はいない。そんな逃亡者を母にもつ奴隷少女が一緒なら、逃亡できる運にも恵まれるのではと、奴隷の青年に一緒に逃亡をすることを、少女は持ちかけられます。 見つかれば見せしめとして体罰の末に命を奪われ、その協力者にも残酷な仕打ちが待っています。 逃亡手段は、地下に張り巡らされた秘密の地下鉄道。はたして、それに乗り継いで、南部から脱出することができるのか、というお話し。 過酷な労働、残虐な農園主、自警団、そして執拗に追い詰める奴隷狩りを生業とする白人など、どこにも安寧など存在しない閉ざされた世界。まるで農園単位にディストピアが存在していたかのよう。話し自体はフィクションでも、そのような人を人と思わない風潮が、ほんの約150年前の南北戦争当時まで普通であり、現代でも人種差別について、ニュースで報道されるのを見聞きします。それにしても、『アンクル・トムの小屋』を超える描写に、人間の残忍さを垣間見た思いです。 黒人奴隷が、いつから、どのように、どれだけの人数が、どのようにして、どれほどの期間にわたって大西洋を渡り、どのような扱いを受けてきたか…そのような過酷な歴史に対して、もう少し知っておくべきなんだなと、改めて気付かされました。 なお、地下鉄道とは、実際にあった奴隷制廃止論者の組織のコードネームです。当時、まだ地下鉄は走っていませんでしたが、この小説ではあたかも実際に地下鉄が存在しているように書かれていて、ストーリーに幅を持たせることに成功しています。 ピュリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞を受賞

    21
    投稿日: 2023.12.09
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    過酷な人生、なんていう言葉が甘っちょろく感じてしまう。 逃げるという行為には、残虐な仕打ちがついてくる。 協力者にもおよぶ、そのいたぶるような残忍さ。 それらを目の当たりにしながらも前へ進むコーラ。 読んでいてヒリヒリとした感覚に包まれた。 虐げる側も虐げられる側も、とがった部分をもっていないと生きてゆけないのかもしれない。

    1
    投稿日: 2023.11.19
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    多数の受賞が本作の評価を確固たるものとしている。それでも、黒人奴隷の歴史に馴染みのない日本人の私にとって、読書中の没入感は今ひとつだった。いや、ひょっとすると、その原因は題材ではなく、重要な登場人物の心の1人である奴隷狩人の心の機微に首を傾げながら読んだからかも知れない。制度の瑕疵と評する逃亡奴隷の娘に対し、自分の心情を吐露しながら長々と興味深く会話ができるのかどうか。報酬をふいにしても自分の手で殺したくなるのではないか。 主人公は逃亡中に地下鉄道の関係者に匿われる。「見えない鎖」に自由の意味を自問する場面がある。毎日、満員電車に揺られながら会社に通うサラリーマン諸氏にとって、格別新しい問いかけというわけではあるまい。

    0
    投稿日: 2023.07.20
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    読み応え抜群、全世界で広く評価されるのも納得。 冒険譚と史実のバランスが絶妙過ぎて、こんなにも重いテーマなのにここまで読みやすいのは凄すぎる。 ショッキングな描写もあるし、読んだ人なら誰しも差別について考えさせられるはず。

    0
    投稿日: 2023.05.22
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    黒人奴隷の少女の逃亡劇を描いた小説。小説とはいえ、アメリカの奴隷制度という実際の状況の基づいた設定になっており、奴隷制度時代がいかに過酷なものであったのかを感じることができる。 フィクションとはいえ、ここにかかれているような物語があって、はじめて現在のアメリカが、世界があるのだと思わされる。もっとも、過去にこんな時代があったという感傷的な作品ではなく、今まさに進行形で起こっていることにもあてはまることができる恐るべき作品だと思う

