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静かな雨
静かな雨
宮下奈都/文藝春秋
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総合評価

141件)
3.6
17
51
53
6
1
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    忘れても、残るものがある。育つものがある。 経験してきたことや、感じてきたもので自分の世界は創られている。登場人物の思いが自分にたくさんの勇気や温かさをくれる本でした。 『特別な日の特別なできごとを覚えていられないのは、さびしいけれども我慢ができる。僕がこよみさんのぶんまで覚えていればそれでいいと思う。だけど、もっとささやかな、朝ごはんにおいしかった干物だとか、洗濯物を干すときの癖だとか、ふたりで歩いた帰り道に浮かんでいた月だとか、そういう日々の暮らしの記憶が積み重なっていかないことがたまらない。ほんとうは、その些細なことこそが人間をつくっていくのではないか?』 行助さん、好きです。。。

    2
    投稿日: 2020.09.27
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    「静かな雨」 勤務先が事業廃止したその日、行助はタイ焼き屋をやっているこよみと出会う。親しくなったある日、こよみは交通事故の巻き添えになり意識不明となる。 毎日お見舞いに行くが、こよみさんが目を覚ましたのは3年後。彼女の新しい記憶は一日しか保たなくなっていた。 行助が「ブロッコリーが嫌いだ」と言っても次の日には忘れている。 これからのふたりに思い出は作れない。 布団の中でこよみさんが静かに流す涙は印象的だ。 「日をつなぐ」 中学の時から好きだった修ちゃんと結婚して、子供が出来た。 修ちゃんは仕事で忙しい。 私は育児に追われ、私ではなくなっていく。 ある日疲れ果てて転寝したのだろう。子供の泣き声に気が付かなかった。 そんな時に修ちゃんが忘れ物をして戻ってきた。彼は言う。いつもじゃないよね。 いつも修ちゃんのために煮ている豆を煮るのをやめた。食べずに寝てしまう日が多いから。それなのに「豆は煮てないの?」と修ちゃんは言う。 その朝、話がしたいという私に修ちゃんは「俺も話がある」と言って会社に行った。 私は買い物に行って豆を買う。そして思う。 修ちゃんの話ってなんだろう。 物語はそこで終わる。修ちゃんの話は何なのか。

    0
    投稿日: 2020.09.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「日をつなぐ」 知らない土地で赤ん坊と1日中2人きりで、疲れきってしまっていた私は 豆のスープを作り、赤ん坊に笑いかける回数が増えるが 忙しい夫はスープも飲んでくれない 毎日好きな音楽を聴くこともできない 疲弊した母親の描写は辛すぎて同情しかない

    0
    投稿日: 2020.08.29
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    「役に立つものしかいらないの?」 今の自分はむしろ 役に立たないものの積み重ねで できている気がする。 「私じゃない。私じゃない。 私はもう対象外なんだ。」 友達を思い、親を思った。 うらやましいとばかり思ってた。 やわらかいなかにトゲがある話。 でも、やっぱりやわらかい。

    2
    投稿日: 2020.08.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    宮下奈緒さんのことばは柔らかいが、時折胸を刺してくる一文がある。 胸を刺してくるものは一文だけでなく、その一場面だったりもする。 この本は、それがよく現れてると思う。 表題作の静かな雨より、日をつなぐの方が心に残った。爽やかで憧れすら感じる恋模様から、一転して、子育てに翻弄し疲弊しきった一人の女性が描かれていて、ふと、ノイローゼとなってしまう母親のニュースを思い出した。 夫婦の話し合い模様は描かれないまま、物語は唐突に終わってしまう。希望のことばが夫から紡がれるのか、それとも絶望なのか、読者の想像力によってこの女性の未来が決まってしまうこと自体が、なんだか悲劇のように思えた。

