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ファン・ゴッホ 日本の夢に懸けた画家
ファン・ゴッホ 日本の夢に懸けた画家
圀府寺司/KADOKAWA
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総合評価

12件)
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    2025年現在、市立博物館の「大ゴッホ展」開催に合わせ、神戸の旧居留地界隈はゴッホナイトと称して賑わっている。メインの展示作品が(本書でも解説されている)「夜のカフェテラス」だからだ。 西洋美術は昔から勉強しているし、ゴッホ関連展覧会も、すでに2つ、3つ見ている。なのに、今回ほどゴッホが心に沁みることはなかった。 以前は、「危険人物」のようにしか思えなかった激情の男フィンセントを、今は“孤独に震え、膝を抱える純粋な青年”のように感じるのは、最新の研究とメディアのチカラもあるのだろうか。BBC制作のベネディクト・カンバーバッチ演じるフィンセントも秀逸だった。 さて本書。ゴッホの色彩を楽しみたくて、Kindleで購入。 「ファン・ゴッホは生きることの難しい人間であった」ー最初の文章からヤラれた。 ゴッホでなくても、ほとんどの人間は長く生きれば生きるほど、生きることの難しさを思い知らされる。昔よりも彼の絵が心に沁みるのは、それもあってのことかもしれない。 この極めつけの一文から、静かにゴッホの生涯が語られるのだが、著者の圀府寺司(こうでらつかさ)先生(大阪大学名誉教授)の文章が素晴らしい。日本におけるゴッホ研究の第一人者が、フィンセントを知り尽くした上で選ぶ言葉は、フィンセント・ファン・ゴッホを鮮やかに浮き上がらせていく。 フィンセントが弟のテオに宛てた手紙は600通以上にのぼる。最近の展覧会では、この手紙の抜粋が、作品の横で紹介されることが多いが、これがまた魅力的である。(彼は意外にも読書家で、文才も感じられる) 感受性の塊とでもいうのだろうか、事物や情景の捉え方が鋭く、高ぶりが激しい。ならば精神は消耗するだろうし、狂いが生じるのも無理もない。凡人はその鈍感さゆえに凡人なのであろう。膨大な手紙のほとんどを研究した國府寺先生は、その証跡の紹介にもぬかりがない。 フィンセント・ファン・ゴッホは如何にして、あの色彩を手に入れたのか? この謎を解き明かしてくれるのが、“膨大な手紙”なのである。37歳という短命ではあるが、その“心の旅路”は実に長かったこともわかる。 また、本書はフィンセントの作品だけでなく、当時の関連資料も合わせて紹介し、彼の心の奥底に刻まれた宗教観についても触れている。特に“ひまわり”という花が持つ象徴的意味合いが興味深かった。 せめて、あの「耳切り事件」がなかったら?高い知性を持つ彼の評判を、当時、酷く貶め、大切なアルルの地に居づらくさせた、あの異常過ぎる事件。 ほぼ妄想に近いが、アルルに日本を重ね、「理想郷」と信じ、この地に居場所を求めた彼の思いの強さが切なくてならない。 夢破れてから135年後の今、その「日本」の美術館には、たくさんの人々が彼の絵を見に集まっている。天上で彼がこれを知ったなら、無邪気に感激して、また、テオへの手紙に筆を走らせるのだろうか。

    1
    投稿日: 2025.10.25
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    ゴッホの絵を、すごい、なんて言葉でまとめてはいけないと思った。天才なんて言葉でまとめてはいけないと思った。 幼い頃から、社会で生きにくい特殊性をもち、しかし慈愛のような自己愛のような人間の醜さをもち、他者の感情に敏感に生きるような。 なんでそんなに辛いんだ、と、思ってしまうほど、痛々しく思った。 同時に、今も彼の作品と、彼の生涯を見れることに、最大限の敬意と感謝を。

    1
    投稿日: 2025.09.05
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    ゴッホは「超」筆まめ。デッサン入りの手紙を山のように書いた。とくに弟のテオあての手紙は600通以上が残る。これらの手紙によって、どの絵をいつどのような意図でどのように制作したか、なにに迷い、なにを思っていたかがわかる。 パリ時代の2年間は手紙がほとんどない(なぜならテオと同居していたから)ため、この時期をどう記述するかが腕のみせどころとなる。本書は、ゴッホがパリで印象派からなにを得たか、パリで出会った浮世絵が「触媒」として彼をどう刺激したかが論じられている。 過不足なく、しかもコンパクト。ゴッホの入門書として最上。