    0
    投稿日: 2022.09.03
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    黒人奴隷の少女が様々な犠牲を払いつつ逃亡し続ける物語。奴隷逃亡を支援する目的で地下に張り巡らされた鉄道を使って。 これは最高の良書。なぜなら全く眠くならない。アメリカの奴隷制度の歴史というノンフィクションの上に、冒険活劇風のフィクションが乗っている。自分自身、初めて知ったことも沢山。無駄な例えや修飾がないのにリアリティがある。実時間とは無関係にスピード感もあって飽きない。突然小話風に現れる、人物にフォーカスした章など、メリハリもある。 物語と面白いのはもちろん、アメリカの奴隷制度を知る上でも勉強になる。奴隷は人間とは別の生物扱いなのか?でも、性の対象にしてるんだから、やっぱり人間だと思ってるんだよな…、など。 日本にも士・農工商・穢多非人みたいな無茶苦茶な制度があったんだから、これを読んで頭ごなしにアメリカの歴史を批判するのも間違い。中学生ぐらいの必読書にしてもいいんじゃないかと思ったりする。

    0
    投稿日: 2022.04.13
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    奴隷の少女が地下鉄道に乗って自由への逃亡を始める。関わった人々はぞくぞくと悲しい最後を遂げる。それでも逃げ続けることが微かな希望となる。

    1
    投稿日: 2022.03.28
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    一言で言うと読まない理由ナシくらいの凄い小説。風景や感情の描写が素晴らしく、数日間彼女達の世界に引きずり込まれ、本当に奴隷解放前のアメリカにいた感覚になりました。残酷なシーン多いので、まだ多感な子ども達にはオススメ出来ないかなぁ。色々世界の歴史を勉強したりした、人種差別に関心ある酸いも甘いも経験したオトナなら読んで損なし。しかしながら、巻末の解説にもあるように、ハラハラドキドキのエンターテイメント性もあって一気に読めちゃうのもすごいんだよね。 芸術性高く、心に傷がつくのでそこは要注意かも。(実際のアマゾンプライムのドラマは怖くてみれませんでした)

    1
    投稿日: 2022.03.18
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    黒人奴隷少女の過酷な逃亡の果てに、自由 と言う世界があったのか。 黒人の奴隷の歴史の詳しい事は漠然としか 知らなかった。 この黒人の為の地下鉄道と言うファンタジー を通して語られる黒人奴隷達の非道なる扱い。 誰かの所有物としてしか生きられない現実。 黒人と言うだけで人との尊厳は失われ 物としてしか存在しない。 地下鉄道を通り抜け、自由を求めて安住の地 を探すコーラは色々な人たちに出会い、そして 失いまた新たな自由の地を求めて凛と前を向いて 生きている姿が人として美しい。

    0
    投稿日: 2022.02.13
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    文学ラジオ空飛び猫たち第43回紹介本。 原作の映像化作品がアマゾンプライムで5月に配信された話題作。南北戦争以前のアメリカで、当時まだなかった地下鉄道がじつは存在していたら、という設定で描かれた奴隷少女の逃亡劇。少女は地下鉄道に乗って北を目指し、奴隷狩りが追いかけるスリリングな物語。 奴隷の過酷さ、逃げても追われる緊張感、終盤の演説のシーンなど胸に迫るものがありました。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/43-e128f1u

    0
    投稿日: 2021.12.31
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    先にドラマを見ていたから、その場面を思い出しながら読んだけど、映像よりもおぞましく感じる表現もあり、先がわかっていても、いやわかっているからこそか、すごく怖かった。 コーラの母のエピソードは、ドラマでもかなり辛かっらけど、小説はまた違った悲しさがあった。 逃げられたかと思えば、追ってに追いつかれ、黒人が自由に暮らせているかと思えば、それを許さない白人たちに襲撃され…。 自分の肌の色や生まれた土地によって奴隷にさせられたり、命を狙われたり、非人間的な扱いをされることが本当に怖いことだと思った。 勝手に連れ去られて、奴隷にさせられるて、鞭で打たれて…この歴史は本当に恐ろしい。 そう感じながらもスリリングで先を読まずにいられない作品だった。 最近眠くてなかなか読み進められなかったけど。