    0
    投稿日: 2020.08.08
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    「私は光をにぎっている」「四月の永い夢」を観て好きになった中川龍太郎映画最新作の原作ということで「静かな雨」を読んでみた。 職を失った「行助」が、屋台でたいやきを売っている「こよみさん」に出会うところから始まる。 次第に距離を縮める2人だが、そんな折にこよみさんが事故に遭い、記憶障害を患ってしまう。こよみさんは寝るとその日の記憶が消えてしまう。 やがて、行助とこよみさんは一緒に住み始めるのだが、行助は、「人間は何でできているのか」思いはじめる。 記憶を失う人の生きていく意味を、行助は思いめぐらす。 行助が思うように、特別な日の特別なできごとを覚えていられないのは、我慢できるんだろう。 こよみさんのぶんまで覚えていればいいのだから。 →同じ方向を向いているふたつの視点 だけど、『朝ごはんの干物だとか、洗濯するときの癖だとか、帰り道に浮かんでいた月だとか、そういう日々の暮らしの記憶が積み重なっていないことがたまらない』 のは、日々の暮らしこそ、ふたりの感じ方(『ふたつの世界』)は同じものではないからではないか。 →向かい合う双方的なふたつの視点 『あたしの世界にもあなたはいる。あなたの世界にもあたしがいる。でもふたつの世界は同じものではないの』 登場人物の余白にも面白さを感じた。こよみさんの過去に言及するエピソードがいくつか出てくるが、細部まで明かさないことで想像させられる。 なぜこよみさんはひとりでたいやき屋をしているのか。 リスにリスボンと名付けたこよみさんの家族はどこにいるのか。 なぜこよみさんは事故に遭った後、『記憶力をなくした数学者のはなし』(おそらく「博士の愛した数式」)を好んで読んだのか。 映画はまだ観てないので、早く観たくなった。

    1
    投稿日: 2020.07.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ○ユキとこよみさんとの静かなラブストーリー。鯛焼き屋さんを営みながら、いつもは愛想の良い人だが、実は喧嘩も強いこよみさんのギャップは魅力的だ。 個人的にはユキの姉が言った、本当に迷っている時は進もうと思っても前後がわからなくなっている、そういう時はやめたほうがいい。後悔しても取り返しのつかないことがあるから。という言葉が印象的だった。 ○日をつなぐは、最後の結末が気になる。

    1
    投稿日: 2020.07.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    恥ずかしながら宮下さんの作品は本作が初めて。読み心地も読了感もすごくよくて、他の作品も読みたくなった。 表題作は落ち着いた愛を感じさせる大人なラブストーリーだった。思い出を蓄積させること以外でも愛情の育て方はあるんだな。こうやって、一緒にいられる一瞬一瞬を愛おしむ気持ちを大切にしたいなと、最後の一文で思った。

    5
    投稿日: 2020.07.23
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    生きるのに前向きなたい焼きやのこよみさんと足に障害があり、前に進みづらい行助の物語。こよみさんに好意を抱きながらも進めない行助が 事故でこれからの記憶が積めなくなったこよみさんと 時を重ねていく姿が語られている。記憶が積めなくても、強い意思と前向きなこよみさんの姿が痛々しい。 日をつなぐは知らない土地である秋田で始めての出産、子育てに戸惑い、苦しむ真名を主人公に やがて、秋田の市場での人や産物との出会いで強く生きていくであろう話。 ああ、こういうタイプの小説もあるんだなと感じた。どちらも、余韻を残したまま終わる。 どうなったかではなくて、どうにも変わらないままで。なんだか残すなあ…

    0
    投稿日: 2020.07.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    『静かな雨』 映画が好きなので読んだ。 読まなきゃ良かった。 それなりに古い小説のせいか、ユキスケという男の視点から見ているせいなのか、読んでいて非常に胸糞悪かった。 何よりユキさんの口から「(鯛焼き屋をやっていくのに) もっと安全な場所のほうがいいんじゃないの?女ひとりなんだからさ」という言葉が出てくるとは思わなかった。 映画では割りとクライマックスに使われたブロッコリーのシーンも原作は最悪だった。 勝手にこよみさんに怒って苛立ちをぶつけて、挙げ句の果てにこよみさんの努力を認知した後訳わからないモノローグで誤魔化してて非常に腹が立った。 この小説があまりにも未熟で、逆に映画があまりにもこの小説を上手く映像作品として昇華してて素晴らしいことが分かった。 『日をつなぐ』 これも一人称小説……この人ってこんなにモノローグを多く書く作家なのか? 育児ノイローゼになった時、仕事が忙しいからと支えもしない夫との過去の記憶を辿っても胸糞悪さしか残らない。 この二人は最初からコミュニケーションが極端に少なくて、就職と結婚、妊娠があまりにも上手くいきすぎて歯車が最初から噛み合っていなかったことに気づかなかったんだろうな。 個人的には夫と会話してる中で文句垂れている所で「この小説自分に合わないな」と思った。 ラストの文章の後、見捨てられちゃうんだろうな。