    1
    投稿日: 2025.05.02
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    心から購入して良かったと感じる一冊。今後も何度も読み返すと思う。 ゴッホの人生、作品、手紙を時系列に沿って非常に分かりやすく、且つ細かい情報まで記載されているので、当時の情景やゴッホの心情を想像しながら読める一冊です。 事実が曖昧で憶測でしか語ることができないような部分も、筆者の単なる妄想ではなく、様々な背景や状況を踏まえて合理的に推測されているので説得力があり、とても読みやすかった。

    1
    投稿日: 2025.02.20
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    ゴッホが今日評価される所以は「多くの手紙が残されてるが故に画家の心情や技法などが詳細に解説されているから」というのはなるほどなぁと思った。狂気の画家という印象が強かったが、随所に引用される手紙からは生真面目で悩みやすい性格、そして文才が読み取れる。著者も日本語訳に関わったという書簡集は、近年多くの時間をかけて改定されたらしい。そちらも1度見てみたい。 また、ゴッホと言うと印象派のイメージが強かったが、伝道師を目指して挫折した彼は「宗教」から脱しきれず、絵の中にも様々なモチーフが隠れているというのは知らなかった。これを機に、そういった観点からもゴッホの絵を鑑賞してみようと思う。

    0
    投稿日: 2024.11.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    序章の出生から第一章のオランダ時代から第5章のオーヴェル=シュル=オワーズ、そして終わりに...という構成になっている。 著者はゴッホの書簡を翻訳しておりゴッホ研究の第一人者! 各章ごとにキーとなる絵画が載っており、その解説?ともいうべき内容がゴッホ自身がテオに送った手紙などを参考にして解説される内容である。さらにゴッホの宗教家としての背景や家族、時代などの背景も盛り込まれており、とてもわかりやすく、興味深く読み進むことができる。 ゴッホが絵画に込めた思い。モチーフの意味なども含め 細やかな解説があるのはゴッホが筆まめであったこと、手紙を送る相手いたこと(弟のテオ)そしてその手紙大切に保管し、編纂して世に出したテオの妻ヨーの存在があったことが いかに重要であったかがわかる。 ゴッホは狂気の人のような印象であったが語学に長け神学の道に進もうとしたこともあることから(父親は牧師)宗教的なことや意味をより深く感じていたのではないか...本書から読み解ける。 日本への憧れと絵画への影響など... 各章に分かれ時系列されている事で読みやすい。 膨大な書簡、手紙が残されこそゴッホの人となり、そしてその胸の内が理解できる(ほんの少しだけれど...)のは 素晴らしい翻訳のなせる技でもあると感じる。 著者の翻訳した『ファン・ゴッホの手紙』という著書もあるようなので読んで見たいと思う。

    2
    投稿日: 2024.01.21
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    ゴッホの若い時からの生い立ち、考えがまとめられた本。 ゴッホが情緒不安定で耳を切ったりしてたのは知っていたが、若い時から激しい性格で女性に対しても執拗であったりなど、よりリアルなゴッホを知ることができた。そしてゴッホの絵の価値を高めているものに、膨大な量の手紙があるというのもまた面白い。 絵というのは単にそのものだけではなく、その背景や画家自体、時代など様々な要素が絡み合って評価されるものなのだと改めて感じた。 作者のゴッホへの愛が感じられるとても面白い本だった。

    1
    投稿日: 2023.11.26
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    ファン・ゴッホー僕には世界がこう見えるー360°体感型デジタル劇場、第二弾。ようやく体感してきました。平日午前予約だったからか、余裕があって、場所を変えて3回見ることが出来ました。ゴッホの作品の中に身を置く、感性が新しいなあ、若いなあと思いながらゆったりした時間でした。 で、せっかくなのでショップで一冊。角川ミュージアムアムなので“KADOKAWA ”しか売ってません。 日本人が大好きな画家と言われていますが、ゴッホの日本への憧憬も想像以上でした。ゴッホの生涯は、教科程度の知識しかありませんが、彼の苦難の生涯に寄り添った、弟ティオとその妻の存在は、大きなものでした。今、ゴッホの作品が世の中にこれだけ残されているのは、弟の経済的精神的援助に寄る所だと思います。また、膨大な手紙、ティオ家の家計簿等、ティオの妻の保管力の優秀さなるもの。確か樋口一葉の自筆原稿等は妹がきっちり保管して残してあったと思う。秀でた才能を支えてくれる兄弟の存在に感動しました。 アルルのはね橋が好きですが、レプリカは、夜のカフェテラスを購入。