    0
    投稿日: 2021.11.21
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    19世紀のアメリカ。南部では黒人奴隷が認められ、虐殺もあった時代。南部の農園で過酷な生活を送る奴隷少女コーラは、少年シーザーから奴隷を逃がす地下鉄道の話を聞き、ともに自由黒人として生活できるという北部へ逃亡を決意する。地下鉄道は文字のとおり、地下を走る機関車。黒人差別の激しさ、黒人を守ろうとする白人への攻撃など衝撃的な場面は多い。それでもいっきに読み進めてしまうほど面白かった。訳者あとがきで、この物語のテーマは「逃亡」ということだった。過酷な環境から逃げて、自分の新たな生活を切り拓いていく。ラストあたり、コーラが地下鉄道を進むところが好き。

    0
    投稿日: 2021.07.03
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    南北戦争以前のアメリカ。 そこには南部の黒人奴隷達を逃そうとする秘密の“地下鉄道”があった。 著者はその暗喩をそのまま物語の中に登場させる。 本物の地下鉄道に乗るのは黒人の少女コーラ。 逃亡、逃亡、逃亡。 安住はすべて一瞬の間。 偏見に基づく群集心理、 それは人間をここまで残酷にさせるんだ。

    0
    投稿日: 2021.06.28
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    19世紀アメリカ。現実にあった〈地下鉄道〉という黒人奴隷解放支援組織を実際の鉄道に置き換えてジョージアの奴隷少女コーラの逃亡劇を描いたフィクション。ファンタジーのような設定だがそんな甘い話ではない。逃げるコーラを追いかける奴隷狩人リッジウェイ。コーラと共に逃げる仲間は捕まり、彼女を助けた白人も殺され、コーラも捕まり、しかしまた地下鉄道に乗って逃げる。希望を感じさせるラストだが当時の黒人に真の希望はあったのか。どこまで行けば逃げ切れるのか?トンネルの中を逃げるように、漠然と北部に逃げるしかないのだ。しかしそれでも時代から逃げないと本当の安心はできないのだ。ユダヤ人にとってのホロコーストと同じではないか。 黒人を奴隷化した暗黒の時代を真摯に受け止めながらもその過去を消してしまいたいという作者の想いが伝わってくる。子供の頃に、アレックスヘイリーの「ルーツ」で受けた衝撃を思い出す