    0
    投稿日: 2020.07.11
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    本の装丁とタイトルが素敵で絶対読みたいと思っていた。 予想通り穏やかでゆったりして、この空気感は好き。 勤務先が倒産することとなった傷心の行助は、帰り道たい焼き屋を営むこよみと出会う。 行助は生まれつき足に麻痺があり、松葉杖を使う。出会う間もなく、こよみは不意の交通事故にあい、新しい記憶は短時間しか留めておけない障害を負う。 行助を、そしてその後こよみとの二人を、心配し温かく見守る行助の家族(姉、父、母)の優しい気持ちがひしひしと伝わってきた。障害を抱えた二人の、心寄せ合うなんということない日常の描き方の穏やかな文章が印象的だった。 あるいみ、あきらめを受け入れることの大切さを訴えているように感じた。あきらめは悪いことではないと、その中にもある幸せみたいな。 後の、日をつなぐは、お豆のスープとバイオリンがでてきて(静かな雨も、たい焼きと音楽)。 とにかく、一曲。一曲聴くことができさえすれば道が開けるような気がした。力を得られる、この無間から抜け出せる、と私は思う。この気持ちがよくわかる。 無間とは、無間地獄のことなのですね、知らなかった。 ラスト一行で、一瞬思考が止まりかけた。が、こういう結末を読み手に委ねる終わり方嫌いではない。好きでもないが。

    12
    投稿日: 2020.07.05
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     文學界新人賞佳作に選ばれた著者のデビュー作「静かな雨」に「日をつなぐ」を加えた2編収録の短編集。  文章自体は決して長いわけではないが、2編とも登場人物たちの想いが交錯していて物語の奥行きを感じさせる。切れているようで切れていない関係、相手のことを理解した中でのさりげない心遣いなど、温かさを感じることができる。  物事はどうしても自分中心に考えてしまう。決してそれは悪いことではないが、相手に対する心配りなど、今だからこそ再認識できる作品であると思う。

    2
    投稿日: 2020.07.02
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    日をつなぐ、がすごく良かった。 慣れない土地での切羽詰まった感じ、話せる相手が夫しかいないのに夫と話せない寂しさ、きちんと子育てや家事をしなければならないという義務感。 真名が虐待をしませんように、と祈りながら読んだ。誰か助けてあげて、と叫びそうになる。 脩ちゃんの話がいい話でありますように。

    2
    投稿日: 2020.07.02
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    字数が少なく、あっという間に読める。が、内容は良かったと思う。 先天性のマヒがある”僕”と、事故で1日以上の記憶を保てない女性。世間的には”弱者”と見られがちだろうが、おそらく2人はそうは思っていないところが、心地いい。

    0
    投稿日: 2020.06.16
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    表題作ほか中編1篇を加えた著者のデビュー作。静寂の中に燻るエネルギー、鬱屈とした中にも一筋の陽光が差すような感覚。“日をつなぐ”は著者の心情、奥底からの叫び声を余すところなく披露する。日本における家族のありように帰着するのか...。ラストでどちらを思い描くかは読み手次第。私は吐き気を催した。

    8
    投稿日: 2020.05.13
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    宮下さんの言葉のセンスが好きです。 ひとつひとつの言葉が素敵です。 また小説から醸しでている雰囲気も好きでした。

    0
    投稿日: 2020.05.09
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    静かな雨…「人間ってなんでできてると思う?」 そんな会話、記憶、思い出、…… 「毎日の生活の中での思いで…」思いかあ 考えてる自分が居る 日をつなぐ…修ちゃんの話ってなんだろう?いい話かな?