    52
    投稿日: 2022.12.04
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    ゴッホ展に行くので予習のために読んだ。 わたしはゴッホについて何も知らない。なんか耳を切った変な人、ひまわりを描いた人、くらいしか知らない。本書を読んだ直後は悲しい気持ちになってしまった。 本書はゴッホの人生について、手紙と絵画、そしてゴッホを取り巻く環境をベースに語られている。ゴッホの生きづらさというか他人とうまく距離感を保てない感じが読んでいて辛い。 一方で絵画がどういう背景を持ってどんな意図で描かれたのか、当時のゴッホの状況や手紙から読み取れる。著者の「おわりに」にも記載されているが、ゴッホが特別なのは書簡が膨大に残っているからだ。 ゴッホの絵画は宗教的意味と結びつくものが多い。私はキリスト教ではないので宗教的観点からの解説があるのは非常にありがたい。ゴッホは牧師であった父から離れることが出来なかったのかな、、と感じた。 その後の苦悩や精神的な苦痛を見ていると、ゴッホは人に愛され必要とされたかったのではないかなと感じてしまう。

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    投稿日: 2021.11.22
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    ゴッホ展のミュージアムショップでこの本を見つけました。 とても丁寧にゴッホの生涯が描かれ、代表作はカラーで掲載されているので、分かりやすいです。 弟テオとの関係、ゴッホ自身の生きづらさ、日本への憧れ。とても興味深いです。

    7
    投稿日: 2019.12.15
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    正直期待していなかったのだが、しっかりとしたゴッホの人生を辿る一冊だった。 彼の画家になるまでと、画家になってからの10年の要点をまとめ、手紙や彼の絵から、画家本人の感情や宗教、家族や人間関係という彼自身の人生を垣間見ることができる。 書簡集も読んでみたい…

    1
    投稿日: 2019.11.25
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    中途半端なゴッホの解説本ではなかった。 中心的なものを浮き彫りにして、ゴッホはなぜ? を詳しく述べているのが特徴で、いい本に出会った気がした。 ゴッホは、27歳から描き始めて37歳で生涯を閉じる。 わずか、10年の間に、画家としての才能が開いた。 しかし、経済的には苦しく、弟テオの仕送りで生活していた。 精神的にも、肉体的にもかなりの困難があった。 それでも、絵を描き続けたことで、ゴッホの絵が完成していく。 「ゴッホは生きることの難しい人間であった。」という書き出しが ゴッホの人生を表している。「真剣さと気難しさ」 ゴッホは、たくさんの手紙を書いていて、その手紙から ゴッホのあり方が、より強烈に浮かび上がってくる。 「極限にまで追い詰められながらも、 残された道(絵を描くことと手紙を書くこと)に すべての力を傾注できるだけの強靭な生命力だった」 ゴッホはいう 「僕は何をするのがいちばんいいのか、 何かの役に立つことができないだろうか、 どうすれば何らかの問題をもっと詳しく、 それを深く知ることができるのだろうか。」 ゴッホは、宗教者になれなかったが、宗教の影響を大きく受けていた。 そして、絵を描くようになる。 老人の悲しみ 悲しみの女 ジャガイモを食べる人々。 「まさに、さらに伸ばしているその手で、 土を掘り返したのだということを伝えたい。」 手の労働 つまり 稼いだ手を表現する。 表情は、暗い。苦しんでいる人を描き、共振しているゴッホ。 その悲しみを描けていることに、驚きを感じる。 父親が死に、聖書の持つ威力とエミールゾラの生きる歓び。 闇の中の光は、どこにあるのかを問う。 そして、ゴッホは、テオと共同生活を始め パリで 印象派の絵画に出会う。 光の存在。移ろう光の存在。そこから、色彩を深く理解する。 パリで、浮世絵に会うことで、模写し、 自然というものを捉え直していく。 平面的な表現の中にある 自然の偉大さ。 1887年 タンギー爺さんの肖像画を描く。 ユートピア、オーエンの空想的社会主義、日本への憧れ。 タンギー爺さんは、仏像のように 正面を向いている。 1888年2月20日 南仏 アルルの駅に降り立った。 ゴッホの目には、アルルは 日本のように見えた。 「淡いオレンジ色の夕日が地面の色を青く見せる。華麗な黄色の太陽」 ゴッホは、黄色を見つける。 ゴッホにとってみれば、宗教ではなく 太陽を重んじ そして、太陽が放つ色 黄色が 大地に根ざした。 ゴッホの色彩感覚。そして、聖書の持つ物語性を 自分の解釈を加えて、構成する。 太陽の意味。ひまわり、そして 夜空に輝く星。 渦巻く ゴッホの人生を 深く考察した 良い本。

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    投稿日: 2019.10.18