    2
    投稿日: 2021.06.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    毎週この数時間だけは、自分で自分を所有できる。 アジャリー より 「この国にあるものすべて、誰が作った?」 ジョージア より 選挙の日に投票する者は、五分の三ではなく一票と数えられるはずだ(下院議員の選出において黒人は3/5人と数えられた)。 ノース・カロライナ より この領土を家と呼んでいたのがどの部族か知らないが、インディアンの土地だったことは知っている。そうでない土地がこの国にあるだろうか? テネシー より Moonlightのバリー・ジェンキンス監督がAmzon Studioで映像化すると聞き、観る前に読了。 重いテーマながらも、文章は小気味良く、ときに詩的に、ときに切実なメッセージとなり読み手に訴えかけてくるようでした。 章のタイトルは人名のタイトルと地名のタイトルを往復する形式。地下鉄道という隠語、暗号名をファンタジックに、けれども生々しく切り取っています。 解説の円城塔さんが書かれていた『差別の撤回への願いに貫かれている』という言葉にもはっとさせられます。駄目な為政者がたまに言う発言の取り消しというのは馬鹿な話で無理なこと。それは行動、人の行いもそうです。過去は消えない。言ったこともやったことも消えない。できるのは、悔い改め認め、正しい行いへと導くことでしか贖えないことでもあり、それは差別という行為にも当然あてはまること。 また、本作では黒人奴隷内でのヒエラルキー的なものも描かれていました。老人や心身を壊した者、そういった弱者が確かにいて、その多くは女性だった。フィクションですのでどこから本当なのか、というとわからない部分もありますが、どこの農場も仲良くやっていた、とはなかなか考えられません。そこには序列や排斥があり、割を食う者もいれば、中には甘い汁を吸う者もいた、とも考えられます。 フィクション、エンタメ作品として描かれていますが、小説のみならず近年の海外作品は、読み手のリテラシーを問われる部分が大きくあるように感じています。歴史的な背景を読みとって、その時代に何があってどういう暮らしがあったのか、という知識がある大前提で作られているものも多くあります。BLM前後、アフリカ系アメリカ人に対する差別への関心が高まる中、差別という言葉の持つ意味を再認識した人も少なくないはずです。 ただその中で、ある種の『ジャンル』、ただのテーマとしてでしか作品に対して向き合えない、消費(商業的には消費活動は大切ですが)するだけの対象としてでしか見れない感想や意見の数も増えてきたようにも感じます。それが歴史に対する無知によるものなのか、ナラティブに対する異常なまでの期待なのか、危惧とまではいかないまでも不思議に思ったりもします。 どちらにせよ懐の深い小説であると同時に2作続けてピュリッツァー賞を受賞するくらい現代のリアルが詰まった作品でした。

    1
    投稿日: 2021.05.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ピュリッツァー賞,全米図書賞,アーサー・C・クラーク賞受賞は伊達ではない.傑作です. 舞台は南北戦争よりも更に前の19世紀前半で,南部の黒人は家畜以下の扱いで辛酸をなめていた.本当に家畜以下で,本当につまらない理由で凄惨な殺され方をしてしまいます. そんな中,ジョージアの奴隷コーラが「地下鉄道」の助けを借りて北部に逃亡するお話.逃亡する,と簡単に書いたが,行く先々で次々にトラブルが起きます.関わった白人も黒人も,みんな殺されてしまいます. 「地下鉄道」とは隠語で,黒人を保護して逃がす実在の組織だが,これを「本当に地下に鉄道が走っていた(19世紀前半に!)」という設定にしたところが味噌. p.201の最後から2行目は「シーザーの腕を」じゃなくて「サムの腕を」ですよね.

    1
    投稿日: 2021.05.11
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    入り口は、とても分かり辛かった。 翻訳のせいなのか、ふりがながないせいか、主語がないから誰のことを話しいるのか読み解くのに苦労した。 ただ、抜き差しならない酷い事実が伝えられようとしてる事だけは感じ取れたので読み進んだ。 これまで19世紀のアメリカを背景にした映画やアニメでよく登場する優しそうな黒人乳母や使用人の姿は、黒人以外の人種が描いた物語に差し支えない仮の人物像でしかない事を知った。表面の3%くらいがその黒人の人物像としてイメージ化され、しかも物語の重要度としてもいつも3%くらいにしかなっていなかったのだろう。 この凄惨さはどの程度事実だったのか、歴史として知るべきだと思う反面、ここまで酷い事となると見たくないと思ってしまうほど。 読むのがしんどくなったら、本を閉じて休憩すると良いと本の最後にある後書きに書いてくれていたが、あのアドバイスは本の冒頭部分で触れておきたかった。 後世が知っておくべき歴史背景がわかる小説としては5点 そこに文章の読みにくさで-2点です。

    0
    投稿日: 2021.05.04
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    黒人の奴隷制の話。とてもつらい話です。 終わり方は…言いにくいのでここまで。 アメリカの黒人の方々の気持ちを理解したい方はぜひオススメ。 私なんかは、日和見主義と言いますか、なんか当然に人種差別=ダメとしがちですが 具に歴史的事実が記載されていると思うし、なぜ差別が蔓延るのかを思い知らされる感じ。 根本的に社会構造からして違う。 そう考えると、ここに記載されている時代から、この現代の状態(現代の状態が手放しに良い状態と言えないけど)にまで、よくぞなれたな、と思います。