    0
    投稿日: 2020.05.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    『静かな雨』高嶺の花だと思っていた女性が、事故をきっかけに自分と共に暮らすことになる。彼女の記憶は一日しか持たない。それを承知で彼は彼女を支えていく…という純愛物語かと思いきや、解説を読んで怖くなる。 『日をつなぐ』夫は仕事が忙しく、慣れない地で夫の協力も得られないまま独り子育てをする妻。心身共に疲弊しながらもその役割を放棄出来ない。ラストの一行は…。

    0
    投稿日: 2020.05.01
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    宮下奈都さんのデビュー作。 事故により記憶が1日しか持たなくなってしまったこよみ。 彼女の存在がすべての行助。 わたしだったら耐えられない。 まさに、日常のささいな幸せを一緒に覚えておけないのは辛いと思う気持ちが大きいから。 思い出は大切だと思ってしまっているから。

    0
    投稿日: 2020.04.19
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    宮下奈都!すごい人だ 羊の鋼の森だっけ? から多分なこの人の作品を読みたいと思った。 自分の価値観をがーんと揺さぶられる。 なんて、くだらない考えなんだろう自分、もっと自分はましだと思った ところが宮下奈都の世界観からすれば愚かだ。陳腐だ! 本文より こよみさんは静かに泣いている。眠れば消えてしまう月。その光に照らされて雨か降り続いている 表題が「静かな雨」

    7
    投稿日: 2020.03.23
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    過酷な状況のはずなのに、 とても優しい世界に感じた。 2人の関係がやたら熱い情熱の上に出来上がったものでは なくて、静かに紡ぎあっていくようだった。

    0
    投稿日: 2020.03.17
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    解けた雪水のように染み込んでくる文章だった。 時間に実体はない、けれど体に降り積もるもの。ふと眼前をよぎり、捕まえられない光景に涙が溢れること。 日々は静かに、降った雨水がどこかへ流れていくように過ぎていく。 その儚さの中で、行さんの感情がまるで焦げ付きのように跡を残す。 だから不思議な小説だった。やわらかく目に入り体に染み渡る文章、なのに行さんの感情は焦げ跡のように同じ場所に留まろうとする。なにも望まないようでいて、こよみさんのすべてを求めている。 この小説には今このときしかない、それはこよみさんがそうであるからではなく行さんがそう望んでいるんだ。

    4
    投稿日: 2020.03.14
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    本屋大賞を取った「羊と鋼の森」を読んだときの感触と違って、どうにも入り込めなかった。違いはなんだろう、と考えたけど、やっぱり共感出来るか・応援できるかなのかなと。 羊と鋼の森も綺麗な物語だったけれど、これは輪をかけて綺麗というか、綺麗すぎて現実感が伴わず共感に至らない物語だった。この現実感のなさを尊ぶひともたくさんいるとは思うのだけれど、私の好みかと言えば違ったなあ。 宮下さんは長編をもう一冊読んでみたいな。

    2
    投稿日: 2020.03.10
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    筋を追うのではなく、心の動きや揺れを味わうように読み進めました。 思いが人を作っているのなら、心の動きを追いかけることは、命のあり方を追いかけることかも知れません。 どこかで体験したような思い、自分には縁遠く感じる思い・・・誰かの思いが、レース編みのように丹念に描かれていました。

    0
    投稿日: 2020.02.28
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    ひらがなが多い本だ。 それだけで世界観がまあるくなる感じがする。 だけど、まあるい世界だってまあるいだけじゃないんだよ、っていうのを突きつけられる気がする。 愛が間にあるはずの2人なのだけれど、まあるさにひびが入るような感覚に、色々と考えさせられる。

    0
    投稿日: 2020.01.27
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    忘れても忘れても、ふたりの世界は失われない。文學界新人賞佳作に選ばれた瑞々しいデビュー作。 ものすごく透明感のあるラブストーリー。自然に流れる川のように結ばれた二人の、互いの感情が読者の心に潤いを与えてくれる。二人の出会うきっかけとなったのが、たい焼きというのも何かうれしい。

    0
    投稿日: 2019.12.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    作者のデビュー作「静かな雨」と、「日をつなぐ」の二編が収録されている作品集。 「静かな雨」は、諦めを知り、苦い時間を過ごす術を知っている人たちのお話。 クリスマスの日に失業した行助(ユキスケ)は、偶然見つけたたいやき屋の店主のこのみと知り合う。 彼女が作るたいやきはとても美味しく、行助は店に通うようになり、このみと徐々に親しくなる。 しかしこのみは交通事故に遭い、記憶を一日しか留められないという障害を負ってしまう。 静謐でゆったりとした物語の中で世界の豊かさを描き出すことができる宮下さんの手腕は、デビュー作から発揮されています。 行助は生まれつき足に麻痺があり、こよみは「瞳に秋の夜みたいな色と、あきらめの色がある」「あきらめるのってとても大事なことだと思う」と言います。 行助は彼女の強さに惹かれていきますが、事故の後は二人の関係も変化していきます。 日々の暮らしの記憶を共有できないことにストレスを感じながらも、やがてはそれを受け入れていく行助。 二人に奇跡は起きないが、諦めの中でも生きていける。 そんな強さが、読み手の心を静かに打つのです。 短編「日をつなぐ」。 中学時代の恋人と結婚し、誰も知り合いのいない町で子育てをする女性のお話。 夫は仕事で忙しく、一人きりで育児に格闘するワンオペ状態の母親の孤独感や不自由さが、自分が体験したかのように伝わってきます。 逃げ場のない、ゴールの見えない育児環境の中でまともな思考もできない状況に追い詰められていく主人公。 彼女の疲弊感が増していく様子が、豆を煮る描写をたびたび挿入することで表現されているのがうまい。 夫と向き合おうとするところで話は終わるのですが、今後夫婦の関係がどうなろうとも、向き合おうと努力する主人公の姿勢は偉いと思う。 小説の主人公や題材にしにくい話を奥行きのある、繊細な物語に仕上げている筆さばきには安心感があります。 やっぱり、最初から宮下奈都さんは宮下奈都さんなのだなー。

    0
    投稿日: 2019.11.30
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    複雑そうな事情とか過酷そうな状況がすごく優しく届く、素敵な文章だった。 記憶をなくすというジャンルは安易な気がしてあまり好きじゃないけど、伝えたいのは、それでこその幸せなのかなと思えたので、好きな小説。 もうひとつの話は、豆を煮たくなるのと、ブルーハーツとクラシックの関係を探したくなる感じ。最後が突然終わりすぎて、ちょっとゾッとした。

    0
    投稿日: 2019.11.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    電子書籍をスマホに入れていたのを、今日病院の待合室で読みました。 待ち時間長いというのもあったけれど… 電子だから、全体のどの辺りかが分かりにくいせいもあって あれっ?とういうところで終了(*_*; その後を読者にゆだねる感じがちょっとなぁ… 『羊と鋼の森』が宮下さんの作の初読みで これは、デビュー作のようです。 リスが隠すエサ≒彼女が残すメモ紙 ちょっと悲しい けど そういう類の表現がいいのだろうなぁ 

    2
    投稿日: 2019.11.02
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    短い物語なのですぐ読めてしまう。 松葉杖の主人公ユキとたい焼きやさんのこのみの話。たい焼きがあまりに美味しそうな書き方してるので気になる。途中このみが事故にあい、二人の生活が変わってしまうけど、少しふんわりした物語。このみは事故で記憶が1日しかもたないみたいだけど、気にする風でもなく緩やかに未来が紡がれていく

    0
    投稿日: 2019.10.10
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    読んでると美味しいたい焼きが食べたくなる。男女の出会いのきっかけとその後にお互いが向き合う、かかわり合うのを上手く書いている。もっと読んでみたい作家を見付けた。

    0
    投稿日: 2019.09.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2作とも文章自体は非常に読みやすく、すぐに読み終えられる1冊ではあるものの、いつまでも何かが心にひっかかってなんとも言えない不安感のようなものがじわじわ心を侵食していくかのようだ。 静かな雨 丁寧な文体でシーンを鮮やかに思い浮かべることができるのに、読み進めるうちにそのシーンが遡って変化していく。それは"僕"やこよみさんのイメージも同じでどんどん変化していく。 さらに辻原登氏の解説で視点がまた変わり、背筋が凍るような気持ちになった。 登場する"僕"もこよみさんも、なにひとつ嘘もついていないし変わってはいないのに。 すごいと思った。 日をつなぐ 2人の出会いから結婚までのエピソードは切なくも若々しく、心を掴まれた。だからこそそこからの展開にどんどん胸が痛み、辛かった。 解説に"ラストの一行は、我々を不安の中に宙吊りにする"と書かれていたけれど、わたしは良い方に受け止めた。 良い方に受け止めたいと願うような気持ちのまま、放り出されて、実はとてもしんどい。