    0
    投稿日: 2021.04.29
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    ゴールのないマラソンの話。 19世紀のアメリカで黒人奴隷の亡命を手助けした組織『地下鉄道』が、組織名や逃亡路ではなく実際に"地下鉄道"だったら、という虚構を一つ入れるだけで広がる世界と現実感。 黒人奴隷を題材にしてるので当たり前に残酷な事が再三起こるけど、エンターテイメント性もありさらりとした文章で、翻訳本としての読みにくさも感じなかった。 「真実とは目抜き通りのショーウインドウのようなものだ。 目を逸した隙に並べ替えられ、うっとりと魅力的だが手は届かない。」 「自身を束縛する手足の鎖に不完全な部分を見つけ出すのだ。ひとつひとつを見ていけば鎖の各部はちいさなものだ。 でも周囲の者と繋がると、各部の弱さにもかかわらず全体としての鉄の輪は強く、数百の人間を服従させる。」

    0
    投稿日: 2021.04.21
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    人が人にできるとは到底思えない所業 人を人と思わないところに、現在も根深く残る問題のルーツがある 一度読み始めたら止まらないスリル、緊張感 アメリカ史の勉強に 長い長いトンネルの先に見える光は希望の光であってほしい

    0
    投稿日: 2021.04.13
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    ずしんと重く、残酷。なのにスリリングで、豊か。主人公の逃走にはらはらしながら伴走し、協力者の犠牲に瞑目し、狩る者に憤る。過去の物語は今につながっている。

    1
    投稿日: 2021.02.14
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    2016年、アメリカに起きて圧倒的な読者を引き寄せた小説。 著者は、ハーバード大を出た気鋭。 南北戦争勃発から100年を経て生まれた新たなライターだ。 物語は、祖母、母と続くアフリカ出身の奴隷の家系の3代目コーラをヒロインとして始まる。 州境を越え、北へ逃げと推せれば【自由】 その下支えの組織を「地下鉄道」と呼ぶ。「積荷」「車掌」「小屋」という暗号を用い、摘発の目を逃れるべく、暗号と比喩を用いてきた歴史が内容の凄絶さを物語る。 黒人奴隷が自由を求める100年余の歴史を現代の旗手が謳い上げる素晴らしい作品だ。中身の生臭さ、惨さをウェットな感覚でなく、筆者が得意としてきたアメコミ調すら感じさせる手法も駆使して描き切っている。 コーラが現実に目の当たりにした情景―逃亡の始まりは、ビッグ・アンソニーの肉が焦げる臭いの中/色目を使ったと言うだけで首を吊るされ燃やされた/沼地に沈んでいくメイベルetc 章ごとの名称は州や奴隷の名前を用い、暗号であるはずの地下鉄道は蒸気機関車が走る姿をイメージさせる形をとって行く・・それだけに州ごとの「奴隷社会」は何れも残虐、辛いなかに種々の臭い・色を見せている。 例えば「テネシー州:この州に人格があるとすればそれはこの世界の昏い部分を引き継いでいると言えるから」 かなり暗黒だったこの州の奴隷社会・・奴隷はアフリカから連れてこられたのち、奴隷船❔綿花畑❓ヨーロッパ痘のいずれかで死ぬもんだ」と言わしめている。そして「文明の進歩に関わる関税をヒトの命で払っている」と。 少女のコーラには当然のごとく、レイプ・妊娠・中絶の運命が待ち構えている。弱い、女が辿る当然?の宿業には眼を背けたくなってしまった。 インディアナで舞台となるヴァレンタイン農園~ランダー氏の人格はかつてあがめられたキング牧師を思い出してしまった。そしてその最期はマルコムXのようだ。 ノース・カロライナの駅長マーティンとその妻エセルとのエピソードは複雑。 人間性をどこまで極めて行くか・・地下鉄道を「いわば闇として継続させるためには」白人の眼から反らすことにより黒人を守り抜く心と技が重大・・その時のエセルの心情。。 最後の方で「アメリカとは闇の中の幽霊だ」と述べる言葉が有る。キング牧師が、マルコムxが、数多くの黒人たちの犠牲者の血があがなわれることなく、未だに続くkら―という差別。オバマの後のトランプによるいわば後退した施策、そしてバイデンの下 黒人女性副大統領の登場。幽霊はいまだに姿を見せぬまま蠢いている。

    0
    投稿日: 2021.02.08
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    血腥い描写が多く、気が重くなる。読了まで時間がかかった。それでも読んで良かったと思う。 黒人差別の実情、血に飢えた白人の惨さ。本作で描かれた奴隷制度こそ廃止されたが、本質は今も変わっていないように思った。いつか原文で読みたい。 「彼女は姿勢に気を遣い、歩く姿は槍のようだった。背を屈め続けるように仕込まれた、そして二度とは屈まないことを決意した者の在り方だった。」

    0
    投稿日: 2021.01.16
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    大傑作。 南部奴隷を逃す組織を「地下鉄道」と呼んだそうだが、それが本当に地下を走る機関車だったら?というアイデアを挿入、あとはかなり史実に忠実に描かれた、少女の逃亡譚。 『風と共に去りぬ』が正当な注釈がつくまで配信停止となったとき、ファンの私は「いやー、オハラ農園に仕えたマミーをはじめとする人々のように、奴隷だって(比較的)幸せな人生もあったのでは?」とか思ったけど、奴隷制をまるで理解してなかった。奴隷が何かをわかってなかった。ひとが何もかも奪われて生きる地獄を。 それでもこうして、どんな残酷な罰が待とうと、自由と尊厳を求める勇気を大勢が奮い、死んでいったことを知ろうとしていなかった。 教えてくれてありがとう。 そして物語としても、感情を排した語り口、美しい描写、テンポよき進行、実によくできちょる。

    0
    投稿日: 2021.01.16
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    奴隷として暮らすコーラ。 仲間と地獄のような農場から脱走を図る。 奴隷狩人の追跡に怯え、息を詰め、理解者との束の間の安息にささやかな生を得る。 どこまでもつらい物語。 だが、比類な物語性を持つ。 今年読んだ中で断トツの作品。