    1
    投稿日: 2019.09.11
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    デビュー作とは知らずに… 短編二作。 記憶のたいやきと、宙ぶらりん。 後者については、不安感が残るのは好きなんだけど、合わなかったなといった感じ

    1
    投稿日: 2019.09.03
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    2020年初春静かな雨 映画化!文庫版6/6発売! 太賀さん、元乃木坂46の衛藤美彩さんがダブル主演! 来年が楽しみです。文庫も発売です!

    1
    投稿日: 2019.08.29
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    う~ん。「デビュー作はこんな感じか?」としか言えない。 最後まで物語に入り込めないまま読み終わってしまった。 「羊と鋼の森」が良かったので期待しすぎたかな。

    8
    投稿日: 2019.08.01
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    「静かな雨」「日をつなぐ」の二編。結末を読者に委ねる系のお話。物語がわかりやすく完結していないところで好みが分かれるかも。あれ?これで終わり?って、ちょっと肩透かし感があったかな。 独特な比喩が可愛らしいシーンが多くあった。胸からバンビとか、「ててて、」とか、自分では思いつかないけれども言われてみれば納得できるうまい表現。言葉を捏ねくり回したような妙な言い回しはされていないから、全編を通して読みやすい。

    1
    投稿日: 2019.07.20
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    初読みの作家さん。表題の通り、最初から最後までまるで静かな雨が降り続いているかのような小説。静謐という言葉がよく似合う。物語を通して大きな起伏はないけれど、決して単調というわけでもない。 主人公の行助はたいやき屋さんを経営するこよみさんと親しくなるが、彼女がある日交通事故に巻き込まれた際に記憶を短時間しかとどめられなくなってしまう。それでも行助は彼女の店に通い続け、遂には一緒に暮らすようにもなる。 こよみさんはさっぱりとしていて、何があってもあまり動じない。交通事故がなかったかのように、彼女は今まで通り変わらずに過ごしているようにも思える。けれど、ちょっとしたことから、彼女の記憶の欠如が垣間見えることが余計に目立つ。あとちらちらと仄めかされる彼女の素性が、余計に彼女を「高嶺の花」にしている気がした。 行助の言うように、特別な日の特別な出来事を覚えていないことよりも、日々の暮らしの中にあるささやかな記憶が零れ落ちてしまうのはきっとつらいんだろうな。人間は、この些細な日々の記憶でできていると思うと、尚更。

    6
    投稿日: 2019.07.10
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    人の根元とは何かを提起する.目に見える障碍をテーマに,目に見えないところにも障碍はあり,目に見えることだけで世界が構成されている訳でもなく,人は全て何らかの障碍を持っているではないか,という救いでもある.いずれの作品も心穏やかに読むことを許さない,短編なれど重厚な一冊である.

    1
    投稿日: 2019.07.08
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    解説を辻原登さんが書いていて それがとても良い。 併録されていた 「日をつなぐ」の方が私の心に残りました。

    1
    投稿日: 2019.06.24
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    宮下奈都氏の作品の中でも、際立って透明感が強い話だったことを記憶している。怒涛の展開だとか衝撃の結末みたいなものはなく、それでも静かに息づいている世界観がとても美しくて切なくて、本当にこの人のことばは綺麗だと感じいった。特に最後のページの描写の仕方が好き。

    5
    投稿日: 2019.06.06
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    【本屋大賞受賞作家による静謐な恋の物語】短期間しか新しい記憶を留めておけなくなってしまったこよみと、大学の研究室で働く行助。二人の恋を瑞々しい筆致で紡ぐ著者の原点。

    0
    投稿日: 2019.05.21