    1
    投稿日: 2020.12.10
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    アフリカで生まれ、父母を亡くして奴隷商の手に渡り、アメリカ南部の綿花畑で死んだ祖母。10歳の娘を残し、ひとりで農園から逃げた母。そして18になったコーラもまた、残忍な白人が営む農園を飛びだした。逃亡者を待っていたのは、黒人を北部にある自由州まで連れていくため、地下に張り巡らされたトンネルの中を走る蒸気機関車〈地下鉄道〉だった。しかし、農園の〈所有物〉であるコーラを、奴隷狩り人は執念深く追いかけてくる。安寧の地はどこにあるのか、なぜ彼女とその“家族”ばかりが逃げ続けなければならないのか。19世紀の黒人奴隷の目から見たアメリカの姿をデフォルメしつつ、現在も残る差別の心理を描いた歴史エンターテイメント。 まず文章が上手い。余分な装飾がなく、どの比喩もぴったりと嵌っていて、詩的でありながらストイックなほどエモーションに流れることがない。作中コーラは目を覆いたくなる悲惨な場面に何度も何度も、嫌になるくらい何度も遭遇し、当然泣いたりくずおれてしまうのだが、それを語る文章自体が涙に濡れてしまうことはない。 けれど物語の展開はサービス精神旺盛だ。蒸気機関の黎明期に地下鉄を走らせるというアナクロニックな設定はやっぱりワクワクすると同時に、作中コーラが何度も思いを馳せる「地下のトンネルを掘り線路を敷いた人びと」こそが、現実の奴隷解放運動に尽力した人びとの比喩となっている。コーラが逃亡する州の描写もときにSFのディストピアふうに、ときにホラーふうに誇張されているとはいうものの、特定の人種を絶えさせる目的で強制的に避妊手術をおこなうことや、被差別民同士の対立を煽って密告をさせたり、街中で私刑をおこなったりなどは、20世紀を通じて、そして今になってもさまざまな地域で続いていることを私たちは知っている。 キャラクターもまた魅力的だ。コーラをノース・カロライナへ乗せていく運転手の少年や、奴隷狩り人のリッジウェイと奇妙な絆を築いているホーマー少年はディケンズやマーク・トウェインの小説からやってきたよう。インディアナの理想郷のようなヴァレンタイン農園でランダー氏がおこなう演説はキング牧師を思わせる。そしてその最期はマルコムXのようだ。アメリカとアフリカン・アメリカンの近現代史がコーラの道程に濃縮されて再現されている。 白人のキャラクターももちろん重要な役割を果たす。地下鉄道の駅を守るのは白人でなければできないからだ。ときには駅と地下鉄道の秘密を守るため、彼らも奴隷制支持者のようにふるまわなくてはならない。ノース・カロライナの駅長マーティンとその妻エセル、そしてマーティンの父で元駅長の故・ドナルドのエピソードでは、矛盾を抱えた弱い人間が、それでも誰かを救おうとするギリギリの尊厳のようなものを描いている。私は特にエセルのどうしようもない人間味にリアリティを感じて、彼女の章の“正しくなさ”に涙が出そうにもなった。 また、コーラが女性だということも大きな意味のあることだろう。初潮が来るなり農園の奴隷仲間からレイプされたこと、手術で出産できない体にさせられそうになること。奴隷狩り人の仲間に体を狙われて、逃亡する隙ができたと考えること。かつてレイプされた経験があることをロイヤルに謝ってしまうこと。差別を受ける人種の少女であるがために幾重にも搾取される苦しみ、痛みが描かれている。コーラはとても強いが、深く傷ついてもいる。甲高い叫び声ではなく、闇を直視して深く掘り進む地下鉄道そのもののような低く声で、尊重されるべきものが尊重されない世界の異様さを訴えかけるのだ。 終わり方もシンプルながら現代に接続させていて上手いと思った。アメリカはいつになったらアフリカン・アメリカンの“故郷”になれるのだろう。

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    投稿日: 2020.11.02
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    アメリカの黒人差別を描いた名作といわれる小説は、描かれる物語の過酷さに加えて、人間の暗部、そしてアメリカという国の暗部まで切り込むような、凄まじい作品が多いと感じます。 この『地下鉄道』も、そうした作品の系譜を継ぐ凄まじさが伝わってくる。自由を求めたコーラが行き着いた土地の数々から、差別の根の深さ、アメリカという国の抱えた矛盾までも透けて見えてくるようです。 19世紀のアメリカ。南部の農園で奴隷として暮らしていた黒人の少女・コーラは、新入りの奴隷の少年・シーザーから、黒人奴隷を逃す“地下鉄道”を利用した、逃亡計画に誘われる。二人は逃亡を決意するが、奴隷狩り人のリッジウェイが二人の後を追い……。そして、コーラは各地で黒人の現実を知っていく。 地下鉄道というのは、史実的には黒人の逃亡を支援した組織の隠語のこと。しかしこの小説では、文字通り地下鉄道は鉄道として登場し、コーラたちは列車に乗り込み、黒人差別が厳しいアメリカの南部から、奴隷制が一足早く撤廃された北部へ向かいます。 物語の序盤で描かれた農園での過酷な生活と逃亡劇。そこから協力者の助けの元、地下鉄道で文字通り自由へ向かって走り出す姿は、自由の象徴としてとても分かりやすい。 作品の文章や話の雰囲気も硬質なのですが、この場面は映像として鮮やかに浮かんでくるよう。このイマジネーションだけでも、とてもユニークで、どこかロマンチックな予感を感じさせる。 北部に至るまでにコーラが訪れることになる、アメリカの各州。初めにたどり着いたサウスカロライナでは、コーラたちの農園があったジョージアとは違い、黒人に対しても先駆的な考えを持っているようで、コーラたちもここで仕事を見つけ、徐々に生活の場を築いていきます。このままここに居つくべきか迷うコーラたちですが…… 州を超えるごとに形を変えていく物語。しかし、その根底にあるものは変わらない。一見ユートピアに見えた場所も、一歩足を深く踏み入ればそこには強烈な差別意識が息づいている。そして、新しい生活を築こうとするコーラの後を追うリッジウェイの存在は、現実的な脅威として、そして奴隷時代の過去として、コーラにまとわりつき安息を壊していく。そして地下鉄道自体の存在にも危機が迫り…… 舞台が変わってのノースカロライナの章はかなり過酷。匿ってくれる人は見つけたものの、黒人は見つかり次第処刑され、匿った人物も無事で済まないということから、コーラはほぼ一日中屋根裏に隠れることに。そこから覗くことができる公園では、夜な夜な、黒人の処刑が行われ…… 奴隷を逃すため、全米に張り巡らされた地下鉄道、という、寓話的でロマンチックなアイディアが中核にありながらも、物語自体はなかなかに希望が見えない。ようやく見えた希望や、穏やかな平穏も、裏切られ、崩壊する。そして地下鉄道自体も危機に陥る。これもまた、今の象徴なのかもしれない。 映画だったか報道だったかは忘れたけど、黒人男性が白人警官の前を歩くとき、どうしても緊張してしまう、みたいな話を見た覚えがあります。当時は若干オーバーに思ったものの、最近の情勢なんかを見ていると、それはもはや冗談に受け取れない。平穏に暮らしていても、運が悪ければその平穏が一瞬に崩れる。それは現実としてあるのだろうし、その現実の象徴としてこの『地下鉄道』という小説もあるような気がしてなりません。 一方で単に白人批判に終わらないのも、この小説の力だと思います。白人、黒人以外にも、移民やインディアンなどの先住民族のパワーバランスや歴史も、物語の中に織り込み、そうした歴史を描くことでアメリカという国が誕生時から持ち合わせる、闇を描き、また別の場面では黒人間の意見の対立も描く。 国家の暗部、あらゆる人間の持ち得る闇と対立。それも描くから、物語は単に白人は悪、黒人は被害者、という図式ではなくより重層的になっていく。 コーラ以外の人間にも幕間ごとに焦点を当て、その人物が抱える様々なかたちの差別意識を露わにしたり、あるいは自由を求める人、愛を求めた人の輝きや哀しさを表したりと、そういう点でも素晴らしいと思いました。特にコーラの母の真実が分かるシーンは印象的。 アメリカでピューリッツア賞をはじめ7冠を受賞し、ニューヨークタイムズやウォールストリートジャーナルなど様々な有力紙誌で年間ベストブックに選出された作品だそうですが、その輝かしい実績もうなずける。それだけ迫力に満ち溢れた小説です。 一見天国に見えるところでも、地獄は地続きで存在していて、地獄に見えるところですら、より深い闇がある。それは今のアメリカの人種間の状況も表しているのかもしれないし、人間すべてが抱える、敵や他人と判断した人に対する残酷さ。判断されてしまった人たちの過酷さと絶望までも、表しているのかもしれません。 『地下鉄道』は世界に対し、おぞましいけれど忘れてはならない過去と、そして本来あるべき今の姿、未来に作らなければならない世界の姿を思いだせるような、そんな作品だと感じます。

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    投稿日: 2020.10.22